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婦人服売り場から戻ってきたキャンディの両手には、いくつもの紙袋が提げられていた。その隣を歩くキャサリンは満足そうな顔をしている。「とりあえずさっきよりは揃ったわね」「キャサリンさん、本当にありがとうございました」「それがまだ終わってないわよ」即答だった。「外出着はこれから。それに上の階」キャンディは思わず苦笑いになる。一方で、待たされていた男二人はというと、ベンチに腰掛けていた。テリィは新聞を読み、マイケルは腕を組んだまま周囲を眺めていた。やがて二人の姿を見つけると立ち上がる。「
玄関の扉が開けると、最初に入ってきたのはマイケルだった。「よう、来たぞ」気軽に手を上げる。その後ろから、一人の女性が姿を現した。背筋の伸びた快活そうな女性だった。栗色の髪をまとめ、はっきりした目元が印象的である。「こんにちは」そう言って部屋へ入った彼女は、マイケルの姉――キャサリンだった。だが、挨拶はそこで止まった。キャサリンの足がぴたりと止まる。隣のマイケルも同じだった。二人の視線は自然とキャンディへ向いている。そして数秒沈黙。キャンディは不思議そうに首を傾げた。「あの……?」
マンハッタンの中心部にある百貨店は、昼下がりの賑わいに包まれていた。大理石の床に高い天井。行き交う買い物客たち。ショーウィンドウには最新の流行を取り入れた衣装が並び、季節を先取りした装飾が目を引く。車を停めると、テリィは深く帽子を被り直した。マフラーも引き上げる。隣のマイケルも同じだった。「そこまでしなくてもいいんじゃないか?」マイケルが苦笑する。「おまえは気楽でいいな」「だって俺は主演じゃないし」その返事にテリィは肩を竦めた。一方で、そんな二人の苦労など全く気にしていない人物
その頃、テリィは劇場にいた。朝の稽古場にはいつもの活気が戻っている。俳優たちの発声練習、大道具係の掛け声、台本を読み合わせる声。昨日と変わらない光景だった。だが、テリィの頭の中だけはまったく違った。稽古場の片隅で団長と打ち合わせをしながらも、ふとした拍子に思い出すのはキャンディのことばかりだった。昨夜ソファで眠っていた姿、毛布を掛けた時の寝顔。今頃は起きただろうか。朝食は食べただろうか。そんなことばかり考えている自分に苦笑する。「テリュース?」団長に呼ばれて我に返った。「ああ
玄関の扉が閉まる音がした。キャンディが顔を上げる。そこには大きな紙袋を両手に抱えたテリィが立っていた。「あ……ただいま」「お……かえりなさい」自然とそう返してから、キャンディは自分がまだ絵本を手にしていることに気づいた。テリィの視線もそこへ向いている。「あ、ごめんなさい」慌てて立ち上がる。「ちょっと珍しいなと思って読んでたの」本棚へ戻そうとすると、テリィは小さく笑った。「全然いいよ」紙袋をリビングテーブルに置く。「読んでも……それと」テリィは表情を和らげたまま続けた。「稽
祭壇での誓い。拍手に包まれた祝福の時間。白いチャペルの光が、まだ瞼の裏に残っている。テリィがバスルームから戻るとキャンディがバルコニーから戻ってきた。テリィは静かに近づいていく。シャツの袖をまくりながら、少しだけ息をつめたような顔。「……綺麗だったよ。今日の、おまえ全部」「ありがとう。でも緊張してたのよ?」「知ってたよ、手が震えてた」キャンディは照れたようにうつむき、テリィはその頬に手を添える。「緊張、ほどいていい?」潤む瞳が彼を見つめている、答える前にそっと唇が重なった。最
長い救護活動を終え、ようやく自宅の扉を開けた。玄関を閉めた瞬間、耳にこびりついていたサイレンや人々の叫び声が、まだ頭の奥でこだまする。静けさが返ってきたはずの家が、むしろ不気味に思えた。マーサが振り返り、小声で「おかえりなさいませ」と言ってくれる。その目に浮かんでいたのは安堵と心配。彼女は眠る子を見守ったまま、気遣うように静かに立ち去った。ここは安全な場所だ。そうわかっているのに、胸の鼓動は荒く、肩は強張ったままだった。寝室へ入ると、ベビーベッドの中で長男が小さな寝息を立てていた。
1928年8月24日、ニューヨークの街は真夏の熱気に包まれていた。タイムズスクエアを中心に、ブロードウェイの喧噪と汗ばむ空気が混じり合い、劇場の看板は夕暮れの空に強い光を放っていた。人々は地下鉄に涼しさを求め、込み合った駅構内へと急ぎ足で降りていく。――その瞬間までは、誰もが平凡な金曜の夕暮れを信じていた。午後5時すぎ。轟音とともに列車が脱線した。暗いトンネルに鉄の悲鳴が響き渡り、火花と破壊音が交錯する。車両が壁に激突し、鉄骨の柱が折れ曲がり、木製の内装がはじけ飛んだ。悲鳴。泣き
ブロードウェイ。ストラスフォード劇団。稽古場の噂は、音もなく広がっていた。最初は、照明係のひとりが言い出した。「……昨日の稽古、観たか?」それだけだった。だが、翌日には、音響室で、舞台袖で、スタッフルームの片隅で、同じ言葉が何度も繰り返されるようになった。「芝居が始まってないのに、テリュースが入ってきた途端、空気が変わるんだ」「台詞を言う前からもうハムレットだ」「あの間が怖い。あんなのはじめてみたよ」照明チーフが、プラン表を指で叩きながら言った。「フォロースポット、正直追いづ
キャンディが目を覚ましたのは朝の九時頃だった。ゆっくりと瞼を開く。見慣れない天井が目に入った。一瞬、自分がどこにいるのかわからない。だが昨夜の出来事を思い出し、すぐに理解した。ここはニューヨーク、テリィのペントハウス。そして昨夜、自分はソファで眠ってしまったのだ。キャンディは身体を起こした。毛布が肩から滑り落ちる。その毛布を見て少し首を傾げた。眠る前に掛けた覚えはない。ということは――。「テリィね」小さく笑う。あの人らしい優しさ。部屋の中はあまりにも静かだった。時計の針の音さえ
劇場街へ辿り着いた頃には、キャンディの足はすっかり重くなっていた。警察署を出てから一時間近く歩いただろうか。途中で雨にも降られた。激しい雨ではなかったが、傘もない。コートの裾は濡れ、ドレスの裾には泥が跳ねている。それでも歩き続けてここまで来たのだ。今さら引き返せるはずがない。やがて目の前に見覚えのある建物が現れる。ストラスフォード劇場。夜の灯りを浴びた劇場は眩しいほど華やかだった。入口には観客たちが行き交い、煌びやかな照明が夜の街を照らしている。キャンディはしばらく立ち尽くした。一年半
1927年2月。冬の空気は冷たく澄み、稽古場に入ると、そこだけ別世界のような熱がこもっていた。春公演の稽古はすでに中盤。舞台中央では若い主演が声を張り上げ、脇を固める俳優たちが台詞を合わせている。袖では裏方たちが大道具の位置を確認し、照明スタッフが光の角度を微調整していた。テリィは、稽古場の隅からその光景を見ていた。春公演を辞退した彼の役目は、舞台上と舞台裏の両方の目で稽古を見守ることだった。⸻舞台上の若手が感情を込めて動き出す。「……その立ち位置、半歩前だ」低い声で指摘すると
列車がロンドン・ウォータールー駅に滑り込み、夜の白い息がホームのランプに照らされた。グランチェスター家の迎えの車がすでに待っていた。二人はそのままタウンハウスへ向かう。邸宅の扉をヘンリーが厳かに開けた瞬間、温めてられた暖炉の熱がふわりと頬に触れた。長い旅の果てに辿りついた家の温度だった。キャンディは靴を脱ぎ、ようやく深く息を吐いた。「……帰ってきたのね」その声には、他のどんな言葉にも置き換えられない安堵が宿っていた。テリィはそっと応えた。「ああ。帰ってきた。本当に……よく帰ってき
ポニーの家の大きく開け放たれた窓からは、焼きたてのクッキーの甘い匂いが午後の風に乗って流れ、丸いテーブルには、湯気の立つ紅茶が静かに並べられている。そのテーブルを囲むように座っているのは、キャンディ、アニー、そしてパティの三人。それぞれが別々の場所で新しい時間を生き始めてから、以前のようにただ他愛もない話をしながら笑い合う時間は、いつの間にか少なくなっていた。だからこそ、こうして三人だけでゆっくり顔を合わせる午後が、たまらなく懐かしく感じられるのだ。ポニーの家の窓を揺らす風も、遠くから聞
しばらくして鍋の中から立ち上る香りが部屋いっぱいに広がり始めた。キャンディは木匙でゆっくりかき混ぜながら微笑む。「そういえば」ふと思い出したように顔を上げた。「テリィは?」「ん?」「さっき料理できるようになったって言ってたけど」キャンディは興味深そうに首を傾げる。「得意料理とかあるの?」テリィは少し考えた。そして意外にもすぐ答えが返ってくる。「ビーフシチューかな」キャンディの目が輝いた。「本当に?」「ああ」テリィはどこか得意そうだった。「デミグラスソースはワインから
夏の午後。グロスターの館は、陽射しに包まれていた。青い空の下、芝の匂いとラベンダーの香りが風に混じる。その静けさを破ったのは――「ぼーち、ないっ!」という甲高い声だった。オスカー二歳。小さな足で庭を走り回り、両手をぱたぱたさせながら訴える。「ぼーち!ちゅるちゅる(=リボン)!」帽子が見当たらないらしい。メイドの一人が慌てて駆け寄る。「まあまあ、どうしたの坊ちゃま?」オスカーは眉を下げて両手を丸く広げる。「まる、ない……」その仕草に、近くにいた執事ヘンリーも苦笑した。「お
MalloryQuinn作、キャンディキャディ海外2次小説「EndlessLove(終わりなき愛)」を読み終えました。WhatifCandyandTerryhadmetontheTitanic?もしキャンディとテリーがタイタニック号で出会っていたら?(google日本語訳)EndlessLoveChapter1,acandycandyfanfic|FanFiction37章で完結の、テリィさん側のお話です。このお話は、タイタ
このお話は、『俳優テリュースに会いたい』で描かれたキャンディのように、「ファンサをもらってみたい」というコメントから生まれました。そしてついでに、私ロキソも、ちゃっかりテリィにファンサをもらうように描きました(笑)もし「こんなことしてほしいな」というご希望がありましたら、ぜひコメントで教えていただけたらうれしいです。また物語にしていけたらと思っています。……とはいえ。もし、ひとつもコメントがなかったらどうしようと、不安になりつつ😅どなたか、コメントいただけたら、とても喜びます🙏追記
食事を終えた頃には、キャンディの疲労は誰の目にも明らかだった。それでも本人は気丈に振る舞っている。皿を片付けようとする姿を見て、テリィは苦笑した。「これはいいから」キャンディが振り返る。「片付けは俺がやる」「でも」有無を言わせない口調だった。「きみは座っててくれ」キャンディは少し迷ったものの、素直に頷いた。「ごめんなさい、お言葉に甘えるね」そう言ってソファへ腰を下ろす。テリィは食器を流しへ運びながら、その様子を横目で見ていた。長旅の疲れ、盗難騒ぎ、警察への届け出、劇場まで
さてさて……つい調子に乗って、今回もイメージビジュアルです😁すでに既出のテリィではありますが、「役を演じているテリィが見たい!」という、私の熱量だけで生まれた一枚になります今回のシーンはチャリティー公演『スカーレット・ピンパーネル』のワンシーンテリィはオーディションを勝ち抜き、見事にスカーレット・ピンパーネル/パーシー・ブレイクニー役を掴み取りました!もう……ご覧の通りですね。この衣装、似合いすぎじゃないですか?パーシー・ブレイクニーは貴族ですから、その血を引くテリィ
ある日の昼すぎのことだった。ふだんなら稽古場にいるはずのテリィが、珍しく早く帰ってきた。玄関の扉が開く音にキャンディが顔を上げると、立っていた彼の顔色は明らかに悪い。「……どうしたの?」駆け寄ると、テリィは短く咳き込みながら答えた。「喉が痛むし、寒気がする……どうやら無理をしたらしい」キャンディは眉をひそめ、迷わず彼を寝室へ導いた。靴を脱がせ、外套を椅子に掛け、額に手を当てる。熱感がはっきりと伝わってきた。「ベッドに横になって。今すぐ診てあげるわ」キャンディは木箱から水銀体温
「父は、あなたの舞台をとても高く評価しています」「光栄です」「でも、私は父より先に好きになりました」言ってから、エリザは少しだけ頬を赤らめた。言葉が軽率だったかもしれない。テリィは一瞬、静かに彼女を見た。だが、その表情に浮かんだのは困惑ではなく、俳優として向けられた評価を受け取る穏やかな礼だった。「ありがとうございます」その返事で、線が引かれた。柔らかく、しかし確かに。エリザにもそれはわかった。「エリザ」エリザが父の声に気づいて振り返る。「お父様」ハリソン商会社長は穏
台本には、手紙の文面が記されていた。しかし、差出人も、宛先も、性別も、年齢も、すべて不明。あるのは、文章だけ。感情を込めるにしても、まず「誰が」「誰に」語っているのかを、自分で見つけなければならなかった。稽古2日目、俳優たちは次々と仮説を述べ始める。「病床の母に宛てた手紙かもしれません」「いや、亡くなった恋人かも」「兄を失った姉が書いているようにも思える」「職場を去った同僚かも…けれど、“愛してた”なんて書くかしら?」正解はない。だが、それぞれの視点が、手紙に命を与え始めていた。
テリィは冷蔵庫の扉を開けたまま、難しい顔をしている。中を覗き込み、何か考え、また首を傾げる。声を掛けると、テリィが振り返った。少し困ったような顔をする。「いや……大したものがなくて」そして冷蔵庫の中を指差した。キャンディも覗き込む。卵やベーコン、野菜が少し。チーズ、牛乳、パン。確かに一人暮らしの男らしい冷蔵庫だった。テリィは頭を掻いた。「帰りに買ってくれば良かった」「気にしなくていいわ。私は大丈夫だから」「でもな」そう言った瞬間だった。ぐぅ。静かな部屋によく響く音がした。二人とも
キャンディは、その場に立ち尽くしていた。声も出ず、足も動かない。ただ、風に揺れる草の匂いと、西の空に傾いた夕陽だけが、現実を知らせていた。長く伸びた影が、一歩ずつ、そこにいる人の輪郭を浮かび上がらせていく。それはまるで、夢が形を取っていくようだった。雑誌の見出しで目を引くあの名前。舞台の評判とともに語られる俳優、テリュース・グレアム。けれど今、シロツメクサの丘に立つその人は、どんなに大人びていようと、間違いなく彼女の知る“テリィ”だった。あの頃と変わらぬ、やわらかな眼差し。ただ、彼
翌週末。馬車はゆっくりと進んだ。ほどなくして、広い前庭と、重厚な柵の向こうに建つ建物が見えてくる。「あっ」オリヴァーが、息を吸い込むように声を漏らした。オスカーは言葉を失い、ただ目を丸くしている。バッキンガム宮殿だった。馬車を降りると、冬の空気が張りつめるように澄んでいた。正門の前には、赤い上着に黒い毛皮の帽子をかぶった衛兵が、微動だにせず立っている。「動かないね……」オスカーが小声で言う。思わず駆け寄りそうになるのを、オリヴァーが腕を引いて止めた。「だめだよ、見張りなん
車が走り出してからしばらくの間、二人はほとんど言葉を交わさなかった。窓の外を流れていくニューヨークの夜景。街灯の光。行き交う人々。時折聞こえるクラクション。それらが静かな車内を埋めている。テリィは運転しながら何度も隣を見た。キャンディは黙って前を向いている。疲れているのがわかった。無理もない。泥で汚れた裾。雨に濡れたドレス。顔色もあまりよくない。だが、それ以上に気になったのは、どこか張り詰めた表情だった。まるで気を抜いたら倒れてしまいそうな、そんな危うさがあった。「ホテルまで送るよ」よ
港には、薄い霧が漂っていた。春の終わりの海風は、岸壁に並ぶ人々の薄手の洋服の裾を静かに揺らしている。巨大な客船がゆっくりと汽笛を鳴らした。低く長い音が海へ溶けていく。甲板の手すりに寄りかかりながら、キャンディはゆっくりと遠ざかるアメリカの海岸線を見つめていた。シカゴ。ポニーの家。アルバート。アニー。ステア。アーチー。パティ。たくさんの人たち。たくさんの思い出。嬉しかったことも。苦しかったことも。全部があの大陸の向こうへ残っている。けれど不思議だった。胸は痛むのに
晩秋のニューヨークは、朝から澄み切った青空が広がっていた。街路樹は赤や黄金色に染まり、歩道には色づいた落ち葉が風に舞っている。頬をなでる空気には初冬を思わせる冷たさが混じり、行き交う人々もコートの襟を立てながら足早に行き交っていた。テリィは郵便局の前で足を止めた。手の中には、一通の封筒がある。何度も書き直し、何度も読み返した手紙だった。その封筒を見つめながら、テリィは小さく息を吐く。キャンディの住所は知らない。どこで暮らしているのかも、わからない。ただ一つ確かなのは、あの日、全国看
この二人の名前を並べるとなんか凄いなと思ってしまうキャンディのハートを掴んだ二人ですからね同時に存在はしていないけれどライバル🆚ですキャンディは二人のどこに惹かれたのでしょうね笑顔が光ってるーアンソニー風貌も言動も初恋の丘の上の王子様に酷似イケメン優しい中に強さをも持ち合わせている実直幼い頃に母を亡くし母のいない共通点バラを育て大切にしているはあ〜😍いつ見てもカッコいいテリィアンソニーに似た儚げな後ろ姿に釘付け涙を