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こうなってしまった以上、もう1台カメラを設置する案を中止する事も頭に過りはしたが、狩野弁護士の指示はまた別の話だ。とは言え、2台カメラがあれば事足りるこの2つの部屋で一体どこにカメラを仕掛ければいい…「梅木さんー!」「はい?」「カメラのレンズだけだったら、ほんの数ミリですから天井どこでもいけますよー!」「あ、はい…そうですね。でも穴を開けなきゃダメでしょう?」「余程視力のいい人でもわかりゃしませんよー!それに終わったらちょこちょっとボードの裏からパテ埋めしますからー見た目に
「毎度お世話になります…梅木電業です」「どうぞ、お入り下さい…」通用口に備え付けられているインターフォン越しに私とYくん、内田さんは、各々脚立や工具箱、配線を脇に抱えて北條病院の前にいる。今夜は監視カメラを設置する日だ。「こんばんは。お待ちしておりました…」通用口のドアロックを解除して顔を覗かせた北條氏も、前回とは違っていて、柔らかい笑みを浮かべている。私達は軽く会釈した後、院内へと揃って入っていった。「また物と金が無くなったようです」「え!?本当ですか?」
「ほぅ…御社の技術はそんなに進んでいるのですか…」行きがかり上嘘をついてしまったとはいえ、何だか心が痛い。しかし、狩野弁護士からの特命を果たすにはそれしかなかった事も確かだ。「はい。そうしておけば万にひとつ映像を盗まれる心配も無いですから」川北氏は満足そうな顔で「うん、うん」と2度、頷いた。「ちなみに次の日曜日、カメラを回収されたとして、私達に映像を頂けるのはいつ頃になるのでしょうか?」「映像をお渡しするだけであれば…そうですね。最短で火曜日にはお持ち出来ると思いま
「マズい!誰か来たぞ!!」「!!」今まで静まり返っていた廊下に靴の音が響いてくる。私とYくんは、慌てて部屋の中で右往左往してしまう。内田氏だけが何事も無かったように相変わらず半身天井の中に突っ込んだまま作業を続けていた。急にドアを開放して誰が来たのか顔を覗かせるのはあまりに不自然だ。音が聞こえる様に挟んでおいた靴をすぐに取った私はドアを再び閉めた。いっそドアの鍵を閉めてしまおうかとも考えたが、それはそれで不自然極まりない。今出来る事は、なるだけ怪しまれない様に私もYくんも