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黄体ホルモン膣剤(ルティナス®膣錠、ウトロゲスタン®膣用カプセル、ルテウム®膣用坐剤)は、生殖補助医療や融解胚移植のサポートで使用される大切なお薬です。黄体ホルモンは、子宮内膜を厚く柔らかく保ち、受精卵が着床しやすくし、その後の妊娠を維持します。ここでは、治療中によくある疑問をまとめました。1.使用中に出血があったら?可能性のある原因1.薬剤の接触による膣や子宮頸部からの出血2.妊娠初期の切迫流産による出血対応の目安少量で腹痛がなく、1回きりなら自宅安静で様子を
見尾ファティリティクリニックからの「透明帯除去による分割胚の胚質改善について」の論文をご紹介します。体外受精(IVF)の成功率向上を目指し、多くの新しい技術や治療方法が模索されています。その中でも、胚の分割期における質の低下(分割胚の質不良)が大きな課題として注目されています。今回紹介するのは、透明帯(ZonaPellucida:ZP)を受精後早期に胚から人工的に除去する方法についての最近の研究結果です。この方法が「分割胚の質不良であった場合に、どのような効果が期待できるか」の解説です。胚
妊娠初期の診察でよく行われるのが「経腟超音波」です。そのときに測定される「赤ちゃんの大きさ(CRL=頭殿長)」から、妊娠週数を確認することが多いのですが、実はこの週数の推定方法には誤差があることをご存じでしょうか?今回ご紹介するスイス・バーゼル大学病院の研究では、体外受精(ART)によって受精日が正確にわかっている妊娠のデータをもとに、**より正確な妊娠初期の成長曲線(超音波基準値)**が作成されました。妊娠週数の「基準」ってどこから来てるの?従来の妊娠週数は、多くの場合最終月経から数
胚移植の成功を左右する?黄体ホルモン補充の最新エビデンス体外受精を受けられる多くの方にとって、「胚移植の時に何をどこまで補助すればよいのか?」という疑問は尽きません。なかでも「黄体ホルモン(プロゲステロン)」の補充は、妊娠成立の鍵を握る重要なポイントとされています。本記事では、2022年に発表された最新のレビュー論文をもとに、黄体ホルモン補充療法(LutealPhaseSupport:LPS)の最前線をわかりやすく解説します。■黄体ホルモン補充ってなに?排卵後、卵胞の「残りか
PCOSと鉄:フェリチンから読み解く代謝と妊孕性のヒント多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)は、月経不順、排卵障害、そして代謝異常など、さまざまな症状を引き起こすことが知られています。これまで、血糖やホルモンの数値などがPCOSの指標として注目されてきましたが、近年、「フェリチン」という鉄を貯蔵するたんぱく質にも重要な意味があることがわかってきました。フェリチンとは?フェリチンは体内の鉄の状態を示すマーカーで、一般的には鉄過剰や炎症の指標として使われます。しかし、PCOSの女性では、月経が少
人工授精や体外受精で精液をご提出いただく際、冬の寒い時期は精子が冷えすぎることで運動性が大きく低下してしまうことがあります。治療の質を守るためにも、採取後は25〜34℃(人肌程度)を保ってご持参いただくことが大切です。ここでは、寒い季節に精液をお持ちいただく際の注意点とおすすめの方法をまとめました。❌避けていただきたいこと外気にそのまま触れる状態で持ち歩くこと(バッグの外ポケット・車内に放置など)カイロを直接容器に貼ること(温度が高くなりすぎて精子の生存性が低下します)
赤ちゃんがまだ「1cm」にも満たない時期から、将来の出産リスクがわかるかもしれない「早産にならないか」「赤ちゃんが小さすぎないか」…妊娠中、そんな不安を感じたことはありませんか?オランダ・ロッテルダム大学などの研究チームが行った最新の研究によると、妊娠7週ごろの「胎芽の大きさ」や「成長のしかた」が、将来の出生体重や早産リスクと関係する可能性があることを報告しています。CRLとEVってなに?📏CRL(頭殿長):胎芽の「頭からおしりまでの長さ」🔲EV(胚体積):胎芽の「全体の大きさ
「子宮腺筋症(アデノミオーシス)」という病気を聞いたことはありますか?これは、子宮の筋肉の中に本来子宮の内側にあるはずの子宮内膜組織が入り込んでしまう病気で、子宮が肥大したり変形を起こします。実はこの病気、なかなか気づかれず、見逃されがちなのです。子宮腺筋症って、どんな病気?かつては「40歳以上の多産婦に多い」と考えられていましたが、今では若い女性、特に生理痛がひどい方、不妊で悩んでいる方にも多く見つかっています。症状はさまざまですが、よく見られるのは下記などです。強い生理痛性交時
超音波検査で「見えない卵巣」であっても見えない卵巣、見つけたのはMRI妊娠を望むすべての方にとって「卵子を採ることができない」という言葉は、あまりに厳しい現実です。【ある33歳の女性】潰瘍性大腸炎の治療のために何度も手術を受け、骨盤内には癒着が広がっていました。その影響で、一般的な方法(経膣・経腹エコー)では卵巣がまったく見えない状態だったのです。他院では体外受精(IVF)を断られてしまいました。しかし彼女はあきらめませんでした。転院先でとられた手段は「MRI(磁気共鳴画像)」でした
なぜ“異常分割”が起こるの?細胞が不器用なだけかもしれません体外受精では、精子と卵子が出会った後、受精卵は何度も分裂を繰り返して「胚」になります。そのなかで、1つの細胞がいきなり3つに分かれたり、分かれたはずの細胞がまたくっついたりする、「ちょっと変わった分裂」が見られることがあります。これがいわゆる異常分割(AbnormalCleavage)です。具体的には、以下のようなタイプがあります:DirectCleavage(DC):1つの細胞がいきなり3つに分かれるRever
妊娠が分かって喜んだのもつかの間、「出血があって切迫流産と診断されました」と告げられると、不安と戸惑いでいっぱいになりますよね。妊娠を望んできたからこそ、「どうして私が」「この子は大丈夫?」という気持ちになるのも当然のことです。ここでは、妊娠初期に起こりうる出血や切迫流産の診断、その経過や過ごし方について、よくある質問をもとにご紹介します。Q1:出血が続いています。流産の可能性が高いのでしょうか?先日5週2日から茶色いおりもののような少量の出血が出始め切迫流産と診断されました。胎嚢は確認で
【技術部より】体外受精スパームセパレーターって?生殖補助医療に用いる精子選別は、「密度勾配法とスイムアップ法を組み合わせた方法」が一般的に実施されています。しかし、遠心分離や工程にかかる時間により、精子の細胞質が壊れたり、活性酸素が発生し、活性酸素への暴露時間が長いことでDNA断片化を生じる可能性があります。上記のようなデメリットをカバーできる精子選別方法が…★マイクロ流体技術を用いた精子選別法(ZyMōt®︎スパームセパレータ)遠心分離を使用せずに短時間で良好は
【ご質問内容】凍結胚移植予定の者です。麻疹ワクチンを一度接種したのみで感染歴もありません。健康診断の採血(IgG-EIA法)で抗体はあるものの十分な免疫なしとの結果を受けました。ワクチン接種後は一定期間、移植すべきではないとも聞きました。2回目の麻疹ワクチンを接種してから移植に望むべきでしょうか?【当院からの回答】ご質問いただきありがとうございます。麻しん(はしか)のワクチンについてのご不安、もっともなことと思います。妊娠を希望されている皆さんにとって、体調管理や感染症対策はとても大
妊活中の女性にとって、流産後の体調管理は非常に大切です。その中でも、「RPOC(RetainedProductsofConception)」という名前を聞いたことがありますか?今回は、この現象とその対処法について分かりやすく解説します。RPOCとは?RPOCは、流産や出産後に子宮内に残った妊娠組織(胎盤など)を指します。これが原因で、産後出血や感染症を引き起こすことがあります。RPOCの種類:胎盤遺残:胎盤が完全に排出されず、一部が子宮内に残る状態。胎盤ポリープ:残った胎盤が
凍結融解胚移植の黄体補充、プロゲステロン腟剤の選び方不妊治療において、黄体補充は胚移植の成功に欠かせないプロセスです。日本で使用されている主なプロゲステロン腟剤は以下の4種類です:1.ルティナス®膣錠2.ウトロゲスタン®膣用カプセル3.ルテウム®膣用坐剤4.ワンクリノン®腟用ゲルこれらの薬剤は、生殖医療施設や医師の判断で選ばれることが多いですが、実際の妊娠成功率や患者の負担に違いはあるのでしょうか?国内で行われた最新の研究を基に、各薬剤の特性と生殖医
「採卵って痛いの?」「麻酔が心配…」そんな声をよく耳にします。とくに自然周期や刺激を抑えた治療で卵胞が少ない場合、採卵時の痛みや麻酔の有無は気になるポイントです。最近、ドイツとスイスの7施設が参加した大規模研究で、「卵胞が少ない採卵は麻酔なしでも大丈夫」という結果が示されました。その内容をわかりやすくご紹介します。採卵時の痛み、どのくらい?この研究では、2290周期・1039人の患者さんを対象に、麻酔も鎮痛剤も使わずに採卵を実施。採卵後すぐに痛みを自己評価してもらいました。その結果、痛
不妊の原因の約半分は男性側にあるといわれています。特に「無精子症」や「精子数が極端に少ない」場合、精液中に精子が見つからず、**手術で精巣から直接精子を取り出す(TESE)**という方法が選ばれることがあります。でも気になるのは、「この方法で本当に受精するの?」「胚はちゃんと育つの?」という点です。今回ご紹介する最新のアメリカ・メイヨークリニックの研究は、まさにその疑問に答えてくれる内容です。精巣採取精子(TESE)とは?TESE(TesticularSpermExtraction)
胚移植は「2個まとめて」より「1個ずつ」の方が良いって本当?「胚移植は1回2個より、1個ずつ2回の方がリスクは少なく、出生率は同等という記事を見ました。融解胚移植でも可能なのでしょうか?」このご質問は、近年の生殖医療の大きなテーマのひとつで、「単一胚移植(SBT)」と「2胚移植(DBT)」に関わる重要な内容です。■当院の基本方針:「安全性」と「合理性」を重視して当院では、日本産科婦人科学会が2008年に発表した「多胎妊娠防止に関する見解」に基づき、基本的には1回に1個ずつの胚移
【医療安全ニュース】精液検体の持参について精液検体ご持参のご協力ありがとうございます。正しい検査結果のためにいくつかご注意いただきたいことがあります。①採取から持参までの時間は2時間以内採取からの時間経過で運動率は低下していきます。例えば前日の夜に採取した検体では運動率は大幅に下がっていることが予想されます。2時間以内に持参が難しいこともあるかもしれませんが、なるべく早めにご持参ください。②保管温度は室温程度保管温度が低すぎても高すぎても運動率は低下しま
子宮内膜ポリープは、超音波検査で子宮内膜を確認するとき、竹の葉状に観察される子宮内膜に通常認められない画像譲渡して確認されます。多くの女性にとって気になる健康問題の一つですが、必ずしもすぐに治療が必要なわけではありません。当院の治療方針は、子宮内膜ポリープの状態などにより対応が異なります。不正出血が見られる場合や、定期的な超音波検査でポリープの変化が確認された場合は、子宮体がんの可能性を否定するためにも、より詳細な検査が推奨されます。子宮内膜ポリープは、その原因が完全には明ら