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・コミックス巻9~10巻<夢宴桜から長野県の別荘まで>真澄26歳、マヤ15歳・紫のバラにのめりこんでいく速水真澄「夢宴桜」以降、真澄はマヤに、これまでのようにオンディーヌに勧誘するなどのアプローチをしなくなりました。その代わり、紫のバラの人として金銭的な接触を繰り返してゆきます。真澄の紫のバラの人としての最初の援助は、マヤの師匠の月影千草の入院費用の負担でした。大都の援助を受けたがらない月影夫人を助けるため、マヤのためというより、便宜的?にマヤを通して紫のバラの人として援助した格
去年の君の誕生日。俺は偶然を装って、君を食事に連れ出そうとした。適当な打合せを大都本社でセッティングさせて、そのまま君と出掛けるために、君を社長室で待たせていた。君の本心はわからないまでも、昔ほどには嫌われてはいないと思えるようになっていて、俺は少しずつ君へと繋がる横断歩道を渡ろうとしていた。それなのに、突然、紫織さんが現れた。思えば、彼女には全てお見通しだったのだろう。既に婚約破棄を申し出ていた俺の気持ちなど彼女は御構い無しに、君の前で婚約者然として振舞う彼女。「私やっぱり帰ります
暦は、雨水から啓蟄へ。寒さも和らぎ、東京にも春一番が吹こうかという頃・・・。マヤが六年間通った大学の学位授与式が、キャンパス内にある記念講堂で執り行われた。真澄は開式直前に親族席に着いた。四年間の学士課程を経て、大学院の修士課程を無事修了したマヤ。学部生に先立って、学位の授与がされた。講堂に響く“北島マヤ”の名に、会場が僅かに響めいた。壇上に上がるマヤを遠目に見つめる真澄。この二月に二十四歳になったが、真澄の目にはずっと出会った頃のままのマヤに見える。変わったのは自分の心だ
〜prologue〜人知れず紫織さんとの婚約を破棄した。俺はこれ以上お互いの人生を不毛なものにしたくないと、紫織さんに正直な気持ちを打ち明けた。そして優柔不断で身勝手なこれまでの俺の行動を詫びた。彼女は俺の気持ちをわかってくれた。婚約破棄に同意することが、私が貴方を愛した証だと言って。「真澄様、婚約を解消する代わりに、別の約束しましょう。」〜私もあなた方のように、私だけの魂の片割れを見つけますわ。そして、真澄様はこれからの人生、自分のお気持ちに正直に生きて下さいませ〜「約束です
久しぶりにまとまった休みが取れる・・・とは言ってもたった三日間の休みだ。だが、大きな企業の社長職ともなれば、完全なオフなどなきに等しい。だから例え三日と言えども、速水真澄にとってはとても貴重な時間なのである。今もってなお、大都グループの総帥は速水英介となっているが、これはもう名義上の話だけであり、実質的には昨年末に株式会社大都の代表取締役社長に就任した速水真澄が大都グループの総帥としてその責務に就いていた。そしてこの休みは、真澄が大都芸能を退いてから初めての完全オフとなった。この三日の
Prologueこの世で最も見られたくない存在に、この姿を見られた瞬間・・・。その時の胸の痛みと重さを知り、愚かにも俺は初めて気づく。この結婚で、俺は生涯、この感情と付き合っていかなければならないことを。マヤの隣には永遠に立てない・・・どんなに彼女を愛していても。真澄と紫織の婚約披露パーティーにマヤがお祝いの花束を持って現れた。淡いピンクの薔薇のブーケだ。「速水社長、紫織さん、御婚約おめでとうございます。」「ありがとう、マヤさん、素敵なブーケね。」事務所社長と所属女優としてなら
カシミヤの膝掛け、万年筆、舞台の写真の数々・・・。マヤがこれまで紫の薔薇の人に贈ってきた、彼の誕生日の贈り物たち。それらは全て、聖の手に託してきた。初めは分からなかった・・・贈り物の行き先など。だが、マヤはやがて、紫の薔薇の正体を知った。だからといって、真澄がその事を隠している以上、彼を想って贈り物を選ぶことはできない。もちろん彼の誕生日・・・11月3日に届ける事も叶わない。そしてそれは今年も同じだった。今年の分はもう、年の初めに聖に託していた。マヤが今年、真澄に贈ったものは、
何故俺はここにいる・・・?真澄はこの状況になって初めて、自分が如何に己の心に盲目で過ごしてきたかを知る。自分の未来、理想と夢・・・全てのものを胸の奥底に沈めて、心を盲目にして今日まで生きてきた。だが、過去にこれほどに目も耳も塞いでしまいたい程の思いで過ごしたことはなかった。この日が来ると知ったその日から、真澄の灰色の未来はその僅かな光さえ失って、完全な闇に閉ざされた。もう何も見たくない・・・何も聞きたくない・・・もう、何も。ましてや、最愛の者を永遠に喪失するその瞬間になど、本当は死ん
今夜は久しぶりにマヤが俺の部屋に来る・・・。マヤと晴れて付き合い始めて三ヶ月と五日。まだ世間には公表はしていない。マヤは自然に任せたいという。おそらくは紫織さんへの気遣いなのだろう。女優を生業としているくせに、芝居以外では人の前に出る事が苦手な子なんだ。だからあらたまって、交際宣言だの、記者会見なんてことは、できればしたくないというのが彼女の本音だ。俺としては、世間の人々にマヤは俺のものだと宣言してしまいたいのだが、マヤの気持ちを無視してそんなことをした日には、子供じみた独占欲に駆
「さあ、マヤ・・・。酔い醒ましにこれを飲んで。」真澄はソファに腰掛けたマヤに、グラスに注いだオレンジジュースを出した。マヤはそれをひと口飲んでふうっと溜息を吐く。「気分は悪くないか?」あらためて真澄はマヤの様子を確認した。マヤは小さく頷いた。そんなマヤの隣に真澄は腰掛けた。まだ色々と確かめなければならないことがあるが、目の前のマヤがあまりにも可愛くて、愛しくて仕方がない。マヤの乱れた髪に気づいた真澄は、一瞬躊躇はしたが、愛しい気持を抑えきれず、指でそっと、その髪の乱れを直してや
紫織さんとの婚約は白紙にした。鷹宮との業務提携も穏便に収束させた。そして、マヤには積年の思いを伝えた。彼女も俺のことをずっと愛していたと言ってくれた。これで何も憂うことはない・・・筈なのに。どうにも忙しい。この忙しさは何なのだ?朝から晩まで、どうしてこうも忙しいのだろうか。鷹宮との提携の後始末をしていたときよりもハードな気がしてならない真澄は、水城に尋ねた。「まぁ、真澄様・・・自覚がお有りにならないのですね?」水城がわざとらしく驚いてみせる。「仕事の量も質も以前と然程変わっ
北島マヤと速水真澄の二人が歩いてきた歳月。十年ひと昔と言うけれども、十年という歳月は人の人生において充分に長い。況してや、十代、二十代の若者たちにとっての十年は黄金にも代え難い大切な時間だ。その蒼い季節を、多くの涙に暮れながら、すれ違い、傷付けあって生きてきた二人が、やっとの思いで辿り着いた地・・・。けれど、そこは二人の安住の地ではなかった。互いの想いは確かめ合えた・・・確かにそこには愛があった。けれど、今以て二人は結ばれることは叶わない。二人の間には越すに越されぬ万里の天河が無情
誰もが舞台にあの”梅の谷”を見た気がした・・・北島マヤの阿古夜は、演じられた紅天女ではなく、リアルな紅天女そのものと言っても過言ではなかった。当初の予想では、誰もが姫川亜弓の優勢を疑わなかったが、二人の舞台が終わった時点で、それは見事に覆されていた。圧倒的な世界観を見せつけられた観客の心に、残っていたのは果たしてどちらの紅天女だったのか・・・。真澄はマヤが贈ってくれた、紫の薔薇の人の席でその奇跡に立ち会った。マヤに贈られた席に座る・・・それは永遠に叶わない夢だと思っていたのに、遂にその
12月24日クリスマスイヴ。クリスマスなんてどうでもいい・・・この季節が巡るたびに、彼、速水真澄はそう思って生きてきた。〜あの子と一緒にはいられないクリスマスに何の意味があるというんだ〜それでも、紫の薔薇の人としての彼は、マヤのために毎年クリスマスプレゼントを贈ってきた。それは本当に細やかな真澄自身の慰めであり、幸せなひと時だった。彼女にクリスマスプレゼントを贈り始めて十年・・・10回目のクリスマスプレゼントは、オフホワイトのカシミヤのコートに同色のロングブーツだ。そして、コートに着
・コミックス20巻<”「あの子は天才よ…!」”から”「このおれに卒業証書を…」”まで>真澄29歳、マヤ18歳・線路のように続いてきた愛情アクターズスタジオでの一件があって以来、すっかり自信を失くしてしまったマヤの高校の卒業の日が近づいてきました。ある日マヤは、校長室に呼ばれます。そこには、校長先生と共に聖が待ち構えていました。校長先生がマヤに話を切り出します。「きみの後見人の使いのこの方がきみの今後について話したいそうだ」校長はマヤの進路について話があるようです。「もうすぐ高校も卒
「マヤ、今度の水曜日、午後から時間が取れるんだ。もし君の体調が悪くなければ、出かけたいところがあるんだが・・・。」ある日の夜の寝室で、真澄が改まってマヤに言った。「なーに?デートのお誘い?」マヤがニヤニヤ笑いながら問う。「目的を果たしたらそのあとはデートしてもいいぞ。マヤが観たいって言ってた歌舞伎座のチケットも押さえてあるしな。」マヤは歌舞伎観劇と聞き、目を輝かせる。相変わらずの芝居好きだ。これは何年経っても、速水真澄の妻になっても、母親になっても変わりそうもない。「行きたい
Rei'seyes...「青木くん、君に相談がある。」まだマヤと速水社長が付き合う前に、マヤには内緒で彼から連絡があった。マヤをセキュリティのしっかりした大都不動産所有のマンションに移したいという打診だった。マヤはずっと私と一緒に暮らして、面倒を見てきたし、私はマヤにとっては家族のような存在だから、マヤに話すよりも先に、了承を取っておきたいとのことだった。その申し出自体は、それほど驚きはしなかったが、秘書や事務所の人間ではなく、速水社長自ら連絡をくれたことに私は驚いた。「マンション
「こんな記事を書かれるのは、君に隙があるからだ。」マホガニーのデスクの上に投げ出された一片の紙。それは某週刊誌の入稿前の記事のゲラだった。出版間際に差し止められたその記事は私の熱愛報道だった。勿論その内容は事実無根のでっち上げだ。複数の関係者での会食の帰りに撮られた写真は、あたかも二人きりの逢瀬のようなアングルだ。だが実はその隣には双方のマネージャーもいるのだ。呆れてしまうような内容だが、これも有名税だとさっき会った水城さんは苦笑いしていた。だが、目の前のこの人は笑い事では済まし
「ガラスの仮面」のセリフで語られない裏側【なぜ”真夏の夜の夢”だったのか?】「二年以内に芸術大賞か最優秀演技賞を受賞しない限り「紅天女」の上演権は姫川亜弓に譲るものとする」という月影先生の爆弾発言のあった年の夏に、マヤはシェイクスピアの「真夏の夜の夢」で小妖精パック役を演じ、一層高い演技術を身に着け、役者として大きくレベルアップしています。「真夏の夜の夢」はガラカメの劇中劇の中で大好きな作品なので、何度も何度も読み返しました記憶があります♡余談ですが、ロンドンロイヤルバレエの日本公演
沢山の親切と心配をありがとう沢山の気づかいと人生をありがとうどれもこれもあなたには出来ない無理をさせたのねそんなにいつの間にボロボロになってたのまだ続けるつもり?だからだからだからこれきりですこれでこれでこれで楽(らく)になってね恩を仇(あだ)で返します恩知らずになりましたまだずっと好きだけどごめん心苦しいんです申し訳ないんです私に会わなければあなたはどうだったでしょうこのままあなた命懸けで無理をさせてはいけないどうかこれからは自分のために生きてまだ間に合う
◇止まった時間あの娘ももう二十五歳・・・。今や、日本を代表する女優だ。紅天女の成功を機に、演劇界にその名を轟かせ、今ではその活躍は国内には留まらない。ちょうど彼女が二十二歳になった時、ロンドンの高名な演出家の目にとまり、シェイクスピアの舞台に立つことになった。女性版ハムレットの主演を務めたが、弱冠二十二歳にして、重厚なシェイクスピアの世界を見事演じ切った彼女に世界は驚愕し、惜しみない称賛を送った。その年のイギリスの演劇界のアワードの主演女優の賞は、日本から海を渡ってきた女優、北島マヤ
梅の花薫る2月吉日。その日は、北島マヤ独立事務所立ち上げ披露と速水真澄との婚約披露パーティー。来る6月の株主総会での承認をもって正式に、大都グループの総帥となる速水真澄が引き続きマヤのマネジメントに携わるために設立された、北島マヤの独立事務所。公私ともに速水真澄と北島マヤが唯一無二のパートナーであることを世間に知らしめるためのセレモニー。この日を真澄はどれほど待ち望んだことだろう。叶わぬ夢と諦めた時もあった。挙句の果てに心神喪失状態になり、生きることさえ放棄しかけた真澄をマヤが救って
夏の盛りの八月。世間では、子供も大人も夏休みの季節。お盆で帰省する人でごった返している東京駅で、速水真澄はビジネススーツを颯爽に着こなし、Rimowaのブリーフケースを片手に新幹線から降り立つ。人混みを軽やかに避けながら、雑踏の中を足早に丸の内中央出口を目指す。丸の内で待機していた聖と合流し、社用車で大都本社に向かう。移動する車の中で、聖から一通りの報告を受け、真澄は指示が必要な案件にはひとつひとつ指示を与えた。「本日は予定通り、午後2時にはマヤ様が大都会長室にお越しになります。そ
街の舗道、木枯しに金色の木の葉が舞い散る頃にもなると、社交界は華やぎを見せ始める。室内管弦楽の調べの隙間に人々の楽しげな会話が飛び交う中、北島マヤはホールの隅でひっそりと宴の様子を眺めていた。手に持ったフルートグラスのシャンパーニュは、乾杯の時から殆ど減ってはいない。元来マヤはこうした場が得意ではなかった。女優を生業としながらも、一度舞台を降りれば平凡な女性だと彼女自身そう思っていた。今日も後援会の大物役員のたっての要望でなければ、わざわざこんなところに顔を出したりはしない。こんな不
君の前では、かっこいい速水真澄でいたかったけど、君の前では、かっこ悪い俺しか出てこない・・・君が、愛しすぎて・・・熱愛発覚スクープの記事なんて、どれだけ見てきたことか。握り潰したものもあれば、己の思惑で、書かせたこともある。真澄にとっては、ビジネス上のイメージ戦略のひとつでしかない。これだって、今度始まるドラマの話題作りにはもってこいのgossipだ。主演の二人の真夜中のデート。寄り添う二人の横顔・・・。「どうされますか?内容的にも大したことないですし、タイミング的には悪くあり
「ただいま・・・」なんとか日付が変わる前にマンションに帰ってこられた。明日はマヤのオフに合わせて真澄も久しぶりの休みを取ろうと、今週はほとんど深夜遅くの帰宅だった。でも今夜はマヤが部屋に来ることになっていたから、真澄も出来る限り早く帰宅をしたのだった。しかし、部屋に入った瞬間、真澄は違和感を感じる。「マヤ・・・?」そこにいるはずのマヤの姿が何処にもなかった。そもそもマヤが部屋を訪れた気配がない。真澄は急いでマヤの携帯に電話をかけた。「・・・はぃ。」「マヤか?どうした?・・・
----マヤと連絡が取れない。----朝、真澄が出社すると、マヤのマネージャーと秘書の水城が慌ただしくしている。「マヤと連絡が取れないってどういうことだ?」真澄の表情が一瞬にして険しくなる。携帯にもマンションの固定電話にも出ず、マンションにも行ってみたが応答がなかったというのだ。真澄はすぐに一旦脱いだスーツの上着を着て、自分の車のキーを持って部屋を飛び出した。水城とマネージャーが真澄の後に続いた。実はマヤには内緒で、マヤのマンションのセキュリティーシステムに真澄の生体認証は登録し
秋の終わりに、マヤの元に届いた、あの人からの手紙・・・北島マヤ様紅天女の本公演、無事千秋楽を迎えられ、何よりも嬉しく思います。貴女の演じられる阿古夜に胸が締め付けられるような思いでした。これまで陰ながら貴女を応援してきて、本当に良かったと思える瞬間でした。私は生まれて初めて、人としての幸福というものを知った気がします。貴女に、貴女の紅天女に巡り逢えたお陰で。しかしこれ以上、私は貴女を見守ることができない。貴女のせいではありません。あくまでも私の個人的事情によるものです。だから
SideMasumi「真澄様、覚悟なさって下さいませね。」と、確かに彼女は言った。あの時は長年の恋が実った高揚感で、何でもやってのけることができると思っていた。が、しかし・・・流石に二徹は堪える・・・執務室の時計は午前3時を過ぎていた。俺は目元をグッと指で押さえた後、軽く首を回して凝りを解した。どうにか仕事の目処はつきそうだ。明日の夜、、いやもう今日か。マヤの誕生日を初めて二人で迎えるため、今日の夜にはマヤのマンションを訪ねる事になっていた。バースデーケーキは水城がマ
真澄とマヤは、待機していた社用車に乗り込み、そのまま青山方面に向かって車を出させた。「マヤ・・・大丈夫か?気分は悪くないか?」「はい、大丈夫れす、へへ。」店を出るまでは、しっかりとした口調だったのに、二人きりになった途端、マヤの様子が一変した。真澄はあらためて、マヤにアルコールが相当回っていることに気づいた。「君、今夜は相当酔ってるな・・・、このままマンションに送って、一人にさせるのは心配だな。」「えーー、速水さん!送り狼みたいなこと言わないで下さいよぉ~。だぁいじょうぶれすって