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★★★1-12山の中腹にあるその家のテラスからは、遠くにニューヨークの港が望める。朝陽を浴びた海がキラキラと光り、その中をいつものように船舶が行き来している。つい昨日まで感じられなかった南からの風が心地よく髪を揺らす。「・・もう春か」広い空を自由に飛び回る鳥たちを見ながら、テリュースはくわえた煙草に火をつけた。「今すぐ・・、飛んでいければな・・―」イギリス本土を縦断できるほど離れているキャンディとの距離。今の公演が終るまでまとまった休暇はない。その休暇も一ヶ月以上先。もどか
お越しいただきありがとうございます。初投稿から今回で4回目の投稿です。みなさまには読んでいただき、またフォロー・いいね!・コメントをいただき、感謝しております!これからもどうぞよろしくお願いいたしますm(__)m✳︎✳︎✳︎前回、いがらし氏が宝塚に並々ならぬ憧れがあったことを紹介いたしました。『いがらしゆみこ⭐︎「パロスの剣」って?①〜解説栗本薫編〜』お越しいただきありがとうございます。「パロスの剣」ってみなさんご存知でしょうか?この「パロスの剣」、原作は栗本薫氏、作画がい
**小説キャンディキャンディFINALSTORY(長い物語のかけら11)**テリィ・キャンディ編の4回目。2012/6/24(追加)2022/5/17(写真変更)セイヨウサンザシ5月の風が吹いていた。数日前まで、丘にはきんぽうげとしろつめくさだけだったが、今は色とりどりの花がいっせいに咲き始め、それらが風に揺れるのをキャンディは丘の上から眺めていた。キャンディはテリィに返事を出した後、ポニー先生とレイン先生に今回の
妄想編二人で迎える朝。やはり2人はバックハグで寝るかな?大あくびが止まらないキャンディを、微笑ましく見つめるテリィ。海外の方が書かれた二次小説で、「テリィは、キャンディと一緒にやってみたいことはたくさんあったけれど、その中でも一番望んでいたことはこうして共に寝ることだった。一緒に寝ること以上に親密で特別なことはなく、テリィはこれまでキャンディ以外の人間と共に眠ったことはなかったし、今後も他の誰ともそうするつもりはなかった」という部分があります。キャンディと眠りを共にすることは、テリ
★★★8-9手紙を隠したスザナ・・――誰かを心底、愛してしまったら、きれいな気持ちのままではいられない―自分のエゴイズムに負けてしまったスザナ。そんな自分の罪の深さをスザナは知っていた。きっとつらかったに違いない。そう、私達以上に・・。「・・何も知らなかった・・、私――」蒸気で曇った窓に手をあて、キャンディは建物と建物の隙間からわずかに見える空を見上げた。今にも雪が降り出しそうなよどんだ空。――わたしはテリュースの心がどこを向いているか知っていました。テリィがあなたのこと
このページは考察の上での補足資料です。ご興味ある方は、ご覧ください資料に興味が無い方は次の考察へどうぞ7つのエピソード正確な文章1シェークスピア全集隣室の書斎の壁は革表紙の書籍で埋まっている。シェークスピア全集、イギリス、フランスの文学書、そして、医学に関する書籍――。下巻1972幸せになり器を修理その後も、つらいことがある度に繰り返し、この”幸せになり器”を鳴らし続けたので、ある日、とうとう壊れてしまった。ステアとのつながりが切れたような気がして、打ちひしがれて
★★★5-3「セカンドフォリオはここにあったのか」テリィは書棚にあったシェークスピア全集の中の一冊を取り出した。「うちにあるものと同じ?」「いや、発行年度が違う。この全集はファーストフォリオの次に古いんだ」テリィが『マクベス』を流し読みしていると、執事の押す車いすに乗って公爵が部屋に入ってきた。部屋は一気に張りつめた空気に入れ替わる。公爵はすぐさま人払いし、三人だけが部屋に残った。数年ぶりの親子の対面。キャンディには自分の心拍音がやけに大きく感じられた。――グランチェスター公爵
★★★2-24その朝二人は寝坊した。「早起きは得意だって言ったじゃないかっ・・!」テリィは車を運転しながら愚痴が止まらない。「寝坊したのはテリィのせいよ!」緊張してなかなか寝付けなかった昨夜を思い出す。何でだよ、と思いながらテリィは猛スピードで街中を走り抜け、途中ポストに手紙を投函し、大型船の寄港する港に間一髪滑り込んだ。愛車を船に搬入してもらい、船の搭乗手続きをする。「テリュース・G・グランチェスター様とキャンディス・W・アードレー様ですね?」乗客名簿に書き写しながら、乗務員
★★★3-5「君、今夜の舞踏会のパートナーになってくれない?」懲りないダニエルはキャンディを誘った。タイミングでも計っているのか、話しかけてくるのはいつもクッキーがいなくなってからだ。「あいにくですが、出席しませんので」朝食を済ませたキャンディはそっけなく答え、席から立ち上がる。女の子なら舞踏会と聞いて、ときめかないはずがない。しかし、ドレスもなければパートナーもいないのだ。伯爵が人前に出ることはありえない。「あら?アードレー家のお嬢様じゃございませんこと?」突然見しらぬ貴婦
妄想編二人で迎える朝②向き合って眠る二人おはようのKiss海外の二次小説のセリフ「おれにはきみが必要なんだ……おれのそばに……おれの眠るベッドに……おれの腕の中に……一晩たりと欠かさず」まさしくテリィが言いそう!離れてた10年という年月は長かったけど、それだけ二人のお互いに対する思いは比例して大きくなっていたことでしょう。とても強固な結びつき。テリィが、ずっとキャンディに側にいることを望んでいるはずです。
★★2-8敷地を出る際、テリュースは門番に言葉をかけた。「君、ナイスアシストだったよ!」もし門番からキャンディ不在の事実を早々に告げられていたら、さっさとシカゴを離れていたに違いない。キャンディの養父に会う事も叶わなかったはずだ。吸い殻で汚してしまった門の前は、既にきれいになっていた。感謝とお詫びを兼ねて、助手席に置いてあった『ハムレット』のチケットを門番に渡した。なぜそこにチケットがあったのか、自分にもわからない。「芝居のチケットですか・・?」門番は初めて雑談に応じた。当初不
謝っていないスザナテリィに会いにNYへ行ったキャンディは、自分の手紙がスザナによって(殆ど)隠されたことに対して憤慨しています。「私が出した手紙を隠されたように、もう、二度とスザナに邪魔をして欲しくなかった。はっきりそう言ってやろう、と意気込んでいた」下巻235ですが、スザナの自殺未遂の現場に居合わせたキャンディは急転直下テリィとの別れを決意します。その後、キャンディとスザナは病室で話をしたと思われますが、キャンディは手紙のことを話題に出せるような状況ではなくなりました。
★★★3-4交代時間だからとクッキーがレストランから姿を消したタイミングでダニエルは話しかけてきた。「やあ!昨日会ったね。今日も一人?お友達はまだ船酔いなのかい?」キャンディは朝から嫌な奴につかまったと思った。「君、昼と夜はここに来なかったけど、どうしたの?君も体調が悪い?」どうでもいいから、どこかへ行ってほしい。「今日のこの服、どこで買った?彼女の服はなかなか手に入らないだろ?パリまで行ったのかい?それともロンドン?」「知らないわ」レディの服を舐めるように見ている無礼な奴とは、
★★★5-1キャンディはどんな風にテリィと顔を合わせたらいいものか考えていた。お芝居を見て苦しかった、などという主観にすぎない感想を、わざわざ伝える必要はないのかもしれない。客観的な意見を伝えるのが本来妻の役目なはずだ。看護婦の仕事のタイミングが悪かったのも追い打ちをかけた。二人の看護婦のフォローを急きょした為とはいえ、すれ違いが続いてしまった。結果的にテリィを避け続けるような状況になってしまい、今更ながら罪悪感がつのる。ケヤキに掛かったハンモックの所までやって来た時、ふとオリーブ
フォロワーのゆ○さんに言われてハっと気付いたことがあります。ああああああああ・・・相変わらず浅い人間です、私は皆さんは、とっくにお気付きかもしれませんが記事にしたいと思います。○ゆさん、いつもありがとうございます🙇♀️NYのテリィとシカゴのキャンディは文通していました。スザナに隠された手紙もありましたが、それは劇団宛ての手紙。※下巻218テリィのアパート宛てに出した手紙は、無事に届いたはずですよね?手紙の束は、今は象嵌細工の宝石箱の中に収め
★★★1-11草木も眠る真夜中、けだるいエンジン音がこの家の門前で止まった。暗闇で目の自由がきかない。冷たいポストに手を伸ばす。小ぶりだが厚めの封筒が一通だけ入っている感触に突き当たる。無理して帰ってきた甲斐があったと思ったのはその時だ。そこからは、先ほどと同一人物とは思えないほど俊敏な行動を見せた。勢いよくエンジンを再点火させると、深くクラッチとアクセルを踏み込んで敷地内に侵入し、急いで部屋の灯りをつける。差出人の名を確認するとようやく夢ではないことを実感し、笑みがこぼれた。
★★★7-6テリィが小脇に抱えていた本に気付いたキャンディは、針仕事をするからと先にポニーの家に戻った。一人の時間を作ってあげるのも妻の大事な役目。陽も大分暮れてきたというのにテリィはまだ戻ってこない。さすがに本の文字は見えないだろう。「ジミィ、テリィをよんできてくれる?ポニーの丘かその辺りにいると思うわ」夕食の準備で手が離せないとジミィを使うキャンディ。親分気取りは継続中だ。親分にそう言われると、子分もまた従順だった。「分かったよ、親分」気は乗らないが、逆らわない。「お
11年目のSONNETスピンオフ★★★業火の劇場後編「無茶はやめろっ!キャンディ――!!」ジャスティンの制止する声など聞こえるわけもない。「――キャンディ、どこへ行くつもりだ」だが、この声は何故か聞こえたのだ。――テリィ・・・?テリィの声に聞こえた。町中に響く鐘の音と、サイレンの音と、野次馬たちの声をすり抜けて、聞き慣れた声だけがキャンディの耳元に届いた。「テリィ・・・?」確認するように振り返ると、ハムレットの衣装に身を包ん
手紙に前文がある?この手紙は一部に過ぎない、という見方もあるようです。通常、手紙は『キャンディへ』であり、一行あけて「変わりはないか」の本文に入ります。しかしテリィの手紙は「キャンディ」「変わりはないか?」の二文が連続し、まるで全体の一部を抜粋したかのような入り方になっています。向って左がテリィからの手紙・右がアルバートさんからの手紙ファイナルに登場する手紙は「一行空ける形式」を守っているので、このテリィの手紙は例外です。・・・という事は、ここにも原作者の意図があるので
時系列のヒントハムレット役に抜擢されたのはいつ?ロックスタウンでの幻の再会はキャンディが16才の早春。ハムレットの初演は「秋の公演」です。この「秋」が何年後なのかは書かれていませんが、春に劇団に戻りその半年後に主役ゲットではあまりに許されるのが早すぎます。「ロミオとジュリエット」を打ち切りにさせるほどまずい演技をし、その後失踪してしまった身勝手な行動は、社会人としてあまりに無責任だからです。最短ミラクルで1年半後でしょう。公演が始まる頃、エレノア・ベーカーから招待券
★★★3-8劇は登場人物もセリフも必要最低限にカットされ、テンポよく進んでいった。子供からお年寄りまで楽しめる大衆向けのアレンジは、テリィが披露している演劇とはおそらく全く異なっているのだろう。第一線で活躍しているシェークスピアアクターの目にはどのように映っているのか。(喜劇に見えたりして・・)そんなことを思いながら、キャンディは隣にいるテリィを時折見たが「・・・・」度々目を閉じてうつむくテリィに、キャンディは何かを感じていた。物語がクライマックスの霊廟のシーンに入った時だった。
考察の目次はこちら考察のはじめにまずはじめに、この考察を書いたのはテリィファンですしかもファイナルストーリー(以下ファイナル)の続編を勝手に意識した長編二次小説を書きました。その小説の中には、ファイナルのエピソードや小道具は全て投入されています。原文と滾々と向き合った月日が長いので、既に悟りの境地に至っていますそんな奴が書いた考察なので、この考察を読み終えた頃には、テリィファンならあのひとがテリィだと確信すると思います逆にアルバートさんだと確信している人にとっ
今回の考察は、ファイナルには全く触れられていない「空白の10年」を扱っています。つまりほぼ妄想です。くだらぬものに付き合わせて、申し訳ありません皆さんのお考えと違うところも多々あると思いますが、一意見としてご覧ください手紙を隠したスザナファイナルで初めて追加された、スザナが手紙を隠していたエピソード。漫画のスザナはどうだったか?テリィは不注意で手紙を落とし、それをスザナが拾います。拾ったから渡す、という普通の展開でした。つまり、漫画版スザナは
これは「11年目のSONNET・エピローグ」の中の一文をピックアップしたスピンオフです。ネタバレには絡まないお話です。おめでとう―11年目のSONNET―★★★アメリカからの帰りの便、キャンディは船酔いが酷かった。赤い愛車をニューヨークの家に置いてきたテリィが、イギリス本土へ足を踏み入れた瞬間、馬車で向かった先は車の展示場だ。「これにしようと決めていたんだ」今日もテリィの決断は早かった。明らかに以前とは車種が違うことにキャンディは驚いた。箱型
★★★6-13「遅いぞ、二人とも」自慢の一眼レフを首からぶら下げ、アルバートは玄関のエントランスで二人を待っていた。「すみません、キャンディが駄々をこねたので―」「なんだい?今頃マリッジブルーなのか?」「ま、似たようなものです。・・な?」テリィに引っ張られるように付いてきたキャンディは何も言い返せず、気まずそうに話しをそらす。「・・このカメラ、すごく小型ね。そんなサイズで撮れるの?」「去年アフリカに行った時に持参したカメラなんだ。すごく高性能で、遠くにいる猛獣もぶれずに撮影できる
※「アルフレッドの独白」の一ヶ月後のお話です。本編8章㉑「誕生日プレゼント」に関連したお話ですが、そちらを未読でもお読みいただけます。テリィVSアルバート11年目のSONNETスピンオフ★★★ロンドン。デュークス劇団系列のロイヤル劇場。テリィの所属するRSCは、ここを間借りして活動を再開することになった。楽屋は二人で一つ。贅沢は言えない。「良かったな、テリィ。俺と一緒で嬉しいだろ?俺も嬉しい!」ジャスティンは、衣装戸棚に衣装を掛けながら、
★★★4-11代役テリュース・グレアム!彗星のごとく現る!二種類のハムレットを演じ分ける確かな演技力公演は順調に日程をこなして行った。雑誌の劇評は新生RSCと称し、代役テリュース・グレアムを『イングランドの新星』とほめたたえた。月がかわり、主演俳優を生活面で支える妻としての緊張感にも次第に慣れ始めたある日のことだ。その夜テリィは、いつもの時間になっても帰ってこなかった。ブロロロロ・・キャンディがウトウトしかけた時、エンジン音が聞こえた。玄関に迎えに出ると、おぼつかな
★★★3-10何か所かロンドンの名所を案内してくれたテリィは、大きな寺院の前に車を停めた。「ここで待ってて」と言い残し、何やら受付窓口の人と話をしている。戻ってくると「中を見学できるよ」とキャンディに声を掛け、車から二つのトランクケースを下ろした。「君はこっちを持ってくれる?」テリィからシルバーのトランクケースを渡され、「なんで持ち歩く必要があるのよっ」と、不可解だったので訊いてみたが、「大切な衣装だから」と言われれば反論の余地はない。車上あらしにでも遭えば、最悪の場合公演延期にもな
*****小説キャンディキャンディFINALSTORY(長い物語のかけら22)*****キャンディはNYからちょっと離れた小さな駅に到着した。駅の改札を出て、待っているはずの人の姿を探そうと目を泳がせたら、「キャンディ!」と呼ばれ、いきなり抱きしめられた。それは、テリィだった。「もう、びっくりするじゃない!」そういいながらも、キャンディはうれしさでいっぱいだった。「君の視力はあてにならないからね。おれが先に見つけないといけな
★★★6-12支度部屋ではようやく花嫁の支度が整った。花嫁衣装を意識したボリュームのあるアイボリーの裾の長いドレス。少女の憧れである腰の大きなリボンが、花嫁の後ろ姿を可憐に彩る。白雪のようなキャンディの肩や鎖骨のラインは相変わらず美しい。「きれいよ、キャンディ・・!」支度を見守っていたアニーの目は既に潤んでいる。「・・ねえ、アニー、私の背中のホクロ・・見えてない?」アニーは変な事を気にするキャンディを不思議に思いつつも、「・・無いわよ。ホクロひとつないきれいなお肌よ。まさに