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その日は、朝から快晴だった。キャンディは赤十字の腕章を携えて、ニューヨークから少し離れた貧困地区での医療ボランティアに参加することになっていた。「帰りは一人なのか?」テリィは外套を羽織りながら、やや低い声で言う。「ええ。でも大丈夫よ。行きと逆を辿れば帰れるでしょう?」あっけらかんと笑うキャンディ。ニューヨーク在住のボランティア仲間が行きは案内してくれる。テリィは、まだ納得していない顔をしていた。「乗り換えを間違えるなよ」「大丈夫よ、間違えることはないわ」「迷ったら駅員に聞くよ
冬の午後。ロンドンの空は低く、灰色の雲が街を押さえつけるように垂れ込めていた。「スミス法律事務所」の重厚な扉の内側は、外の寒さとは切り離された静謐な空気に包まれている。応接室の暖炉には火が入り、赤い炎がゆらゆらと揺れていた。テリィは、椅子に深く腰かけ、静かに指を組んでいる。隣にはキャンディ。膝の上には、小さな革の手帳を携えている。向かいに座るのは、ブレア・スミス弁護士で、代々グランチェスター家の法務を担ってきた老紳士とその隣には、もう一人。帳簿を抱えた会計士ローレンス。今日は、舞台
【【再掲】】2025.12.11【再々掲】2026.2.20このたび、ブログ内にアメンバー限定記事を設けることにしました。一部の物語や少し深いお話など、ここでしか読めない内容をゆっくり綴っていく予定です。☝️アメンバー申請をしてくださる方は、ぜひ『ひとことコメントを添えて』ください。(例:好きな作品や、印象に残っている場面、感想など)※コメントはどの記事からでも構いません。どんなふうに物語を感じてくださっているのか、その声を少しだけ聞かせていただけたらと思っていま
バレンタインデーその前夜。寮の自室で、彼は机に向かっていた。赤い封筒が一枚。手は、思っていた以上に震えている。彼は、テリィと同じ公爵家の血を引く少年。セドリック・ウェントワース。だがテリィとは対照的で背は低く、丸顔で、少しぽっちゃりしていて、どこかいつも自信がない。成績は至って普通、運動オンチである。頼まれれば断れなくて、真面目に取ったノートも簡単に貸す。頼まれたら使い走りもする。からかわれても笑ってその場を凌ぐ。「いいやつ」と言われることはあっても、テリィのように「憧れられる」
初夏の夕方、空が急に暗くなった。ニューヨークの夕立ちは容赦がなく、石畳を叩く雨音が高まり、やがて空気が裂けるような雷鳴が響いた。その音を聞いた瞬間、キャンディの手が止まる。キッチンのテーブルには、切りかけの野菜。鍋ではスープが出来あがろうとしていた。もう一度、轟音。窓ガラスがわずかに震えた。(大丈夫よ……ね。たくさんの家があるもの)自分に言い聞かせる。実はキャンディは、雷が苦手だ。ポニーの家にいたころ、雷が鳴るたびに子どもたちは騒いだ。「怖い!」と笑いながらベッドに潜り込み、キ
秋の夜風が、ブロードウェイの街角を冷ややかに吹き抜けていた。ロミオを演じるためのオーディションを兼ねた稽古は、始まったころ。台詞を口にするたび、視線の先に立つ相手役が、ふとスザナに重なる瞬間がある。理性では稽古と理解していても、心の奥底でどうしても否応なく突き上げてくる記憶。車椅子に腰を掛けた彼女の笑顔、逃げるように背を向けた夜、交わした約束。その全てが、自分に突きつけられる刃のように胸を抉った。──キャンディと結婚した今でさえ。幸福で満たされている今だからこそ、過去の重みが影を落
「月が滑り落ちてきそう」上弦の月を見上げて、キャンディが言った。テリュース・グレアムは、地上に向かって星の河を緩やかに前進する舟を想像した。薄いグリーンの夜着が淡い光に透けている。その面積が徐々に大きくなる。「カーテンを閉めてくれ」──錯覚だ。「何故?」彼女が振り向く。「こんなに綺麗なのに」「君を攫われそうで、怖い」「……え?」訝しげに微笑む顔。「テリィったら想像力が豊かなのね……きゃッ」テリィは、彼女の両手をシーツに拘束する。「怒ったの?冗談よ
図書館で里中満智子先生の漫画「里中満智子作品集」3巻を借りた。この3巻の最後に15ページの短編「藤棚の下で」という話があるのですが、これがなぜかとてもインパクトのある話でした老齢の女性が家の庭にある藤棚をあまりに大切にしているものだから、息子家族は家の建替えをしたくてもできない。彼女は良家の娘で、居候をしていた男性と恋仲になるも戦争が始まってしまう。最終的にその男性は亡くなってしまい、身ごもった彼女が一人子供を育てるわけですが、その男性が亡くなったときのことを藤棚の下に座りながら思
TheTomboyandtheRebelAristocrat妄想日記おてんばちゃんとヤンチャ貴族覚書④AI画像テリィの誕生日、1月28日にキャンディとテリィの結婚式妄想日記を投稿したく、ブログ立ち上げ後、駆け足で投稿してきました。もっと丁寧に描けばよかったかしら……と、思わないわけではありませんが、これはこれで大切なわたしの妄想日記です今は、キャンディとテリィの結婚式後のパーティーを描いていますが、今月はなかなか妄想日記に集
MalloryQuinn作、キャンディキャディ海外2次小説「EndlessLove(終わりなき愛)」を読み終えました。WhatifCandyandTerryhadmetontheTitanic?もしキャンディとテリーがタイタニック号で出会っていたら?(google日本語訳)EndlessLoveChapter1,acandycandyfanfic|FanFiction全然このお話とは関係ないのですが、ちょっとタイタニックのポス
8月に久しぶりに子供時代の友人に会った際、キャンディキャンディの漫画だけは持っていると聞いて、子供時代に仲間が少なくあまり聞くことができなかったあの質問を今更に投げてみた、そう、やってみたかったのです「誰が好きだった?テリィ?」「そうねえ、テリィはないねだれだっけ、名前忘れたけどあの兄弟の性格のいいほうの・・・」「ああ、ステアね」テリィ推しの自分ですが、好きな男性に順番につけるとすると1テリィ2アンソニー3ステアなぜアルバートさんがいないのか理由
あんたには目の前にいる男の虚像しか見えていない──。見て呉れと名声と、その隣でにっこり微笑む居心地の良い空間と。要は光の部分だけ。どんな場所にも、光が射せば影ができる。漆黒の闇ができる。さっきから馬鹿の一つ覚えみたいに、愛しているだの、私には彼が必要だのと繰り返すが、そんなのはただの押しつけだ。闇雲に気持ちをぶつけて成就するなら誰だって苦労はしない。叶わぬ想いとやらに傷ついて、オフィーリアか、若しくはジュリエットか、悲劇のヒロインを演じるのは容易いからな。だけどな。あん
テリィが来客で呼ばれ、部屋を出て階下へ行った。一人になったキャンディは、あらためて宝石箱を机の上に置いた。象嵌細工の蓋を開ける。中は空だ。内側も見事な装飾が施されている。高価な代物であることがよくわかる。指先で内側の複雑に合わされた模様をなぞったとき、底に、ほんのわずかな引っかかりを感じた。「……?」それは爪でつまめ、そして、そっと持ち上げると、音もなく、底板が外れた。なにかが入っている。なんと、そこにあったのは、一枚の写真だった。「テリィ?」幼いテリィと、公爵、そしてエレ
ポニーの家のキャンディの部屋をイメージSONNETの目次∻☆…∻☆・アナウンス&ひとりごつです天河アニメ化https://www.vap.co.jp/sorahaakaikawanohotori/テレビアニメ「天は赤い河のほとり」公式サイト少女漫画界の巨匠・篠原千絵作品、待望の初テレビアニメ化!数千年の時を超え、突如古代オリエント世界に召喚された少女が自らの手で運命を切り開く、本格大河ロマン。2026年夏アニメ放送決定!www.vap.co.jp2月
夜更けのニューヨーク。冬の街を包む冷たい空気が、高層のアパートメントにも忍び込むように澄みわたり、窓ガラスには小さな氷の結晶が浮かんでいた。リビングの明かりを落とした部屋のバルコニーに、テリィはひとり立っていた。吐く息が白く揺れる。見上げれば、都会の灯に負けじと輝く星々が群れをなして瞬いている。夜空は見事に澄み、冬の星座がひときわ鮮やかに浮かび上がっていた。「キャンディ」振り返らずに低く呼びかけると、奥の部屋から足音が近づき、戸口のカーテンが揺れた。「どうしたの?」不思議そうに