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*******大祐の事務所は、厳密に言うと現地法人となる為、グェンさんは大祐を“社長さん”と呼んでいた。その、グェンさんという女の子とは、最初に観光地をアテンドしてもらって以来、たまに一緒に出掛ける仲になった。「麦さん、モデルみたいに、カワイイデスネ。写真撮ってもいいですか」彼女は、会うたびに、やたらと大袈裟に私を褒めてくれた。ベトナムの女の子は日本製の化粧品が大好きで。大祐と夏休みやテトに、日本に一時帰国した際には、資生堂やカネボウの洗顔フォームを、よくお土産にプレゼントした
現役書店員芸人カモシダせぶんの木曜に、一冊、本の話を今回は、高瀬隼子の中編&短編小説集いい子のあくび表題は、主人公の女性が歩きスマホをしてる人を避けずに、ぶつかろうとするところから始まりとにかくこの女性の複雑な心情が終始リアルタイムで伝わってくる良作人間関係における人格の分別や、自分自身の価値観など、一言でまとめきれない思いがぎゅうっと入っていた。また短編「お供え」では、職場もという閉鎖的な空間での人間関係のダルさをしっかり書かれていたり最後の短編「末長い幸せ」は友達の結婚を祝う
*******ノースリーブの肩にあたる生乾きの髪…。日本ではムリだけど、海外では少しだけ、開放的になれた。「チョートーイモッタクシービック」(ビックタクシーを一台呼んでください)まさか私が、生ライチにハマるとは思わなかった。わざわざタクシーを呼んで、六月はよく朝の市場に出掛けた。勿論、短パンと、ノースリーブ姿のまま。この、四季のあるハノイの、一年のうちの、限られた時季にだけ食べられる、みずみずしい果実。田舎の食べ放題のデザートコーナーでは、見向きもしなかった果物。
*******そういえば、初めてショートカットにしたいと思った20代の頃、表参道のおしゃれな美容室に行ったことがある。中学2年生の時、夏休み明けにイメチェンしようと、近所の〝パーマ屋さん〟で髪をバッサリ切ったら、お猿さんみたいになって大失敗した経験がトラウマになっていて、それ以来ずーっとロングにしてきたこの髪を切るときには、絶対、〝失敗しない店〟で、と決めていた。ミュージシャンやテレビ関係者も通っているらしかったそのハイセンスな店舗は、指名料+カットだけで一万円は優に超えていた。腕前
*******鳥かごランプや中国布のソファーカバー、壁面のドンホー版画たち…。「むっちゃんのレトロカフェ、か」部屋中をわざとらしく見渡すと、大祐が呟いた。「は?なに?」「レトロな家にするんだって言ってたじゃん。」「あぁ…、あの時はね」「古さもレトロになんない?」大の的を得た一言が小さい声であった事をいいことにスルーすると、むっちゃんは昔話の語り部のように、遠い目をして続けた。「今思うと、ベトナムかぶれしてたんだよね。でもさ、レトロな雰囲気って、あの国だからよかったっていうか。毎
*******『駐在妻は、寧ろ、人間関係のみの世界』…だってさ。機内誌をバッサバッサ読みながらこの国に降り立った日を思い出す。最初はもちろん、麦も不安だった。向こうに着けば、語学力もゼロ、知り合いも…ゼロ。よく耳にする〝ママ友〟問題だって、たとえ、リーダ格の人に目をつけられても、…別にね。“取って食われるわけじゃあるまいし”麦は自身に子供が生まれても、そんな風にドライに生きていくタイプかと思っていた。だけど、海外生活が始まって、考え方が変わっていくのがわかった。レジデンス
*******当時、大手の介護サービス会社の下請けで請求事務をしていた麦は、自分より後から結婚した後輩が続々と妊娠・出産していくのを何人も笑顔で見てきた。本音を言えばそれが、知らず知らずのうちに深層ストレスになっていたのかもしれない。わかっていた。これは、また押し寄せてきた〝逃げ〟の波だ。仕事自体ではなく、別のストレスからの。日本を離れるという、表面上は格好さえ良い三十ニ歳の“決心”は、三十ニ歳の、その歳特有の、彼女の"逃げ”でもあった。もうひとつ確かなことは。共働きが主流
*******結局、その煌びやかな美容室には、お金が続かなくなって(笑)ドロンしたのだけれど…西は、と言えば。「同じ57年生まれなんすね。」お、クールな西にしては珍しく、客のプロフィールを話のネタにしようと持ち出してきた。「えー、西さんもですか?年上に見えちゃいました。そうなんです、夫も私も57年生まれなんです。」「旦那さんも…?やっぱり、同じ年って、いいですか。」「ですね。例えば、二つとかでも違うと、結構音楽の話題がずれてて合わなかったりするんですよね、…意外と。」麦は
そろそろお盆も終わりますね。夏休みには普段本を読む子も、ちょっと難しめの純文学を読んでほしいですね。純文学は面白いとはいい難いとは思うのですが、情感ある描写、丁寧な心情描写などライト系のものにはないモノがあります。ただ、良いモノを選ばないとダラダラとヤマのない話が続く作品も多いです。とりあえず良質なものをここではすすめていきたいと思います。<子供を伸ばすおススメ100タイトルVOL14日本純文学編②>73、蜘蛛の糸・杜子春芥川龍之介文章レベル★★★74、羅生門・鼻芥川龍
ついに最も濃い回が来てしまいました。純文学なんて一体どこが面白いんですか、とよく言われますし、その通り、全然面白くないやつが大半だなとは思います。僕は定期的に今でも純文学を読んでいるのですが、途中で投げ捨てたくなる本もたまにあります(が、最後まで読んでしまうこの間違った粘り強さw)僕は音楽にしても文学にしても「クラシック主義」では全くありません。クラシックと言われるものも、当時は今のライトノベルみたいな流行りものだったかもしれませんし、そうだったから後世に残っている面があるはずです。ベ
(前回の続き)前回の記事では、ホテルでの二人のめくるめく時間を、渡辺淳一先生ばりの純文学調に、カタカナを一切使わずに描いたのですが、見事に削除されてしまいました。申し訳ありません。出会い系のハッピーメールで出会ったユウナさんとホテルデートした私は、素敵な時間を過ごせました。ユウナさんが「これから友達と女子会がある」と言うので、そそくさとシャワーを終わらせ、ホテルを後にします。駅に向かって歩きながら「また会えますか?」と聞くと、「うん!ラインのIDをメッセしといて!」とユウナさん。少し打ち解
読書ノートの260回め。近況と読書状況をちびっと。相変わらずローペースの読書ですが、それなりにじみじみと読んでおります。やっぱり紙本の方が時間かかっちゃいますね。積読の山から何冊か引っ張り出したもののページ消化がとろっとろで。(^^;;一方で電子本の方は割とさくさく読み進められているので、読書ノートの方も少し多めにご紹介できるかもしれません。◇◇◇読む方はローペースなんですが、書く方はギアを一段上げました。短編書き継ぎの形ではありますが『永遠の野原』をスタートし、ストックをせ
おススメ読書タイトル100まとめ(を超えていますw)読み方(https://ameblo.jp/jyukuko/entry-12587817617.html)vol.1(SF編①)https://ameblo.jp/jyukuko/entry-12588306456.htmlvol.2(ミステリーエンタメ①)https://ameblo.jp/jyukuko/entry-12588308289.htmlvol.3(海外文学)https://ameblo.jp/jyukuko/e
夏休みは終わってしまいましたが、読書習慣は細々とでも続けてほしく思います。やはり、少々の塾に通うよりもたくさん本を読む方が、その後の人生をわけると、確信に近いものを僕は抱いています。これは万の言葉を尽くして説明したところで、読んだ人間にしかその効能はわからないと思います。まあ、頭をよくする、という観点からのもので、読書以上に効果するものがあれば教えていただきたいくらいですね。それくらい無いと思います。(幼少期の運動はありますが)最近では読書が国語能力だけでなく、算数・数学の力に
*******結婚一年目に、一度だけ流産を経験した。その時は胎児が大きくなっていたので、義理の両親に報告をしたのだが。それ以後も、“私の体質のせい”でこっそり流産し続けていたとでも、想像していたのだろうか。ましてや、不妊治療を検討したり、すでに始めているとでも…?私たちは、セックスレスなんです。もう1年半も。できるはずがないんです、子供なんて。言えるもんなら、言いたかった。声を大にして。気の弱い嫁です。それができたら苦労はしない。*******私には唯一、好きな靴のメー
ユーミンストーリーズ見てみました。といっても、夏帆さんが出ていた『青春のリグレット』しかみてないんですけど。ユーミンストーリーズ幅広い層に愛される松任谷由実の名曲からインスピレーションを得て、3人の小説家が生み出した3つの物語。ドラマ化をするために、映画、ドラマ、ミュージックビデオなどで活躍する3人の監督、3人の気鋭脚本家、豪華出演者たち、トップクリエイターが集結。それぞれの創造力が掛け合わされたストーリーは、郷愁の念を抱かせ、切ない気持ちへと誘い、一歩前に踏み出す勇気を与えます。…ww
\Areyouhavingfun?/2月11日、みなさん、おはようございますみなさん、それぞれ工夫しながら、勉強(=お遊び)をしていますね。1月の終わりから2月に入って、聴くおさらい帳の【シリーズ2悩める大人たちのためのバタ足ノンデュアリティ特別講座in軽井沢♪】を聴いての感想や喜びのお便りが、つづけていくつか届きました軽井沢という設定は、小さい頃ぜんそくだった私が、夏休みになると行かされた喘息治療の施設が軽井沢にあったので、それを思い出してのことですその描写な
*******某ホテルの社長が、確かこういう言葉を雑誌の特集に残していた。【家を買うという事は、世界地図に点を打つことなんです】そうそう、魔女の宅急便の主題だって、確か。【自分の町を、自分で決めるということ】だったはず。ねぇ、その土地に、点を打ったんでしょう?それが、線になってきたんでしょう?その決意の裏には、責任もあったはず。お金があれば、いいの?『シンプル』さを求めているとか言って、駅近のマンションに住み替えたりして、結局また、『便利』さを求めているだけじゃない?か
*******西の二つの眉がほころんだように少しだけ開いた。たしか眉を上げる仕草は、手話では〝質問がある〟という意味だっけ。「どれくらいぶりなの…?」西は、胡坐をかいた上に麦を乗せたまま尋ねた。「え、あ、うん…正直に言うね。驚かないでよ?」「ははぁ…」なぜか殿様のような深い返事のあと、「ヨッと。」西が話を遮るように、腰に回された華奢な両腕に少し力を入れ、麦の体ごと片腕で持ち上げたので、結合部を外されるのかと咄嗟に麦は体重をのせ返してしまった。西は少し笑って優しいほうの右手で幼
*******責任。定住地を構えること。点が、線になっていくこと。家と一緒に、老いていくということ。身体の老いと、住まいの老朽化に対峙していくこと。生きること。死ぬこと。その場所で。さぁ、誰と?ハッと我に返ると、堅苦しい手続きの部分はとうに終了していて、白井と大祐の雑談が楽しそうに始まっていた。麦は、受付の女性が運んできてくれた二杯目の紅茶に添えられた茶色い角砂糖をつんつんしたりして、手遊びを始めた。「こいつ、多分、今回の家探しで、不動産にえらい詳しく
【あらすじ】ライチ熱とは何だったのか。大祐という申し分のない夫が居ながら、二人の男性とかかわりを持ってしまった麦。女として一番女でいたい時期に、麦が本当に欲しかったものとは。そして、賃貸派vs.持家派議論に於いて、考え方の多様化と共に“一生賃貸派”が増える昨今、「定住地」を構えるとは何なのかを問い質す。みずみずしい生ライチを食べ過ぎると熱が出る。発熱する、という事は、どこかしら体に異常をきたしているという事の現れなのに。
*******ライチを食べ過ぎると熱が出る。私が暮らすレジデンス近くのブォイ市場では、六月~七月頃、たった一、二ヶ月ほどの旬ではあるが、生ライチが出始める。枝付きのまま束ねられた赤っぽい実は、1㎏4万ドン(約二百円)ほど。日本ではこうはいかない。マンゴーであれパッションフルーツであれ、高価な南国フルーツがたらふく食べられることは、駐在生活の特権であると言えよう。発展途上国での駐妻生活は、私にある勘違いを起こさせた。自分があたかも〝セレブ〟であるかのような気分になってきたのだ。1
芥川賞受賞作です。柳美里さんとの同時受賞でした。江國香織さんが解説してらっしゃる通り、文章に「詩」があります。とても綺麗な残影のある文章。そして、いい意味で若さがあります。私が一番好きなのは、香気があって、面白いこと。「真夜中の子供」もそうでしたが、面白いんですよ。文学の香気だけで押していくんじゃ無いんです。この作品も、おー、どうなるのかなあ、と読み進めていける。純文学って往々にして才能に圧倒され、面白いというよりは感心して読み進めるというのが多いんですが、いや、そういう作品も大切なんです
これは面白いっ!村上春樹さんの小説を読んで、いや、読み始めてから読み終わるまで、中だるみすることなく、最初から最後までワクワク・ドキドキしたまま物語が完結したのは珍しいかもしれません。村上春樹さんの作品「色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年」を完読したのです。色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年(文春文庫)Amazon(アマゾン)794円外出自粛が続く2022年のGW期間中に、何か小説でも読みたいなと思い、そのタイミングで「実質半額セール」と銘打ってセールが行われ
最近読んでいる本のラインナップです週に3冊〜5冊くらい読んでいます。できるだけ、古き良き、または文学的なものに触れさせたくて、今流行りのマンガみたいの(?)に流れないよう、選書に必死💦選書リスト、5〜6年からの選択が増えました。目指せ、小学生で純文学がわかるおとこ!ハリー・ポッターと賢者の石(1-1)(静山社ペガサス文庫)[J.K.ローリング]楽天市場748円で、最近『ハリーポッター』読み始めました〜ハリーポッターいつから読ませるかは悩んでいたんですが、絶対
村上春樹さんの作品騎士団長殺し第1部:顕れるイデア編第2部:遷ろうメタファー編を完読したのです。騎士団長殺し(第1部~第2部)合本版(新潮文庫)Amazon(アマゾン)2,508円文庫版(電子書籍)全4巻です。1000ページを超える長編作品です。※リンクは4冊を合体させた合本版(電子書籍)です。僕は合本版を購入して読みました。読み終えるまでに約1ヶ月近くかかりました。ちょっと前に「第1部:顕れるイデア編」を読み終えた感想をブログに書いたのですが(その時点で第2部を読み
「見たい映画ブログ」で取り上げていたこの作品。初日に、観て参りました~原作は、芥川賞受賞の小説『影裏』私は、原作も読みました。純文学に属するこの作品は、スラッと読めるボリュームですが、初読でスラッと読むと「ありゃ?これで終わり?」と、拍子抜けしちゃいます。主人公のある「根本的」なものを頭に置いて読んだ2度目で、おおお~❗っと気付く事がありました。映画は、映像からも情報が入ってくるので、小説よりも分かり易い。これより先は、ふんわりネタバレしています。いつもの様に「映画観たいから知り
ねじまき鳥クロニクル村上春樹さんの最高傑作のひとつと言われる作品ねじまき鳥クロニクルを完読したのです。ねじまき鳥クロニクル(第1部~第3部)合本版(新潮文庫)Amazon(アマゾン)2,607円ねじまき鳥クロニクル―第1部泥棒かささぎ編―(新潮文庫)Amazon(アマゾン)663円ねじまき鳥クロニクル―第2部予言する鳥編―(新潮文庫)Amazon(アマゾン)742円ねじまき鳥クロニクル―第3部鳥刺し男編―(新潮文庫)Amazon(アマゾン)