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〈Gー4肝移植手術に向けて〉いよいよ、ドナーの入院日。私が案内されたベッドは、なんと、夫が前日まで使用していた、ベッドでした。そのベッドに、横たわり、天井を眺めていると、「見舞う側だった自分」には見えなかった、新たな世界が広がります。命の危機に直面している、人間の苦しみを、共有することなど、出来ないけれど、このベッドの上で過ごした、眠れない日々、カーテン越しに、薄明るくなる夜明け、外界の空気をまとって、見舞ってくれる家族のまぶしさ…。
〈Gー3肝移植手術に向けて〉他にも、この最終面談で、判明したことが、二つあります。「肝移植手術の際に、支障があるため、レシピエントと、ドナー双方の胆のうが、摘出される」ということと、「肝臓は、切り取られても、数か月で、元の大きさに、復元する」という、驚くべき事実です。こうして、緊張と驚きの最終面談を終えると、その後は、手術日に向け、医師からは、「くれぐれも、体調を崩さないようにしてください。お二人のどちらかが、体調を悪くしても、移植は出来ま
〈Gー2肝移植手術に向けて〉移植手術三週間前になり、手術に向けて、家族と移植医との面談が、行われました。今回の手術の中心となる、血管外科のO医師は、よく通る声で、説明を始めました。「今回の移植では、ドナーの年齢が、56歳ということで、まだ、そんなお年ではありませんが、肝移植の世界では、40歳以上の方を、高齢者ドナーと呼んでいます」「次に、今回の手術は、通常よりも、長時間になります。成功率も、下がります。ちなみに、この病院で、術後、一年以内に
〈Gー1肝移植手術に向けて〉暦は、四月に入り、大学病院前の桜は、早くも、葉桜になり始めていました。父親が使用していた、パソコンのデータを、次男が整理していたら、おびただしい量の売り上げデータが、次々と、画面に出て来ます。「これが、我が父が、命を懸けてやっていた仕事か」と、つぶやく息子。もう二度と、このパソコンの前に、座ることはないかも。…そう思うと、ただただ、切なくなりました。洋服ダンスを開くと、スーツとワイシャツが、主(あるじ)不在の
〈Fー8最後の賭け〉そもそも、「脳死肝移植は、宝くじに当たるようなもの」という現実と、「あと何か月かで亡くなる」という現実を、はっきりと口にした、当の医師が、「最低でも、50%以上成功する手術しかしません」と、明言しつつ、「移植の可能性が、0,0001%の脳死登録をして、待ちましょう」という、矛盾に満ちた提言を、しているのです。3・「35%ルール」を、私は当初、絶対視していました。けれども、確か移植医は、「33%あれば、大丈夫なんですが…」と、言
〈Fー7最後の賭け〉2・「50%以下ならしません」という言葉に、驚きました。確かに、生体臓器移植は、ドナーの身体損傷を、前提にしています。それゆえ、「イチかバチか」の勝負に出るような、手術をして、失敗すれば、患者の命を奪う、のみならず、ドナーにダメージを、与えてしまいます。そのため、病院側の『安心・安全・トラブル回避』が、優先されるのだと、痛感しました。医療側は、とりあえず、脳死肝移植への登録を、勧めます。それは、(言葉は悪いですが)一応、可能性
〈Fー6最後の賭け〉「メリットは、二つ。お二人の血液型が、同じA型だということ。もう一つは、再発の可能性は、0%だということです」「先生、移植が成功したら、主人は、元通りの生活が送れるのですか?」「それはもう、激変します。夢のような再生が起きます」『夢のような再生』…この言葉が、以後、移植に挑む私の、エネルギー源となったのです。◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇この10日余りのドタバタ劇で、医師と向き合った私が、感じたことが、三
〈Fー5最後の賭け〉「奥さんの肝臓の、主要な管である、胆管と門脈が、二つとも、二本に分かれているので、二本を一本にして移植する、それを、2カ所で行う必要があります」「人体の臓器は、取り出した瞬間から、劣化していきます。もちろん、冷却しながら進めますが、時間の勝負となります」「普通より、長時間の手術となり、当然、成功率も下がります。と言っても、50%以下なら、移植はしません。私たちの移植成功率は、80%ですが、今回は、それより下がります」「現在
〈Fー4最後の賭け〉「奥さんをドナーにして、やりましょう。それが一番、現実的です。急いで書類を作って、倫理委員会を通し、スケジュール調整をします」ついに、移植主治医が、重い決断をしてくれたのです。「ありがとうございます。本当に、ありがとうございます」夫の命を救うための、鉄の扉が開いた瞬間でした。その時、主治医が、「奥さんが、あんまり言うから…」と、ボソッとつぶやいたのです。私の必死の食い下がりがなければ、と思うと、怖いもの知らずの、
〈Fー3最後の賭け〉「馬鹿なことを言っちゃいけません。ご主人の今の状態では、空港にすら行けませんよ。仮に、行けたとしても、飛行機に、絶対搭乗させてもらえません。私だって、外国で治療を受けさせて、患者を連れ帰ったことが、あるんですよ。可能ならそうしますが、無理です」「でも、そうするしかありません。このまま死を待つことは、できません」「奥さん、ほとんど全ての方が、移植を待ちながら、亡くなっている。それが現状なんですよ」…未成年ドナーは駄目。海外移
精子提供で子供97人米男性の訴え-Yahoo!ニュース生殖補助医療が進み、精子バンクや卵子凍結も一般的になってきた。そんななか、アメリカで学生時代に精子提供をした男性(33)の訴えが注目を集めている。自分の精子から生まれた子どもが100人近くいると知news.yahoo.co.jpこちらの記事について解説しますまず、学費のために提供することはやめましょう!同じく生活苦での提供もやめましょうネットの情報には生活苦の女性が風俗で働くくらいなら卵子を売った方がましと言って卵子ドナ
〈Fー2最後の賭け〉「えっ、本当ですか?いえ、今までも、これからも、10代のドナーを、許可するつもりはありません。そのホームページの内容も、知りません」「でも、臓器移植年齢は16歳以上と、移植学会の規定にはあります」「もし、それを許してしまったら、うちの病院に、ドナーが殺到するかもしれないし、17歳のドナーを認めるか否かは、我々の手を離れて、法医学の領域になり、そこでの検討議題に、上げてもらう必要がある。時間がかかるだけです。とても間に合いません」
年齢制限があると知り、私も登録をしたいと思いました。母の病気できる事はなんでもしてあげたい。身近な人が、病気になると、きっとそんな思いになる。それは、みんな同じ。母に効く抗がん剤がないとしても、可能性にかける。ドナーになれて、助かる方がいるのなら、私はお役に立ちたい。でも。あ~やっぱりダメか。私が生きるのに、沢山の輸血を頂いた。そっか。献血も、ドナー登録も無理か私にできること。なんだろう…
〈Fー1最後の賭け〉いよいよ、追い詰められた私は、主治医がいる消化器外科に、電話をして、「もう一度、面談をお願いしたい」と、申し出ました。決定権があると思われる、S医師との三回目の面談で、S医師は、「どのようなお話でしょうか」と、私に、話を促しました。「息子は、未成年なのですが、当初から『ドナーになる』と、言っています。息子に、ドナー検査を、していただけませんか?」「20歳未満は駄目です。息子さんは、おいくつですか。17歳では駄目です。認めら
〈Eー3不退転の覚悟〉時間が切迫する中、私たち家族と、S医師との、再面談が、行われました。面談室に入ると、「娘たちが、ドナーになりたいと、志願しています。何とか早急に、ドナー検査を、お願いできないでしょうか」と、私が切り出しました。そこで急きょ、私が受けた検査と同様の検査が、二人の娘に対して、行われることになりました。面談室を出るとき、ストレッチャーに横たわる、夫の目からは、涙が流れていました。記録係の若いT医師が、「お幸せですね」と、
〈Eー2不退転の覚悟〉「昨日、カンファレンス(検討会)で、話し合いましたが、今回、奥さんをドナーにして、移植を行うのはやめよう、という、結論になりました。不可能ではないんですよ。ただ、危険が多いので、見送らせてもらいます」予想外の、断りの電話でしたが、私は妙に、落ち着いていました。春のお彼岸の、やわらかな日差しが、電話台のところまで届いていた光景が、忘れられません。茫然とした時間を経て、子どもたちに、移植を断られた旨の連絡をしつつ、病院側に、
〈Eー1不退転の覚悟〉春分の日の夕方、一本の電話が、入りました。移植手術主任の、S医師からでした。「実は今日は、先日のエコー検査で分かったことを、お話しするために、お電話しました」「奥さんの肝臓そのものには、何の異常も無いのですが、肝臓から出ている大きな管、胆管と門脈が、奥さんの場合、一本ではなく、二本に分かれているのです」「体には、何の不都合もありませんが、それを移植するとなると、話は別です。大部分の方の胆管と門脈は、一本ですから、一本の
〈Dー5肝臓の提供条件〉その日、私は次女と、雑踏の中にいました。その時、大学病院から、電話が入りました。「初日の検査は通りました。それで、精密検査をしたいので、明日、病院に来ていただけますか」というやりとりで、電話を切った途端、涙が、どっとあふれてきて、人目もはばからず、号泣してしまいました。「良かった。みんなに迷惑を掛けずに済んだ。私が、ドナーになれれば、それで解決する。子どもを巻き込まずに済んだ」一番恐れていた、35%ルールを、通過し
〈Dー4肝臓の提供条件〉翌日、長女が「話がある」と、思い詰めた顔で言うので、「何?お父さんのこと」と、訊くと、「私が、ドナーになる」と、言います。「でも、妹がドナーになるって、言ってくれているよ」と、返すと、「ううん、私がなる。私がお姉ちゃんなんだから」と、言うのです。手の中のハンカチを、ギュッと握りしめて、下を向いて…。長女は、大変な怖がりで、全てに対して、慎重な道を選択する娘でしたから、崖から飛び降りるような、決断だったと思います。長
〈Dー3肝臓の提供条件〉直感で、「この35%ルールが、唯一最大のハードルだな」と、思いました。迷うことなく、至急の検査を、要望したため、すぐに、私のドナー検査が行われ、レシピエントの夫も、三日後に転院することが、その場で決まりました。帰宅して、子どもたちに、35%ルールの話をしました。すると、次女は、「お母さんが、駄目だったら、私がドナーになる。肝臓を切っても、子どもだって産めるし、それで、お父さんの命が助かるのなら、恩返しができる」と、迷
〈Dー2肝臓の提供条件〉次に、生体肝移植の説明では、医学書に載っている、ドナー条件に加え、以下のような、驚くべき高いハードルが、示されました。「生体肝移植では、過去に、ドナーの方がお一人、亡くなられています。肝臓を、切り取り過ぎたのではないか、という反省に立って、厳格な基準が、作られました」「肝臓は、右葉と左葉に分かれていて、大人が子どもに、肝臓を提供するケースでは、三分の一の大きさの左葉を、提供すればよいのですが、大人から大人、中でも、
〈Dー1肝臓の提供条件〉夫に、振戦という、危険なサインが出たこともあり、急きょ、面会の予約が取れました。もはや、座っていることもできなくなった夫を、タクシーの後部座席に、横たわらせ、都内の大学病院へと、向かいました。二時間後に到着した時、目に入った、正面玄関横の、大きな桜の木は、今まさに、花開こうとしていました。初めて出会った、移植責任者で40代後半のS医師は、ストレッチャーに横たわっている夫と私に向かって、肝移植の説明を、始めました。「ご主
〈Cー3腹水を抜く〉「ご主人のこの症状は、肝硬変の末期で、いつ、肝不全が起こっても、不思議ではありません。明日の朝、ベッドで亡くなっているかもしれません」緊迫した口調でした。「私がドナーになりますから、肝移植をしていただけないでしょうか」この言葉は、悩んだ末でも、覚悟を決めたわけでもなく、ごく自然に、口から出た言葉でした。「いつ死んでもおかしくない」と、現状の危うさを指摘してくれた、若い熱血漢医師のお陰で、急きょ、夫の治療は、大転換を迎え
〈Cー2腹水を抜く〉腹水に含まれている、「体にとって大切な成分」も、急激に失われ、夫は、みるみるうちに、やせ衰えていきました。さて、仕事続行が困難になり、退任した夫には、経済的なバックアップも、必要になり、「都心近くに引っ越し、皆で一緒に暮らして、生計を一つにしよう」ということになりました。三月、引っ越しと同時に、夫は、三回目の入院をしました。それから一週間が経過したころ、大きな異変が、起こりました。夫の全身が、震えだすようになったのです
〈Cー1腹水を抜く〉年が明けた、平成26年1月、腹水除去を、願い出ました。「腹水は、抜いても、数日ですぐまた戻るからね」と言って、勧めなかった主治医でしたが、夫が、「こんなに苦しい状態では、会社に出向くこともできない」と訴えて、了承を得ました。初日は、5,5リットルほどの腹水が抜け、妊婦のようなお腹が、ペッタンコになって、ろっ骨が、浮き出るほどでした。一年ぶりの、「腹水の無いお腹」の出現に、私たちは驚くとともに、大喜びしました。帰宅して
〈Bー7初めての入院〉一回目の入院から、二か月後、今度は、もっとひどい状態での、入院となりました。前回の入院時に、処方された利尿剤は、もう、効き目がなくなり、大きく膨張したお腹への、次の策として、アルブミン投与という、治療が行われました。けれども、腹水は、前回のようには抜けず、大きなお腹のまま、二回目の退院となりました。腹水が、溜まるので、足は、くぼみがなくなり、まるで、ゾウのよう。お腹は、カエルのよう。外見から、それと分かるほど、夫
〈Bー6初めての入院〉ペッタンコになったお腹が、再び、ふくれるようになったのは、退院してから、二週間後。「また、お腹が出てきた」という夫の言葉は、ショックでした。口にするものは、チョコレートやジュースくらいで、エネルギー的にも、立ち上がれるわけがありません。それでも、ふらふらと起き上がって、車を運転して、会社に行き、必要最低限の仕事や指示をして、自宅に戻り、ひたすら横になるという生活を、約一か月、続けました。何度も、「病院に行こう」と、
3月29日、中国人男性のアリペイ(Alipay)アカウントが無断で臓器ドナー登録されていたという動画が投稿され、Xで拡散した。アリペイはアリババグループが提供するスマホ決済サービスで、動画で男性は「本当に怖い」と声を上げ、人々に自分のアリペイの個人情報の許可設定に同様の登録が追加されていないか確認するよう呼びかけている。男性がアリペイを確認したところ、日常的に使うアイテムや健康コード、行程コード(直近14日間で訪問した都市、国・地域の履歴を管理するコード)に加えて、ドナー登録がされて
〈Bー5初めての入院〉当時、16歳で、県外の寮で生活していた、息子の言葉は、利尿剤が効いて、お腹が、ペッタンコになった夫を、見ていた私たちには、「なんとまあ、大げさな」と、感じる内容でした。ですが、病状を一番、的確に把握し、非代償性肝硬変に、至ってしまった、父親の病状は、不可逆的で、起死回生の一手は、生体肝移植しかない、と、分析できていた息子が、一番冷静な、家族だったようです。夫の初めての入院は、10日間で退院、という結果になり、また、元の
〈Bー4初めての入院〉▼次男から、入院中の夫に届いたメッセージ病状を聞いたよ。重度の肝硬変らしいね。父は、仕事とも病気とも、青二才の自分には理解できないほど、つらい目に遭いながら、奮闘しているのに、苦労もしないで、タダ飯を食っている自分が、情けない…病状が、厳しくなったならば、いつでも自分が、肝移植のドナーになるからね。父には、長生きして欲しいし、おいしいものも、もっと食べて欲しいから、肝移植は、そのうち絶対に受けてもらうよ。早死