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都内でバスに乗ったときのことです。前日から体調が優れず、時折、咳が出ていました。マスクはしていたものの、咳をするたび、周囲の方に申し訳ない気持ちでいたのですが、隣席のご高齢の方が「よかったらどうぞ」と小さな袋を手渡してくださったのです。「ありがとうございます」とお伝えすると、「懐かしいでしょ。昔と比べてラムネが少し大きくなっているの。これはストロベリーの味。車内で食べるのはいけないから、降りてから食べてね」と優しいお声と笑顔で接してくださいました。その後も袋に描
過日、ふと見ていたテレビ番組にて、地下足袋工場で足袋型のスニーカー、ブーツなどが作られているところが紹介されていました。フランスのあるブランドのデザイナーは、1980年代、日本へ旅行した折に足袋を見たことがきっかけとなり、「TABI」と呼ばれるブーツを誕生させました。その後、ブーツ以外にもローファー、バレエシューズ、スニーカーなど様々なTABIシリーズが生み出されています。そこで、本日は足袋の歴史について触れたいと思います。現在の足袋と異なり、昔は皮(革)
今年のイースターは4月20日でしたが、なぜイースターには卵が欠かせないのでしょうか。卵は「生命の始まり」と「復活」の象徴とされ、キリストの復活につながる、ということがその理由のようです。日本において鶏が最初に文献に記されたのは、古事記からといわれています。天照大神が天の岩屋戸に隠れてしまったとき、八百万(やおよろず)神が常世長鳴鳥(とこよのながなきどり)を鳴かせ、天鈿女命(あめのうずめのみこと)に舞わせることで、天照大神を呼び出しました。鶏は太陽を呼び出すもの
前回のブログでご紹介いたしましたが、現在は春の土用期間です。夏の土用といえば、丑の日にうなぎなどの「う」のつくもの、あるいは黒色のものを食べることが有名ですが、春の土用は丑ではなくて戌の日にちなみ、「い」のつくもの、あるいは白色のものを食べると良いとされています。ここでいう丑の日、戌の日というのは、子(ね)・丑(うし)・寅(とら)・卯(う)辰(たつ)・巳(み)・午(うま)・未(ひつじ)・申(さる)・酉(とり)・戌(いぬ)・亥(い)という順で、十二支を日にあ
年に4回訪れる土用ですが、土用とは立春・立夏・立秋・立冬の直前18日間を指します。季節によって「春土用」「夏土用」「秋土用」「冬土用」と呼ばれます。今年の春の土用の期間は、本日4月17日に始まり、5月4日までです。土が旺(さかん)になる、用事(働き)をするということから、土用ということばは、土旺用事(どおうようじ)の略です。つまり、この時期は土が最も働く期間ということなのです。土用の期間中は、土公神(どくしん・どこうしん)といわれる、土を司る神様の支配する時
2月14日のバレンタインデー、3月14日のホワイトデーに続き、4月14日はオンレジデーといって、さらに愛を深める日として制定されていることを知りました。オレンジは白い花を咲かせますが、花ことばには「純真」「愛らしさ」「花嫁の喜び」などがあります。また、オレンジの木は花と実を同時につけることからヨーロッパでは愛と豊穣のシンボルともいわれているそうです。海外のブランドでオレンジといえば、箱や紙袋の色に代表される、エルメスが思い浮かぶ方もいらっしゃることでしょう。
ある駅での前方の景色、桜の木の下でたくさんのカルガモを目にしました。カルガモは、日本全国の河川や湖沼に生息するカモの一種で日本では南日本に多いそうです。また繁殖期は4月から7月で、一羽で最大12から14個ほどの卵を産み、水辺や草原の地上に巣をつくりますが、日本のカモ類のうち低地で夏にみられるのはカルガモだけなので「ナツガモ」とも呼ばれています。また「カミ」と「カモ」は同源であることから鴨は縁起がよいともされてきました。さて、「カモ」という音からすぐに思い浮か
卯月八日(うづきようか)とは、旧暦4月8日に行われる民間行事のことで、民族学では4月8日の行事の総称として用いられます。新暦では一月遅れて、5月8日に行う地域も多いようです。4月8日は、寺院ではお釈迦様の降誕日として灌仏会(かんぶつえ)が行われる日ですが、民間においては灌仏会とは関係のない行事も多くあるのです。(灌仏会については2024年4月8日のブログにご紹介しています)この日は、野山へ出かけて飲食をする遊び日とし、山登りの日と定めているところは全国的にみ
ある方を、あるお祝いとして、あるレストランにお招きいたしました。伺ったお店では時間制限があり、「そろそろお時間となりますため、お会計をお願いしてもよろしいですか」と、店員の方が席までいらしたときのことです。早めに会計を済ませるべきだったと反省しつつ、店員の方にクレジットカードをお渡しした直後に相手の方は、お支払いになる気持ちを、あるかたちで伝えてくださいました。その伝え方が素晴らしかったのです。ハンドバッグの中から、白封筒を出されたのですが、その間(ま)と表情、さらに
先週、小笠原氏発祥の地である南アルプス市での礼法講座が始まる前に、日頃からお世話になっている方々と共に、約4400平方メートル(約1300坪)の敷地を所有する安藤家住宅に伺いました。安藤家は江戸時代に西南湖村の名主を務めた旧家で、こちらの家屋や庭園は現在まで一度も火災に合うことなく往時のまま保存され、昭和51年5月20日には国の重要文化財に指定されています。安藤家住宅は宝永5年(1708)、江戸中期に建てられたのですが、前年には宝永の大地震が起こり、富士山が噴
今年は3月25日から29日までの5日間は、七十二候の第十一候である「桜始開(さくらはじめてひらく)」の期間です。二十四節気をさらに3つに分けて七十二候としますが、これは中国から伝わったものです。中国と日本とでは気候が必ずしも一致しないこと、また動物や植物等にも違いがあることから、江戸時代には日本独自の本朝七十二候がつくられました。「桜始開」は読んで字のごとく、桜の花が咲き始める頃を表しています。都内では靖国神社のソメイヨシノが6輪咲き、昨年よりも5日早い
ホスピタリティは、おもてなしと訳されることがあります。ホスピタリティとおもてなし、このふたつのことばが全く同じ意味を持つとはいえない、と思いつつ、もてなしについて少しだけ触れてみたいと存じます。「もてなし」とは、「相手をだいじに扱う」「面倒をみる」「大切に待遇する、あるいはそうした人に対してのふるまい方」を表すとされ、そこから転じて饗応、馳走(ちそう)などを意味するようになりました。いずれにしても、日本では古来より、同じ火で調理した物を共に食すことによって互い
春のお彼岸は、春分の日を中日として、前後3日間、全7日間を示します。したがって本日3月17日は春の彼岸入りです。お彼岸は、先祖供養の期間ですので、お墓の掃除やお墓参りをすることが基本ではありますが、遠方あるいはお仕事やご体調等により、お墓に行くことが難しい方もいらっしゃることでしょう。そのようなとき、手をあわせてこころの中で故人や先祖を偲ぶなど、何よりも先祖への感謝の念を忘れないということが最も大切であると思います。また、お彼岸は先祖供養だけでなく、己を見
毎年3月は小笠原流礼法を取り入れてくださっている学校の卒業式に伺いますが、11日で今年度出席予定のすべての卒業式を終えました。在校生の送辞、卒業生の答辞では、代表生徒のこころからのことばを伺うたびに感動いたしますが、もうひとつ、何度拝見しても胸が熱くなる場面がございます。それは、卒業生が後方にお座りのご家族、在校生に向けて「ありがとうございます」と感謝の意を伝えるときです。心底から発することばは、たったひとことであっても、こころに響くものがあるのです。親にとって、
あるフレンチレストランにおいて、前菜のお料理にスイートアリッサムが入っていました。スイートアリッサムの花期は、2月から6月までと9月から12月まで、真冬と真夏を除き、一年中咲き続けます。見た目が繊細で何ともかわいらしいのですが、私の好きな「優美」を花ことばの一つに持っています。優美とは、品格があり、美しいことやそのさまを表します。素敵な装いで身だしなみを整えても、こころの品格がなければ、真の美しさは生まれないと思っています。改まった場だけで
都内で電車に乗っていたときのことです。ある駅で、お母様と小学校低学年とお見受けする双子の姉妹が乗車なさいました。車内は半分ほど空席があったのですが、親子は席に座ることなく、ガラス窓から外の景色をご覧になり、楽しそうなお声で様々な会話が聞こえてきました。たとえば、「次の駅の御茶ノ水、なぜその名前になったのかというと昔、お殿様がお茶を飲むときにその駅の場所のお水を使ったからなんですって」というお母様の説明に、お子様方は「そうなんだ、おもしろいね」と頷きながら答え、親
本日3月3日は、上巳の節供の日です。この日、人形(ひとがた)に息を吹きかける、あるいは身体にあてることによって心身の穢れを移し、水辺に流す風習が伝わっています。貴族社会においては、ひいな遊びと呼ばれる、紙などで作成したお人形で遊ぶこと、また人形(ひとがた)の風習とも結びついて、雛人形ができたともいわれます。人形(ひとがた)は、形代(かたしろ)とも呼ばれ、その多くが紙製で、これに罪・けがれ・災などを移して祓えをし、川や海に流します。江戸時代になると、ひな人形を
京都在住の友人は、会うたびに私の家族が元気に過ごしているかと尋ねることから会話が始まり、京都を訪れると常に歓待してくださいます。今までにも、何度か連れて行ってくださった人気の中華料理店に久しぶりにご一緒したのですが、いただいたお料理は全て素晴らしく、季節限定の三宝柑を使用したデザートは繊細で香り高く、忘れられない一品となりました。何より、雑談の中で息子の仕事に対する姿勢を少しだけお話した折、小さな声で「感動した」ということばとともに、温かな表情で目頭をハン
過日、地方でのお教室に通っている方から、次回のお稽古をお仕事の都合で欠席するご連絡をメールで頂戴したときのことです。「無躾は目に立たぬかは躾とて目に立つならばそれも無躾」という小笠原家に伝わる教え歌について、「これからの人生において私の教訓ともいえる大切なことばとなりました」とのメッセージをくださいました。まだ、礼法を学び始めてから半年を過ぎた頃にもかかわらず、ご自身のことばでおこころを伝えてくださったことに感激いたしましたが、それだけではありませ
明日は、バレンタインデーです。過去のブログでもご紹介していますが、キリスト教における聖人ウァレンティヌスValentinus(英語でバレンタインと読む)の祝日です。3世紀後半に殉教した同名の聖人(祝日も同じ)が2人いた、さらに事跡不詳の別の修道士がいたという説もあります。その後、14世紀頃から愛の教訓と感謝を書き記したカードを交換していたことが20世紀になると男女が愛を告白して贈り物をする習慣へと変化したようです。過日のお稽古の折、高校生のお子さんがいらっ
明日2月11日は、国民の祝日である、建国記念日です。建国をしのび、国を愛する心を養う日として、1966年に定められました。この日は明治6年以降、現在の「国民の祝日に関する法律」が1948年に制定されるまで、紀元節として祝われていました。紀元節とは、1872年(明治5)12月、明治政府によって神武天皇即位の日として定められた国家の祝日です。日本書紀に初代天皇とされる神武天皇が「辛酉(しんゆう)年春正月庚辰朔」に橿原(かしはら)に即位したとあることに基づいてい
上野の国立西洋美術館にて開催されている、企画展「モネ睡蓮のとき」に行ってまいりました。昨年4月、出張の折に大阪中之島美術館にて「モネ連作の情景」を拝見していたため、このたびの企画展も必ず訪れたいと思っておりました。モネといえば、ジヴェルニーの自宅の庭に造成された睡蓮の池、さらには周囲の自然を反映している水面です。50歳のとき、モネは借りていたジヴェルニーの土地と家を買い取り、庭を整えたそうです。庭には、日本風の太鼓橋や柳などもあり、自然があふれ、
本日2月3日は節分の日とお思いの方が少なくないかもしれません。それもそのはず、今年の節分は1897年以来、なんと124年ぶりに2月2日だったからです。したがって、今年の立春は2月3日です。1年365日ですが、地球が太陽の周りを公転する周期は365日よりわずかに長く、立春と定められている位置に到達する時刻は毎年少しずつずれていきます。四年に一度、うるう年を設けることによってそのずれを調整してはいるものの、完全にずれを無くすことはできず、今年の立春は例年よりも1日
1月末日は、晦日正月(みそかしょうがつ)または晦日節(みそかぜち)と呼ばれています。毎月、最終日を晦日といいますが、特に1月はお正月の終わりとして晦日正月と呼ばれます。中部地方などでは1月末、新たにお餅をついて神様にお供えをすることがあったり、松の内に年始の挨拶に行けなかった親類などを訪問することもあるようです。また、この日にお蕎麦を食べるところもある、と聞いたことがあります。今年は2月2日が節分ですので、あと3日で立春です。旧暦1月1日を旧正月
ある靴店でのことです。気に入ったデザインの靴があったのですが、訪れた店舗には私の足のサイズがありませんでした。担当くださった方から「他店に在庫があるようなので、取り寄せが可能かどうかを確認し、わかりましたらすぐにお電話差し上げます」と伺い、お店を後にしました。その後、取り寄せが可能である旨のご連絡をいただいた折、仕事中で電話に出られず、留守番電話にメッセージを残してくださったので、翌日にお礼のご連絡をいたしました。そのさい、電話口で対応くださった方のおことばが素晴ら
出張中のことです。電車の乗り換えで、長い階段を上らなければならず、重さのあるスーツケースを一段ずつ持ち上げていました。そのためにかなり時間がかかってしまい、その間にたくさんの人が私の横を通り過ぎていきました。混雑している中で周囲の方々に迷惑をかけてしまって申し訳ないと思いながら、ようやく階段の三分の一ほどを上がったあたりで、数段前にいらした外国人男性が私のほうに振り返り駆け寄りながら「お手伝いしましょうか」と声をかけてくださったのです。しかも、スーツケースを
二十四節気の大寒(だいかん)、今年は1月20日です。文字が示す通り、一年で最も寒い時期です。大寒の一つ前の二十四節気である小寒から大寒までの15日間、大寒から次の二十四節気である立春までの15日間、あわせて30日間を寒の内と呼びます。この期間に汲む水を「寒の水」といい、寒の水で作るお酒、お味噌、お醤油などは、雑菌が繁殖しにくく、美味しくなるともいわれます。また、寒の時期に採れる野菜、たとえば春菊は葉が柔らかくて風味豊かで、鰤など美味しいお魚も多くあり
1月16日は、「い(1)い(1)ろ(6)」からいい炉、という語呂合わせで囲炉裏(いろり)の日、とされています。農民にとって、囲炉裏は生活空間の中心に設置された大切な場所でした。暖をとるだけでなく、照明の役割があり、煮炊きや乾燥としての役割も果たす場所です。いろりやゆるりなどと呼ばれるのは、「居(い)る」が語源といわれています。また、土間から見て奥は家の主人が座る横座、そこから向かって右は主婦が座る嬶座(かかざ)、嬶座の向かいが客座などという呼称があり
お仕事や学校も始まり、そろそろお正月の雰囲気も薄らいでくる頃かもしれません。関東等では松の内も過ぎましたので、明後日11日に鏡開きを迎えると、お正月行事も終盤に差し掛かります。関西等は15日(14日)が松の内ですので、鏡開きは15日(14日)または20日とする場合が多いようです。歳神様にお供えしていた鏡餅をさげ、開き(実際は木槌等で割る)、お雑煮やお汁粉等でいただくことによって無病息災を願います。鏡餅に歳神様が宿っていらしたと考えることから、そのお餅
毎年、仕事始めの日に日枝神社にて新年の御祈祷をお願いしています。言霊の力を感じながら、神職の方による祝詞奏上をスタッフとともに清々しい空間にて拝聴することは、新年に欠かすことのできない大切な時間です。さて、お正月は松の内という期間があります。関東では1月1日から7日まで、関西では1月1日から15日まで、とされることが多いようです。松の内とは、お正月飾りをしている期間内のことで、松は歳神様の依代(よりしろ)と考えられることから、飾りのある間はお正月の歳