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キャンディはしばらくその背中を見送っていた。そして何事もなかったように歩き出す。テリィも隣を歩いた。数歩進んだところで、彼が言った。「キャンディ」「なあに?」「どうして手を離した?」キャンディの足が一瞬止まりそうになる。「……え?」「さっき、俺の手を解いただろ」「……ああ」明らかに分かっている顔だった。「別に、なんでもないわ」「別に?」「ほら、挨拶するから、ね」「手を繋いだままでも挨拶はできる」「それは……そうだけど」テリィは横から彼女の顔を覗き込んだ。「俺と手
あの夜、雨に濡れた封筒を胸に抱きしめながら、テリィはようやく気づいた。自分はまだ、こんなにも彼女を求めていたのだと。何年ものあいだ、遠くから無事を願い、舞台へ立ち続けることで、自分の人生を繋いできた。けれど――キャンディから届いた返事は、その静かな諦めを、やさしく壊してしまった。『あなたに会いたいって、心からそう思ってる自分に気づいたの……』その一文を、テリィは何度読み返したかわからない。読み返すたび、胸の奥で何かが脈打つ。まるで止まっていた時間が、再び動き出していくように。そして
会場に足を踏み入れた瞬間、空気が少しだけ重く感じられた。遅れて到着した、からではない。音楽は流れ、グラスの音も、笑い声も、予定通りにそこにある。それなのに、どこか違和感がある。名代として立っているはずの場所に、彼女の姿が見当たらない。(……おかしいな)彼女は、緊張はしても、責任を放り出すことはない。気分が悪いなら、必ず誰かに伝える。「ミス・キャンディスは?」近くのスタッフに声をかけると、少し慌てた表情で答えが返ってきた。「はいっ!少し……気分が優れないとのことでして、席を外され
マーチン医師への挨拶を終え、診療所を出た頃には、陽はずいぶん高くなっていた。「次はカートライトさんのところ?」テリィが尋ねると、キャンディは少し考えてから首を振った。「まだ時間があるわ。少し遠回りしていい?」「いいよ」「せっかく来たんだもの。村を案内してあげる」そう言って歩き出したキャンディの足取りは、どこか弾んでいた。少し歩いたところで、テリィは自然にキャンディの手を取った。キャンディは一瞬だけ彼を見上げたものの、何も言わず、その手を握り返した。二人はそのまま、のんびりと村の
MalloryQuinn作、キャンディ・キャンディ海外2次小説「Tomorrowifyouwant(明日でもよければ)」を読み終えました。CandiceWhiteisayoungdoctor,whomeetsTerrenceGrandchesterabusinessman.incharityreceptionandtheyhititoffprettyfast...キャンディス・ホワイトは若い医師で、チャリティーのレセプションでビジネスマ
「キャンディがまだ小さかった頃な。畑の向こうに大きなリンゴの木があって――」「その話は駄目!」キャンディが慌てて遮る。テリィはイタズラっぽい瞳を向ける。「どうして?」「え?な、なんとなく」「そりゃ、ますます聞きたいな」「テリィ!」男性はニヤリと笑うと構わず続けた。「一番上の枝になってるリンゴが一番甘いって言い張って、するする木に登っていったんだ」テリィがキャンディを見る。「……きみならやりそうだ」「昔の話よ!」「ところが、登ったはいいが降りられなくなってな」「まだ、その
ポニーの家へ来てから、三日目の朝を迎えていた。6月末に公演を終え、次の仕事が始まるまでの短い休暇。その限られた時間の中でポニー先生とレイン先生へ婚約を報告し、キャンディとともに過ごし、その後はシカゴへ向かってアルバートにも正式に挨拶をする予定になっている。だから、のんびりしているようで、時間はいくらあっても足りなかった。朝食を終えたキャンディが、テリィへ声をかけた。「今日。マーチン先生と、カートライトさんの都合は良いそうよ」「そっか。じゃあ行こう」どちらもテリィには馴染みのある名前
駅へ向かう車の中は、不思議なくらい静かだった。気まずいわけではない。話したいことがなくなったわけでもない。むしろ逆だった。話したいことなら山ほどある。伝えたいこともある。けれど、それを口にしてしまえば、本当に別れの時間が来てしまう気がした。だから二人とも、どこか言葉を選んでいた。窓の外を流れるニューヨークの街並み。昨日は二人で歩いた場所も見える。ほんの数日前までは存在しなかった思い出だった。やがて車は駅へ到着する。巨大な駅舎は今日も人で溢れていた。ホームへ降りると、すでにシカゴ行きの寝
こんにちは、またまたロキソです昨日から匂わせていた(本人はそんなつもりなかったのですが😅)『StoriesAtoZ』の【P】のお話を、本日投稿いたしました!予告をしてしまったら、もう自分の中で止められなくなってしまって(笑)食い気味の投稿となりました😅投稿順でいくと【O】の次になるため、慌てて【O】を投稿した次第です😓ちなみに、昨日別記事で今を折り返しと表現しましたが、折り返しというのは、アルファベットの歌を歌っていくと、ちょうど「〜LMN」で一呼吸しますよね?!ここを折り返し
11年目のSONNET・終章――EternalCoda――エターナル・コーダ世界大戦の後、1919年に締結されたヴェルサイユ条約によって、厳しい制裁を科せられた敗戦国ドイツ。巨額賠償金、領土縮小、極端な軍備制限――世界恐慌の煽りも受け、屈辱と失業の深刻化の中で不満を募らせていくドイツ国民。ヒトラー率いるナチ党は、それらを覆すと力強く約束することで支持を拡大、再軍事化を開始した。「ゲルマン民族※は一つの帝国に統
★★★1-10「なるほど、公爵家の・・グランチェスター閣下のご長男、幹部候補ですな」クッキーの案内により、テリィは初めてこの船の指揮官であるインネン中佐の部屋へ通された。壁に貼られた大きな海洋地図と大陸地図が、不気味なほど威圧感がある。中佐は殆ど癖のように後ろに手を組みながら地図を見上げ、ぼそっとつぶやいた。「絶望的だ・・」テリィは一瞬、思考が止まった。中佐は今、何と言ったのか。速まる動悸を感じながら次の言葉を待った。「もはやフランスも持ちこたえられない。・・イタリアが
モンヒーガン島からは、夏の賑わいが静かに遠ざかっていた。レイバー・デーが過ぎると、島は長い呼吸をひとつ吐き出すように、本来の静けさを取り戻していく。桟橋に積み上げられていた大きなトランクはいつの間にか姿を消し、あれほど賑やかだった通りには、いまや島の人々の穏やかな足音だけが残されていた。日が傾きかけたころ、キャンディスは白衣を脱いだ。「ああ、キャンディ。君に手紙が来ていたよ」帰り支度をしていたキャンディスは振り返った。島の医師エドワード・パーカーが、机の上から一通の封筒を取り上げる。差
長い救護活動を終え、ようやく自宅の扉を開けた。玄関を閉めた瞬間、耳にこびりついていたサイレンや人々の叫び声が、まだ頭の奥でこだまする。静けさが返ってきたはずの家が、むしろ不気味に思えた。マーサが振り返り、小声で「おかえりなさいませ」と言ってくれる。その目に浮かんでいたのは安堵と心配。彼女は眠る子を見守ったまま、気遣うように静かに立ち去った。ここは安全な場所だ。そうわかっているのに、胸の鼓動は荒く、肩は強張ったままだった。寝室へ入ると、ベビーベッドの中で長男が小さな寝息を立てていた。
ロンドンの朝は、音が少ない。特に冬に近づく季節のタウンハウスは、夜の余韻をそのまま抱え込むように、目覚めの時間さえ、慎重に選んでいるようだった。カーテンの隙間から、淡い灰色の光が差し込む。それは、もう朝であることを告げているのに、急かす気配はどこにもない。キャンディは、最初に「重み」で目を覚ました。(あれ?)自分の胸元に、温かいものがある。腕、それから、呼吸。ゆっくりと瞬きをして、視線を落とす。そこには、テリィがいた。自分のベッドの上で。いや、正確には自分のベッドの中で。「…
キャンディ♡キャンディファンサイトこのページは、キャンディキャンディ二次小説「11年目のSONNET」の続編を投稿中です。初見の方は「サイトmap」又は「第1話」からご覧ください♪続編の第1話はこちらから。コメントは承認制の為、反映されるまでにタイムラグがあります。★★★1-11ドーバー港は異様な雰囲気だった。船は一隻もない。どこから集まってきたのか、埠頭には白いエプロン姿の女性たちがやけに目立つ。作業の傍ら時折顔を上げ、沖に目を凝らしている。ク
夜更け。ポニーの家は静かな眠りに包まれていた。子どもたちの寝息だけが、廊下の向こうからかすかに聞こえてくる。ジョシュアは眠れなかった。キャンディから聞いた言葉が、何度も胸の中で繰り返される。――私は、ジョシュアを信じてる。――みんな、あなたに幸せになってほしいって願ってる。うれしかった。それなのに、胸は苦しかった。喉の渇きを覚え、静かに部屋を出る。キッチンの扉を開けると、窓辺に一人の男が立っていた。月明かりに照らされた横顔。テリィだった。テリィが人の気配に気づき振り返る。「君も…
TheTomboyandtheRebelAristocrat妄想日記おてんばちゃんとヤンチャ貴族覚書⑩AI画像アートスタイルあっという間に2026年も7月となりました。この妄想日記を始めた昨年の秋の時点での予定では、今頃はテリィが劇団を退団し、写真学校に入学するまでの長期休暇を描く予定でした。その長期休暇で、キャンディと長男と3人でシカゴにに行くシーンを描く予定でしたが、思うように妄想日記が進展していませんこの妄想日記The
ニューヨークの夜がゆっくりと深まり、窓の外では無数の灯りが川のように流れていた。ペントハウスの室内は温かな明かりに包まれ、テーブルには夕食の支度が整えられている。玄関の鍵が回る音がして、キャンディは振り向いた。「ただいま」いつもよりわずかに低い。そして視線はすぐに、右手に巻かれた包帯に止まった。「テリィ、それ……どうしたの?」「ん?稽古中にちょっとぶつけただけだ」さらりと答えるが、その手をかばう仕草が隠しきれていない。舞台転換の暗がりの中、舞台セットが予定より前に出ていてたまに
五月の柔らかな陽射しが、ニューヨークの街を照らしていた。キッチンには、じっくり煮込まれたビーフシチューの香りが広がっている。鍋の中では、牛肉と野菜が静かに湯気を立て、ことことと心地よい音を響かせていた。木べらをゆっくりと動かしながら、テリィは小さく息をつく。「……難しいな」その独り言は、ビーフシチューのことではなかった。二か月ほど前。二月の終わり、シカゴでキャンディと過ごした帰り道。駅で別れ、一人ニューヨークへ戻る列車の中で、テリィは決めていた。――次に会えたら、結婚を申し込もう
ブログ主が小学生だった時に迎えたなかよし最終回それ以降どんな時でも心の片隅にはキャンディとテリィのことがありずっとふたりの幸せだけを願ってきましたファイナルでふたりは結ばれましたがあの時の心の傷が完全に癒えることは今後もないのでしょうそこでどんなセリフだったらここまで引きずらずに済んだのか…を考えてみました『けっしてきみのことは、きらいじゃない』ブログ主はテリィの全てが大好きなのですがこれだけは本当に無理でしたこの一文だけに注目すると中間〜やや好意寄りの表現に
今日はキャンディの誕生日ですねキャンディ熱が再燃したのは4年程前小学生以来うん十年ぶり(笑)久しぶりに読み返した漫画本その後「小説キャンディキャンディFINALSTORY」の存在を知りました漫画やアニメには描かれていないテリィとのエピソードやテリィの気持ちが言語化されているシーンに喜びを感じましたしキャンディが幸せに暮らしていることは良かったなあと思いましたでも・・・あのひとは誰なの?ブログ主はもちろんテリィ一択です作中のあちこちに散りばめられてあるヒントはテリィを連
木立の向こうから聞こえてきた会話は、最初は偶然だった。立ち去ろうと思えば、いつでも立ち去れた。だが、一歩を踏み出そうとしたその瞬間――テリィは、その場を動けなかった。「テリィに私は傷つけられていない。寧ろ、その逆……私が彼を傷つけたの」その言葉が、足を止めた。胸の奥で、何かが音を立てて崩れていく。――違う。思わずそう叫びたくなった。傷つけたのは俺だ。ずっと、そう思ってきた。スザナの事故、責任。あの日、キャンディは「私帰るね」と静かに言った。別れる、とは言わなかった。それでも分
8月に久しぶりに子供時代の友人に会った際、キャンディキャンディの漫画だけは持っていると聞いて、子供時代に仲間が少なくあまり聞くことができなかったあの質問を今更に投げてみた、そう、やってみたかったのです「誰が好きだった?テリィ?」「そうねえ、テリィはないねだれだっけ、名前忘れたけどあの兄弟の性格のいいほうの・・・」「ああ、ステアね」テリィ推しの自分ですが、好きな男性に順番につけるとすると1テリィ2アンソニー3ステアなぜアルバートさんがいないのか理由
ジョシュアは何も言えなかった。彼女が信じていたのは、都合のいい未来ではない。傷つくことも、苦しむことも知った上で、それでも前へ進むという自分自身の覚悟だった。その強さだけは、痛いほど伝わってきた。キャンディはそんなジョシュアを、優しく見つめる。「でもね、ジョシュア」その声は、今度は彼へ向けられていた。「あなたも今は、信じられる人たちに囲まれているでしょう?」ジョシュアが顔を上げる。「メイがいるし、ポニー先生も、レイン先生もいるわ」キャンディは穏やかに微笑んだ。「マーチン先生
カフェを出た頃には、時計の針は午後四時を回っていた。シカゴの冬の日は短い。空はすでに夕暮れの色を帯び始めている。二人は肩を並べて街を歩いていた。言葉がなくても平気だった。隣にいるだけで満たされるような時間だった。通りにはホリデーシーズンの名残を残した飾り付けがまだ見える。劇場や映画館の看板には大きなポスターが掲げられ、人々が足を止めては見上げていた。その時だった。ふいにテリィの足が止まる。キャンディも立ち止まった。何かあったのだろうかと思いながら視線を追う。そこには映画館があった
ポニーの家の大きく開け放たれた窓からは、焼きたてのクッキーの甘い匂いが午後の風に乗って流れ、丸いテーブルには、湯気の立つ紅茶が静かに並べられている。そのテーブルを囲むように座っているのは、キャンディ、アニー、そしてパティの三人。それぞれが別々の場所で新しい時間を生き始めてから、以前のようにただ他愛もない話をしながら笑い合う時間は、いつの間にか少なくなっていた。だからこそ、こうして三人だけでゆっくり顔を合わせる午後が、たまらなく懐かしく感じられるのだ。ポニーの家の窓を揺らす風も、遠くから聞
★★★1-2©いがらしゆみこ画像お借りします「・・大丈夫だよ、パティ」一瞬、パティの目には夫の顔が若き日の恋人ステアと重なった。「僕はアメリカに住んでいる。徴兵は拒否できるはずだ」「ほんと・・?」夫の言葉に救われたようにパティは顔を上げた。「でも、国籍はイギリスのままだろ?」瞬間、テリィは不用意な事を言ってしまったと感じ「領事館に確認してくる!」と走るようにアパートを後にした。ブロードウェーにあるイギリス領事館には、さほど多くの人は訪れ
八月の終わり。窓を開けると、まだ残る夏の匂いのなかに、ほんのわずかだけ秋の気配が混ざり込んでいた。スザナは机の上に、小さな紙袋をそっと置いた。中に入っているのは、一枚のレコードだ。あの日、テリュースの心をあれほど揺さぶった曲を、自分も同じように、きちんと聴いてみたいと思った。蓄音機にレコードを載せ、そっと針を落とす。小さな針が刻む雑音のあと、静かな音が部屋を満たし始めた。A面に収録されていたのは、あのときラジオで耳にした曲だった。『汽笛の彼方へ』細やかな音が絶え間なく重なり合い、やがて静寂
夜はすっかり更けていた。窓の外では、ニューヨークの街の灯りが静かに瞬いている。部屋にはもう言葉はなく、穏やかな静けさだけが流れていた。キャンディはテリィの腕の中にいた。彼の胸へ頬を寄せると、規則正しい鼓動が耳に伝わってくる。その音を聞いているだけで、不思議と心が落ち着いた。テリィは彼女の肩を優しく抱き寄せ、そっと金色の髪を撫でる。しばらくして、キャンディが小さく口を開く。「……ねえ、テリィ」「ん」「プロポーズ……とてもうれしかった」その声に、テリィは思わず苦笑した。「……あん
スザナの葬儀から、数か月が過ぎていた。春が近づき、街の空気は少しずつ柔らかくなっていたが、テリィの周囲にはまだ、どこか冬の残り香のような静けさが残っていた。劇場の稽古場では、次の作品の準備が進んでいた。長いロングランを終えたばかりの彼にとって、新しい舞台は新たな出発でもあった。その日、劇団の一室で次作の発表会見が開かれていた。テリュース・グレアム主演、新作舞台。劇団にとっても大きな作品になる。フラッシュが焚かれ、記者たちの質問が続いた。「今回の役柄について教えてください」「前作の