ブログ記事112件
続いてその他の本文から、探っていきます二次小説を書いたからこそ気づいてしまった、原作者のテクニックです。あのひとはテリィだと言っちゃってる「あのひと」とは、言わずと知れたキャンディの愛する人の代名詞。ファイナルの帯にも書いてあります。言い換えれば、「あのひと」という名前の登場人物です。アメリカに旅立つテリィを、キャンディが馬車で追っていくシーンにこのようなセリフが登場します。「どうか、どうか、間に合いますように…。テリィに会えますように…。わたしは、まだ
★★★4-22あれはワルツなのだろうか。基本のステップを守ってはいるようだが、だいぶアレンジが効いている。踊っているカップルは気付かなくても、踊りを眺めているだけの人間には丸見えだ。「ワルツってあんな風に自由に踊っても様になるものなんですね~」愛を語らっているような二人の舞いに、感嘆のため息を漏らす者もいたが、多くの若者は全く邪道な理由でそんな二人に釘付けになっていた。「足がまた止まった、何かするぞ」「今度のキスはどこだっ」若者ほど、些細な事が気になるようだ。「・・彼女、さっきと
★★★6-3「・・・ここは仕事部屋だとジョルジュから聞いたのですが?」数歩足を踏み入れたところでテリィはぼう然と立ち尽くす。「はは、趣味の部屋と言った方が良かったかな」アルバートがそう説明するその部屋には、あまりに多くの物が溢れていた。木彫りの大きな象や鷲のブロンズ像、クリスタルの蛇に松ぼっくりで作った―・・何かの動物。壁に貼ってある大きな世界地図、デスクの上にも地球儀がある。本棚には動物の写真集や図鑑、冒険家の紀行文、偉人の伝記、アメリカの文学書、経済の本、法律の本が目につく。
★★★6-5キャンディと一緒に現れた人物を見て、椅子から勢いよく立ち上がったのはイライザだ。「―!!テリィっ!!・・・どういうこと!?」「イライザ、まぁ座って。今から紹介するから」アルバートは間髪入れずに一声掛け、着席を促した。大きなテーブルを囲むように親族十数人が座っている。上座に今夜の主役である二人が、その両隣にアルバートとエルロイ大おばさまが着席していた。「僕の大切な養女キャンディスとテリュース君のお披露目会へようこそ。既にお気づきの方もいるようですが、彼は私などより遥かに名
★★★6-11昨日アルバートの仕事部屋でキルトを試着していた時の出来事だ。「これは鷹ですか?それとも鷲?」テリィはバックル中央に刻印された紋章に気が付いた。「鷲だよ。スコットランド移民である先々代が好きだったようだ」「スコットランド移民?(ああ、それでキルトなのか・・)」「鷲も鷹も同じタカ科なんだが、一般に鷲の方が大きくて、翼を開いて飛ぶ姿がとても美しいんだ。飼いならすこともできるほど頭が良くて、食物連鎖の頂点に君臨しているとも言われている」「だから貴族がこぞって紋章に使いたがるわ
★★★4-14劇団の裏口。その夜も多くの観客がお目当ての俳優に花束を渡そうと、出口付近に詰め寄っていた。その花道を全く関係ない人物が歩かなければならない、このまずさ。「――あの時、ながながと話し込んでいたわよね。どんな話を?」「持っている素材と才能が違いすぎると僕が言ったんです。そしたらグレアム先輩は―」さりげなく会話をしながら通り過ぎるのが常套手段なのだが、呼び止められることもしばしば。「ねえ、ちょっとそこの君たち、テリュース・グレアムはまだ中にいる?いつ出てくる?」「帰ったかど
★★★4-8「誰だ?朝っぱらから、しかも劇場の正面で」劇場の警備担当者は呆れている。「見ない顔ね。いいわね~、若い人は情熱的で―」駐車場の掃除をしていたおばさんは羨ましそうに息をつく。「ちょっ、ちょっと、、今のテリュースさんじゃなかったですか??恋人、ですかね?!」玄関前を塞がれ、中に入れなかった研修生のオリビアが、戸惑いながら隣のミセス・ターナーに尋ねる。「―さぁ?私に聞いても知らんがね。本人に聞いておくれ」ミセス・ターナーはどこか投げやりだ。「テリュースじゃないか。・・へえ
★★★5-4「旦那様の好物がブルーベリーパイだとよくご存じでしたね」長年この家に仕えている執事のテイラーは、気さくな性格だった。「お前が教えたんだろうテイラー。テリュースも姑息な真似を覚えたものだ」公爵はパイの乗ったお皿をちらっと見ただけで、フォークをとろうともしない。「あいにくですが、僕はそんなに気が利く男じゃないんでね。パイはキャンディが得意で、家に採れ立てのブルーベリーがあった。それだけですっ」テリィは苛立つようにパイにフォークをグサッと刺した。もはや味など感じていないだろう。
★★★3-8劇は登場人物もセリフも必要最低限にカットされ、テンポよく進んでいった。子供からお年寄りまで楽しめる大衆向けのアレンジは、テリィが披露している演劇とはおそらく全く異なっているのだろう。第一線で活躍しているシェークスピアアクターの目にはどのように映っているのか。(喜劇に見えたりして・・)そんなことを思いながら、キャンディは隣にいるテリィを時折見たが「・・・・」度々目を閉じてうつむくテリィに、キャンディは何かを感じていた。物語がクライマックスの霊廟のシーンに入った時だった。
考察の目次はこちら考察のはじめにまずはじめに、この考察を書いたのはテリィファンですしかもファイナルストーリー(以下ファイナル)の続編を勝手に意識した長編二次小説を書きました。その小説の中には、ファイナルのエピソードや小道具は全て投入されています。原文と滾々と向き合った月日が長いので、既に悟りの境地に至っていますそんな奴が書いた考察なので、この考察を読み終えた頃には、テリィファンならあのひとがテリィだと確信すると思います逆にアルバートさんだと確信している人にとっ
★★★4-20「シカゴのアードレー家と言えば、アメリカでも屈指の大富豪。国王と同じ出入り口を使うなんて普通じゃないと思って警備関係者に確認したら、どうやら正真正銘アードレー一族の総長のようだ」アメリカの事情には明るいミセス・ターナーの説明に、劇団員は固唾を飲んで耳を傾ける。「それが今あそこでダンスをしている人物なんですね?」「ほら、出入口付近にアタッシュケースを持った黒服の男がいるだろ?あれは凄腕のSPか秘書だね」ミセス・ターナーが指をさす方向に一同は一斉に刮目する。パーティ
手紙に前文がある?この手紙は一部に過ぎない、という見方もあるようです。通常、手紙は『キャンディへ』であり、一行あけて「変わりはないか」の本文に入ります。しかしテリィの手紙は「キャンディ」「変わりはないか?」の二文が連続し、まるで全体の一部を抜粋したかのような入り方になっています。向って左がテリィからの手紙・右がアルバートさんからの手紙ファイナルに登場する手紙は「一行空ける形式」を守っているので、このテリィの手紙は例外です。・・・という事は、ここにも原作者の意図があるので
★★★4-21アルバート達と殆ど入れ替わる様にして、ハムレットの出演俳優たちが続々と会場に姿を現した。真っ先にお偉方へ挨拶に向かう一行。その様子を遠巻きに観察している招待客達。その視線を阻むように、テリィは挨拶が済むや否や移動を開始した。タイミングを誤ると一斉に囲まれ、逃げ場を失うからだ。(キャンディ達はどこに・・)おとなしく壁の花に収まっているはずがないと思っていたが、案の定花の蜜に寄ってくるように、キャンディの周りには、目障りな蜂が一匹、二匹、三匹。(ちっ、油断も隙もないな・・
★★★5-2今、狭い車内にバターと小麦粉の香ばしい匂いが充満している。キャンディは忠告通り襟のついたワンピースという清楚なスタイルだ。ロンドン郊外にあるグランチェスター家。正式な結婚に向けての話をするためだが、テリィの心は今日の空の様に快晴とはいかない。「着いたよ、ここだ」「あら、普通の家なのね。お城かと思ってたのに」学院ではテリィはお城に住んでいると噂が流れていた。確かアーチーもそんなことを言っていた。「そうだな、アードレー家に比べたら普通の家だ」「いっ、いえ、そんな意味
小説FINALSTORYに出てくる「エレノア・ベーカーへの手紙」を基にした一話完結の物語です。ファイナル、SONNET本編が未読でもご覧いただけます。※ネタバレには絡みません11年目のSONNETスピンオフハムレットの招待状★★★ごめんなさい、ミス・ベーカー。ミス・ベーカーのお気持ちは痛いほどありがたいのに。この招待券を見つめているだけで、わたしにはテリィの舞台が観え、歓声と鳴りやまぬ拍手が聞こえてくるような気がします。この招待券はわたしの宝物として大
★★★2-6それは先ほど眺めていた、緑の瞳を持つ女性の肖像画だった。「ローズマリー・ブラウン。歳の離れた僕の姉だ」歳が離れていると言われてもテリュースにはピンとこなかった。二十代に見えるこの貴婦人がアルバートさんの姉だという事だけを頭に入れた。「姉は幼いアンソニーを残して若くして亡くなった。ばらを愛する優しい女性で、自慢の姉だった」「亡くなった・・?アンソニー・・?」どこかで聞いたことがある名前―・・・。少し考えてテリュースは思い出した。夭折したキャンディのばらの君―なんども
★★★2-4急病人を乗せた車は午前中の早い時間に村を離れ、病人の身体に障らない瀬戸際のスピードで北上した。町はシカゴとは全く逆方向だった。テリュースの心中は穏やかとは言い難かったが、子供の命には代えられない。マーチン先生の事前連絡の甲斐あって、町の病院は直ぐに母子を受け入れた。ここまでくれば直接旦那を捕まえられるから大丈夫とアンに言われ、多少心残りはあったものの、テリュースは直ぐさまハンドルを反転させた。「テリィ・・さん、あなたは命の恩人です・・、ありがとうございます!」去り際アン
★★★4-23「フハっ・・―、ハハハッ・・!」深夜のリビングに笑い声が響く。帰宅してもまだ笑いが収まらないテリィは苦しそうにお腹を抱えている。「ククっ、俺たちが駆け落ちだって!?どうしてそんな話になるっ」お酒も入っているせいか上機嫌だ。「どうして否定しなかったのよ!あんな風に答えたら、まるで本当みたいじゃないっ」真相を確かめようとクリオが伝説の内容をキャンディ達に話した時、それはたぶん俺たちの事だ、とテリィは可笑しそうに答えたのだ。「噂なんていい加減なものさ。大げさだったりねつ造
★★★3-11いつ用意したのかと訊いたら、アメリカを発つ前日だとテリィは言った。ドレスではない、指輪の話だ。結婚指輪はキャンディの指に吸い込まれるようにピッタリと収まった。「入念な下調べをした上での当然の結果だよ」テリィは得意げに言ったが、再会した夜、寝入ったキャンディの左手にこっそりキスをし、指のサイズを確認していたことは秘密にしておこう。「入念ね・・」キャンディはクスッと笑った。指輪の内側には何も刻まれていなかった。メッセージも名前も日付も。指輪も結婚式もおそらくその瞬間を
★★★3-5「君、今夜の舞踏会のパートナーになってくれない?」懲りないダニエルはキャンディを誘った。タイミングでも計っているのか、話しかけてくるのはいつもクッキーがいなくなってからだ。「あいにくですが、出席しませんので」朝食を済ませたキャンディはそっけなく答え、席から立ち上がる。女の子なら舞踏会と聞いて、ときめかないはずがない。しかし、ドレスもなければパートナーもいないのだ。伯爵が人前に出ることはありえない。「あら?アードレー家のお嬢様じゃございませんこと?」突然見しらぬ貴婦
★★★8-8グランチェスター家の封印が押された手紙が届いたのは、それから間もなくだった。父さんの直筆で書かれたその手紙には、たった一言『帰国せよ』。外国在住でしかも外国人との結婚は異議が多く、議会の承認が下りないと書かれた弁護士の書簡も同封されていた。グランチェスターの名を捨てることは絶対に認めないとも。不肖の息子とはいえ公爵家の長男であることはゆるぎない事実。どこか納得している自分もいた。実家と縁を切り結婚話を進めることも出来たが、もうそんな必要もなかった。マーロウ夫人を諦めさせる
★★★4-2「なんて素敵な人・・!ジャスティンさんとは真逆のタイプ。恋人いるのかしら?」アメリカから来たハムレットを見て、研修生のオリビアの目がキラキラと輝いた。指を組んで祈っているようなオリビアのしぐさを見て、ミセス・ターナーは冷ややかな目を向けながら忠告した。「―・・テリュースは結婚しているよ」「あ、そうなんですか・・・」オリビアの淡い期待はあっという間に砕け散る。「なーんだ」側にいたオフィーリア役のカレンも、殆ど同時に声を上げた。するとその会話を聞いていた研修生の少年が
★★★2-18「おいしい!!空腹は最高のスパイスね!」テリィの作ったスープは、意外にもとても美味しかった。「それ、褒めているつもり?けなしてないか?」「褒めているのよ!このクロワッサンもおいしいわ!久しぶりに食べたわ」朝食というよりは既に昼食に近い時間だ。「パン屋ぐらいシカゴや町にだってあるだろ?」「分かってないわね。毎日二十人分手作りしているのよ?クロワッサンなんて手の掛るパンを作るわけがないじゃない。バターと小麦粉を何層にも重ねるなんて、ストレス以外の何者でもないわ」テリィは
★★★4-7「行ってらっしゃいっ」キャンディは期待を込めた目でテリィを見ると、自分の唇をちょんちょんと指でつついた。「・・仕方ないな、・・いい子にしてるんだぞ?」テリィはおまじないでもするようにキスをし、出掛けて行った。「本当だ、慣れてくるものね。ふふ・・」鼻歌交じりで居間に戻ると、カウチにハムレットの脚本が残されていた。慣れと油断は紙一重のようだ。キャンディの額から、じわっと汗が染み出てくる。「・・どうしよう、これがないと稽古が出来ないわよね・・」(気付いて戻ってくるかしら・
★★★4-17「そろそろ劇場に行く準備を始めないと―・・」時間の経つのも忘れておしゃべりに花を咲かせていた二人は、ようやくアフタヌーンティの守備範囲を超えていることに気が付いた。「今夜のドレスはもう決まっていて?」エレノアの問いかけに「いえ・・まだ、、ドレスはたくさんあるんですけど・・」キャンディは眉を八の字にした。キャンディはこのジャンルが苦手だ。シカゴではいつもこの役はアニーが担当してくれた。「それなら一緒に選びましょうか?コーディネイトは得意なの。お手伝いさせて」キャンデ
★★★4-16公演最終日の昼過ぎ、キャンディの待ちかねた人物が屋敷にやってきた。「お母様!!」キャンディは嬉しさのあまり、跳ぶ様に抱きついた。「キャンディ、おめでとう。『ママ』で構わないわ。あの時みたいに」全米で名を馳せている女優エレノア・ベーカーのオーラは隠しきれていないが、その整った顔立ちから漂う表情は普通の母親そのものだった。「テリュースはどう?優しくしてくれる?」早速母の気苦労が顔を出す。「はい、私にはもったいないくらい素敵な人です。さあ、どうぞ中へ」照れながら答え、招
★★★2―22マンハッタン区。路地裏の隠れ家的なレストラン。テリィの馴染みの店のようだ。窓際のテーブルに向かい合って座った時、キャンディは気が付いた。「あら、変装してなかったのね。もういいの?」「変装なんかする気は無いって言っただろ。事実を撮られたところで痛くもかゆくもないね」今日一日散々変装していた人のセリフかと、キャンディは半笑い。「それに帽子やサングラスをしたままで食事なんかできるか?マナーに反する」テリィはすました顔で答えた。「マナー?」学院の礼拝堂の机を土足で踏ん
★★★3-7「今晩ティナ達が劇をするんですって。ここで出会った役者の卵たちと旅の記念に。あなたも観に来てほしいって言われたの!いいでしょ?」朝食から戻ったキャンディは嬉しそうに伝える。「わかった、いいよ」暇ではなかったが、特段忙しいというわけでもない。少しの時間なら気分転換にもなるかと思い、テリィは承諾した。「たった六人でやるんですって。そんな人数で出来ちゃうものなのね」「台本を直して登場人物の数を絞れば、どうにでもなるよ」「照明係に一人でしょう?主役の男女でしょ?他に男優が二人
💛前回までのあらすじ披露宴の為、シカゴにやってきた二人。そこでキャンディはテリィにある疑問を抱いた。スザナと婚約し結婚秒読み状態にあったテリィは、父親の承諾など無くても結婚できたのに、何故突然やめたのか。時同じくして開かれたアードレー一族の集まる夕食会で、スザナとの婚約記事は全てデマだとテリィは言ってのけた。それはアルバートが描いた台本だったが、アルバートは事実に基づくと言ってキャンディを諭した。テリィに何も訊けず悩むキャンディ。一方テリィも、事実を話したらキャンディを傷つけると躊躇していた。
★★★1-11草木も眠る真夜中、けだるいエンジン音がこの家の門前で止まった。暗闇で目の自由がきかない。冷たいポストに手を伸ばす。小ぶりだが厚めの封筒が一通だけ入っている感触に突き当たる。無理して帰ってきた甲斐があったと思ったのはその時だ。そこからは、先ほどと同一人物とは思えないほど俊敏な行動を見せた。勢いよくエンジンを再点火させると、深くクラッチとアクセルを踏み込んで敷地内に侵入し、急いで部屋の灯りをつける。差出人の名を確認するとようやく夢ではないことを実感し、笑みがこぼれた。