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「ポニー先生……」キャンディは縋るように尋ねた。「先生……運命って……あるのですか?」ポニー先生はしばらく黙っていた。揺れる蝋燭の火を見つめながら、静かに言う。「そうですね……」小さく微笑む。「神様が最初から結末を決めておられたのかどうか、それは私にはわかりません」キャンディは目を見開いた。運命を信じる人なら、もっとはっきり答えると思っていたからだ。「ですが――」ポニー先生は続ける。「あなたとテリュースさんのお話を聞いていて、私は思うのです」礼拝堂の静寂の中、声だけが穏や
礼拝堂の中で、キャンディは両手を固く組んだ。蝋燭の火が、小さく揺れる。その揺らぎが、まるで自分の心のようだと思った。祈りながら、キャンディの頬に静かに涙が伝った。誰にも言えない罪悪感。誰にも見せられない弱さ。そして、誰よりも深く愛してしまった人への想い。そのすべてを抱えたまま、キャンディは闇の中で赦しを求めていた。「キャンディ。そんな薄着で……風邪を引きますよ」静かな声が、礼拝堂の闇に溶けるように響いた。キャンディははっとして振り返った。入口には、ランプを手にしたポニー先生が立っていた。
ニューヨークからポニーの家へ戻ってからも、キャンディの胸には、まだ夢の中にいるような幸福感が残っていた。テリィからのプロポーズ。何度思い返しても、胸の奥が温かくなる。けれど、その幸福の片隅には、ニューヨークからの帰りの列車で胸に蘇った、もう一つの想いも残っていた。――スザナとの約束を、私は破った。テリィと結婚したい。その気持ちに迷いはなかった。それでも、幸せを思うたび、心のどこかで小さな痛みが疼いた。その日も、診療が終わったあと、戸棚の奥に積まれていた古い雑誌や新聞をまとめていた。何気
キャンディ♡キャンディファンサイトこのページは、キャンディキャンディ二次小説「11年目のSONNET」の続編を投稿中です。初見の方は「サイトmap」又は「第1話」からご覧ください♪続編の第1話はこちらから。コメントは承認制の為、反映されるまでにタイムラグがあります。★★★1-8『アーチーボルド・コーンウェル』に扮したテリィは、医療物資の管理者―ロジスティシャンとしてアメリカの商船に乗り込んでいた。レッド・クロスの支援物資が大量に積まれたその船は、大西洋
列車がニューヨークを離れてから、どれくらい経ったのだろう。キャンディは窓辺に頬杖をつき、流れていく景色をぼんやりと眺めていた。建物が少しずつ低くなり、やがて街並みも遠ざかっていく。駅のホームで最後まで手を振ってくれた姿が、まだ瞼の裏に残っている。左手を膝の上へ置く。薬指には指輪があった。窓から差し込む光を受けて、小さく輝いている。キャンディはそっと指先で触れた。――婚約したのね、私たち。そう思うだけで胸がいっぱいになる。何度も名前を呼ばれたこと。「愛してる」と言ってくれたこと。そ
1924年、12月、結婚した最初の冬。冬の朝の稽古場は、外気の冷たさがわずかに忍び込んでくる。本館のロビーに入った瞬間、暖房の温もりと、稽古前特有のざわめきが耳を包んだ。テリィはコートを脱ぎながら、ロビーに集まって談笑する面々に軽く視線を送った。名前を呼び合う声、台本を手にしたまま身振りで話す姿、ひそひそと噂話を交わす者。そんな光景を横目に、稽古場へ向かおうとしたときだ。「グレアム、少し来てくれないか」低く落ち着いた声に足を止める。振り返ると、演出家ウォルターが立っていた。「こっ
今さら・でも―キャンディキャンディいつもアクセスいただきありがとうございます©水木杏子/いがらしゆみこ画像お借りしますブログを最初から読む二次小説を最初から読む11年目のSONNET目次スピンオフ本編前本編後キャンディ雑談を読むFinalStoryの考察を読む考察①FinalStoryって?考察②新旧手紙の比較考察③あのひとは誰?考察④Finalと漫画の違い考察⑤テリィの手紙考察⑥男アルバートさん考察⑦
長い救護活動を終え、ようやく自宅の扉を開けた。玄関を閉めた瞬間、耳にこびりついていたサイレンや人々の叫び声が、まだ頭の奥でこだまする。静けさが返ってきたはずの家が、むしろ不気味に思えた。マーサが振り返り、小声で「おかえりなさいませ」と言ってくれる。その目に浮かんでいたのは安堵と心配。彼女は眠る子を見守ったまま、気遣うように静かに立ち去った。ここは安全な場所だ。そうわかっているのに、胸の鼓動は荒く、肩は強張ったままだった。寝室へ入ると、ベビーベッドの中で長男が小さな寝息を立てていた。
鐘が鳴り、寄宿舎の灯りが次々と落ちていく。廊下には監督生の足音だけが規則正しく響き、やがてそれも遠ざかった。静寂に包まれると、テリィは布団から身を起こし、窓へ歩み寄った。石造りの窓枠を押し開けると、夜風が冷たく頬を撫でた。月明かりの下、彼は躊躇なく身体を外へ投げ出す。石壁をよじ降り、土に足をつけた瞬間、心臓がどくりと跳ねた。(ここからが、本当の俺の時間だ)◇通い慣れた裏通りの酒場。軋む扉を押し開けると、ランプの薄暗い光と安酒の匂いが押し寄せた。木のテーブルには労働者やならず者
夜のロンドンは、霧を含んだ空気で街を包んでいた。窓の外では、馬車の音が遠くに溶けていく。キャンディは暖炉のそばの椅子に腰かけ、膝に本を置いたまま、頁をめくるでもなく火を見つめていた。テリィはその近くに来ると、口を開く。「キャンディ」呼ばれた声に、彼女は顔を上げる。「なに?」テリィは彼女の前に腰を下ろしてキャンディを見上げる。「俺、次の舞台まで少し、時間を空けた。年始から一か月ほど。アレックスとの仕事、調整してもらった」キャンディの眉が、わずかに動く。「そんなに?どうしたの?」
ポニーの家の大きく開け放たれた窓からは、焼きたてのクッキーの甘い匂いが午後の風に乗って流れ、丸いテーブルには、湯気の立つ紅茶が静かに並べられている。そのテーブルを囲むように座っているのは、キャンディ、アニー、そしてパティの三人。それぞれが別々の場所で新しい時間を生き始めてから、以前のようにただ他愛もない話をしながら笑い合う時間は、いつの間にか少なくなっていた。だからこそ、こうして三人だけでゆっくり顔を合わせる午後が、たまらなく懐かしく感じられるのだ。ポニーの家の窓を揺らす風も、遠くから聞
列車がゆっくりとホームを離れていく。テリィはその場から動かなかった。窓越しに見える金色の髪が、少しずつ遠ざかっていく。キャンディは最後まで手を振っていた。テリィも手を上げたまま、その姿を追い続ける。やがて列車は小さくなり、人影も見えなくなった。それでもしばらく、テリィは線路の先を見つめていた。ついさっきまで、そこにいたのに。「……行っちまったな」誰に聞かせるでもなく呟く。寂しかった。けれど、不思議と以前のような寂しさではない。次にいつ会えるのか分からない別れではない。キャンディは、
本日より3日間に渡りまして、以前書いた『俳優テリュースに会いたい』から派生したお話を全3話でお届けいたします。これらのお話は、コメントをくださった皆さまに、物語へ登場していただくという内容になっておりまして、✨コメントをくださった皆さまの「テリィにこんなファンサをしてもらいたい!」というコメントを参考にしまして、それを実際に物語にしました☺️もし、本当にこんなファンイベントがあったら、きっと会場は大騒ぎだったんだろうなぁと思いながら、楽しく書かせていただきました☆テリィ、マイケル、ケビン
その頃、テリィは劇場にいた。朝の稽古場にはいつもの活気が戻っている。俳優たちの発声練習、大道具係の掛け声、台本を読み合わせる声。昨日と変わらない光景だった。だが、テリィの頭の中だけはまったく違った。稽古場の片隅で団長と打ち合わせをしながらも、ふとした拍子に思い出すのはキャンディのことばかりだった。昨夜ソファで眠っていた姿、毛布を掛けた時の寝顔。今頃は起きただろうか。朝食は食べただろうか。そんなことばかり考えている自分に苦笑する。「テリュース?」団長に呼ばれて我に返った。「ああ
ポニーの家のキャンディの部屋をイメージSONNETの目次∻☆…∻☆・アナウンス&ひとりごつです天気2026年8月14日関東涼しいのは助かるんだけどこの極端な雨よ💦この3日間バケツをひっくり返したように降って止む…を、何度も繰り返す先日東京の端(父の施設)に行った時🚗🚗🚗冠水した道路が突然前方に現れた。片側3車線の道路で双方向の車は徐行して進んでる心の中ではUターンしたかったけど後続車もいてそれも
初夏のやわらかな陽射しが、インディアナの大地をやさしく包んでいた。7月7日の結婚式に向けて、ポニーの家の教会や食堂では修繕の音が響き、村全体がどこかそわそわとした空気に包まれている。その日、テリィとキャンディは、少しだけ手を休めて散歩に出ていた。手をつないで、ゆっくりと歩く。キャンディの誕生日を過ぎたばかりの季節。空気はあたたかく、どこか甘い香りが漂っていた。「……いい匂い」キャンディがふと立ち止まる。目の前に広がっていたのは、赤く色づいたいちご畑だった。「おや、キャンディじゃないか
窓が閉まると、途端に夜風が遮られ、部屋の温かさが身体を包んだ。「まったく……」テリィはキャンディの両腕を擦る。「看護婦のくせに、自分のことになると適当なんだから」「そんなに寒くなかったもの」「こんなに身体冷えてるだろ」「テリィが温めてくれればいいじゃない」何気なく言ったあと、キャンディは自分で少し照れた。テリィも一瞬黙る。「え?いや、その……」テリィは笑い、キャンディを自分の胸へ引き寄せた。「では、お言葉に甘えて」少しイタズラっぽく言う彼。キャンディは小さく微笑んだ。シャ
夜明けは音もなく忍び寄っていた。ランプの炎がほんの少しだけ頼りなく揺れた頃、窓の向こう側の闇がいつも間にか薄い灰色に変わっていることに、キャンディは気づいた。一晩中座り続けていたはずなのに、立ち上がった時、足の感覚は不思議なほど確かだった。その時。廊下の奥から足音が聞こえた。慌てないように自制しているが、だがかなり急いでいる足音。執事のクルーズの声が重なる。「先生、こちらでございます」ノックが聞こえ、扉が開いた。「先生がいらっしゃいました」主治医
ポニーの家の昼は、にぎやかな笑い声に満ちていた。長いテーブルには、焼きたてのパンとスープ、畑で採れたばかりの野菜が並び、子どもたちの声があちらこちらで弾けている。「テリィお兄ちゃん、これ食べて!」「キャンディ、こっち見て!」次々に飛んでくる声に、テリィは少しだけ肩をすくめながらも、どこか楽しそうに応じていた。キャンディはそんな様子を見て、くすりと笑う。(すっかり人気者ね)食事が終わるころには、テーブルの上も、空気も、満ち足りたあたたかさで包まれていた。そして、午後。少しだけ日差しが
六月のモンヒーガン島は、夜のあいだ海に抱かれていた霧が、まだ岬や入り江に残っている。白くほどけた布のようなそれは、風が渡るたび静かにかたちを変え、黒い岩肌を隠したり、灯台の白い姿を半分だけ浮かび上がらせたりした。やがて陽が高くなるにつれ、霧は少しずつ海へと帰っていく。急ぐふうでもなく、惜しむふうでもなく。ただ、自分の帰る場所をあらかじめ知っているもののように。昼食の後片付けをすませると、キャンディスはピアノの蓋を開けた。それは、この家へ来たときからそこに置かれていたアップライトピアノ
千穐楽の夜。割れんばかりの拍手の中、舞台袖に立つロレンス神父役のベテラン俳優サイモン・アシュフォードは、深く息を吸った。四十年の舞台人生の中で、こうした熱狂に幾度立ち会ったことがあるだろう。だが今、胸を震わせているのは観客の歓声ではなかった。視線の先――スポットライトを浴びて立つ若き俳優。二十八歳のテリュース・グレアム。その姿が、十年ほど前の記憶を鮮やかに呼び覚ましていた。あの時も彼はロミオだった。十九歳、誰よりも瑞々しく、舞台を支配する力を持っていた。だが――事故と降板、そし
五月の陽光に包まれたセントポール学院の庭園は、いつもよりも華やいでいた。深緑の芝生には白い天幕が立ち並び、色とりどりの花で飾られたアーチの下を、生徒たちが笑顔で行き交う。シスターたちの厳しい監督のもと、普段は男女の交流が厳しく制限されている学院で、この日ばかりは特別に許される――年に一度の「メイフェスティバル」である。学院の創設にグランチェスター家が深く関わっていることは、生徒なら誰もが知っていた。寄宿舎に暮らす彼らにとって、この祭りは社交界への小さな入り口であり、若き日のきらめきを味わう数
11年目のSONNET・終章――EternalCoda――エターナル・コーダ世界大戦の後、1919年に締結されたヴェルサイユ条約によって、厳しい制裁を科せられた敗戦国ドイツ。巨額賠償金、領土縮小、極端な軍備制限――世界恐慌の煽りも受け、屈辱と失業の深刻化の中で不満を募らせていくドイツ国民。ヒトラー率いるナチ党は、それらを覆すと力強く約束することで支持を拡大、再軍事化を開始した。「ゲルマン民族※は一つの帝国に統
ポニーの家のある村は、相変わらず静かだった。静かすぎて、新しい顔など年に一度現れればいい方だ。キャンディはそれを、よく分かっている。分かっているからこそ、アニーの様子に気づいてしまった。「……ねえ、キャンディ」その日は午後の紅茶の時間だった。アニーはやけに背筋を伸ばし、妙に張り切った声を出している。「今度の日曜日、ちょっとした集まりをしようと思うの」「集まり?」「ええ、ほら……村の人たちとか。知り合いとか。ほら、いい人がいるかもしれないでしょう?」キャンディは、カップを
スザナの墓のある教会は、朝の光の中で静かに息をしていた。古い石畳に、まだ昨夜の冷えが残り、白い壁には薄い影が揺れている。キャンディとアルバートが馬車を降りた時、教会の前の少し離れた場所に、一台の馬車が停まっていた。見慣れないわけではない。だが、どこか“場違いなほど整った”馬車だった。革張りの座席、磨かれた金具、よく手入れされた馬。長旅を控えた者の、無駄のない佇まい。アルバートはそれを見て、足を止めた。理由はない。確証もない。ただ、胸の奥で何かが微かに鳴った。(……来ている)言葉に
エイヴォン川を渡る風にはまだ冬の名残が残っていたが、その冷たさの奥には確かに新しい季節の気配が混じり始めていた。川沿いの土手や石垣の脇では、水仙の花が黄金色の小さな灯火のように揺れ、長い冬を越えた街に春の訪れを告げていた。眠っていた大地が静かに目を覚まし、エイヴォン川の流れもまた、やわらかな光をまといながら新しい季節へ向かおうとしている。けれど、RSCの中では季節などほとんど意味を持たなかった。朝になれば別の人間になり、夜になれば別の人生を終える。俳優たちはシェイクスピアの言葉に身を浸し、
8月に久しぶりに子供時代の友人に会った際、キャンディキャンディの漫画だけは持っていると聞いて、子供時代に仲間が少なくあまり聞くことができなかったあの質問を今更に投げてみた、そう、やってみたかったのです「誰が好きだった?テリィ?」「そうねえ、テリィはないねだれだっけ、名前忘れたけどあの兄弟の性格のいいほうの・・・」「ああ、ステアね」テリィ推しの自分ですが、好きな男性に順番につけるとすると1テリィ2アンソニー3ステアなぜアルバートさんがいないのか理由
今日はキャンディの誕生日ですねキャンディ熱が再燃したのは4年程前小学生以来うん十年ぶり(笑)久しぶりに読み返した漫画本その後「小説キャンディキャンディFINALSTORY」の存在を知りました漫画やアニメには描かれていないテリィとのエピソードやテリィの気持ちが言語化されているシーンに喜びを感じましたしキャンディが幸せに暮らしていることは良かったなあと思いましたでも・・・あのひとは誰なの?ブログ主はもちろんテリィ一択です作中のあちこちに散りばめられてあるヒントはテリィを連
扉の前には、すでに数人の使用人が集まっていた。扉が少し開いている。「ウィリアム様……」使用人のひとりが顔を上げたが、その表情は今にも泣き出しそうに見えた。厳格なアードレー家の使用人がそんな顔をするのは珍しいことだった。キャンディがその隙間をすり抜けるようにして部屋へ入ると、そこには、大おばさまがいた。ベッドに横たえられた顔は、青白いというより、夕刻の光の中で蝋のように生気がなく見えた。唇の色も薄い。キャンディの心臓はぎゅっと縮む。だが、次の瞬間に身体が勝手に動き出した。
二月のシカゴは雪に包まれていた。前夜10時。テリィはニューヨークを発つ二十世紀特急へ乗り込んだ。窓の外に流れていく灯りを眺めながらも、頭の中にあるのは一つだけだった。手紙を交わしてきた数ヶ月。便箋の上では何度も会っていた。けれど実際に顔を見るのは、あの日ニューヨークの駅で別れて以来だった。翌朝、列車は定刻通り、午前11時シカゴへ到着した。本来ならキャンディの列車は午後1時到着予定だった。だが、到着してすぐに確認した案内板には無情な文字が表示されていた。“雪の影響による遅延。到着予