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ヨンからの「今夜は帰れない」という伝言を持って、テマンがうち(チェ家)にやって来たのは、お昼を回った頃だった。お昼抜きのテマンにランチを用意すると、その食べているすぐ脇で、ミスとオンが戯れあって遊んでいて……それを微笑ましく見守りながら、私はテマンに遠慮なく聞いた。「何かあったの?急に夜勤なんて。ね、その地獄耳で何か聞いてない?」テマンはゲボッ、とご飯を詰まらせて、水をゴクゴク飲み干すと、私をひと睨み…「人聞きの悪い言いかた、しないでくださいよ。えっと……興王寺(フンワンサ)って、言っ
ウンスはというとタンを預けてムンチフという人の部屋に訪れていた。そこで事情を話す。「私はウンスといいます。息子はタンと」今から信じられないことを話します。まっすぐその人をみつめてながら語る。「ここがどこかは知りません・・私たちの世では過去と呼ばれている時代になります」「それはどういうことなのだ?」当然の質問だろう。どうやって説明すればいいのか。悩む。はるか・・遠いよ・・つまりですね。あしたのあしたの世界とでもいいましょうか?悩みながらなんとかつげた。ムンチフさんは難しい顔を変え
無事に南国の衣装も選べた。ウンスはご機嫌でヨンに腕をからませて歩く。一度ホテルに戻ると日焼け止めクリームを塗り水着に着替えてその上にパーカーを身に着けて出発。「船にのって・・クジラを見にいこう」「わかっているとおもうけど」あくまでも運が良ければみられるし運がなければみられない。「わかっているわ」それが自然というものでしょう。いいのよ。クジラが見られないとしてもあなたと船の旅ができるれば。風を感じて海を感じて目閉じる。「ヨンァと旅ができることが嬉しいの」「そうか」ヨンはさ
「「ここは本の世界だという。ウンスは考え込む。目の前にある扉を開けろと言われた。「どうなっても知らないから」扉に手をかける。するとウンスは気が付けば見知らぬ部屋に立っていた。ここはどことあたりを見て回す。「馬鹿作者・・説明もないわけ?」視線を向けると見知らぬ男がだらしなく転がっている。そこはかろうじてベッドのようだ。私にどうしろというのよ。身動き一つ取れない。男が目を覚ます。本当に寝ていたらしい。かっと目をあける。次には目の前に出されたのは小さなナイフ。切れ味抜群。「おまえは
「——お寺へ懐妊祈願に?」回診終わりのいつもの女子会。今日は坤成殿(コンソンデン)の東屋で、王妃様と恵妃様との3人会になっている。王妃様が、柔らかな笑みを湛えながら、「はい。このところ体調が良いので、行ってみたいのです。もちろん、遠くまでは行きませぬ。ほど近く良い寺がありますので……行ってもよろしいですか?医仙」ずっと体質改善に取り組んでこられた王妃様。私が高麗へ戻って来てから一度は懐妊されたけど、残念ながら流れてしまって……そのあとだったわ。王様に側室を、と、いじらしいほど頑なに
秋も終わろうかという、ある日の夕刻。思いがけない知らせは、突然やってきた。「ヒジェヒョンとソニヌナに、子どもが出来たって!!!!!」息を切らしたドンジュが、文字通り我が家の玄関へ飛び込んできて、大声で叫んだ。その手に握りしめた手紙は2通。ヒジェからのそれは、1通はドンジュ宛て。もう1通は俺宛てだった。「ソニが??ホント?やった!」「うん、来年の夏頃生まれるって!」「わぁ〜!おめでとう、スンオク!今夜はお祝いね!ね!」イムジャとドンジュは小躍りする勢いで。ギチョンら用人の仲間
陽が西に傾き始めた午後。私、チョン•モンジュは王室の書庫で過ごしていた。——書庫が好きだ。古い紙と墨の醸し出す匂い。埃が日差しの中にゆっくり漂う様は、何とも美しいと思う。余り人が来ないのも良い。落ち着いて考え事が出来る、実に静かで良い場所——「……ああ、これはここじゃない……ん?こっちかな。あれ、いやいや…」静寂を乱す侵入者がひとり、書庫に入って来ては、独りごちながら書物を片付けている様子。見れば、康安殿(カンアンデン)の内官…その余りの無能振りに、呆れて声をかける。「それ
闇夜というのは恐ろしい——今宵ほど、そう思う夜はないだろう。下弦でもいい、僅かでも月の光があれば、どんなに心強いことか……夜鐘が鳴った後の人通りの途絶えた都を、数頭の馬が静かに歩を進めている。王様のお忍びでの興王寺(フンワンサ)詣のお供は、キム上護軍の部下を先頭に、その後ろに上護軍、迂達赤副隊長、王様、そして私…アン•ドチの後ろにも武官が2名。お供の合計は6名………少ない。少なすぎる。しかも、1人は確実に武芸にたたない……あぁ…新月ゆえに闇夜ではあるものの、まだ市井の家々の灯り
「大掛かりな行幸ではなく、今宵密かに参る故、ドチャ、副隊長。2人は供をせよ」そう命じた時の、2人の驚いた様子……——さもあろうな。余も分かっている。己れがどれだけ、無茶をしようとしているか。チェ•ヨンから、危険だと散々聞かされている。その理由もしかり……興王寺(フンワンサ)に人を寄せ過ぎた事で、都の治安を揺るがしているのはすまないと思うが……だが、余も腹を決めている。此度こそ、キム•ヨンが如何な人間か——余にとって、必要な臣なのか。それとも、切り捨てるべき者なのか。見定めて
雪が降る前に、スンオクはソンゲに連れられて安州へ発った。(縫い上げた綿入れを持って)ソニに続いてスンオクまで、居なくなってしまった……淋しい。もちろん痛手だし。スンオクが居ない事に慣れるまで、私もヨンも、子ども達も大変ね……でも…良かったわ。そうしているうちに、もうひとつ、待ち侘びていたビッグニュースが——!その日、私はせり出たお腹を抱えて、久しぶりに典医寺へ出仕していた。王妃様の回診に行こうか…と腰を上げた時、「医仙様、医仙様っ」ユン先生が、こそこそと…でも、必死の形相で私
昨夜、イムジャの胸のつかえを聞いた。解決出来ないにしても、何かしらイムジャの心を軽く出来るものなら……と思って聞いてみたが——あれは、おそらく王様と恵妃様の事だろうな。恵妃様を診察をした折に、何か聞いたのか、気づく事でもあったのか。イムジャの語りから察するに……恵妃様はまこと、王様をお慕いなのだな。かたや王様は、王妃様一筋……最近は恵妃様へのお通いが無いという事まで、聞こえてくる。(トッキの戯言と思っていたが、今までも夫婦の営みは無かったのやも…)恵妃様はそれら全てを容認され、それ