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ヒジェは、10日程を我が家で過ごすと、ひとり安州へ戻って行った。別れ際のヒジェら家族の様子——人目を憚らず泣き崩れたソニを、ヒジェが娘を抱えながら抱き寄せ、その娘…ソヨンも幼いながらに感じ取っていたのだろう…父親の胸に、ぎゅ、としがみついて、なかなか離れようとせず……その光景はあまりにも——皆(みな)承知の上ではあったが、見守る事すら切なくて……イムジャなどは堪えきれず、俺の背に隠れて泣いていた。我が家の子ども達…タムはさすがに理解していたようだったが、ミスとオンは元気よく「ヒジェアジ
「よろしいですか?大護軍は、過度な差し上げものがお嫌いです。故に、手土産は簡素にしなければなりません。でないと、門前払いにあいます」と、私の目の前で力説されているのは——先の戦でも武功をあげられた、東北面兵馬史のイ・ソンゲ将軍だ。とりあえず大人しく拝聴してから、私は思ったままを口にする。「それは、ご自身の経験からですか?将軍」「う……まぁ、そうです。清廉潔白な方だから、世辞やごますりもお嫌いで……あ!それと、何より気をつけねばならないのは、夫人のお姿に見惚れない事です」「医仙様…華陀
夏の日差しが眩しくなる頃、安州のヒジェさんとソニの間に、無事に娘が生まれたと知らせが届いた…!母子ともに経過も良いとの事、本当に何よりだわ。しかも、そのうち都見物に連れて行く、だって……きゃ〜♡「会えるのが楽しみだわ〜!ソニは高齢出産だから心配したけど、本当に良かった…スンオクも、おちおち寝込んでられないわね。可愛い孫のお世話があるんだもの」「そうですね。以前より元気になるやもしれません」「うん!きっとそうね」春先、スンオクが体調を崩していると、ヒジェさんから知らせを受けて
恵妃様の胸の内を聞いてから、私は出仕する度に、恵妃様の居所へ寄らせてもらう事が増えた。もちろん、坤成殿(コンソンデン)の王妃様の所へ行くのが、メインではあるけど……ご懐妊以降は王妃様の悪阻もあって、坤成殿での女子会は無く、診察するだけで、王妃様とゆっくりお喋りする事も減っていた。王妃様の体調が思わしくないせいで、叔母様達、王妃様付きの女官は、常にピリピリしていて……あらゆるものを疑い、遠ざける傾向にあったから——「叔母様のお立場もお気持ちも分かります。でも、周りの人間がそんな怖い顔をして
「——チェ尚宮様!こちらにいらっしゃったとは、なんという偶然……これはもう、やはりそうか……」呼ばれて顔を向けてみると、興奮気味のアン•ドチが、何やら口ごもりながら、早足でこちらへやって来る所だった。ここは王宮の片隅。塀の向こうはもう市井だ。ひとけの無いここは、かつて慶昌君様が、独りになりたい時によく隠れておられた場所。ヨンを伴にして、よう過ごされていたもの……あの頃、アン内官は王様と共に元国に——それ故、慶昌君様のご様子は知らぬだろうな……私はあれこれへ思いを寄せつつ、さわさわと落
康安殿(カンアンデン)を後にし、俺の足は真っ直ぐ典医寺へ……行きたかったが、そうは出来なかった。濡れ衣を着せられた武功の将達を、このままにはしておけない——アン•ジェに禁軍の内側からの情報、セクらには朝廷の動き……手裏房にも繋ぎをつけ、キム•ヨンらの腹を明かす為、俺はあちこちへ顔を出して回った。そして、“王宮の事情ならチェ尚宮に聞け”……訪ねて部屋へ行ってみると、いつも以上に渋い顔をした叔母が、「ご苦労だったな。まぁ、座れ」と、俺が来ると分かっていたように——俺は、小さな卓を挟んで
「ユン侍医!ユン侍医は居るかッ?!」鬼神の悲鳴にも似た怒号——これは大事(おおごと)だ。絶対、医仙様絡みだ。血相を変えたどころでは済まない、身震いするほどの鬼の形相……その様子が容易に頭に浮かんで、一気に全身の血の気が引く。それでも、俺は勇気を持って迎え出て——「大護軍様、どうされ……!医仙様!!」大護軍様が抱き抱えているのは、真っ白な顔でぐったりと沈み込んでいる医仙様——!!予想以上に恐ろしい光景に、急いで診察台へ医仙様を寝かせてもらうと、俺は大護
そろそろ妊娠5ヶ月目。目立ち始めたお腹を抱え、私のマタニティライフは順調に続いていた。王宮への出仕は月に2回ほど…王妃様の事は、ユン先生とトギがいてくれるから安心。毎朝の超苦い青汁はルーティン。タムとまだ手のかかるミスの世話には、人手を増やしてもらっている。悪阻(つわり)は軽めで治まり、今は食欲との闘い……太り過ぎないように気をつけながら過ごす毎日だ。そんな中、ヨンはというと、毎度ながら心配性に拍車がかかっていて、子ども達の目も気にせず、必要以上に私にべったり……ある日なんかは、ベッ