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キャンディの「今」をろくに調べもせずに出したようなテリィの手紙の文面。短いながらもテリィらしさ全開の文面は、突っ込みどころ満載です。再現度100%の全文に登場してもらいましょう。キャンディ変わりはないか?……あれから一年たった。一年たったら君に連絡しようと心に決めていたが、迷いながら、さらに半年がすぎてしまった。思い切って投函する。――ぼくは何も変わっていない。この手紙が届くかどうかわからないが、どうしてもそれだけは伝えておきたかった。T・G書いたのはいつ?
★★★2-5黒い車に先導され赤い車が後に続く。大きな正面玄関のすぐ脇に車を停めると、玄関を入って少し進んだ所にある部屋に通された。大きなガラス越しに手入れの行き届いたトピアリー、色鮮やかな花壇や噴水が見える。部屋の奥にある大きなデスクと革張りの椅子が、いかにも大富豪の執務室といった趣で、中央には大きなソファがローテーブルを挟んで向かい合っていた。「こちらでお持ち下さい。お口に合うか分かりませんが、そちらのドリンクと食べ物をご自由に」ジョルジュは退室し、一人残された
★★★2-17「―・・キャンディ、俺・・イギリスへ行くんだ」「・・え、また?この前行ったばかりよね?随分頻繁にあるのね」「・・いや、公演じゃなくて、――いや、公演だな。・・実は昨日でストラスフォード劇団を退団したんだ。今度イギリスの劇団で芝居をすることになった」突然の告白に、キャンディは一気に混乱する。「・・・イギリスに、帰るって・・言っているの・・?そうなの!?」頷くようなテリィの動作に、キャンディはショックを隠し切れない。「どうして!?どうして今になって・・。こんなにアメリカで
★★★6-14「何ですって、二人はもう出発した!?」四階のラウンジでモーニングコーヒーを飲んでいたアルバートの前で、アーチーは声を荒らげた。「村に移動するならお昼すぎでもいいのにっ、相変わらず勝手な奴だな!!」口ではそう言いつつも、テリィとろくに話ができなかったことを、アーチーは心残りに感じた。「テリィは最初からそのつもりだったようだ。ここに迷惑はかけられないって。――これを読みたまえ」アルバートは届いたばかりの新聞をアーチーに渡した。電撃結婚!テリュース・グ
★★★7-5「皆がお昼寝している間に、ポニーの丘に散歩に行かない?」そろそろお疲れかしら?と思ったキャンディは、三時のお茶が済んだ頃テリィを誘った。キャンディの好意を即座に察し、「いいよ」と答えると、テリィは一冊の本を手に取った。「・・この木?君が木登りの練習をしたっていうのは」テリィは大きなナラの木を見上げた。全ての葉が落ちた今の季節、空に高く突きだす煙突のようだ。「そうよ。お父さんの木って呼んでいるの」「へえ、お母さんの木もあるのかい?」辺りを見回すテリィに、キャンディはそん
★★★4-22あれはワルツなのだろうか。基本のステップを守ってはいるようだが、だいぶアレンジが効いている。踊っているカップルは気付かなくても、踊りを眺めているだけの人間には丸見えだ。「ワルツってあんな風に自由に踊っても様になるものなんですね~」愛を語らっているような二人の舞いに、感嘆のため息を漏らす者もいたが、多くの若者は全く邪道な理由でそんな二人に釘付けになっていた。「足がまた止まった、何かするぞ」「今度のキスはどこだっ」若者ほど、些細な事が気になるようだ。「・・彼女、さっきと
※このお話は、本編エピローグの冒頭の一文をピックアップした物語です。本編を未読でも読めるようになっています。前回のスピンオフ業火の劇場の1ヶ月後の出来事です。★登場人物・・・アルフレッドテリィのアメリカ時代からの旧友(劇団員)。ややぽっちゃり体型。どんな人物だったか知りたい方は、5章アルフレッドの告白をご覧ください。アルフレッドの独白11年目のSONNETスピンオフ★★★焦げ臭さの残る黒い地面とは対称的に、透き通るエイボン川は淀みなく、抜ける
★★★2-6それは先ほど眺めていた、緑の瞳を持つ女性の肖像画だった。「ローズマリー・ブラウン。歳の離れた僕の姉だ」歳が離れていると言われてもテリュースにはピンとこなかった。二十代に見えるこの貴婦人がアルバートさんの姉だという事だけを頭に入れた。「姉は幼いアンソニーを残して若くして亡くなった。ばらを愛する優しい女性で、自慢の姉だった」「亡くなった・・?アンソニー・・?」どこかで聞いたことがある名前―・・・。少し考えてテリュースは思い出した。夭折したキャンディのばらの君―なんども
★★★7-2「なんだか不思議―」見慣れた無人の駅舎に降り立った時、キャンディは言った。「村を出る時はジョルジュに重いトランクケースを運んでもらったのに、今回は手ぶらなんて」「手ぶらって、俺に持たせているだけだろ」「まぁっ!イギリスへ行く時、あなたの巨大なトランクケースを持ってさし上げたのは誰?持参したトランクケースの数、忘れたわけじゃないでしょうねっ」「あれは商売道具。それに比べこの中は何だ?お土産のチョコ、クッキー、絵本にパズル、そして君の衣類。ニューヨークの家にジャムの瓶を置いて
★★★5-11翌朝、劇場の駐車場にとめた車の中で、ジャスティンは大きなあくびをしていた。旧友から渡された切り抜きに一晩かけて目を通したが、かえってテリィの株が上がっただけだ。――イギリス公演・大成功を収める!スザナ・マーロウと年内に結婚かスザナ重病!?事故の後遺症か。結婚式延期テリュース・海外公演キャンセルし献身看護悲運のジュリエット・スザナ愛するロミオ・テリュースに抱かれ永眠未入籍はテリュースへの愛憔悴テリューススザナの葬儀に無言の参列
★★★4-13――お守りよ今日はずっとあなたの側にいてあげる誰に何を言われても気にしないでキャンディの言葉を噛みしめる様に、テリィが本番前のリハーサルに行くと「みんな聞いてくれ、カレンが体調不良で声が出ないそうだ。オフィーリアは代役を立てる。テリュース、シャロンと入念に確認を。ナイルを発端にどうやらこの手の風邪が蔓延している。注意しろ!」監督のリーチが檄を飛ばすように言った。「あ~、この喉の痛みの発生源はナイ
★★★5-10ここにも敗北を悟った人物がいた。ロミオ役を争ったジャスティンだ。ロミオ役を射止めたのはテリュース・グレアムだった。オーディション会場に現れたテリィは、ロミオに模して髪を切り、学生のような容姿になっていた。斜に構えたような本来の雰囲気が完全になりを潜め、入れ替わるように前面に現れた生来の色香で、恋に一途な青年を見事に演じきる。ついこの間まで危ういほどの狂気を漂わせた人物を演じていたというのに、その演技のふり幅は圧巻としか言いようがなく、審査委員の満場一致で即日決定した。「何
思い出を糧として生きていく22才以降に書いた(と思われる)アンソニーへの手紙の中に、この頃のキャンディの気持ちが登場します。「生きていても、会うことがかなわない運命があることも知ったのです」下巻327やはりテリィのことはすっかり諦めています。ただし、相変わらず生きることには前向きで、亡きアンソニーに向けて次のように語っています。「生きていれば希望を抱ける――(中略)哀しいこと、うれしいこと、すべての思い出を糧として、わたしはわたしらしく、生きて生きますね。真っ
★★★5-14「今度は最終日に観たりしないわ。何度でも観られる様に・・!」キャンディはそう言って、公演の前盤に『ロミオとジュリエット』の観劇に訪れた。しかし観劇を終えたキャンディの表情は暗く、帰りの車中小さな声でつぶやいた。「お芝居はすごく良かったけど、もう見ない・・」家に着くとテリィはキャンディの誤解を解くべく、説得にあたった。「嫉妬するなよ、あれは演技だって」すねているように見えるキャンディを半ばからかうような、真剣みのない口調。「別にキスシーンなんか気にしてないわっ」キ
★★★4-17「そろそろ劇場に行く準備を始めないと―・・」時間の経つのも忘れておしゃべりに花を咲かせていた二人は、ようやくアフタヌーンティの守備範囲を超えていることに気が付いた。「今夜のドレスはもう決まっていて?」エレノアの問いかけに「いえ・・まだ、、ドレスはたくさんあるんですけど・・」キャンディは眉を八の字にした。キャンディはこのジャンルが苦手だ。シカゴではいつもこの役はアニーが担当してくれた。「それなら一緒に選びましょうか?コーディネイトは得意なの。お手伝いさせて」キャンデ
★★★1-3テリィの演じるハムレットは瞬く間に評判になり、劇団創立以来の大ヒットを記録した。秋の公演に続き冬の公演、春の公演と延長が決まり、役者として順調にステータスを築き上げていく様が、手に取る様に分かった。大人びた顔つきや一回り大きくなった体格からは自信も垣間見えた。テリィのお芝居を観ることが決して叶わない夢だと分かっていても、自分が応援団長にでもなったかのようにテリィの活躍が嬉しくて、記事を目にする度心が躍った。ハムレットの初演から一年あまりが過ぎた頃、世界を巻き込んだ戦争が
★★★4-21アルバート達と殆ど入れ替わる様にして、ハムレットの出演俳優たちが続々と会場に姿を現した。真っ先にお偉方へ挨拶に向かう一行。その様子を遠巻きに観察している招待客達。その視線を阻むように、テリィは挨拶が済むや否や移動を開始した。タイミングを誤ると一斉に囲まれ、逃げ場を失うからだ。(キャンディ達はどこに・・)おとなしく壁の花に収まっているはずがないと思っていたが、案の定花の蜜に寄ってくるように、キャンディの周りには、目障りな蜂が一匹、二匹、三匹。(ちっ、油断も隙もないな・・
謝っていないスザナテリィに会いにNYへ行ったキャンディは、自分の手紙がスザナによって(殆ど)隠されたことに対して憤慨しています。「私が出した手紙を隠されたように、もう、二度とスザナに邪魔をして欲しくなかった。はっきりそう言ってやろう、と意気込んでいた」下巻235ですが、スザナの自殺未遂の現場に居合わせたキャンディは急転直下テリィとの別れを決意します。その後、キャンディとスザナは病室で話をしたと思われますが、キャンディは手紙のことを話題に出せるような状況ではなくなりました。
★★★4-18劇場の係員にチケットを渡した時、エレノアはキャンディに訊いた。「テリュースに会わなくていいの?」「はい、開演前はもう役に魂が入っているから、終わってから楽屋に来てくれって。フフ・・役者って皆そうなんですか?あ、でも私たちが到着したことは耳に届いていると思います。さっきの案内係に伝言を頼んでおいたので」妻らしい配慮を見せるキャンディに、エレノアは目を細めた。「あの子がそうなだけよ。私は開演直前までおしゃべりをしているわ」予約したバルコニー席に入るとアルバートの姿はなかった
★★★7-6テリィが小脇に抱えていた本に気付いたキャンディは、針仕事をするからと先にポニーの家に戻った。一人の時間を作ってあげるのも妻の大事な役目。陽も大分暮れてきたというのにテリィはまだ戻ってこない。さすがに本の文字は見えないだろう。「ジミィ、テリィをよんできてくれる?ポニーの丘かその辺りにいると思うわ」夕食の準備で手が離せないとジミィを使うキャンディ。親分気取りは継続中だ。親分にそう言われると、子分もまた従順だった。「分かったよ、親分」気は乗らないが、逆らわない。「お
★★★6-6夕食会も終わり大御所たちが引き上げたタイミングで、イライザの金切り声が長い廊下に響いた。「あなたたちが何と言おうと、私は騙されないわよっ!」部屋に戻ろうとしていたキャンディとテリィの足は、階段を数段上った所でピタリと止まった。「――どうぞご勝手に」まだ言い足りないのかと内心舌を打ちつつテリィが振り向くと、イライザの三白眼がキラリと光った。「キャンディ、あんたって本当に卑しい泥棒猫ね。スザナが死んで傷心極まるテリィの心の隙間に押し入るなんて、図々しいったらないわ!」「イラ
★★★1-2翌日は朝から空が重く、午後になるとぽつぽつと降りだした雨が地面をぬらし始めた。「はあ~・・、降ってきたの」「・・ぬかるんだ地面に足をとられない様に・・気を付けて行って来てください・・」マーチン先生は、覇気がないキャンディの様子が気になっていた。今日のキャンディは包帯を巻く部位を間違えたり、診療代をもらい忘れたりと、集中力に欠けていた。(・・地に足がついていないのは、キャンディじゃろ)マーチン先生は一抹の不安を覚えつつも、往診に行く準備を終えた。「新患が来たら待たせてお
八神純子さんの曲で、「宇宙戦艦ヤマト完結編」(1983)の挿入歌だった「ラブシュプリーム至上の愛」をYouTubeで聴きました。私はこの映画を二度観に行ったくらい、当時は大好きでした。もう前にも書いたかもしれないけど、戦闘物はもともと好きでは無いのに、愛のために命を投げ出すヤマトのストーリーにすごく惹かれていたのです。八神純子さんのこの曲に乗せて流れた映像は、古代進と森雪のラブシーンいやぁ、当時中学生くらいだった私は驚いて照れました…古代くんは好きだったけど、森雪は好きではなか
★★★6-8広いルーフバルコニーに出たキャンディはしばらく顔を覆うように泣いていた。頬を伝う涙が、キーンと鳴るような真冬の冷気にさらされ、顔が凍るように痛い・・。全ての感情が凍りついたように、何も考えられなくなってしまった。天上には冬の星座が一面に広がっている。本宅の上に広がる雄大な星空。遮るものは何一つない。キャンディは白い息を吐きながら、夜空を見上げた。――あの時も星がきれいな夜だった。別荘からなんとか脱出したところを、探しに来てくれたアルバートさんに助けてもらった。
★★★2-20猛スピードで家に戻る車内でキャンディは気が付いた。「・・ねえ、このガタガタ聞こえる音は何・・?」「ああ・・、鉢だよ。後ろの座席にあるんだ。倒れてないかな」「鉢・・?」家に着いた途端、テリィは階段を駆け上がった。部屋の机の上には今朝書いたキャンディ宛の手紙と共に、小さな小包が揃えるように置かれている。「手紙はもう用済みだな・・」テリィは手紙を破くと、小包を手に取った。後部座席を覗いていたキャンディは、鉢の苗を見て目をゴシゴシとこすった。「これ・・、スウィート・キャ
息子の塾で。ある女子の生徒が、採点後に「先生‼️ここの問題(❌のところ)を⭕にして‼️してくれないと、この塾をやめて、ネットにこの塾の悪口書き込むからね。」みたいな発言をしたそう💧ひぇ~💧なんちゅうこと~💧イマドキの発言~💧って、驚いた‼️そもそも、そんなズルで⭕をもらっても意味ない、ってわからないところが、「子供だなぁ~😆」って思うけど、発言は怖いくらい大人😱昭和生まれの私。自分たちの小学生の頃と今の小学生の「違い」に驚愕することがある。特に「言葉」昭和世代の私が「普通」に使っ
★★★6-4テリィが客船でプレゼントしてくれた緑色のイブニングドレス。イギリスから持参して今夜の席に着たかったのに、何故かテリィは置いていけの一点張りだった。アメリカでなら着ていいと言われた記憶があるが、そんな意味じゃないと言うだけで、ろくに説明してくれない。そして一言、花嫁の父に最後の花を持たせるべきだ、と言ったので、仕方なく従うことにした。テリュース・グレアムの結婚の事実は、不思議なことにアメリカでは全く報道されていなかった。数か月前に新恋人と会っているところをゴシ
★★★8-3「・・・このポスターを貼った頃、俺には描いていた未来があった」テリィは壁に貼られたままのロミオとジュリエットのポスターを遠い目で見つめた。「君がこの小さなキッチンで朝食を作ってくれて、『いってらっしゃい』って送り出してくれる。疲れて稽古から戻ると『お帰りなさい』って迎えてくれて、その日あった他愛もない出来事を報告し合い、あの小さなベッドで君を抱きしめながら眠りにつく。そしてまた次の朝を迎える・・。ポスターに落書きを残して君が去った後も、その幻影はなかなか消えてはくれなかった・
★★★1-13母親からもたらされた情報に勇気づけられたとはいえ、実際に手紙を出すまでには、ニか月間のイギリス公演を挟まなければならなかった。このタイミングでの渡英は当初もどかしく感じたが、これもまた運命と言うのか、イギリスでは数々の予想外の出会いがテリュースを待っていた。それらに突き動かされるように、イギリスの劇団、RSC―ロイヤル・シェークスピア劇団と電撃的な移籍契約を交わすことになったのは、自分でも全く想定外の出来事だった。帰国後テリュースは直ぐにキャンディに手紙を書いた。移籍の時
★★★4-11代役テリュース・グレアム!彗星のごとく現る!二種類のハムレットを演じ分ける確かな演技力公演は順調に日程をこなして行った。雑誌の劇評は新生RSCと称し、代役テリュース・グレアムを『イングランドの新星』とほめたたえた。月がかわり、主演俳優を生活面で支える妻としての緊張感にも次第に慣れ始めたある日のことだ。その夜テリィは、いつもの時間になっても帰ってこなかった。ブロロロロ・・キャンディがウトウトしかけた時、エンジン音が聞こえた。玄関に迎えに出ると、おぼつかな