家に帰ると間もなく南部角之進と陰山正太夫が来た。「どんな具合ですか」「何があっても驚かず、張り合おうとさえしなければ、たいしたことはありません」「どうも今までは誰もが化け物退治や肝試しという気持ちで来るから、いろいろ珍事が起こり、大騒ぎするのでしょう。今夜は、助太刀とは思わず、ただ話しに参りましょうか」正太夫が言うと角之進も賛成して帰った。昼間は別に何事もなく、夕方になって、二人は真木(まさき)善六という者を連れてきた。今夜は二十六夜なので、どの家でも月の出を拝もうと寝ずに待っている。何となく賑