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真珠の微熱109「もおおっ!すっごぉーい、恥ずかしかったんだからね!!」ベッドに座るチェ・ヨンの肩を枕でボンボンと叩く。「ふむ、・・・・・いつの間に付いたんだろうな。」何時ものポーカーフェイスでとぼけているが絶対に分かっててやっている。ーー確信犯ね。ウンスが抗議してものらりくらりとかわして惚けている。いよいよ拗ねたウンスがお風呂上がりにベッドでくつろぐ恋人にチラリと視線を送ると爆弾を投下した。「今日は一緒に寝ない私はリビングで寝るわ。」ぷいっとそっぽを向い
一つの嘘に二つの愛を添えて⑤・・・嬉しいこの言葉にギリギリのところで抑えていた理性の結界が崩壊し愛しさが溢れ出る「・・イムジャ。」蕩けそうな声で名を呼ぶ胸元にある顔が上を向き「・・テジャン?」その両の瞳にテジャンが映る「もう一度、テジャンと・・」「テジャン。」揺れる飴色の灯りがテジャンの背を押すように端整な顔がウンスに重なる。紅い唇は砂糖菓子のように甘い触れるだけの口づけを夢中で施す青く年若いようなぎこちない口づけが何時しか貪るように深いもの
ヨンの部屋へと戻った私達は、荷造りをしながら明日の算段をしていた。「卯の刻(午前6時頃)には出発します。開京までは馬で参りますが、大丈夫ですか?」「大丈夫。馬とは今も仲良しよ」「王様が、お忍び故に馬で行かれるので。貴女だけ馬車という訳にはいかず……申し訳ありません」蝋燭の灯りが揺らめいて、彫刻のようなヨンの輪郭を照らし出す。「大丈夫よ。それより、貴方もお風呂に行ってきたら?私、部屋から出ずに大人しくしてるから」寝台を整えていたヨンが、チラ、と私を訝しそうに振り返る。「……部屋の
護り人と好敵手〜番外編(お嬢の1日)名門といわれているチェ家の朝は早い。誉れ高いチェ家の使用人達はこぞって働き者揃い。屋敷に活気が溢れてくると子供部屋でスヤスヤと寝ていたチェ家のお嬢様も瞳を覚ます。少し前から一人部屋を与えられ最近になってやっと独り寝に慣れてきたが何せ、まだ幼い子供。目が覚めると構って欲しくて皆を起こす。お嬢の隣りは兄上の部屋。うんしょ、うんしょと大きな扉を開けて兄上の眠る寝台へとよじ登る。「あにうえー!あさなのー、おっき
軍議で大護軍は王様の客人が数日兵営に滞在すると言ったということは先刻大護軍の部屋に居たのはその客人であろうかサンユンは軍議中も先ほど会った女人のことを考えていたあんなに溌剌として笑顔の愛らしい女人は初めて見たそれによき香りが漂っていたきらきらした瞳で凛と俺を見つめ返し微笑んだどちらの御息女であろうか心ここにあらずのサンユンの様子はヨンやチュンソクには直ぐに気づかれた「滞在中は主にテマンが付く無
ヨンは書斎で賛成事に向き合い怒りを露わにしてはっきりと告げていた「大監いい加減にしてくだされ御息女を娶ることは絶対にありませぬこれ以上執拗に訪ねてきたり世間に虚言を吹聴するならたとえ大監と言えどこちらも手段は選びませぬがよろしいか」あまりのヨンの剣幕に今日のところは引いた方がいいと判断した賛成事「大護軍そんなに急いで決めることもあるまいこちらはもう何年も待っておったのだ大護軍の気持ちが固まるまで
「いよいよですね。護軍」「ああ。準備はどうだ?」「出来てます。下知をいただければ、いつでも出陣出来ます」「流石ドンジュだな。わかった。待機しててくれ」「イェ!」安州の軍営。王命を受けた俺は、新しく組織した忠勇衛(チュンヨンウィ)と、各地の軍を引き連れて、取り戻すべき北方の地を目前にしていた。元国からの独立。その反元政策の重要な事案である、高句麗時代からの領土の奪還。その上、彼の地には天門がある——王命を果たす事はもちろんだが、彼処を取り戻しておかないと、戻ってくるあの方に危険
奥様のご出産が近い。毎日、今日ではないか、今日こそは、と思って過ごしている。私だけではない、旦那様も奥様も、ウォンスク様…チェ尚宮様も。チェ家に仕える者、関わる者、皆がそう思って——その日の夜半、旦那様から奥様が痛みを訴えられている、と、お知らせをいただいた。非礼をことわり、ソニと共にご寝所へ入らせていただくと、陣痛が始まったようだ、と、ご自分で脈を診ながら奥様がおっしゃる。その奥様を後ろからお支えしながらも、落ち着きのない旦那様……いざその時が近づいてきた、と、さすがの旦那様も狼狽え
真珠の微熱108ピピピッスマホの目覚ましのアラームが鳴りはじめた瞬間に豆だらけの指が停止の画面をタップする。カーテンの隙間から白い光が寝室へと綺麗なストライプを映し出し寝乱れた赤い髪に模様を描く。隣りに横たわるウンスを起こさないようにベッドからそっと抜け出し床に投げ捨ててあるルームウェアをスポッと被る。そろそろ秋も深まり寝室の空気もひんやりと肌寒く感じる。寒がりのウンスが風邪をひかないように暖房のスイッチをオンにしコーヒーを淹れにキッチンへと向かう。リビ
魅惑の個人レッスンウダルチ恋愛成就の続編ですまるっきりのコメディですがよろしければお楽しみくださいね。「おい、トクマンいるか?」高麗大護軍チェ・ヨンがウダルチの鍛錬場にやって来た。声をかけられたウダルチは鍛錬場で槍を振るうトクマンを指差しあちらです、と答える。そのまま真っ直ぐ目当ての部下の傍に寄ると、トクマンの喉から一瞬息を飲む音がした。「テ、テ、テ、テホグン?!○✖️*☆#△〜!!」「お前・・・朝から何を言ってる。今から外に出かけるから槍を持って付いて来い。」
宿に着いた時にはもう日は暮れていたウンスが〝ばっぐ〟と呼んだ天界の荷が気になりテマンは話を聞きたくて残っていた湯上りのウンスを見られたくなくてヨンは警護をテマン頼み先に風呂に向かったヨンが部屋を出るとテマンは早速天界の荷について尋ねたウンスは嬉しそうにバッグを卓にのせて効果音を口にした「じゃじゃ〜ん!いいテマン君天界にはカメラといって今目に見えている景色をそのまま絵に残せるカラクリがあるのほらこれ私の顔が写ってるでしょ」そう言
あれ程きつかった悪阻が、嘘のように落ち着いて……私は、戻ってきた食欲と闘う日々を送っていた。もともと、スンオクやソニの作ってくれるご飯は美味しい。王妃様や叔母様からいただくお菓子も美味しいし、マンボ姐さんの差し入れもとびっきりで。何より、私が食べられるようになったのを、ヨンが喜んで喜んで……毎日のようにお土産片手に帰ってくるから——「ヤバイわ……」「やばい?」チェ家でのランチタイム。横で給仕をしてくれているソニが、小首を傾げている。ソニはとても好奇心旺盛で、私がつい漏らす天界語にいつ
俺がずっと抱えていた胸底の靄(もや)。聞いてイムジャはどう思っただろうか……“高麗の軍神”などと呼ばれているらしいが、この方の前に在っては俺など……ひたすらにこの方を欲しているだけの、ただの男でしかないのだ。だからこそ、イムジャが俺のもので在ってくだされば、俺はどんな事でも出来る。——イムジャ。こんなにも己れの欲のままに、誰かを乞うなどという事を……俺は知らなかったのです。貴女に出逢うまで。............................................
翌未明国境へ向かう兵の出発式のためそっと寝台から離れて身支度を整え鎧を身につけようとしていたヨン胸にモヤモヤを抱え眠りの浅かったウンスは目を覚ましヨンが出仕の支度をしているのに気づくと静かに起きだしヨンの背後に回ると鎧のベルトを絞めて正装するのを手伝った「イムジャ忝い起こしてしまいましたね」「いつも私が起きるとヨンはもう居ないけど貴方が私を起こさないのは私に遠慮してるからなの?両班生まれの奥方なら旦那様を送り出
私は占いの館を出た。結局、いつまたあの人に会えるのか、具体的な事はわからなかった。季節は菊の花が咲く頃。晴れた日。場所はきっと…あの樹の所。天門の開く日を計算して、手帳に書いたわ。太陽フレアと関係があると思って、ウォルフ数を計算して……色々書き残したし、次は67年後だってヨンにも言った。でも、昨日も開いたじゃない。だったら、私の考えは間違ってたって事よ。太陽と天門は関係無い。多分、私達に必要な時にしか、天門は開いていない。必要な時……次はいつなの?ヨンの命を救う為に、
ヨンはピダムから郡守邸での宴の件を詳しく聞いていた「私たちは賛成事からの書状を郡守に届け使用人として屋敷に潜り込んでいましたあの時はキム・ギュチョルが医仙殿を徳興君へお渡しするのを見届けるのが私たちの任務でした」「其方たちが薬を盛ったのか?」「いいえ飲み物に薬を入れたのが郡守なのか刺客の妓生なのか他にも間者が潜り込んでいたのか私たちにもわかりません」「刺客の雇い主は誰だ?」「それが刺客の妓生が
高麗とは何だ。国とは名ばかり。全ては元国の思うまま。現王は廃位。その理由は、幼い王では国を治められないから。故に、次の王には妙齢の者を。王の血筋であり、元国の水に馴染んだ江陵大君(カンヌンテグン)を——勝手な事をぬかす。その幼い王は、扱い易いからと元国が選んだのではなかったか。「ヨンァ。私の力不足だ。すまぬ」憤る俺に、王様は静かに続けた。自ら望んだ玉座ではなかったが……良い事もあったぞ。王になった故、其方と共に居られたのだから。そう言って笑みを浮かべ、王様は俺に書簡を差し
翌日、マンボ兄妹が、こっそりと来た。ヨン!ヨンはいるのか?くそっ!何だってこんな日に来るんだ!慌てて、着物を羽織ってでた。ああ、師叔、早かったな。お前、何だ?その身なりは?起きたばかりか?あ、ああ、まあ…。お前…天女を手籠めにしたって本当なのか?な、何で知ってるんだ!!はぁ〜っ。まさかと思ったけど、本当だったのか?都では、その噂で持ち切りだ!はっ?チェ尚宮がプジャンに聞いたら、とても美しい天女を傷ものにしたと!王はお前を罷免した。ああ…一生償うし、そんな想いじ
それは、至極真面目ですと言わんばかりの表情を花の顔(かんばせ)に載せて、少し薄めのつるりとした美しい淡朱の唇から垂れ流すには、余りにも素っ頓狂な内容の台詞だった。「オンニ…あなた私と婚姻してくれない?」ゴフッ!と、クッパを嚥下し損ねたチェ・ヨンが咽せ返る。慌てて水を汲んできたテマンから器を受け取ると、チェ・ヨンはそれを無言で一気に飲み干した。しかしマンボの店の端に陣取り、陰ながら見守っている男のそんな姿に気付く事なく、ウンスは卓の真向きへと座った白尽くめの男に対して、薄い唇を尖らせ不満顔
真珠の微熱104「ウンスさん・・不味いですよ。」「大丈夫よ。叔母様に用事があるんですもの。あの人には関係ないわ。」厳しい建物の雰囲気に似つかわしくない赤い髪をふわふわと揺らしながら、すれ違う屈強な男に笑顔で愛想を振りまいている。ウンスのお迎えを頼まれたトクマンは病院に着くなり公安に連れて行けと迫られ渋々連れてきたが上司に知れたらと気が気じゃない。「だって、叔母様も忙しいからなかなか会えなくてねぇ。今日は公安に来るって言うから待ち合わせしたのよ。大丈夫よ、そんな
私の腹の虫って、どうなの?テマンくんにもヨンにも、私の機嫌を測るバロメーター的に認識されてしまってる腹の虫。今朝の出発前だって、トクマンくんが山盛りご飯のお膳を運んでくれるし、チュンソクさんなんか「途中で腹が減ってはいけませんので」と、おにぎりをこっそり持たせてくれた。……見ていたヒジェさんとドンジュくんの、呆れたような表情が忘れられないわ。ヨンのメンツを潰してないか、と、気を揉む私に、今更飾る必要はありません。と、この人は笑ってくれたけど。女としてどうなの……ヨンの1番をキープして
湯殿の方から扉の閉まる音と共に、あの方の足音がひたひたと近づいて来る。廊下の突き当たり、閨室と湯殿の分岐地点に立っている俺の姿を見て、イムジャが軽く目を見開いた。「待っててくれたの?寒いのに。お湯、お先にありがとう」俺は軽く頷くだけに留め、イムジャが抱えていた荷を受け取って、閨室へと足を向ける。どうにも落ち着かず、閨で大人しく待ってなどいられなかった…そんな事をこの方に言えるはずもなく。閨室の扉をからりと開けると、火鉢で程良く温もった空気が流れ出て、自分が先程まで立ち尽くしていた廊下が
さすが良家の子息チョイス!トクマンが選んだ宿はウンスも納得のこの時代にしては素敵な宿だった静かな二間続きの離れで護りも効き隣りの棟も空室にされており他の泊まり客の身元も調べ済であったトクマンも随分使える様になったものだとヨンは珍しくトクマンを見直した「医仙様〜とりあえずこの饅頭をどうぞ夕餉はた〜んと用意してくれるよう頼んでありますのでそれまではこれでご辛抱くださいあとこの宿は湯殿がございます手拭い
そう言えば、って、後から気づく事っていろいろあるけど——妊娠もそのひとつだったわ。妊活を始めてから、王妃様の事はもちろん、自分の体調も気にかけていたのに。脈だって、毎日自分でも診てたし。生理は……もともと不規則だったから、ちょっと自信無くて。来ない……あ、来たわ。出来てなかったのね……来ないな。ん?本当に来ないな……アレ?……て、感じだったわ。だから、もしかして…と思ってた時に、滑脈があった気がしたから——でも、自分では確信が持てなくて、ヨンにはすぐ言えなかった。とにかく、
テマンくんと連れ立って、私はヨンの待つ迂達赤(ウダルチ)の兵舎に向かっていた。すれ違う内官や女官達が、立ち止まっては頭を下げてくれる。私が会釈を返すと、皆んな一様にチラッとこっちを見ては、ヒソヒソと何やら話している。うわぁ、この感じ……見た事もない赤い髪。天界から来た華陀の弟子。訳の分からない先読みをする天人(あめびと)……以前もそうだった。常に好奇の目で見られて。感じ悪ぅ……いつの時代も同じね。その人の前で堂々と言えない事は、当の本人に伝わっちゃダメなのよ。溜め息を吐きつ
『連理之枝332』『連理之枝331』『連理之枝330』『連理之枝329』『連理之枝328』『連理之枝327』手術室が見える所に居たヨンとジンとドンゴンと大勢の医師。…ameblo.jp↑前回記事です。翌日、早くに叔母上と夫であるビョンホンが来た。「産まれたと昨日の夜に聞いたから急いできたんだよ。ありがとう。まさか、このヨンが9人の子に恵まれたなんて、兄さんとお義姉さんが生きていたら、驚いただろうね。」「ウンスちゃん!おめでとう!」「おっ!ビョンホン!来てたのか
「テマナすっごくお腹空いちゃった」桃色のポジャギを持ったウンスはヨンがいつも迎えに来るよりわざと早めにテマンと食堂へ行ったテマンと向かい合わせで急いで食事をしているとヨンやチュンソク達がやって来た「ごめんなさい我慢できなくてお先にいただきました」そしてポジャギから包んだ石鹸を出しヨンとチュンソクテマンに渡した「石鹸ができたからよかったら使ってねこんなことしかお礼できないけど」トクマンには
キム室長と温かい別れをした後、私はとある雑居ビルの下に居た。ソウルに戻ってきて、行きたい所がいくつかある——。まず実家!やっぱりアッパとオンマに会いたい。色々用事を片付けて、明日には実家に行こう。それからあそこにも……現代(こっち)にいる間に絶対行こうと思ってる……そして今はここに来ている。『占いの館』高麗へ行く前に来たのよね。今思えば、めちゃめちゃ当たってたのよ!あの時は意味がわからなくて……有名なタロットの人をハシゴしようと思ったくらいだったけど。(でも、あのアジョ
予定通り白州の宿に入った一行元気のないウンスが心配なヨンは旅の疲れを取るためにも風呂好きのウンスに温泉をすすめたウンスはジウォンを誘い温泉に入ることにしたがジウォンはかなり緊張していた「ジウォナ温泉は初めてなの?」「いいえオンニ大人になってから誰かと一緒に湯に入るのが初めてなのだから恥ずかしいわ」「そうなのね私は此処に来る前にいたところで小さい子たちを湯に入れてたけどそういえば大人とゆっくり入るのは
隅にぽつりと明かりが灯された室内は程良い薄暗さで、俺は奥の壁を背にして結跏趺坐(けっかふざ)を組んだ。ヒョンウが扉の外に腰を下ろす気配を確かめて、静かに目を閉じる。四半時程度の運気調息で、空の丹田が満ちる訳が無い…と。使い果たした理由すら言い当てられてしまい、もはや情けなさを通り越して興味深くすらあった。(他人の気の巡りが見えている訳ではなく、恐らく感覚的なものだろうが…)ヒョンウは本当によく出来た男だ。目端が利いて武にも長けており、俺よりひと回りも歳下だが何処か達観したような、それ