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室生犀星・明治22年(1889年)8月1日生~昭和37年(1962年)3月26日没(享年72歳)老いたるえびのうたけふはえびのように悲しい角やらひげやらとげやら一杯生やしてゐるがどれが悲しがつてゐるのか判らない。ひげにたづねて見ればおれではないといふ。尖つたどれに聞いて見たらわしでもないといふ。それでは一体誰が悲しがつてゐるのか誰に聞いてみてもさつぱり判らない。生きてたたみを這うてゐるえせえび一疋。からだじうが悲しいのだ。(「婦人の友」昭和37年=1962年4月
ここ数日の気候の為かはたまた梅と河津桜の花見に出かけた為か、気分がまさしく春そのものとなっている今日この頃です。久方ぶりの更新は、そんな春を題材とした詩を集めた記事となります。個人的に春になると読みたくなる詩、思いつく詩を徒然と紹介しましょう。因みに先程、母上様に「春になると詩を読みたくならない?」と言った際には、「ならないよ(笑)今までなったことないよ(笑)」と軽く鼻で笑われました(笑)という訳で、今回も私にしか需要のない記事となります。先にNew車椅子で見てきたご近所の梅と桜を載
(萩原朔太郎<明治19年=1886年生~昭和17年=1942年没>)日本の現代詩で口語自由詩を始めた詩人として浮かんでくる詩人の第一人者は萩原朔太郎(明治19年=1886年生~昭和17年=1942年没)でしょう。「殺人事件」は第1詩集『月に吠える』(大正6年=1917年刊)のうちでも口語自由詩に着手した初期の1編ですが、すでに独自の発想とスタイルを持つ見事な作品です。殺人事件萩原朔太郎とほい空でぴすとるが鳴る。またぴすとるが鳴る。ああ私の探偵は玻璃の衣裳をきて、こひびとの窓からし
北原白秋・明治18年(1885年)1月25日生~昭和17年(1942年)11月2日没薔薇の木に北原白秋薔薇の木に薔薇の花さく。なにごとの不思議なけれど。(詩集『白金之独楽』より)*北原白秋(1885-1942)のこの短詩は、三日三晩で書かれたという短詩全95篇を収めた第5詩集『白金之独楽』(大正3年=1914年12月・金尾文淵堂刊)では2篇の連作になっていました。その後のアンソロジー類への収録に当たって単独では先に上げた3行詩に改められましたが、『白金之独楽』は全編漢字と
かつて、東京都品川区大井町には劇団四季の劇場が2つありました。ひとつは、四季劇場[夏]。2010年7月に『美女と野獣』でこけら落とし。BBは2013年1月まで上演されました。その後、『リトルマーメイド』(2013年4月〜2017年4月)→『ライオンキング』(2017年7月〜2021年6月)とディズニーミュージカルを3作品上演しました。もうひとつは、キャッツ・シアター。2018年8月〜2021年6月まで、夏劇場の隣に設置された仮設劇場です。2012年に閉館した横浜の「キヤノン・キャッツ
今日は、詩の鑑賞をしましょう。萩原朔太郎の面白い詩です。殺人事件とほい空でぴすとるが鳴る。またぴすとるが鳴る。ああ私の探偵は玻璃の衣装をきて、こひびとの窓からしのびこむ、床は晶玉、ゆびとゆびとのあひだから、まつさをの血がながれてゐる、かなしい女の屍體のうえで、つめたいきりぎりすが鳴いてゐる。しもつけ上旬(はじめ)のある朝、探偵は玻璃の衣装をきて、街の十字巷路(よつつぢ)を曲つた。十字巷路に秋のふんすゐ。はやひとり探偵はうれひをかんず。みよ、遠いさ
「回文俳句」という空前絶後の芸術を編み出してからすでに一か月以上が経過した。最初、ふとした思いつきから「島涼み浮かび飛び交う水すまし」ができたので、回文を俳句にするのはまあ通常の回文より多少難易度が高くなるぐらいだろう、と思っていたが、それは私の大いなる勘違いであった。とにかく、難しい。頭と尻尾の5音はそれぞれ独立して意味をなしていなければならず、しかも両者は回文関係になければならない。そして、真ん中の7音はそれ自体で回文を形成していなければならない。さらに、「俳句」を名乗る以上、