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今回ご紹介する論文は多核についてです。多核とは、通常割球の中に1つあるはずの核が2つ以上みられるもののことを指します。主な原因は染色体の不分離によるものとされており、染色体数への異常が考えられます。ちなみに今回ご紹介させていただく2細胞期多核と受精後の多核との違いは2細胞期多核の方は正常な受精を経ていますが、受精後の多核は異常受精によるものです。今回の論文では異数性率、胚発生能、妊娠結果に多核がどのように影響しているかを検討しています。本論文では、296周期でタイムラプ
膣内のマイクロバイオームは、女性において極めて重要な生物学的役割を果たしています妊娠していない時のマイクロバイオームは、非常に動的で、月経周期等の影響を受けることが明らかになっており、妊娠時は多様性が低く安定性が高くなりますこれらは、エストロゲン量によって変化しています。また、膣から上の生殖管のマイクロバイオームにおける病原体の変化、感染性微生物の血液感染による局所的な微生物の変化等が不妊症の原因の一つではないかと指摘されていますよって、今回ご紹介する論文では、不妊症女性の膣内マイクロバ
ビタミンDと子宮筋腫についての論文を読んだのでご紹介します。子宮筋腫とは・・・子宮筋腫とは、子宮筋層にできる良性の腫瘍で、月経痛や骨盤痛などを引き起こします。がんのように周囲の組織を破壊しながら急激に大きくなったり、多部位に転移したりすることはありませんが、発症すると徐々に大きくなっていきます。子宮筋腫は女性ホルモンの影響を受けて大きくなることが知られており、30歳代以降の女性であれば30~40%で見られるありふれた病気です。しかし、大きくなると日常生活に支障をきたすような強い症状が
正倍数体胚盤胞の形態学的等級付けが着床率と継続的な妊娠率に影響するという論文を読んだのでご紹介します胚盤胞の評価胚盤胞の評価は、拡張度、ICM(内細胞塊)、TE(栄養外胚葉)で決まります今回の研究で移植された胚盤胞は、TE生検前に胚盤胞の等級付けを行い、4群に分類されました。胚盤胞の状態により、5日目または6日目に生検を行い、正倍数胚のみを研究に使用しました。今回の研究での評価項目は、着床率、妊娠継続率、流産率でした。継続妊娠は、着床率に胎嚢の総数を移植した胚の数で割
融解後の胚盤胞のグレードを再評価し、それが出生率と関連があるのか調べた論文を読んだので紹介しますこの研究では、4613名の単一正倍数胚盤胞の移植、7750周期を対象としました。また、グループ1:凍結前、融解後の胚盤胞のグレードが同じグループ2:融解後の胚盤胞が凍結前と比較してグレードが高いグループ3:融解後の胚盤胞が凍結前と比較してグレードが低いグループ4:融解後に再拡張せずグレードの再評価ができなかった以上、4群を比較検討しました。年齢、AMHについて、グル
当院の患者様アンケートを元に集計しました。今回ご協力いただいたのは、妊娠し産科へ転院した243名の患者さんです。年齢は以下のようになりました。年齢別に妊娠に至るまでに何ヶ月かかったのか以下に示します。29歳以下では6ヶ月以下、30~39歳では1年以下、40~43歳では2年以下が最多となりました。年齢が上がるにつれて妊娠までにかかる期間は徐々に伸びています。『もしかして私たち夫婦は不妊なのかも?』と少しでも不安に思ったらまずは検査だけでも早めに受けることをお勧めします
44歳以上の着床前診断についての論文を紹介したいと思います。2013年4月から2016年1月に体外受精を行った44歳から47歳までの137人、150周期を対象に胚盤胞で着床前診断を行いました。150周期中102周期(68.0%)で胚盤胞まで到達し、21周期(14.0%)で染色体正常胚盤胞が認められました。全胚盤胞数は187個で染色体正常胚は22個(11.8%)でした。その後21個の染色体正常胚を凍結融解胚盤胞移植し、13例が妊娠に至り(61.9%)、12例が分娩となりました。1
ヨーロッパ生殖医学会で、『透明帯の1/4をレーザーアシステッドハッチングで除去した胚盤胞は、凍結融解胚移植時の着床率と妊娠率が向上する』という興味深い演題があったのでご紹介します。胚の凍結は、透明帯の硬化が引き起こされ、胚の着床障害が起こる可能性があります。そのため、凍結融解胚移植時には透明帯を薄くする、または一部除去するレーザーアシステッドハッチングを行う施設が多くあります。また、胚盤胞を凍結する際に胚盤胞腔液と凍結液の置換が十分に行われず着床率・妊娠率を低下させる可能性が指摘されて
子宮内膜が十分な厚さにならず、凍結融解胚移植がキャンセルになる方や複数回胚移植をしても妊娠しない方がいます。そこで注目されたのがPRP療法とPFC-FD療法です。PRP(PlateletRichPlasma:多血小板血漿)療法とは、患者様自身の血液に含まれる細胞の成長を促す物質や免疫に関わる成長因子による修復機能を促進して治癒を目指す再生医療です。不妊治療の分野でも、ご自身の血液から作製したPRPを利用することで、子宮内膜を厚くし、受精卵を着床しやすくすることを目指す療法が既に実施されて
DFI(DNAfragmentationindex)検査は精子DNAが断片化した精子の割合を測定する検査です。通常の精液検査では分からない“精子の質”を調べることができます精子DNA断片化の割合が多くなる(30%以上)と、胚の発育不良、着床率の低下、流産率の上昇に関連すると報告がありますまた、不妊治療をせず、自然妊娠したカップルにDFI検査をしたところ、全例でDFIが20%未満であったとの報告、人工授精(AIH)を行ったカップルでDFI10%未満と10%以上で比較すると、10%未
一卵性双生児の割合は自然妊娠で0.4~0.6%*¹、体外受精では1.53%*²と言われており、体外受精で高くなることが知られています体外受精で一卵性双生児の割合が増える要因として、〇外因性のゴナドトロピンによる排卵誘発〇培養時間の長さ〇AH(アシステッドハッチング)〇顕微授精か体外受精の違い〇凍結融解操作などが挙げられています今回紹介する論文では、2000年から2007年までの8年間分のデータをさかのぼり、どの要因が体外受精による一卵性双生児妊娠を増加させてしまう
DHA(ドコサヘキサエン酸)、EPA(エイコサペンタエン酸)に代表されるオメガ3脂肪酸は、細胞膜の流動性を高めることや、炎症抑制作用があることが知られています。(DHA欠乏が精子の細胞膜構成に及ぼす影響についての論文を過去に紹介しています→こちら)また、DHAやEPAを豊富に含む地中海式食生活が受精卵の発育に与える効果についても過去に紹介しました→こちら(この論文はDHA、EPA等を含むサプリメント投与による研究となっています)今回は、オメガ3脂肪酸が妊娠中および出産後の女性と産ま
妊娠中の高濃度のアルコール摂取は、胎児の健康発達に重大な影響を与えることはご存じの事かと思います。そして、そのなかでも胎児期に高濃度のアルコール曝露によって顔の発達にも影響があることが以前より知られています今回紹介する論文は、妊娠中の低~中濃度アルコールの摂取によって新生児の顔にも影響があるかAIを用いて検討した報告です。対象は9歳児3149人と13歳児2477人、母親7409人です。アルコールの測定は週1杯未満、週1-3杯、週4-6杯、1日1杯、1日2-3杯、1日3杯