高市新総裁を見越して、このところ、石川淳の作品を読み返していた。特にファシズム下の戦前に書かれた短篇が、痛切である。石川淳は、和漢洋〈仏文学〉に通じ、キリスト教とマルキシズムの勉強をもしていた該博の文人だったが、デビュー時から晩年にいたるまでアナーキーズム標榜一本槍の作家だった。難解といわれ、いまも、太宰治・坂口安吾ほどには読まれていないが、アメリカのポストモダン小説、ラテン・アメリカのマジックリアリズムを通過した読者なら、こんなにストレートでわかりやすい作家もいない。日中戦争下、「文學界」に発