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シカゴのオフィス街に朝が訪れていた。眩しい陽光、ビルの谷間に響く鳥のさえずり、街路樹の葉が擦れあう音、埃っぽい道を駆け抜ける自動車の轟音。〈風の街〉シカゴは、アメリカの参戦によって、激動する時代の渦に否応なしに引きずり込まれ、不安や恐怖など様々な混乱を社会に抱き込んだが、それでもいつもの通りに夜は明け、清々しい朝を迎えていた。しかし、ここアードレー家の本社ビル最上階は、ひとりの男の来訪によって、かつてないほどの激震が走る『朝』となる。昨日。あれから、アーチーたちはシカゴに戻るとパティにも
11年目のSONNETスピンオフ空白の時最終話★★★劇場に、キャンディが来ていたかどうかは分からない。分からなくて良かったのかもしれないとテリュースは思った。その方が、希望がつながるから――結局、その日は病院に泊まった。ホテルには帰らないで、とスザナに懇願されたからだ。――キャンディと逢い引きするとでも思っているのか。(・・・信用されてないんだろうな・・)イライザをキャンディと勘違いしたことは棚に上げ、テリュースの胸中はいささか複雑だった。今
★★★8-10宛名はテリュース・グレアム様―雑誌の切り抜きに載っていたテリィの新しい名前。テリュース・G・グランチェスターの“G”がグレアムだったことを初めて知り、確実に届いて欲しいと、慣れないこの名前を戸惑いながら書いたのを覚えている。シカゴの病院に移ったばかりの多忙な日々の中で、手紙を書くのはいつも夜になった。同室のフラニーを気遣い、デスクの弱い光を自分の背中でブロックしても、コホンという迷惑そうな咳払いが聞こえると、慌てて書くのを中断した。アパートの住所を知った後も、巡業中
💛前回までのあらすじ再会した二人は、テリィの代役公演の登板に向け慌ただしくアメリカを後にした。イギリスへ着くなり結婚式をすると言い出したテリィは、母・エレノア・ベーカーから託されたウエディングドレスをキャンディに見せた。キャンディは戸惑いつつも受け入れ、二人は結ばれた。新居はテリィの移籍先の劇団があるストラスフォード・アポン・エイボン。その街には広大な森を擁するグランチェスター家の別荘があった。新生活を迎えた朝、キャンディは看護婦の仕事をしたいと申し入れた。テリィの新しい劇団でのデビュー公演は
★★★3-2スウィートルームの乗客は神と対等だ。「伯爵は昼食と夕食はレストランに行かず、毎日部屋で召し上がるそうだから宜しく頼む」厨房を担当する乗務員にクッキーは頼んだ。知り合いという縁でクッキーはスウィートルームの担当船客係を任された。ご主人に頼まれた幾つかの項目を、クッキーは淡々と遂行する。その中の一つは呼び名についてだ。伯爵と呼んでほしい。グランチェスターの名は口にするな、『テリュース』はもっといけない―ご主人の言うことは絶対だ。深く詮索せず、とにかく言うとおりにするだけだ
※このお話は、本編エピローグの冒頭の一文をピックアップした物語です。本編を未読でも読めるようになっています。前回のスピンオフ業火の劇場の1ヶ月後の出来事です。★登場人物・・・アルフレッドテリィのアメリカ時代からの旧友(劇団員)。ややぽっちゃり体型。どんな人物だったか知りたい方は、5章アルフレッドの告白をご覧ください。アルフレッドの独白11年目のSONNETスピンオフ★★★焦げ臭さの残る黒い地面とは対称的に、透き通るエイボン川は淀みなく、抜ける
今回の考察は、ファイナルには全く触れられていない「空白の10年」を扱っています。つまりほぼ妄想です。くだらぬものに付き合わせて、申し訳ありません皆さんのお考えと違うところも多々あると思いますが、一意見としてご覧ください手紙を隠したスザナファイナルで初めて追加された、スザナが手紙を隠していたエピソード。漫画のスザナはどうだったか?テリィは不注意で手紙を落とし、それをスザナが拾います。拾ったから渡す、という普通の展開でした。つまり、漫画版スザナは
★★★8-22暖炉の薪がパチパチと大きな炎を上げ始めた頃だった。「・・降り始めたのか・・」窓ガラスの向こうがうっすらと白くなっていることに気付いたテリィは、ちらちらと光りながら落ちてくる雪に誘われテラスへ出た。雲の割れ間から令月が覗く雪月夜・・。幻想的な光景だった。「テリィ・・?」食器を洗っていたキャンディの耳に、柔らかなハーモニカの音色が届いた。雪のカーテンで視界がぼやけ、ガラス戸の外は何も見えない。テラスへ近寄って行くと、ついたばかりの足跡が三つ四つ。冬のあの日、ポニー
今日は、®️18で書かせていただきます💕17歳以下の良い子のみんなは読まないでね💕🤣生粋の『妄想族』のわたし。ここ最近は、妄想の塊🤣『永遠のジュリエット』という二次小説を紡がせていただいているのですが、漫画とファイナルストーリー(FS)で設定が違っていて「えー⁉️どっちなの?」と悩むことがちょくちょくあります。どっちに寄せるべき??と。例えば。(月刊なかよしと単行本キャンディキャンディではまた違いがあったりします💦)*登場人物の年齢*ポニーの家の場所*スザナがキャンディの手紙を抜
★★★2-11ニューヨーク、グランドセントラル駅。まるで欧州の宮殿のような立派な駅舎だ。壮大な吹き抜けのホールを持った巨大ターミナル駅には何本もの路線が乗り入れる。三日三晩地面を濡らし続けた雨がようやく止み、この日は四日ぶりにお陽さまが顔を出していた。「到着は三番ホームか・・・」テリュースは十年前とさほど変わらない変装でキャンディを迎えに来ていた。頭に深くハンチングをかぶり、サングラスをかけて顔を隠す。「先頭車両からおりると書いてあったな。確かにこれなら探しやすい」二十五歳のキャ
SONNET4章の中書き4章、お読みいただきありがとうございました!元祖ツンデレキャラのテリィには、デレだけでなく、ツンの面も魅力です。ですので、当小説の二人はよくケンカをします。あの二人は実にケンカが似合います作中に登場する単語は出来るだけFINALSTORYで使われている表現を取り入れています。クローゼットではなく衣装戸棚。キャスケットではなくハンチング。イケメンではなく‥いい男。(原作でも「いい男」は使われていませんが、さすがに100年前の表現に「イケメン」は・・・
★★★3-4交代時間だからとクッキーがレストランから姿を消したタイミングでダニエルは話しかけてきた。「やあ!昨日会ったね。今日も一人?お友達はまだ船酔いなのかい?」キャンディは朝から嫌な奴につかまったと思った。「君、昼と夜はここに来なかったけど、どうしたの?君も体調が悪い?」どうでもいいから、どこかへ行ってほしい。「今日のこの服、どこで買った?彼女の服はなかなか手に入らないだろ?パリまで行ったのかい?それともロンドン?」「知らないわ」レディの服を舐めるように見ている無礼な奴とは、
★★★3-11いつ用意したのかと訊いたら、アメリカを発つ前日だとテリィは言った。ドレスではない、指輪の話だ。結婚指輪はキャンディの指に吸い込まれるようにピッタリと収まった。「入念な下調べをした上での当然の結果だよ」テリィは得意げに言ったが、再会した夜、寝入ったキャンディの左手にこっそりキスをし、指のサイズを確認していたことは秘密にしておこう。「入念ね・・」キャンディはクスッと笑った。指輪の内側には何も刻まれていなかった。メッセージも名前も日付も。指輪も結婚式もおそらくその瞬間を
★★★3-5「君、今夜の舞踏会のパートナーになってくれない?」懲りないダニエルはキャンディを誘った。タイミングでも計っているのか、話しかけてくるのはいつもクッキーがいなくなってからだ。「あいにくですが、出席しませんので」朝食を済ませたキャンディはそっけなく答え、席から立ち上がる。女の子なら舞踏会と聞いて、ときめかないはずがない。しかし、ドレスもなければパートナーもいないのだ。伯爵が人前に出ることはありえない。「あら?アードレー家のお嬢様じゃございませんこと?」突然見しらぬ貴婦
★★★2-24その朝二人は寝坊した。「早起きは得意だって言ったじゃないかっ・・!」テリィは車を運転しながら愚痴が止まらない。「寝坊したのはテリィのせいよ!」緊張してなかなか寝付けなかった昨夜を思い出す。何でだよ、と思いながらテリィは猛スピードで街中を走り抜け、途中ポストに手紙を投函し、大型船の寄港する港に間一髪滑り込んだ。愛車を船に搬入してもらい、船の搭乗手続きをする。「テリュース・G・グランチェスター様とキャンディス・W・アードレー様ですね?」乗客名簿に書き写しながら、乗務員
前の内容を踏まえ、主観混じりで深堀りしていきます。スザナとキャンディスザナからの手紙は、テリィと別れたばかりの頃にシカゴのマグノリア荘に届いたはずです。キャンディの手紙を抜き取っていたスザナは、この住所(と看護婦寮の住所)しか知りませんし、「キャンディスWアードレー様無事にシカゴに戻られたでしょうか」下巻279という文面からも「直後」であることが読み取れます。スザナからの手紙は、旧小説よりもボリュームが増していますが、逆に、旧小説ではあれほど饒舌だったキャンディの
★★★8-21消えかかった暖炉の炎も、一吹きの息で橙色に変わる。やがてパチパチと心地よい音を立て、再び燃え上がる。こんな炎はもういらない・・。燠(おき)のように、静かに、熱く、いつまでも――「何を考えているの?」キャンディは運んできたトレイを暖炉の脇に置いた。「ジャムとの別れを噛みしめている・・」暖炉を炊きながら真顔でふざけた事を言うテリィに、「それを言うならアーチーとアニーとのお別れでしょっ」キャンディはテリィの額をチョンっと指で押した。「アーチー嬉しそうだったわ
★★★8-11暗闇の中に白い灯りがともる。灯りじゃない。白いカップ・・湯気が上っている・・甘い香りの・・。「気分はどう?・・これを飲めば温まるよ。レイン先生から貰ってきたんだ。ココア、好きなんだって?もっと早く言えよ、家族なんだから」ベッドからゆっくりと身体を起こしたキャンディの前に、何事もなかったようにテリィが立っている。「・・私、寝てたの・・?」「・・十分ぐらい。現役の看護婦がキスで気絶したなんて、自慢できる話じゃないな」「・・テリィのせいよ。指の位置が・・ちょうど後頭動脈を
💛前回までのあらすじ代役の依頼を受け、急遽渡英することになったテリィ。テリィの説得に応じる形でキャンディも海を渡り、イギリスでの新生活が始まった。新しい劇団では、テリィは妻と死別したばかりとまことしやかに囁かれていた。プライバシーに触れてはいけないと気遣う団員達をよそに、テリィのハムレット公演は無事大成功を収め、二か月間の幕を閉じた。その後の打ち上げパーティで、テリィが「再婚」していたことを知った劇団員は混乱したが、裏で何を囁かれていたかなど知らないテリィとキャンディは、無邪気にダンスを楽しん
早朝、少しやつれたテリュースが、それでも柔らかな微笑みをたたえながら、スザナの寝室の窓辺に立った時、彼女はまだ夢の続きをみているのだと思った。彼女の夢の中のテリュースは、いつも幸せそうに微笑んでいて、その微笑みを受け止めると、幸福ではち切れそうな気持ちになる。しかし、夢からさめ、恋しいテリュースの姿を探すとそこには、どこか遠くを見ているように虚ろな眼をした横顔があるだけ。うつし身はここにあっても、心はあの人のいる彼方に飛んでゆく恋人。そんなテリュースだが、スザナが話しかけると、どんな時でも
★★★3-9まっさきに大型船から降ろされたボンネットが凹んだテリィの愛車。持ち主である本日の伯爵は、髪を下ろし、黒縁メガネの代わりにサングラスをかけていた。髭はもちろん跡形もない。「テリュース・G・グランチェスター様、及びキャンディス・W・アードレー様、どうぞ」二人の名前が一番に呼ばれた。スウィートルームの乗客なので当然、と言いたいところだが、伯爵が権力を乱用したに違いない。真っ先にタラップを下りる二人の耳に、船上からさまざまな声が聞こえてくる。「・・例の伯爵カップルか?この前と
★★2-8敷地を出る際、テリュースは門番に言葉をかけた。「君、ナイスアシストだったよ!」もし門番からキャンディ不在の事実を早々に告げられていたら、さっさとシカゴを離れていたに違いない。キャンディの養父に会う事も叶わなかったはずだ。吸い殻で汚してしまった門の前は、既にきれいになっていた。感謝とお詫びを兼ねて、助手席に置いてあった『ハムレット』のチケットを門番に渡した。なぜそこにチケットがあったのか、自分にもわからない。「芝居のチケットですか・・?」門番は初めて雑談に応じた。当初不
★★★4-19割れんばかりの大歓声で幕は閉じ、劇場全体が揺れているようにさえ感じた。シェークスピア四大悲劇の中で最も長編のこの戯曲は、デンマーク王国の若き王子ハムレットの復讐劇。国王である実父の突然の死、義父になった叔父への憎悪、実母への不信感、友人の裏切り、恋人との別れと不慮の事故死。怒涛の絶望の中で狂人を装いながら生き方を模索する王子ハムレット。複雑で繊細な心を持ちながら、時に大胆で国民からの人望も厚い孤高の存在。そんなテリュース・グレアム演じるハムレットの圧倒的な存在感に、観客の
小説版を確認していると、くだらぬ発見をしてしまう事が多々ございまして今回はそんな発見を書き綴りたいと思います。みなさまの「ど~でもいい」というつぶやきが多ければ多いほど悦を感じるという、そんな記事を目指しました。どうぞお付き合いくださいカーソンさんは再婚していた!愛妻の名前はビクトリア早速の「ど~でもいい」ありがとうございます。蓼食う虫も好き好きといいますし、この情報に「カーソンロス」を感じたご婦人もいるのかもしれません。次、行ってみよう!
💛前回までのあらすじシカゴでの披露宴が済み、キャンディの故郷の村にやってきた二人。ある夜キャンディの部屋で、過去の手紙の束を目の当たりにしたテリィの心は激しく乱れた。スザナとは婚約していないと言うテリィの言葉にはいくつか不審点があることにキャンディは気付いていた。度々苦しそうな顔をするテリィに、キャンディはスザナとの過去を話してほしいとついに迫った。キャンディの想いに触れ、テリィは決心した。最終章追憶illustrationbyRomijuriRepr
考察系記事ですが、ファイナル未読の方も読める記事ですかんたんですよ~ファイナルの3章は主に【手紙】で構成されています。キャンディが書いた手紙とキャンディに届いた手紙が羅列し、その間に、30代のキャンディ目線の回顧録が8カ所挟まっています。それゆえに、現在と過去が混在し、時系列がバラバラと言われています。本当にそうなのかファイナルは、30代のキャンディが過去を回想する、という形式の著書です。つまり手紙の順番は消印順ではなく回想順です。それを忠実に書き出してみます。※手
考察前のつぶやき「あのひとのことは、はじめから曖昧にしようと決めていました」下巻336これはファイナルのあとがきに書かれている、原作者名木田先生の言葉です。これを『どちらともとれるように書いた』と解釈する人がいるようです。そう思いますか?この言葉だけ見ると、そうかもしれません。なので「文脈」を見てみます。後に続く言葉を紹介します「あのひとが誰かをきちんと描くには、長い物語が必要なのです。あのひとを明かしてしまうと、長年の読者たちの夢を奪うことになるか
全国500万人のキャンディキャンディファンの同志のみなさま💕えんも君さまの『テリィ』が完成したようです💕色んな方々がテリィを描いていらっしゃいますし、以前私はいがらし先生ご自身のイラストと思いこんだくらいのクオリティの二次作家さんもいて(大ファンになってしまいました💕)世界中に素晴らしい様々なテリィがいますが、でも『男性が描くテリィ』を見たことがないですし、見てみたくて、勇気を出して、えんも君さまにお願いをしたんです✨えんも君さまは、いつも温かな愛と鋭い視点でそれぞれの漫画やアニメを語って
★★★4-9稽古が早く終わり、夕刻帰宅したテリィは、馬小屋にセオドラがいない事に気が付いた。まだキャンディも帰宅していないようだ。「―おや、セオドラを連れてご出勤でしたか」やれやれ、と思いながらセオドラを迎えに川沿いの小道をゆっくりと歩き始めた。キャンディが届けてくれた脚本。確かにあの脚本でずっと稽古はしていたが、新しい脚本を渡され、劇もほぼ完成した今となっては、絶対必要という代物ではなくなっていた。「これからはキャンディに無茶をさせないように、きちんと話さないといけないな―・・俺も
謝っていないスザナテリィに会いにNYへ行ったキャンディは、自分の手紙がスザナによって(殆ど)隠されたことに対して憤慨しています。「私が出した手紙を隠されたように、もう、二度とスザナに邪魔をして欲しくなかった。はっきりそう言ってやろう、と意気込んでいた」下巻235ですが、スザナの自殺未遂の現場に居合わせたキャンディは急転直下テリィとの別れを決意します。その後、キャンディとスザナは病室で話をしたと思われますが、キャンディは手紙のことを話題に出せるような状況ではなくなりました。