ブログ記事1,949件
《智史》佐々倉から連絡をもらって、定食屋で待ち合わせたあの日。定食屋の暖簾をくぐって顔を出した彼を見た客の何人かが、まるで引き寄せられるみたいに彼に見惚れていたのが見えた。サナギが蝶になったみたいな、それはまさに羽化だった。たっぷり愛されていると、男でもこんなに変わるのかと、目の前に突き付けられて俺は愕然とした。同時に感じた、悔しいとすら思えないほどの敗北感。俺にはここまで彼を変えられるとは思えない。潔く諦めようと、密かにそう決めていた。ところが、突然その愛情の供給源である成瀬侑が、
最寄り駅のビルの壁面には、何百インチと言う大きな液晶ヴィジョンが掛けられていて、毎日映像が流れている。初めて見た時には驚いたそれも、今では日常化していて、もう珍しいと思う事はない。しかし今日、見上げた画面の中で笑っていたのは、確かにあの日の“案内人・桜井翔”その人だった。忘れかけていた。忘れようと思っていた。無かったことにしてしまえば楽になれるから、自分の中の彼を消してしまおうとしていた。けれど、リアルに生きて動く彼の姿を目にしてしまえば、こんなにも熱くなる胸の内に押し込めた感情を、消