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今回のお話は本編1章⑩「ニアミス」の続編です。こちらを復習して入ると、読みやすくなります。※本編未読の方には、ネタバレになりますのでご注意ください。11年目のSONNETスピンオフ空白の時①★★★――ダーリン・・、まだお休みにならないの?そのとき部屋の中から声がした。聞かれたくなかった。俺は返事をせずに、そのまま部屋の中に戻った。「――何を見ていらしたの?」車椅子の車輪が、滑らかな動きで近づいてきた。後
★★★4-6順調に通し稽古が終了し、テリィは早めの帰宅が許された。自宅に到着すると、ジェイに頼んでいた品が自宅に届けられていた。白銀の駿馬、愛馬セオドラだ。「久しぶりに走るか?セオドラ」テリィは敷地内の馬場を走り始めた。キャンディが小道だと思ったのは馬場だったのだ。川沿いの道をしばらく進むとゆるいカーブに差しかかる。けやきの木と木の間に掛っていたハンモックが破れている。風化によるものかと最初は思ったが、圧が掛ったような破れ方を見る限り、そうでは無さそうだ。その枝にはなぜかカットフ
代々伝わる宝石箱あのひとの家に代々伝わる象嵌細工の宝石箱。「代々」という表現は、他に一箇所テリィの実家に対して使われています。「グランチェスター家先祖代々の厳めしい肖像画」下巻83スコットランド移民のアードレー家より、グランチェスター公爵家の方が歴史があるものと思われますが、だからアードレー家ではない、とは言えません。装飾に使われている希少価値の高いマザーオブパールは当時の富の象徴・貴族のステータスでしたが、それをアードレー家が所持していても不自然ではありません。マ
★★★7-4「ただいまー!」ぎしぎし鳴る古い木の扉を思いっきり開いて、キャンディは全員に聞こえる様に大声を上げた。奥からジミィと子供たちが飛び出してくる。ジミィはキャンディを見るや否やタックルに近い状態で飛びついた。「ひどいよ、親分!!黙って遠い所に行っちまって!!」半べそで恨みつらみを捲くし立てる。「ごめん、ごめん、ジミィ、、、本当にごめんねっ」少し遅れてポニー先生とレイン先生が小走りでやってくる。その様子を一歩下がったところからテリィは見ていた。(親分・・?)その斬新な
★★★3-7「今晩ティナ達が劇をするんですって。ここで出会った役者の卵たちと旅の記念に。あなたも観に来てほしいって言われたの!いいでしょ?」朝食から戻ったキャンディは嬉しそうに伝える。「わかった、いいよ」暇ではなかったが、特段忙しいというわけでもない。少しの時間なら気分転換にもなるかと思い、テリィは承諾した。「たった六人でやるんですって。そんな人数で出来ちゃうものなのね」「台本を直して登場人物の数を絞れば、どうにでもなるよ」「照明係に一人でしょう?主役の男女でしょ?他に男優が二人
★★★7-5「皆がお昼寝している間に、ポニーの丘に散歩に行かない?」そろそろお疲れかしら?と思ったキャンディは、三時のお茶が済んだ頃テリィを誘った。キャンディの好意を即座に察し、「いいよ」と答えると、テリィは一冊の本を手に取った。「・・この木?君が木登りの練習をしたっていうのは」テリィは大きなナラの木を見上げた。全ての葉が落ちた今の季節、空に高く突きだす煙突のようだ。「そうよ。お父さんの木って呼んでいるの」「へえ、お母さんの木もあるのかい?」辺りを見回すテリィに、キャンディはそん
★★★5-5『返してくれないか』『いやよ、こんな物があるから、いつまでもあなたは――!!』『やめろっ、スザナ―!』「やめろっ!ㇲ・・!」思わず出た自分の声に驚き、ハッと飛び起きる。「どうしたの・・?」声に気付いたキャンディも目を覚まし、体を起こした。「―・・っ・・キャンディ・・」テリィは張り詰めたような声を出し、キャンディをきつく抱きしめた。「お化けの夢でも見た・・?」荒い息遣い、心拍数も速い―・・。「――ごめん、大丈夫・・。もう、朝か・・」おもむろに腕を離したテ
★★★2-4急病人を乗せた車は午前中の早い時間に村を離れ、病人の身体に障らない瀬戸際のスピードで北上した。町はシカゴとは全く逆方向だった。テリュースの心中は穏やかとは言い難かったが、子供の命には代えられない。マーチン先生の事前連絡の甲斐あって、町の病院は直ぐに母子を受け入れた。ここまでくれば直接旦那を捕まえられるから大丈夫とアンに言われ、多少心残りはあったものの、テリュースは直ぐさまハンドルを反転させた。「テリィ・・さん、あなたは命の恩人です・・、ありがとうございます!」去り際アン
テリィと言えば1にも2にも襟ですよねそうなのか?見て下さいこの見事に立った襟!!仮に、R様がタートルネックのテリィを描いたとしたら︵ヽ(`Д´)ノ︵襟はど~したっ!どこを目指してるんだ、このテリィは!高橋一生かよっと・・・私はキレるでしょう・・・・・お似合い・・一生さんうん、タートルネックのテリィも悪くない結局何でもいいらしいテリィの襟で、私が真っ先に浮かぶのはコートの襟です
※2024年2月26日内容を更新しました。小説キャンディキャンディFINALSTORY復刊を目指しています活動をご存知ない方はこちらをお読みください『ファイナル・ストーリーを復刻させよう!』諦めていませんか・・・?3万円出せないと。。。。何がってこれです!!諦めるのはまだ早~い!!※つい昨日まで諦めていたのは誰?こちらのブログ…ameblo.jpフリマで超~高額で取引されてるこの本遥か昔の記憶が、かろうじて残っているそこのあ
★★★2-18「おいしい!!空腹は最高のスパイスね!」テリィの作ったスープは、意外にもとても美味しかった。「それ、褒めているつもり?けなしてないか?」「褒めているのよ!このクロワッサンもおいしいわ!久しぶりに食べたわ」朝食というよりは既に昼食に近い時間だ。「パン屋ぐらいシカゴや町にだってあるだろ?」「分かってないわね。毎日二十人分手作りしているのよ?クロワッサンなんて手の掛るパンを作るわけがないじゃない。バターと小麦粉を何層にも重ねるなんて、ストレス以外の何者でもないわ」テリィは
冬はまだ始まったばかりだというのに、ブロードウェイは秋の衣を脱ぎ捨て、純白の雪の衣裳をまとうようにたたずんでいる、そんな寒い日だった。昨日までの暖かさが嘘のような。ブロードウェイからそれほど遠くないホテル『ザ・ヴァルハラ』元は迎賓館だった建物をオーナーが改築した豪華なホテルに、その日正式に婚約を発表するストラスフォード劇団のテリュース・グレアムとスザナ・マーロウの姿があった。通常は決して許可がおりないその格式高いホテルの一角で、宿泊客をそのエリアからすべて排除して、ふたりのポートレート撮
★★★4-4「ふぁあー・・」これ以上ないほど両手を広げ、思わず声が漏れるほどの大あくび。のけぞる様にカウチに投げ出した頭は、天を向いたまましばらく浮上してこない。キャンディはスーツの上着をハンガーに掛けながら、そんなテリィの様子を心配そうに覗いた。ハードな稽古の上に初日の緊張感もあっただろうが、それに追い打ちをかけるようなお偉方との会食。昨夜の睡眠時間が全く足りていないこともキャンディは知っている。「明日もスリーピースで行くの・・?」「・・いや、幹部への挨拶は今日で済んだから・・
★★★4-16公演最終日の昼過ぎ、キャンディの待ちかねた人物が屋敷にやってきた。「お母様!!」キャンディは嬉しさのあまり、跳ぶ様に抱きついた。「キャンディ、おめでとう。『ママ』で構わないわ。あの時みたいに」全米で名を馳せている女優エレノア・ベーカーのオーラは隠しきれていないが、その整った顔立ちから漂う表情は普通の母親そのものだった。「テリュースはどう?優しくしてくれる?」早速母の気苦労が顔を出す。「はい、私にはもったいないくらい素敵な人です。さあ、どうぞ中へ」照れながら答え、招
★★★2―22マンハッタン区。路地裏の隠れ家的なレストラン。テリィの馴染みの店のようだ。窓際のテーブルに向かい合って座った時、キャンディは気が付いた。「あら、変装してなかったのね。もういいの?」「変装なんかする気は無いって言っただろ。事実を撮られたところで痛くもかゆくもないね」今日一日散々変装していた人のセリフかと、キャンディは半笑い。「それに帽子やサングラスをしたままで食事なんかできるか?マナーに反する」テリィはすました顔で答えた。「マナー?」学院の礼拝堂の机を土足で踏ん
インタビューする相手の本音を聞き出すためには、幾つかの「技(わざ)」がある。それを使えばある程度簡単に人の心の中をのぞくことができる。その老練な新聞記者は腹の中でそう考えていた。彼がよく使う手口。ひとつは、相手が潜在的に誉められたいと思っているところを鋭く嗅ぎわけ、上手にそこをくすぐり、おだててこの人間は自分をわかってくれる、自分の味方だと思わせる。するとインタビューされる相手は驚くほど饒舌に語り出す。もうひとつの奥の手は、相手の急所や触れられたくないところをえぐり、わざと本気で怒らせる。
★★★3-14キッチンには、先刻ジェイが届けてくれた食材がにぎやかに並んでいた。「すぐ作るわね。待ってて」キャンディは慣れた手つきでエプロンをつけ、髪をリボンで結い上げて夕食の準備に取り掛かる。エプロンはジェイが結婚祝いにとプレゼントしてくれた、と言えば聞こえがいいが、お店に陳列してあった品をジェイが横領したと言った方が近いだろう。鼻歌を歌いながら野菜を切り始めたキャンディの肩に、背後からテリィが顔を乗せた。「何を作るの?」キャンディはハッとした。(この体勢・
★★★4-11代役テリュース・グレアム!彗星のごとく現る!二種類のハムレットを演じ分ける確かな演技力公演は順調に日程をこなして行った。雑誌の劇評は新生RSCと称し、代役テリュース・グレアムを『イングランドの新星』とほめたたえた。月がかわり、主演俳優を生活面で支える妻としての緊張感にも次第に慣れ始めたある日のことだ。その夜テリィは、いつもの時間になっても帰ってこなかった。ブロロロロ・・キャンディがウトウトしかけた時、エンジン音が聞こえた。玄関に迎えに出ると、おぼつかな
テリュースとスザナ二人は何を思い暮らしていたのか空白の十年を描いた短編です11年目のSONNETスピンオフ空白の時②※本編未読の方にはネタバレになります。ご注意ください。★★★真夜中近くになって、ドアをノックする音が部屋に響いた。「――スザナ、どうしたんだ?」特に何も思わず、車椅子のスザナを部屋の中へ招き入れる。初めて見るナイトウェアだな、と思うより先に、いくらマイアミだと言っても二月にその薄着はどうなのか、と感じたぐらいで、それが自分
あのひとは誰か?名木田恵子著FinalStoryを論理的に読解した場合、あのひとはテリィであることに向けて書かれていると思います。時系列を並び替え、追加されたエピを精査し、変更点の細部に着眼し、全体的な潮流、原作者の発言を加味すると、疑いの余地はありません。ただしこの著書は読者に結末を委ねるリドルストーリーです。曖昧な文章表現から想像力を広げ、あのひとはAともTとも読むことができます。原作者はそのように執筆されています。イマジネーションの世界において、あのひとはA
💛前回までのあらすじイギリスの劇団からハムレットの代役の依頼を受けたテリィは、急遽渡英することが決まった。紆余曲折の上やっとキャンディと再会したテリィは、イギリスへ一緒に来て欲しいと迫る。故郷の人を残してはいけないと一度は断ったキャンディだったが、アルバートの手紙に後押しされ決意する。スザナの墓前で過去について語り出したテリィ。スザナに対して特別な感情はなく、自立を支援していたと説明したが、多くの事は今は話したくないと、マーロウ家での生活や婚約の真相については明言を避けた。旅立ちの朝、港にテリ
★★★2-2劇場の外は、朝から降り続く雨が一層激しさを増していた。まるで先ほどの出来事を象徴しているかのような荒れた空模様。本番前のリハーサルが終わり、衣装に着替えるまでのしばらくの間、建物の窓越しに通りを行き来する車や人をぼんやり眺めながら、テリュースは腹の底から深いため息をついた。「・・計画は全て白紙か、、クソっ!」キャンディと過ごせるのはわずか一日、いや、おそらくほんの数時間。家族への挨拶など出来るはずもない。イギリスへ旅立つ時は一緒に、と決めていただけに、簡単には心が切り替
シカゴのオフィス街に朝が訪れていた。眩しい陽光、ビルの谷間に響く鳥のさえずり、街路樹の葉が擦れあう音、埃っぽい道を駆け抜ける自動車の轟音。〈風の街〉シカゴは、アメリカの参戦によって、激動する時代の渦に否応なしに引きずり込まれ、不安や恐怖など様々な混乱を社会に抱き込んだが、それでもいつもの通りに夜は明け、清々しい朝を迎えていた。しかし、ここアードレー家の本社ビル最上階は、ひとりの男の来訪によって、かつてないほどの激震が走る『朝』となる。昨日。あれから、アーチーたちはシカゴに戻るとパティにも
11年目のSONNETスピンオフ空白の時最終話★★★劇場に、キャンディが来ていたかどうかは分からない。分からなくて良かったのかもしれないとテリュースは思った。その方が、希望がつながるから――結局、その日は病院に泊まった。ホテルには帰らないで、とスザナに懇願されたからだ。――キャンディと逢い引きするとでも思っているのか。(・・・信用されてないんだろうな・・)イライザをキャンディと勘違いしたことは棚に上げ、テリュースの胸中はいささか複雑だった。今
★★★8-10宛名はテリュース・グレアム様―雑誌の切り抜きに載っていたテリィの新しい名前。テリュース・G・グランチェスターの“G”がグレアムだったことを初めて知り、確実に届いて欲しいと、慣れないこの名前を戸惑いながら書いたのを覚えている。シカゴの病院に移ったばかりの多忙な日々の中で、手紙を書くのはいつも夜になった。同室のフラニーを気遣い、デスクの弱い光を自分の背中でブロックしても、コホンという迷惑そうな咳払いが聞こえると、慌てて書くのを中断した。アパートの住所を知った後も、巡業中
💛前回までのあらすじ再会した二人は、テリィの代役公演の登板に向け慌ただしくアメリカを後にした。イギリスへ着くなり結婚式をすると言い出したテリィは、母・エレノア・ベーカーから託されたウエディングドレスをキャンディに見せた。キャンディは戸惑いつつも受け入れ、二人は結ばれた。新居はテリィの移籍先の劇団があるストラスフォード・アポン・エイボン。その街には広大な森を擁するグランチェスター家の別荘があった。新生活を迎えた朝、キャンディは看護婦の仕事をしたいと申し入れた。テリィの新しい劇団でのデビュー公演は
★★★3-2スウィートルームの乗客は神と対等だ。「伯爵は昼食と夕食はレストランに行かず、毎日部屋で召し上がるそうだから宜しく頼む」厨房を担当する乗務員にクッキーは頼んだ。知り合いという縁でクッキーはスウィートルームの担当船客係を任された。ご主人に頼まれた幾つかの項目を、クッキーは淡々と遂行する。その中の一つは呼び名についてだ。伯爵と呼んでほしい。グランチェスターの名は口にするな、『テリュース』はもっといけない―ご主人の言うことは絶対だ。深く詮索せず、とにかく言うとおりにするだけだ
※このお話は、本編エピローグの冒頭の一文をピックアップした物語です。本編を未読でも読めるようになっています。前回のスピンオフ業火の劇場の1ヶ月後の出来事です。★登場人物・・・アルフレッドテリィのアメリカ時代からの旧友(劇団員)。ややぽっちゃり体型。どんな人物だったか知りたい方は、5章アルフレッドの告白をご覧ください。アルフレッドの独白11年目のSONNETスピンオフ★★★焦げ臭さの残る黒い地面とは対称的に、透き通るエイボン川は淀みなく、抜ける
今回の考察は、ファイナルには全く触れられていない「空白の10年」を扱っています。つまりほぼ妄想です。くだらぬものに付き合わせて、申し訳ありません皆さんのお考えと違うところも多々あると思いますが、一意見としてご覧ください手紙を隠したスザナファイナルで初めて追加された、スザナが手紙を隠していたエピソード。漫画のスザナはどうだったか?テリィは不注意で手紙を落とし、それをスザナが拾います。拾ったから渡す、という普通の展開でした。つまり、漫画版スザナは
★★★8-22暖炉の薪がパチパチと大きな炎を上げ始めた頃だった。「・・降り始めたのか・・」窓ガラスの向こうがうっすらと白くなっていることに気付いたテリィは、ちらちらと光りながら落ちてくる雪に誘われテラスへ出た。雲の割れ間から令月が覗く雪月夜・・。幻想的な光景だった。「テリィ・・?」食器を洗っていたキャンディの耳に、柔らかなハーモニカの音色が届いた。雪のカーテンで視界がぼやけ、ガラス戸の外は何も見えない。テラスへ近寄って行くと、ついたばかりの足跡が三つ四つ。冬のあの日、ポニー