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港には、薄い霧が漂っていた。春の終わりの海風は、岸壁に並ぶ人々の薄手の洋服の裾を静かに揺らしている。巨大な客船がゆっくりと汽笛を鳴らした。低く長い音が海へ溶けていく。甲板の手すりに寄りかかりながら、キャンディはゆっくりと遠ざかるアメリカの海岸線を見つめていた。シカゴ。ポニーの家。アルバート。アニー。ステア。アーチー。パティ。たくさんの人たち。たくさんの思い出。嬉しかったことも。苦しかったことも。全部があの大陸の向こうへ残っている。けれど不思議だった。胸は痛むのに
アードレー家にとって、ブラックストーン鉱山事故が残した傷は、想像していたよりもはるかに深かった。負傷者への補償、操業停止による損失、新聞各紙が連日のように掲げる厳しい見出しに加え、やがて街では、アードレー家は鉱山の危険を知りながら無理に操業を続けていたのではないか、という噂まで囁かれ始めていた。はじめは鉱山町の酒場や市場の片隅で交わされていた声が、シカゴの取引所へ、銀行の窓口へ、馬車の行き交う大通りへと広がっていくにつれ、アードレーという名は、古い名門を示す響きではなく、冬の空の下でひび割れ
今さら・でも―キャンディキャンディいつもアクセスいただきありがとうございます©水木杏子/いがらしゆみこ画像お借りしますブログを最初から読む二次小説を最初から読む11年目のSONNET目次スピンオフ本編前本編後キャンディ雑談を読むFinalStoryの考察を読む考察①FinalStoryって?考察②新旧手紙の比較考察③あのひとは誰?考察④Finalと漫画の違い考察⑤テリィの手紙考察⑥男アルバートさん考察⑦