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極愛風の音が昔見たホラー映画の効果音みたいに窓を叩く。こんな日に限ってあの人は居ない。ほらっまた誰かが叫んでるような風音がする。「こ、怖くなんて無いんだから!」誰もいない窓に向かって小さく叫ぶ。いつもは二人で寝る屋敷の閨がやけに広く感じてしまう大柄な夫に合わせて作った寝台に独りで潜り込むと余計に寂しく感じてしまう。早く寝てしまうに限る。早々に寝仕度をして閨に行けば静寂に雨風が戦いを挑んでた。「お屋敷・・壊れないよね。やだなぁ・・台風みたい・・」冬の雨が風
『徳興君を高麗王に——』キ皇后の鳴り物入りで出された勅書。玉璽の件で高麗へ赴く折、己が預かり持ってきたものの、直ぐに取り出す事はしなかった。断事官として、当事の外交については、皇帝より決定権を賜っていた。故に、高麗の現王の出方次第で、その勅書をどう用いるべきなのか、変わってくると思われたからだ。大方の予想通り、現王はあくまで対立の道を選ぶという。——青い事だ。名君とは斯くや。民の為、国の為、真っ直ぐに理想を描く。そして、それを成そうと試みる。その一途さは実に美しい。眩しいほど
「本当に宜しかったのですか」リュ・シフ侍医に気遣わしげな声音で尋ねられ、私は目を通していた診療録から顔を上げた。話し合いの結果、ソアさんは典医寺に残る事になり、更には私の無月経の治療を全面的に請け負うとまで約束してくれた。それらを昨日の内に、リュ・シフ侍医には伝えたはずなのに、一晩経って再び蒸し返してくる理由が分からなくて。私は憂いを帯びた美しい顔立ちをじっと見つめたまま、次の言葉を待った。「見ず知らずの地で記憶を失ってしまった医仙様にとって、大護軍の存在は普通の想い人とは重みが全く違
「指示を待て。俺ひとりで行く」イムジャの異変を知ったあの時。後を追うというトクマンを皇宮へ残し、俺は唯ひたすら馬を走らせていた。イムジャがキ・チョルに拐われた。奴が目指すのは天門。行く先々でかき集めた情報から、確実にイムジャに近づいてはいた。しかし、あと一歩。あと一歩及ばなくて。店の柱に見つけた天界の文字。“괜찮아요”(大丈夫よ)一気に身体中の血が上がる。貴女はこんな時でも俺のことを想っていてくださるのか。俺が必ず行くと。だから待っていると。俺を信じている、と。.
そうかい…辛かったね?ウッウッ…ほら?泣く時は、大きな声を出していいって、言ったでしょ?ヨンの胸に飛び込みワンワンと泣いた。忘れる事等、しなくていいのです。そうだよ?その首飾りがご両親だ!いつも此処に居るよ!って言ってるんだよ。は…はい…。それでだ。屋敷に物を用意してくれないか?馬車3台!わかった!わかった!叔母上には、ユ・ウンスを族譜に載せてくれ!とだけ、言ってくれ!わかったよ。こっちも説明のしようがない。使用人も用意するよ。その手じゃ、大変だよ!ああ
今日、また虹を見ました🌈ひと月程経ち、ヨンとウンスは海辺の新しい屋敷での生活にも慣れて来た。使用人達は四人居た。夫婦者でスリバンだ。テピョンとアイシャギアンとテスだ。四十位に見えた。事情は、マンボに聞いていたのが、とても仲睦まじいご夫婦で、たまに、一人で縁側に座って、物憂げな感じがする奥様を直ぐに見つけると旦那様は、そっと肩を抱いて、何も言わずに寄り添っていた。美しい絵のようだった。ご夫婦は、釣りにもよく行かれた。海を見た時の奥様は、それは綺麗だったと言い。
鍛錬場で野太い声を上げ、迂達赤(ウダルチ)の新人達が打ち込みの地稽古をしている。それをテジャンと並んで眺めながら、俺は内心この上なく安堵していた。ようやくテジャンが元国より戻られた。テジャンの耳に入ったら「お前がそんな事でどうする」とお叱りを受けるだろうが、王様を守る迂達赤(ウダルチ)、その隊長の留守を預かるのは……副隊長として情けない事ではあるが、ともかく、テジャンが無事戻られた事が嬉しくてならない。だが、現状を楽観視は出来ない。元の支配下からの離脱。その足掛かりとして、王様は本格
真珠の微熱36この人には危機感やら緊張感といったものは持ち合わせて無いのだろうか。ピタリと後をつけるトクの手下の気配にピリピリとしながら歩くチェ・ヨンと違い屋台を覗いては買い食いしようとする可愛い人を怒りながらも口元が緩んでしまうのは否めない。「ねぇ、ねぇ、ヨン。あれ、可愛い。」道端の露店にアクセサリーが並べて売られている。沢山の髪飾りの中に銀鈴が付いたヘアゴムがあった。細い指先でひょいと摘むと軽く振ってみる軽い弾むような鈴音がりんりんと鳴る。ほらっ、とい
ソウルの夜景はこれで見納めになるだろう脳裏にしっかり焼き付けたごめんなさいさようなら遠くを見て小さく呟いたもう一度天門を潜り出ると見覚えのある石の祠見覚えのある風景を目にして小さく息を吐いた***ここにあの人はいるかしら恭愍王の御代だといいんだけど……とにかく今が何時なのか調べることが先決ねあの人がいない時代ならすぐに天門に戻らなきゃしっかりと笠を被り直し石祠の前から歩き出した
朝が来てウンスが目覚めた時にはすでにヨンの姿はなかったしかしこれまでと違いヨンがずっと自分と一緒に夜を過ごしていると知ったウンスは心の余裕ができたのか鼻歌まじりに朝の身支度を整えていた「ケ〜セラ〜セラ〜」気怠い体もヨンに愛された証だと思うと嬉しく感じるウンスヨンとミンソが四阿で抱擁していたことやチェ家の屋敷でミンソに言われた言葉が時折脳裏を過ったが…あの奥方には申し訳ないけどヨンは私のところに帰ってきてくれるって確かに約束し
春光ぷっくりした桃色のほっぺたにサラサラの黒髪寝台の上で丸まって寝ている坊やは母のお気に入りの黒い肩掛け(ショール)端っこをまん丸な拳で握り尖った角をかじっている。寝ているくせに時折むぐむぐとその肩掛けの角に吸い付いて時折かじる。まだ肌寒い春の昼下がり遊び疲れた小さな息子が子供部屋の寝台の上でお昼寝中。「・・あ〜ぁ、お気に入りの肩掛けなんだけどなぁ・・仕方ない、坊やも気に入っちゃったのね。」可愛い寝顔を見ながら優しい顔で囁く。天門を潜り抜けチェ・ヨンのもとへ
もう少しで昼時を迎えようかという刻限、俺達二人は開京の町中を馬で進んでいた。「イムジャ、もういいでしょう」常歩にゆらゆらと揺られながら、大人しく俺の腕の中に収まっているこの方は、聴こえているであろう言葉にも無言を貫いている。「そろそろ機嫌を直して下さい」外衣の頭巾を深く被ったまま、ちらりとこちらを振り返った目元は赤く染まり、唇は小さく尖って不満を訴え掛けてくる。立ち上り続ける花のような香りに包まれながら、俺は今朝の出来事をぼんやりと思い返した。顔を洗う為の湯を器に張り、手拭いと共に部
軍議で大護軍は王様の客人が数日兵営に滞在すると言ったということは先刻大護軍の部屋に居たのはその客人であろうかサンユンは軍議中も先ほど会った女人のことを考えていたあんなに溌剌として笑顔の愛らしい女人は初めて見たそれによき香りが漂っていたきらきらした瞳で凛と俺を見つめ返し微笑んだどちらの御息女であろうか心ここにあらずのサンユンの様子はヨンやチュンソクには直ぐに気づかれた「滞在中は主にテマンが付く無
夜半を過ぎた頃。俺はチュンソクに警護を引き継ぎ、王様の寝所を後にした。あれほど騒々しかった宴もとうに果て、今では屋敷全体が糸を張り詰めたかのような沈黙(しじま)に包まれている。膠着した夜気を震わせるのは、立哨する兵達の身じろぐ気配と時折爆ぜる篝火の音だけだ。行幸啓は明朝からも続く。昨晩に続き、無理をしている自覚はあった。だからこそ例え浮寝であっても、身体を休めておかねばならんと頭では分かっている。しかしチェ家の屋敷を発つ際に見た、あの方の強がりな笑顔が目蓋の裏にちらついて、どうしよ
木々の緑も鮮やかな、新芽の芽吹く季節になった。タムがこの世に少しだけ慣れて、私もオンマ業に少〜し慣れた頃。夜中に泣いて起きる事が、ほぼ無くなったタム。おかげで私も、朝までしっかり眠れるようになっていた。(有り難いわ〜)そこで、タムのベッドを子ども部屋から夫婦の寝室へ移し、夜も親子3人で過ごすようになってしばらく。…ふ、と目を覚ますと、じっ…と、タムのベッドを覗き込んでいる人が——「お帰りなさい、ヨンァ。いつ戻ったの?」私は寝ぼけ眼を擦りながら、帰宅した夫の側へ寄った。「少し前
イムジャ…俺は、やはりご両親に正面突破したいと思う。でも…許してくれなかったら?まあ、いい大人だから、アッパもオンマも好きにしなさい!って言うと思うけど…。ヨンがそうしたいのなら、貴方の意見を尊重するわ!ただね…アッパは、生真面目で崔瑩将軍の大ファンなのよ!同じ名前だと、不審に思うかも知れないわ。殴られてもいいです!全て、真実を話してみませんか?信じると思う?お父上は、歴史の先生だった?うん。ならば、お父上の知らない話をして、信じて貰いましょう。知らない
ヨンが固まっている。こんなに固まるのも珍しい…ていうか、初めて見たかも………あ、動いた。私を見つめたまま、瞬きするだけだったヨンの目が、す、と焦点を合わせた途端、そのまま私のお腹辺りを見つめ、また私の顔へ戻り、再びお腹へ向き……何度かそれが繰り返された後、ヨンの両手が私の二の腕を掴み、私は左右から、がっちりホールドされた。「まことですか?」「うん。さっきユン先生に診てもらったわ」「赤子を授かっていると?」「うん——」「………」ヨンは、私をひた、と見つめてから——ウロウロとあち
「日が暮れ始める前に発ちます」そんな俺の言葉に、茶を飲み干して空になった碗を両掌の上で回しながら、イムジャが伏し目がちに小さく呟いた。「そっか…もうここを出なきゃいけないんだ」いかにも残念だといった姿を見て、俺は密かに胸を撫で下ろした。この方に妻問う時、少なくとも我が屋敷に住まう事を嫌い、拒まれるという線は無くなったと見ていいだろう。(俺の元へ留まると、ようやく決心して下さったというのに。何と弱気な事だ…)そう自嘲する反面、油断は禁物だと自らに言い聞かせる。イムジャは高麗の水を飲ん
「旦那様お待ちしておりました」やっとヨンと二人きりになれてミンソは満面の笑みでヨンに話しかけた「何故此処に?其方が屋敷に入ること許した覚えはない」ヨンは明らかに怒りを含んだ口調で告げたがミンソは上目遣いで甘えるようにヨンに答えた「どうしても旦那様のお顔を見たくて父について参りました」ミンソとは真逆に眉間に皺を寄せ露骨に不快な表情を浮かべたヨンこの女人と同じ部屋にいるのは耐えられん胸くそ悪くて吐き気が
一つの嘘に二つの愛を添えて④「徳興君はイムジャに妓生の真似事をさせたんですか?」恐ろしく低い声で問う。「ち、違うわよ!宴の席に出席しただけよ。」「連れて行かれたのか?」寝台の上に座るウンスに真顔で迫る。「あー・・うん・・・。今日の面子は大切だから絶対に来いって。女官が迎えに来たの・・だから・・その・・。」テジャンの怒りのオーラがビリビリと伝わり最後まで言葉を紡げない鬼剣を持つ手に力が入りガチャリと音がする。「彼奴!」今にも斬りに行きそうな勢いで立ち上
冬来たりなば春遠からじこれは遠からずちょっとだけ先の世のお話し・・・ばぶぅ・・・ばぶっあー・・きゃふっ・・・うー・・春の柔い夜闇何処からか湿った風が月明かりに浮かぶ吾子の小さな寝台の上にぶら下がるモビールを揺らす子馬、小菊、駒、剣に弓手作りの小さな飾りが揺れながら回る吾子は小さな小さな手を精一杯伸ばし、懸命に掴もうと手足をバタバタと動かしていた。「可愛いなあ。こんなに整った顔をした赤ん坊なんて見たことないな。」「おお、さすが
八日経ち、チェ・ヨンとチャン侍医とウンスは、海辺の家に居た。スリバンの宿屋に居る時に鳩が来た。メヒとベンの事が書かれていたが、不思議とそうだったのか…と思っただけだった。気になるのは、俺には、都に帰ってくるな!と言う言伝だった。侍医が用意した家には、何もなかったので、交代で、住めるようにと物を用意した。刃物は、わからない所に隠した。食事の支度をする時の包丁も都度隠した。相変わらず虚ろな目をしたウンス殿が何をするか?わからなかったからだ。明日、抜糸とやらをしたら、
「こんなに急なお立ちとは……せめて食事を済ませてから行かれては」住職様が寂し気に勧めてくださる。ヨンが私を待ってくれている——その確信を得て、ここを離れる決意を固めた私は、お寺の皆んなに別れの挨拶をしていた。「今まで本当にありがとうございました。こちらで過ごさせていただいた事、忘れません。本当に、本当に……」「拙僧達もです……ウンスさんが居てくれて、どれほど……まことに、弥勒菩薩様のお導きでございました。有り難い事でした……」住職様は私に向かって手を合わせると、深々と頭を下げる。
己れの鼻先に、イムジャの纏う花の香り……イムジャの行動を予測出来ていた俺は、飛び込んできた柔らかな身体を、驚く事なく受け止めた。“はぐ”というのだそうだ。ただ…愛情表現だけでなく、親愛の情や感謝、慰安の時にもするのだ、というところが、若干気に入らないが。イムジャが俺にする“はぐ”は、まごう事なく愛情……俺は夫ゆえに。他の者とは違うのだ。アン家の客間に居た時から、イムジャはずっとおかしな様子だった。奥方の年はいくつか?随分若いのだろう、と言い出したあたりから、もしや…とは思っていたが。
ウンスが起きるとすでにヨンの姿はなく卓の上に手拭いと水桶があった身繕いしテマンを呼ぶと握り飯と青菜の水沈菜の朝餉を運んできてくれた「テマン君ありがとう」お礼を言うとテマンが何か言いたそうにもじもじしているので促すと「あのぅユ医員オ、オイラをテマン君と呼ぶのはやめてください」「えっどうして?」「オ、オイラ君をつけられるような身分じゃないから」「あ〜そういうことね!この時代
間に合わん…来るっ!チェ・ヨンは、その大きな身体の中にウンスを庇い、矢をはじき飛ばそうと腕を伸ばした!トンッと黒き影が…掴んだ矢を手に軽やかに地面へと降り立った…「駄目だよ…天下の大護軍ともあろう人が、気を抜いたりしたら…」何処からともなく現れた怪しい人影。全身黒づくめのその身体は線も細く小柄で、恐らくはチェ・ヨンの肩ほどもないだろう。頭からすっぽりと風除けの被り物を目深に被り、その顔は全く窺い知ることは出来なかった…「はっ!?おい!?お前は…」チェ・ヨンが言
【少し直接的な表現があります】【原作の雰囲気を大切にされる方にはお勧めできません】「きゃぁっ!ま、待って…!」チェ・ヨンの力強い手に半ば抱え上げられながら、自分の部屋へと引き摺り込まれた。いつもだったら、私が転んだりしない程度の足の運びを意識してくれるのに、今は驚くほどに乱暴な扱いをされている。大きな音を立てて扉は閉められ、足元にはがしゃりと鬼剣が放り投げられた。「…痛っ!」勢いのままに、突き当たりの壁に押し付けられた肩が痛む。チェ・ヨンはまるで逃がさないとでも言うように、私
前夜すっかりヨンに悪戯されたっぷりヨンに愛されて周りの生活音をものともせずにウンスは熟睡していた昼前になりごそごそ何かが胸を這うような違和感で目が覚めた「起こしてしまいましたか?」ちっとも悪びれず満面の笑顔のヨンあ〜ダメだってその甘々の笑顔可愛すぎる〜蕩けそうなんでも許してしまいそう私だけが知ってる私だけに見せる顔もうたまらん今朝もひとしきり脳内で身悶えるちらっと胸元を見下ろすとヨンが聴診器を当ててウンスの心音を聞いている「ねぇチェ
どうしたら天門が開くのか。あの方は何と言っていた?訳の分からない天界語で、下手くそな文字で何やら書きつけて……。ああ、もっと聞いておけばよかった。あの時皇宮で、いつ開くのかわかったと言っていた。確か、次は67年後だとも……。……………いやそんなには待てるがしかし俺は馬上で溜息を吐き、空を仰いだ。少し離れた後ろから、テマンとトクマンも心配そうに着いてきている。馬に乗れるほどには回復した頃、都から内々に王命が届いた。『護軍チェ・ヨンは戻ってくるように』イムジャが拐われた
「チュホ〜ンただいま〜元気だった〜?」ウンスは懐かしいヨンの相棒の鼻面を撫でたチュホンは初対面からウンスを気に入っていたが何度も鼻でウンスの胸をつつき覚えていることをアピールした「どこに向かっているの?」「着けばわかります」腕の中にウンスを囲い髪から漂う香りにヨンは口角をあげたチュホンの背に揺られ半刻見覚えのある岩場の景色「ここはまさか妙香山なの?!じゃあ普賢寺に向かってるのね!」