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「あの…店長、コレ食べてみてもらえますか?」「ん?デニッシュ・オ・フロマージュか…」ジェジュンが差し出したのは、丸く焼いたデニッシュ生地の真ん中にたっぷりチーズが詰まったパン。フランスの定番のパンだ。サクリと歯ごたえのある生地、もっちりと出てくる濃厚なチーズの風合い、軽くかかった粉砂糖が良いアクセントだ。だがチーズが違う。香りが強くてクリーミーなのに後味がすっきりして…これは…?「ヤギのチーズで作ってみました」「ヤギのチーズで?」店長はパンを一口かぶると、スッと目を
「本当にありがとうございました!助かりました!」「いいって事よ。そんなに荷物もなかったし。んじゃトラック返してくるわ」シンドンさんがトラックを借りて引っ越しを手伝ってくれた。新居は雑居ビルの屋根部屋で、夏は暑く冬は寒い。だが部屋の前に縁台があり、日当たりもいい。何より高台にあるため街が一望でき、見晴らしが素晴らしかった。ヒチョル先生もシンドンさんも、本当に良くしてくれる。チャンミン先生が言った「ジェジュン、あなたは一人ではありませんよ」その言葉が身に染みる。ずっとソウルで
ソウルから電車に乗って一時間、ジェジュンは母が住んでいる街へやって来た。ビルが立ち並ぶソウルとは違い、建物は低く小さな店が密集し、子供の姿が見える。そこから乗り換えてさらに数十分、今度は緑が広がる長閑な田舎町になって来た。ジェジュンが山にいる間、メールの返事が無い事に母はとても心配していた。だが、ジェジュンがメールの返事をしない事はよくあったので、返事が欲しいとだけ書かれていた。自分の事で精一杯だったとはいえ、普段からもっと優しくしてあげるべきだったと反省した。父はジェジュン
「ジェジュン、食事はしましたか?」ジェジュンは首を横に振った。「そうだろうと思いました。どうせ何もないでしょう。買い物に行ってきますから、あなたは部屋を整えていなさい」チャンミンが買い物に行き、ジェジュンはのろのろと部屋を片付けた。窓を開け空気を入れ替え、掃除機をかけて部屋を整えると、少し気持ちが浮上した。やる事を与えられたから、ウジウジと考え込まずに済んだ。その間に、チャンミンが栄養満点のお粥を作ってくれた。「さぁまずは腹ごしらえ。お腹がすいている時に考え事をして
「なるほど…。そうだよなぁ、生きていかなきゃだよなぁ。田舎のおふくろさんには頼れないもんなぁ。だったら、分かるよな…」ミョンテはソファにジェジュンを押し倒し、無理やりキスしてきた。「や、やめてくださいっ!」ジェジュンがもがくと、ミョンテにガツンと殴られた。首元を押さえられたまま、下卑た笑いを浮かべながらミョンテが囁く。「いいじゃねぇか初めてじゃあるまいし。俺の言う事聞けば会社には置いてやるし、給料も払うぞ」無遠慮にミョンテの手が体を這い回ると、ぞっとして鳥肌が立っ
「ユノ、今日はありがとな!ジェジュンにもよろしく」「あぁ。じゃあな」ユチョンに手を振り返し、家路につく。夕方の山道は昼より冷えていて、空気が薄い。ユノは気づけば歩幅を広げていた。いつもなら一緒に昼食を食べ、3時にはジェジュンとお茶の時間を過ごし、くだらない話をして笑って。だが今日はその時間がぽっかり抜け落ちている。ユノは自分でも驚くほど“早く帰りたい”と思っていた。家が見えてくる。煙突からの煙は無く、ヤギたちは小屋に戻っているがドアが開いている。いつもなら絶対に閉める
金色の鍵を握ると、ジェジュンはそっと部屋を出た。玄関のドアを開けると、テプンがゆっくりついてきた。ジェジュンとテプンは、音もなく夜に溶け込むように家を出た。月明かりがあたりを照らし、懐中電灯もいらないぐらいだ。虫の声が遠くで響き、影が山の輪郭を浮かび上がらせているジェジュンは温室の前で立ち止まった。金色の鍵は月光を受けて、ひと際冷たく光り、ジェジュンはそっと鍵穴へ差し込んだ。導かれるように鍵は入り、ガチャリと音を立てて鍵が開いた。キィ…。小さな音を立ててドアが開くと
今日は村に下りる日だったが、少し寝坊してしまった。昨日熱い夜を過ごしたのだから仕方がない。それでもユノとジェジュンは、いつものようにチーズや野菜をたんまり持って山を下りた。チーズや野菜を店に卸し、村人たちと挨拶がてら話をしていると、ユノが言った。「工具と農機を見たいから行ってくる」「うん。気を付けて」ジェジュンも食材や食器を見て回りながら、村をぶらぶらと歩いていた。ふと、雑貨屋に古いデジカメがあるのが目についた。スマホを持たない生活をして数か月、スマホがあればあの山の
次の日ミランが起きると、昨日の嵐がウソのように空は晴れ渡り、いつものように鳥が騒がしくさえずっていた。寝室のドアを開けるとユノたちの姿はなく、犬たちも外にいて静まり返っていた。ミランは、ユノの書斎のドアを見つめた。そっと音を立てないようにドアを開けると、ベッドで二人が抱き合って眠っていた。昨日紙のように白い顔でずぶぬれだったジェジュンも、今は顔色が戻り安心したようにユノの胸で眠っている。ミランは音もなく、そっと扉を閉めた。外に出て、胸いっぱいに新鮮な空気を吸い込む。見渡す限りの
テプンの後ろをついていき、大きな岩陰を見つけた。遠くの方で雷の音が聞こえ、すぐさま岩陰に身をひそめる。山で雷に遭遇したら木の下にいてはならない、そのまま感電する恐れがあるからだ。雨宿りが出来るほどの岩陰ではない為、ジェジュンはテプンだけは濡れないよう押し込んだ。テプンと身を引締めながら、さっき拾った社員証を見つめた。ゴウゴウと風が唸り出し、木の枝がしなる。下から巻き上がるような風は湿気を含み、濡れた土の匂いがした。鉛色の空、近くなってきた雷鳴に不安が募る。社員証の中の自分が、
昼時になってもジェジュンから声がかからない。ユノは不思議に思って、自分から家に戻って来た。屋根の下の長椅子で、ミランがウトウトしていた。「おい、ジェジュンは?」「…へ?…いや、見てないけど…ふわぁぁ~…」キッチンには人影はなく、昼食を作っている様子もない。ユノは納屋やヤギの小屋、家の周りをぐるりと走ってみるが、ジェジュンの姿はない。…おかしい。ジェジュンが何も言わず家を空ける事は、今まで一度もなかった。それにどこかへ行くとしても、必ず昼食を作ってから行くはず、ジェジ
ユノが畑へ行き、朝食の片づけをしていると、ミランがキッチンにやって来た。ミランは毎日、山の仕事も家事も何もせず、ただ出されたものを食べ、ログハウスの前の長椅子に座って本を読んだり、ぼーっと景色を見たりしている。だが今日は珍しくジェジュンを手伝いに来た。「私も居候だし…手伝うわ」「あ…じゃあ、洗い物お願いできますか?」洗い物をしながらミランがジェジュンに話しかける。「ねぇジェジュン君、あなたユノに尽くし過ぎじゃない?」「え?」「朝から晩まで働いて、料理して掃除して動物の
ジェジュンはこの家唯一の居場所であるキッチンに籠り、夕食の支度をはじめていた。やっぱ…3人分作ったほうがいいよね…。すると、書斎からユノが出て来た。「ジェジュン、すまん。ミランがしばらくいるみたいだから、書斎で一緒に寝よう。俺がソファで寝るよ」「ダ、ダメだよ。僕がソファで…」「気が済んだら帰ると思う。それまで…すまんな」「ううん…僕は別に…。それより、ミランさんは何の話を…?」ユノは何も言わず、畑に行ってしまった。チラリと書斎を覗くと、散らかっていた本やノートは片づけられ
その日もとてもいい天気だった。朝の仕事を終え、ジェジュンが作ったランチを食べ終わった時だった。ユノが畑に向かおうとした時、外でテプンとフィーがやけに吠えている。誰か来たのかな?と思った時、玄関のドアが開いた。見れば30代の綺麗な女が立っている。白い薄手のコートに、シフォンブラウスに細身のパンツ。ヒールがあるショートブーツを履き、髪は緩く巻いて束ね、上品なアクセサリーやネイルも完璧な、判で押したようなキャリアウーマンだ。「ユノ、久しぶりね」「ミラン…。なんでここに?」
今日は月一回の村に降りる日。ジェジュンは朝からウキウキしていた。「ジェジュン、足大丈夫か?やっぱり今日はやめておいた方が…」「大丈夫!ずっと楽しみにしてたんだから!」「楽しみにって…ただの田舎の村だぞ」「いーの!」ユノは月一村に行って、熟成させておいたホールチーズや採れたての野菜などを売りに行く。ユノは客商売が苦手なので、いつも店に買い取ってもらっている。ログハウスの裏にある熟成庫には、たくさんのチーズが熟成されており、半年から1年熟成させている。ユノはヤギの乳でチーズ
満月の月明かりが、滑らかにジェジュンの白い肌を照らしている。零れそうな大きな目には涙が浮かび、キラキラと夜空の星の様に輝いている。「ジェジュン、綺麗だ…」ユノはジェジュンの頬に手を当てると、親指で優しく頬を撫でた。マメだらけの武骨な手だが、その手からユノの優しさが伝わる。見つめ合いやっと気持ちを伝えあった時、それは性別を超え、本当に大切なものを見つけた気がした。心の中に燃え上がるこの感情は「恋」であると、二人とも実感した。ユノの顔が近づいてくる。いつも盗み見る様に見つ
まだ脚を引きずるが、杖なしで歩けるようになってきた。ユノは朝早くから畑仕事、ジェジュンは炊事・洗濯や掃除などの家事、動物たちのえさやりや小屋の掃除、花壇の草むしりなど、いつの間にか仕事を分担していた。そのおかげでユノは長時間畑と向き合うことが出来て、作業がストレスなく進んでいた。「ユノさぁ~ん。休憩しませんか?」朝10時と午後3時にいつも行われる「お茶の時間」ジェジュンがポットに入れた紅茶を注ぐと、籠には今朝焼いたスコーンに、チーズやジャムが。ユノが作った丸太の椅子に二人で座
ユノの家に来て一か月半、ようやくギプスが外れた。チャンミンが丁寧にギプスを切ってはずす。「あ~やっととれた。痒かったんだぁ」「まだサポーターは外さない事、松葉杖も使う事、リハビリも頑張って」「はい!」「じゃあ一緒にリハビリ頑張ってみましょう。まずは足首をゆっくり回して」「はい…イテテ…」「痛みがない程度にゆっくりと…。次は上下、左右も…」ユノは畑仕事にも行かないで、ジェジュンの様子を座って見守っている。「無理すんなよ」「うん…ちょっと痛いけど、平気」「次は床に置
ユノさんの家でお世話になって2週間が過ぎた。痛みはほぼなくなったが、完治するには2か月ほどかかるようだ。畑仕事は無理なので、家事やハーブの世話などをやるようになった。ユノさんは料理をするが、掃除はあまり上手ではないようだ。僕は溜まったキッチンの汚れと格闘しながら、賞味期限切れの調味料を処分していた。すると棚の奥から、あるノートを見つけた。古いノートは角がすり減り、ページには小さな油染みがあった。細やかに丁寧に書かれたレシピには愛情が詰まっていて、誰かが長く使っていた温度が指先に
皆様!また今年もこの日がやってきましたね♡ユンジェHappyDay!(*'ω'*)ワタシも誕生日おめでとう!人生5回目のぞろ目です^^今年も皆様と一緒に、ユンジェDayを祝えることを嬉しく思っています今年はハッピーセットの販売は叶いませんでしたが、昨日急いで一本読み切りを書きました!白檀香番外編「二十歳の君へ」それでは、ちょっと長いですがどうぞ!「ジェジュン先生、お疲れさまです。素晴らしい手術でした!見学していた教授の皆様もすごく感動してましたよ」「
「はい、抜糸すみましたよ。傷も綺麗です」「ありがとうございます」チャンミンが来て頭の傷の抜糸をしてくれ、松葉づえも持って来てくれた。これで移動が楽になる。「先生、もう頭洗ってもいいですか?」「えぇ。風呂も入っていいですよ。ギプスは濡らさないように。それで?ユノは?」「今日は街まで行くと。朝早く出かけました。先生、紅茶でいいですか?」「えぇ。頂きます」ここから街に行くには、山を下りて村に行き、そこから一日2本しかない電車に乗らなければならない。松葉杖をつきながら紅茶を
ジェジュンは、鳥の声で目を覚ました。窓の向こうから、かすかに土と草の匂いが流れ込んでくる。カーテンの隙間から差し込む朝日は、くっきりと影を作り「朝」を知らせる。熱は下がったようで、自分で起き上がることが出来た。頭がぼーっとするがベッドから起き上がり、そっとレースのカーテンをめくる。降り注ぐ朝陽、風に揺れる緑、庭の向こうに広がる山の稜線。ログハウスの周りには、スミレやニリンソウが、朝露をまとって小さく揺れていた。壁に手をつき外に出ると、ひんやりした空気が肌を撫でる。深く息を
―――柔らかな朝の陽ざしが、まだ眠る彼のまつげに触れた。彼の滑らかな肌に朝日が反射して、まるで透き通るように白かった。ベッドに横たわる彼が、まるで眠り姫のようだと思った―――鳥のさえずりが聞こえる。目を開けると、木で組まれた天井が見えた。ほのかなウッディの香、白いコットンのシーツ。ジェジュンは、窓から差し込む光に目を覚ました。知らない場所。知らない匂い。胸の奥がざわつくのに、なぜか怖くはなかった。ぼんやりとした頭は、まだ夢の中のようで。ゆ
舞台挨拶を観に行ってきました。舞台挨拶は3回ありまして、私は2回目でスクリーン7。1回目と3回目はスクリーン9だったようです。B列(2列目)でしたが、A列は誰も座らなかったので、実質1列目でした。私とユノを遮るのはA列の椅子だけ。でも、手を伸ばせば届くほど近くはないです。目は合ったような?合わなかったような?ユノ、もっと上の方の席を見てました。ここで今年の席運使ったかな?と思ったけど、ユノが日本の映画に出て、その舞台挨拶が当たって、しかも実質1列目。こんなこと次ある?と思うし。
「ふー…ジュンス、愛してるよ。ちゅ♡」ベッドの中で、熱い時間を過ごしたユチョンとジュンス。興奮したジュンスから、濃厚な血も頂きユチョンはご満悦。腕の中にいるジュンスにキスの雨を降らしながら、優しく髪を梳いた。「興奮して血を飲みすぎちゃったかな。ジュンス大丈夫か?」「大丈夫。それより…ユチョン、すっごくよかった…♡外で血を飲まれて…興奮しちゃった♡」「野外プレイだなwん~ジュンスはかわいこちゃんだなぁ♡チュ♡チュ♡」いつものように甘いピロートークの中、ジュンスが呟いた。
「そいつは最近ヴァンパイヤになったばかりの新米だ。俺のせいでヴァンパイヤになったんだ」「は?はぁぁぁ~~?お前のせいで?何やってんだお前!」「わざとじゃねぇ!事故みたいなもんだ。言っとくが俺を自転車で轢いたのはアイツだぞ!誤って俺の血があいつの口に入っちまったんだよ!」「ジェジュンが自転車で轢いた?チッ。お前もヴァンパイヤのくせに自転車に轢かれてんじゃねーよ。空ぐらい飛べねーのかよ」「だから飛べねーっつーの!なぜ被害者の俺を責める?俺だってぼーっとする日ぐらいあるわい!」口は悪いが
今日は自社のホームページに使う素材の撮影に同行した。最初は適当に考えていたホームページだが、担当者に数枚の写真を見せられて興味がわいた。「どの人がいいですかね。僕のおすすめはこの子なんですが…」担当者が指さしたその子は、誰よりも光っていた。建設資材の広告で、薄緑の作業着に安全ヘルメットをかぶった姿なのに、すごくキュートで好感が持てた。明るさと誠実さが滲み出て、素直にこの子がいいと思えた。撮影現場に入ると、紺のスーツを着たあの子がいた。紺地のスーツがまだ体になじんでなくて
――気が付いたらヴァンパイヤになっていました。でも大丈夫。とっても優しい人が傍にいてくれるから――僕は新米ヴァンパイヤ!なんで新米かって?僕だって普通の人間だったんだ。ある日自転車に乗ってて、あんまりいい天気だったから空を見上げたら、そのまま人を轢いちゃったんだ。テヘ。その人がたまたまヴァンパイヤで、たまたまその人の血が口に入っちゃって。急にヴァンパイヤになっちゃったってわけ。どゆこと?ごめんなさい!って謝ったけど、時すでに遅しでさ。「おい新米、今回の分だ」
皆様、お久しぶりでございます。約一か月ぶりですね。連休などいかがお過ごしでしたか?最近では、昼間はもう暑かったりして、今から夏が恐いです。GWもほぼ家にこもり、断捨離したり掃除したりで楽しく過ごしました。渋滞や人混みが大嫌い、かと言って一人で外出も苦手だし、一人ご飯も苦手。それより一人お家で好きな事(家事も好き)している方が好き。ノーメイク・ノーブラ連休は最上級リラックスでしたw連休に一人って寂しくない?と聞かれても「まったく寂しくない」と答えるでしょう。私は一人の時間がと
対照的な二人の女性の間で、下心に揺れる演出家の心を描いたインディーズ作品。原題は「감자적소나타(カムジャジョクソナタ)」。“カムジャ”はじゃがいも、“ジョク”とは江原道の方言で、日本でいうチヂミのような料理を指す言葉。様々な食材を小麦粉と混ぜ、平たく焼き上げる粉物料理のこと。ちなみに「チヂミ」という呼び方は済州島方言で、ソウルでは一般的に「ジョン(전)」と呼ばれる。だから「パジョン」は、日本語的に直訳すると“ネギのチヂミ”という意味になる。文化財団の依頼で、江陵の西部市場を支援す