ブログ記事117件
融解後の胚盤胞のグレードを再評価し、それが出生率と関連があるのか調べた論文を読んだので紹介しますこの研究では、4613名の単一正倍数胚盤胞の移植、7750周期を対象としました。また、グループ1:凍結前、融解後の胚盤胞のグレードが同じグループ2:融解後の胚盤胞が凍結前と比較してグレードが高いグループ3:融解後の胚盤胞が凍結前と比較してグレードが低いグループ4:融解後に再拡張せずグレードの再評価ができなかった以上、4群を比較検討しました。年齢、AMHについて、グル
膣内のマイクロバイオームは、女性において極めて重要な生物学的役割を果たしています妊娠していない時のマイクロバイオームは、非常に動的で、月経周期等の影響を受けることが明らかになっており、妊娠時は多様性が低く安定性が高くなりますこれらは、エストロゲン量によって変化しています。また、膣から上の生殖管のマイクロバイオームにおける病原体の変化、感染性微生物の血液感染による局所的な微生物の変化等が不妊症の原因の一つではないかと指摘されていますよって、今回ご紹介する論文では、不妊症女性の膣内マイクロバ
最近、ヒトマイクロバイオーム(ヒトの体に共生する微生物の総体のこと)が健康や疾患にどのような影響を与えるか研究されていますその中で、不妊に対する影響も懸念されています。そこで今回、尿中のマイクロバイオームが精液の状態と関連があるのか調べた論文を読んだのでご紹介します対象は、初期不妊症の評価のために来院した18歳以上の男性または過去に子どもをもうけたことがある男性73名です。グループ1:精液検査正常群vs精子濃度か精子運動性どちらかに1つ以上の不良があった群グループ2:精子運動性
DFI(DNAfragmentationindex)検査は精子DNAが断片化した精子の割合を測定する検査です。通常の精液検査では分からない“精子の質”を調べることができます精子DNA断片化の割合が多くなる(30%以上)と、胚の発育不良、着床率の低下、流産率の上昇に関連すると報告がありますまた、不妊治療をせず、自然妊娠したカップルにDFI検査をしたところ、全例でDFIが20%未満であったとの報告、人工授精(AIH)を行ったカップルでDFI10%未満と10%以上で比較すると、10%未
12月1日より当院では先進医療であるZyMot(ザイモート)スパームセパレーターを導入しましたZyMōtスパームセパレーターとは、遠心分離を行わない精子回収装置です近年、精子DNAの損傷が注目されており、遠心分離を行うと精子DNAが損傷すると言われています精子のDNAが損傷していると、受精能、胚発生能の低下、流産率の上昇などが報告されていますZyMōtスパームセパレーターは非常に小さい穴が開いた膜を精子が通過することによって選別するため、遠心分離の工程が不要です精子DN
一卵性双生児の割合は自然妊娠で0.4~0.6%*¹、体外受精では1.53%*²と言われており、体外受精で高くなることが知られています体外受精で一卵性双生児の割合が増える要因として、〇外因性のゴナドトロピンによる排卵誘発〇培養時間の長さ〇AH(アシステッドハッチング)〇顕微授精か体外受精の違い〇凍結融解操作などが挙げられています今回紹介する論文では、2000年から2007年までの8年間分のデータをさかのぼり、どの要因が体外受精による一卵性双生児妊娠を増加させてしまう
今回ご紹介する論文は大気汚染が精液に与える影響に関する論文です検討では、指標としてPM2.5が用いられています。PM2.5とは、2.5㎛以下の粒子のことで、車の排ガスやたばこの煙など、物の燃焼によって直接排出されるものと、硫黄酸化物(SOx)、窒素酸化物(NOx)、揮発性有機化合物(VOC)などのガス状大気汚染物質が大気中で化学反応により粒子化したものがありますPM2.5は非常に小さいため(髪の毛の太さの1/30程度)、吸入すると肺の奥まで入り込みやすく、肺がん、呼吸器系、循環器系への
妊娠中の母親の栄養状態は、子宮内発育に影響し、その後の子供の健康に影響を及ぼす可能性があります。さらにその影響は、第3世代にまで影響を及ぼす可能性がありますしかし、これらの世代間伝達のメカニズムはほとんど解明されていませんでした。今回ご紹介する論文では、出生時低体重児のモデルマウスを用いて、栄養不足と子宮内環境の変化が大人になった時の生殖細胞のDNAに影響を及ぼすか調べたものですまず、この出生時低体重児のモデルマウスは、ヒトでいう妊娠中期~後期での栄養不足とリンクしています。この期
身体活動が妊娠成立までの期間に及ぼす影響についての論文を読みましたので、ご紹介します身体活動とは、安静にしている状態より多くのエネルギーを消費するすべての動作のことを指します日常的に運動を行うことで肥満症や糖尿病、うつ病等のリスクが軽減することが知られていますが、この研究では、デンマークで2007-2009年に前向きコホート研究に参加した妊娠を計画している18-40歳の女性を対象として、余暇時間の身体活動が妊娠成立までの期間に与える影響についての調査を行っていました身体活動の運
妊娠前の栄養状態が妊娠のしやすさに影響を与える可能性があります。そのため、栄養環境を整えることは大切であり、色々な食材をバランスよく食べることが求められますが、なかなか難しいのが現状ですそこで、足りない部分をサプリメントで補うことで栄養環境を整えやすくなるのではないかと思いますこれまでもエレビット、アグリマックス(イソフラボン)を導入していましたが、今回、当院で取り扱うことになったのは【Baby&Me】の医療機関向けのサプリメントです。このサプリメントは、栄養の不足を回避するために、
正倍数体胚盤胞の形態学的等級付けが着床率と継続的な妊娠率に影響するという論文を読んだのでご紹介します胚盤胞の評価胚盤胞の評価は、拡張度、ICM(内細胞塊)、TE(栄養外胚葉)で決まります今回の研究で移植された胚盤胞は、TE生検前に胚盤胞の等級付けを行い、4群に分類されました。胚盤胞の状態により、5日目または6日目に生検を行い、正倍数胚のみを研究に使用しました。今回の研究での評価項目は、着床率、妊娠継続率、流産率でした。継続妊娠は、着床率に胎嚢の総数を移植した胚の数で割
今回紹介する論文は、父親の年齢が精神疾患に関わる遺伝子の変異にどのくらい関連するのかを調べたものです・精神疾患について心因性(ストレス)、内因性(遺伝的な要素)、外因性(病気や事故などの怪我)の3つが原因とされており、近年、内因性の遺伝的な要因が少しずつわかってきています精神疾患は、ひとつの遺伝子の変異によって病気が発症するという単純なものだけではなく、複数の遺伝子やその他の要因が複雑に絡み合っていると考えられています。・突然変異遺伝子の本体であるDNAが損傷し、その修復過程で
日本臨床エンブリオロジスト学会雑誌に当院のエンブリオロジスト冨田の論文が掲載されましたので、内容をご紹介します(抄録はこちら)ヒト胚は通常、第一分割で2細胞に、第二分割で4細胞に分割しますが、1細胞が3細胞以上に分割するdirectcleavage(DC)や一度分割した細胞が融合するreversecleavage(RC)と呼ばれる不規則な動態を呈することがあります。このような動態が、培養成績および移植成績に及ぼす影響について検討を行いました。2013年から2019年に
妊娠時の母体ヘモグロビン濃度と新生児出生体重についての論文を読みましたので、ご紹介していきますこの論文は、分娩時の母親のヘモグロビン濃度と新生児の出生体重との関係について検討しています。1日に摂取する食事の中には約10-14mgの鉄が含まれていますが、摂取した全ての鉄が吸収されるわけではありません妊娠中は、胎児の成長のために鉄の必要量が増加することによって、妊婦は鉄欠乏の状態になり、貧血になる事があります鉄剤補給をしていない非妊娠女性のヘモグロビン濃度は平均13.3g/d
凍結保存胚の移植後の臨床転帰における季節、日長、気温の関連性についての論文をご紹介いたします自然妊娠による出生率は季節によって異なることがすでに報告されています体外受精では、新鮮胚移植や移植当日の季節についての報告はありますが、採卵時の季節・日長・気温についての報告はまだありませんでした。採卵時の季節・日長・気温との関係性を調べることで、季節性と卵子の質や着床に対する子宮の受容性、またはその両方が関連しているのかがわかります胚の移植は、3日目に分割確認を行い、
2022年4月から不妊治療の保険適用が開始されましたが、保険診療は2年に1度改定があり、今年は改定の年でした2024年6月から診療報酬が改定されましたが、それに伴い体外受精の保険点数も一部変更となりました表にまとめましたので、ご覧ください。例)10個採卵し8個受精卵培養を行い、5個を胚盤胞培養して4個の胚を全胚凍結した時採卵10400点(採卵基本料3200点+10個以上7200点)媒精3200点(全て体外受精だった場合)
2024年5月18日~19日に兵庫県の神戸国際会議場で開催された日本卵子学会に参加しました今回の卵子学会で発表された多くの演題の中で興味をひかれた「当院におけるタイムラプス搭載型培養器と通常培養器での臨床成績の比較検討」(矢野ら)について、ご紹介しますタイムラプス搭載型培養器(タイムラプスインキュベーター)は通常培養器とは異なり、24時間一定の間隔で胚の写真を撮影することによって、経時的に胚の発生状況を観察することができるため、観察のために培養器から取り出す必要がありません。そ
2024年1月6~7日、東京・赤阪で第29回日本臨床エンブリオロジスト学会が開催されました。この学会は胚培養士(エンブリオロジスト)が中心になって行われる国内唯一の学会です。初日は胚培養士の技術・知識向上のためのワークショップとセミナー、2日目は学術集会が行われました。ワークショップには当院の胚培養士が講師として招かれ、11名の受講者の方々にPGT-Aバイオプシーの実技講習を行い、また、自施設で新規にPGT-Aを開始する際の注意点等をお伝えしました。過去の記事(着床前診断に必
当院では流産を2回以上繰り返すカップルを対象に、原因を検索するため各種検査(一部自費の検査あり)を行なっています原因で最も頻度の多いものは胎児染色体異常ですこれについては、流産後の胎児組織や絨毛などからNGS(次世代シーケンサー)を用いた染色体解析を行なっていますそれ以外の原因には、抗リン脂質抗体、血液凝固異常、子宮形態異常、甲状腺機能異常、夫婦染色体変異・異常などがあり、検査をしても明らかな原因がわからない方もいます不育症の原因を探る基本的な保険適用検査です1.
祐季先生が日本不育症学会認定医資格を取得しました全国で少数名の医師しか有さない資格になります祐季先生が診療を担当する水曜日、土曜日の午前中に診察枠を設けます。Webからの診療予約枠がいっぱいでも、お電話いただければご予約をお取りできます。祐季先生はじっくり話を聞いてくれる優しい医師ですので、お気軽にご相談いただけると思いますまた遺伝専門医の資格も有しており、着床前診断のカウンセリング等も行なっております東海地区においてクリニックで不育症を診ている施設は非常に少
今週月曜日頃より当院HPがサーバーの不具合により閲覧できない状態となっております早期の復旧に努めておりますが、しばらく時間がかかる見込みとなっております予約に関しましては、チェックオン当院サイトより通常通りご予約していただくことが可能ですので、ご利用くださいまた新規患者様に至りましては、当院の治療内容などのご紹介ができず、大変申し訳なく存じます。当院では3人の生殖専門医が、できるだけ自然妊娠を目指していただくことを理念として、子宮卵管造影、精液検査などの原因検索、タイミン
胚の異数性は、30代後半から44歳でフラットになるまで急激に増加します。近年のARTでは、着床前診断(PGT-A)を行い、胚の異数性を診断してきました。しかし、正倍数胚を移植しても妊娠に至らない場合もあり、胚の倍数性だけが原因とはいえない状況にあります。今回ご紹介する論文は、正倍数胚を移植した結果を元に、女性の年齢の上昇が、異数性とは無関係な妊孕性の低下と関連しているかどうか調べたものです。採卵時の年齢を、35歳未満、35~37歳、38~40歳、41~42歳、42歳以上の5グループに
2023年9月10日に東京・紀尾井町で行われた「第22回生殖バイオロジー東京シンポジウム」で当院の胚培養士が講演を行いました「ヒト胚初期不規則分割と染色体解析」これまで当院では、発生初期に不規則な分割が見られた胚の評価について研究を行ってきましたが、今回はここまでの検討をまとめた内容について講演しました1つの細胞が3個以上に分割する「ダイレクト分割(directcleavage)」は胚盤胞発生率を低下させることが知られていますが、そのような胚でも胚盤胞になれば妊娠率は低下せず
2023年7月27~28日に仙台市で開催された第41回日本受精着床学会に参加しました当院からは1題の口演発表を行いましたので紹介します。Reversecleavageは異常分割細胞の自己修復の意味を持つか?胚の初期の動きとして、一度分割した細胞が融合する「Reversecleavage(リバース分割)」が知られています。リバース分割は胚の発育や妊娠率を大きく低下させるという報告がある一方、影響はない(もしくは少ない)という報告もあり、当院でもこれまで検討を行ってきました。今
2023年6月25~28日にデンマーク・コペンハーゲンで開催されたヨーロッパ生殖医学会(ESHRE)で、当院からポスター演題を3題発表しました。今回そのうち2題と、他施設からの発表で興味深かったものを1つご紹介しますP-117:Thereasonwhydirectcleavageandrapidcleavageshouldbedifferentiated(「ダイレクト分割」と「急速な分割」を区別すべき理由)P-123:Earlyirregulardi
2023年6月25~28日にデンマーク・コペンハーゲンで開催されたヨーロッパ生殖医学会(ESHRE)で、当院からポスター演題を3題発表しました。今回そのうち1題についてご紹介します。P-116:Howdoestheshortinseminationmethodaffectclinicaloutcomesandlaboratorymanagement?(短時間媒精は臨床成績と培養室マネジメントにどのような影響を与えるか?)体外受精(IVF)ではこれまで長時
2023年5月20日~21日に茨城県のつくば国際会議場で開催された第64回日本卵子学会学術集会に参加しました当院からは1題ポスター発表を行いましたので、紹介します「自費診療と保険診療のART成績の比較」2022年4月から生殖補助医療(ART)への保険適用が開始され臨床成績への影響が注目されています。今回の発表では、当院で行われた保険適用が始まる前の自費診療と保険診療で行われたARTについて臨床成績の比較検討を行いました。2021年6月から2022年3月に自費診療で行われたART
妊娠中の高濃度のアルコール摂取は、胎児の健康発達に重大な影響を与えることはご存じの事かと思います。そして、そのなかでも胎児期に高濃度のアルコール曝露によって顔の発達にも影響があることが以前より知られています今回紹介する論文は、妊娠中の低~中濃度アルコールの摂取によって新生児の顔にも影響があるかAIを用いて検討した報告です。対象は9歳児3149人と13歳児2477人、母親7409人です。アルコールの測定は週1杯未満、週1-3杯、週4-6杯、1日1杯、1日2-3杯、1日3杯
男性の睡眠不足は精子形成を促すホルモンであるテストステロンの分泌を減少させ、精子の質を低下させるという報告は以前より見られます。当ブログでも以前ご紹介しています(男性の睡眠時間の長さと受精能力の関係について)ヒトではばらつきやライフサイクルによる影響もあるため、それらをなるべく排除できるマウスを用いた検討でも睡眠不足は精子形成に悪影響であると報告されています。しかし、これらのマウスを用いた報告は一律で睡眠時間を減らして検討しており、平日の睡眠時間が短く、休日の睡眠時間が長いといっ
新型コロナウイルスに感染した人の精子数が減少するという報告は新型コロナウイルス流行当初に散見されましたが、精子数減少のメカニズムは解明されていませんでした。今回の論文では、そのメカニズムにACE2(アンギオテンシン変換酵素2)受容体が関連していると解明されたのでご紹介します。・ACE2受容体ACE2は、主に血圧調整に関与している酵素であり、その受容体は肺や気管支、心臓、消化器等多くの組織に存在しています。本報告では、このACE2受容体が精巣にも存在していることがわかりました。