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「イムジャ、もうあまり時がない…俺は今日、倭寇を叩きに出立せねばならん…だが、このようなイムジャを置いては行けぬ…道中厳しいと思うが…共に連れて参りたいのだが…良いか?」「…?!えっ?ホント?嬉しい!もちろんOKよ!行く!行きます、あなたと…」ずっと…心配で着いて行きたいって言いたかった…それが、小さくなって叶っちゃった…皮肉ね、この体じゃ、オペも出来ない…だから怪我はしないでね…そして…私があなたの足手纏いになりませんように…「ふっ、決まりだな。では次だが…あなたの服をなんと
真珠の微熱96「叔母様、先日はお気遣いありがとうございました。」ぺこりと深くお辞儀をし礼を述べる。「まあ、こんなところで立ち話もなんだ先ずは席に着こう。」ソウルが一望できるホテルの高層階にあるレストランの個室で叔母が二人を迎える。顔を見るなり先日帰省した際のお土産などの心遣いに感謝を述べていた。「いやいや、こんな奴でもたった一人の甥っ子だ、恥ずかしくないようにしてやらねば亡き兄に申し訳ないからな。」「こんな奴は余計だろう!」ウンスには笑顔を向けていたが隣り
イファお嬢様は私の全てだった。幼い頃からお嬢様のお側に置いていただいて、お嬢様のお世話、時にはお話し相手にも。お美しくてお優しくて——こんな素晴らしいお嬢様を、一体何処のどなた様が娶られるのか。どちらへお輿入れなさるのだろう。良いご縁であれば、何処へでも。このスンオクは、何処へでもお供いたします、お嬢様。私はそう心に決めていた。ほどなく決まったお輿入れ先は、都でも指折りの名家、チェ家のご当主ウォンジク様だった。高麗建国からの功臣のお血筋。文官として堅実にお勤めで、清廉潔白なお人
こんなにも日差しが眩しくなっていたのだな——大護軍とドチ達を伴い、王宮の庭園をゆっくりと歩く。大きく息を吸い込んで、じっくりと吐き出してみる……気分が良い。ゆっくり見る間もなく花の季節は終わり、新緑を覆う雨もようよう落ち着いて……暑さも感じるが、それでも水面を上がってくる風は爽やかだ。日々国事に忙殺されてい……いや、君主としては当たり前の事であるのだが……心穏やかに過ごせる時間は多くない。今日は久々に、チェ・ヨンが護衛に参った。迂達赤隊長であった頃もそうそうは無かったが、護軍、大
「では、オレは軍営に行ってきます」——道中お気をつけて。ドンジュくん……ドンジュが、私とヨンに深々と頭を下げた。ゆっくり上がってきた顔は、少年らしい可愛らしさにあふれていて。弟がいたらこんなに可愛いものかしら、と、私も釣られて笑顔になれた。何だか淋しいわ、と溢すと、「新人達の訓練が終わったら、トクマンさんと一緒にオレも都へ行きます。改めてご挨拶に伺います。医仙様……いえ、サモニム(奥様)」と、笑顔で返された。「……もう、ドンジュったら」ドンジュは小さな体を馬上に乗せて、大きく
「本当に三日間、このお屋敷に泊まるの⁉︎」イムジャは驚きよりも嬉しさが勝っている朗らかな声音と共に、胸の前で両手を握り合わせる。俺は頬が緩み過ぎないように注意を払い、ただゆっくりと頷いた。これも喜んでいる時の仕草のようだと、胸の奥にまた一つ火を灯しながら。そんな俺に向かい、この方は表情から甘さを消すと、いささか勿体ぶった様子になった。「じゃあ、私からも一つ提案するわ」「何ですか」「真実ゲームも同時にしない?」ご自分の鼻先に立てた人差し指を、拍子を取るようにゆらゆらと揺らしながら、
私がモゾモゾと下着を着けて夜着を羽織っているのを、布団の中から肘枕のヨンが、呆れ顔で眺めていた。夜目の利かない私でも、今夜は月が明るいから……見えるのよ、その顔。新婚初夜なのに…ムードもへったくれも無いって、言いたいんでしょ。私だって、今夜はこのまま、ヨンとくっついて一晩中……と思ってたのよ。でも、ふと我に返ってみたら、ちょっと…ねぇ。「……ほら貴方も着て。風邪引いちゃうわよ」「確かに冷えてきましたね……」言いながら、まだ動こうとしないヨンに、私は散らばったヨンの…いろいろ集めて、
それから半月後には、ミョンジュは歩けるようになっていたので、陸で漁の帰りを待って、その場で魚を捌いてウンスの所へ妻のサヤと一緒に来ていた。ウンスとサヤはいつの間にか、仲良くなってウンスの薬草の手伝いをするようになった。そして、きょうも…おーい!ウンス!今日も大漁だー!と愛しい夫の声。おかえりなさーい!ヨーン!ウンスの所はほんとに仲がいいのね?あら?サヤのとこだって仲がいいでしょう?一緒になって何年?うーん、二年かな。でも、なかなか子供ができなくて…そっか!医者
【少し直接的な表現があります】【原作の雰囲気を大切にされる方にはお勧めできません】「口を開けて、傷を見せて下さい」「恥ずかしいから嫌。もう平気よ」「貴女と言う人は…。暫し我慢を」大事無いと言う言葉を鵜呑みにも出来ず、俺は否応無しにイムジャの歯列を指先で割った。両腕を精一杯突っ張って逃げようとする身体を、左手一本で強引に抱え込み、出血する程噛んでしまったと言う傷の具合を見定める。しかし今ほど己の迂闊さを恨んだ事は無い。羞恥によって赤らんだ頬と潤んだ瞳、そして俺の指によって開かさ
護り人と好敵手〜青年編⑤「ただいま戻りました。」日が暮れて夕餉の前にチェ・ヨンが帰宅すると何時ものように親子三人で出迎える。「ちちうぇーおかぇりなちゃい。」廊下をパタパタとお嬢が走りぽふんっとチェ・ヨンの足に飛びついた。落ち着いている嫡男は父親をみると頭を下げ、お役目ご苦労様です。と大人びた出迎えをする。「ヨンァ、おかえりなさい。」ウンスがにこやかに出迎え鬼剣を受け取る。「ああ。」短く返事をすると使用人がきて直ぐに食事の用意をする。夕餉をとりなら母娘が王宮での
真珠の微熱91優しいキスを何度か繰り返しゆっくりと顔が離れていくウンスの瞳が遠ざかるチェ・ヨンを追うように広い胸元にぽすんっと頭を預ける。硬い筋肉の向こう側でチェ・ヨンの心臓の音が激しく脈打っていた。頭の上からふう・・と細く息を吐く音。「ヨンァ?」胸元から月明かりに照らされた端整な顔を見上げる。「・・なんでも無い。いささか緊張していたらしい。・・ウンスに断われたらどうしようかと・・」細い腰に回した腕に力を入れ益々、身体を密着させる。「馬鹿ね。貴方からは離れ
安州の軍営に着いてから1週間が過ぎた。未だ、元にこれといった動きは無い。引き続き国境の守備を固めつつ、俺は指揮官として、各領(分割した軍隊の呼び名)の将達と軍議を重ね、兵の様子を見て回っていた。「いっそ、こっちから仕掛けてやるか?今なら元に勝てるかもな」冗談まじりでヒジェが言うのへ、ドンジュがすぐさま、「無駄な血を流させないでください!無駄ですよ、ムダ‼︎」手裏房の情報通り、元は内乱…紅い頭巾をした連中だそうですよ、そいつらの勢いに押されて、酷い有様だとか。我々と戦どころか、和睦を
「まぁそもそもさ、天門なんざ見た事もない、ただの噂話でしかないんだからさ。だいたい、華陀の存在自体が、最初(はな)っから語りみたいなもんなんだ。あたしらみたいな市井のモンに比べて、お偉方のほうが、そういうのを信じ易いと思うよ。育ちがいいからね」信じ込ませといたらいいのさ。マンボ姐さんが、揶揄い半分で笑う。——確かに、そうかも。あの人、チョ・イルシン……あのおじさんの、“華陀の弟子”に対しての思い入れは凄かったもの。どうしようもない人だったけど、考えてみれば、あの人のおかげでヨンに出
「——ここ(典医寺)は具合の悪い人が来る所よ。あなたは元気そうに見えるけど?一体どんな御用かしら」カモミールティー騒動の、笑いのツボからようやく立ち戻り(ソンゲの鼻を見慣れて)私は改めて口を開いた。「はい!元気だけは自信があります!昨日もですが診察ではなく、医仙様にお礼とご婚儀のお祝いが言いたくて参りました。いつぞやは腸癰(ちょうよう・虫垂炎)を治していただき、ありがとうございました。助けていただいた命、今後は一層、高麗の為に使うつもりです!それから、大護軍と医仙様の為にも。お2人は私の命
「えっ、医仙様??」「どちらへ??」何も言わずに突然駆け出した私を、護衛に立ってくれていた武女子2人が、慌てて追いかけて来る。私は、はた、と立ち止まって、「ねぇ、ヨ…主人は何処かしら?あなた達、知ってる??」迂達赤(ウダルチ)の兵舎かしら?それとも王様の所??「さ、さぁ…私達には……」私の剣幕に気圧されて、オロオロと顔を見合わせる2人。いいわ。居そうな所を片っ端から……そう思い定めた私の視線の先に、なんと当事者の1人が——「〜〜っ!!テマナッ!!!」「あれ?医仙。
赤い月は二度泣く22緩やかに堕ちていく白い腕薄く開いた紅い唇に軽く口付けしゆったりと己れを抜いていく気を放っているのに繋がりが解けると小さく唸る愛しい人寝台の仄かな灯りに照らされた汗に濡れた美しい身体繊細な硝子細工のようなこの美しい身体を清めるのは俺だけに与えられた特権だ。此処何日か疲れていたウンスを気遣い営みを我慢していたチェ・ヨンだが前日準備が思ったよりも早く終え早く帰宅したウンスを欲した。ーー少し、無理をさせたかな。歯止めの効かない己れの欲に自嘲気味に
ヒジェに見送られて、寄り添いながら部屋に戻った俺達だったが……互いに何となく視線を合わせないまま、身支度を始めていた。「着替えを用意しました。よかったら着てください」「ありがとう」………………何とは無しに、若干の気まずさ…いや、気恥ずかしさなのだろう。それ以上の言葉は出ないままで。布巾で濡れた髪を挟み持ち、ポンポンと水気を取っているイムジャが、目の端に入る。……見るな見るな、俺。ヒジェに右手を差し出した時の、イムジャの溢れるような笑顔が。ヒジェに止められるまでの、イムジャ
真珠の微熱87チェ・ヨンが借りた部屋は病院から歩いて10分にある高層マンション二人で住むにはかなり広くたっぷり3LDKもありしかも一部屋が広く天井も高い。ウンスはこんなに豪華なところじゃなくていいと抵抗したのだかセキュリティの良さがチェ・ヨンのお眼鏡に叶った。今までの事もあり、ウンスの安全に関してはチェ・ヨンも頑として譲らない。公安として留守にすることも多い、ならば自分が安心して仕事に行ける家じゃなければダメだと押し切られこのマンションに決まった。別荘にいる間に
軍議で大護軍は王様の客人が数日兵営に滞在すると言ったということは先刻大護軍の部屋に居たのはその客人であろうかサンユンは軍議中も先ほど会った女人のことを考えていたあんなに溌剌として笑顔の愛らしい女人は初めて見たそれによき香りが漂っていたきらきらした瞳で凛と俺を見つめ返し微笑んだどちらの御息女であろうか心ここにあらずのサンユンの様子はヨンやチュンソクには直ぐに気づかれた「滞在中は主にテマンが付く無
軽やかな声で可笑しそうに笑うイムジャを見て、俺もやっと人心地が付く。以前の俺は、この方にいつも健やかに笑って頂けるように身も心もお守りしたい、そんな風に思っていた。しかしここへ来てやっと、それは己の傲りなのだと気が付いた。結局の所、この方の恐れはこの方だけのものであって、その心と闘う事が出来るのも、この方だけなのだという事だろう。再び肩に湯を掛けてやりながら、俺は今の素直な気持ちをこの方に伝える。「いつも笑顔でいて欲しいなどと言うつもりはありません。生きていれば、悔しい事も悲しい事も辛
双城総管府を攻め落とし、凱旋するユ将軍と共に、俺も開京へと身を返していた。双城陥落に大いに貢献した、李子春(イ・ジャチュン)と李成桂(イ・ソンゲ)親子も、王様に謁見する為に都入りしていた。その道中、俺はソンゲ親子と対面をした。...........................................................「隊長っ……いえっ、チェ護軍‼︎お懐かしゅうございます!イ・ソンゲです!覚えておいでですか?!」俺を見るなり、満開の笑顔で走り寄っ
そう言えば、って、後から気づく事っていろいろあるけど——妊娠もそのひとつだったわ。妊活を始めてから、王妃様の事はもちろん、自分の体調も気にかけていたのに。脈だって、毎日自分でも診てたし。生理は……もともと不規則だったから、ちょっと自信無くて。来ない……あ、来たわ。出来てなかったのね……来ないな。ん?本当に来ないな……アレ?……て、感じだったわ。だから、もしかして…と思ってた時に、滑脈があった気がしたから——でも、自分では確信が持てなくて、ヨンにはすぐ言えなかった。とにかく、
「…うぅう〜…気持ち悪い………」——蝉の鳴き声が煩い。夏の日差しは突き刺すように濃く、蒸された土の匂いが、汗ばむ身体にじっとりとまとわりつく。だいぶ慣れたけど、高麗時代の服は暑くて……不快指数が半端ない——妊娠が分かってからひと月あまり。そろそろつわりが始まるかも、と思い思い過ごしてきたけど、全然大丈夫だったから、私はつわりの無い人なのかなー、なんて油断していたら——急に、来た。……こんなに辛いものだったなんて。病院で気分の悪そうな妊婦さんを見て、大変ね〜、でも病気じゃないんだか
己れの鼻先に、イムジャの纏う花の香り……イムジャの行動を予測出来ていた俺は、飛び込んできた柔らかな身体を、驚く事なく受け止めた。“はぐ”というのだそうだ。ただ…愛情表現だけでなく、親愛の情や感謝、慰安の時にもするのだ、というところが、若干気に入らないが。イムジャが俺にする“はぐ”は、まごう事なく愛情……俺は夫ゆえに。他の者とは違うのだ。アン家の客間に居た時から、イムジャはずっとおかしな様子だった。奥方の年はいくつか?随分若いのだろう、と言い出したあたりから、もしや…とは思っていたが。
やけに静かね。雪でも降ってるのかしら……深い眠りからゆっくり戻ってきた私の意識は、まだ浅い所でゆらゆらと揺れていた。冷え込む冬の夜の寝室。外はおそらく雪……でも、ここは温かい。背中に感じるヨンの温もり。私を抱き込む腕の重さが愛おしくて。もう少しこのまま眠っていたい……私は瞼を閉じたまま微睡んでいた。無事に息子——タムが生まれてひと月あまり。嬉しくて幸せで……そして、子育てがどれだけ大変な仕事かという事を、私はイヤという程、身に沁みて感じていた。子どもは自分のお乳を飲ませて、自分の
真珠の微熱54「どうした?」上着を脱ぎ捨て上半身を露わにしたチェ・ヨンが緩んだ瞳で見つめてくれば白い肌がほんのりと赤く染まる。くすりと笑みを浮かべ促すように黒い瞳が動く。「う、ううん。別に・・・包帯を外すわよ。」大きな身体に手を回し器用にくるくると包帯を解いていく。柔らかな髪がチェ・ヨンのあご先にふわふわと触れ時折、抱きつくように腕を回されればこのまま腕に封じ込めたくなる。無理矢理退院した割には傷口が綺麗に着いていたみごとに割れた腹筋が鎧のように6つに分
王宮から戻った俺を、駆け出す勢いのイムジャが、門前へ出迎えてくれた。「おかえりなさい!ヨンァ」「すみません、遅くなりました。夕餉は?」「旦那様を待たずに、先にいただきました」満面の笑みで迎えてくれる愛しい妻。長い間、夢に見てきた情景が、今目の前にあり——「ご気分はいかがですか?イムジャ」「いいわ。貴方も怪我は無い?」「はい。ありません」俺は、幸せというものを噛み締めていた。「土産があります。コモがイムジャにと」「え、なぁに?……あー!薬菓(ヤックァ)だ!嬉しい〜!」差し出
「断事官がそんな事を……そうであったか……」俺の話に黙って耳を傾けていた王様が、ポツリと呟く。夜更けの康安殿(カンアンデン)。王様と酒肴を間に、随分と遅くまで過ごしてしまっていた。「其方が元への援軍に志願したのには、そのような仔細があったのだな」「申し訳ありませんでした。元の現状を知る事ももちろんありましたが、その日誌をこの目で確認しなくては、と。医仙が高宗の時代にも居たなどと、にわかには信じがたい話ですので、無闇に王様のお耳に入れる訳にもいかず」言いながら頭を下げる俺に、王様は、
恭愍王(コンミンワン)と魯国公主(ノグクコンジュ)——お2人の歴史を私は覚えてる。そこの記憶は霞んでない。だから、回避する為の行動はしてもいい——そういう事でしょ?お2人にお子を——もちろん、私自身も早く授かりたいから、王妃様と一緒に妊活するわ。王妃様はお身体が強くはないから、心配は尽きないし、私だって高齢出産になるかもしれない。もしかしたら、同時期に出産……なんて事になるかもしれない。だから典医寺の強化は重要よ。ユン先生をはじめ、典医寺の有能な人材を育てる。私が教えられる事は
イムジャを抱きかかえたまま離れ家に足を踏み入れれば、俺の目に映る室内の様子は四年前のあの日と全く同じだった。入って直ぐ正面には閨室へ続く格子戸があり、左手にある廊下の奥には湯殿の扉が見えている。確か右奥には長い通路があり、その先は大きな広間へと繋がっていた筈だ。あの日ここで初めて、この方の濡れ髪を目にし、どうしようもない程に惹きつけられた。行灯の明かりを受けて、格子戸に映り込んだこの方の影に、指を這わせ身を焦がした。そして…毒に倒れた姿を目の当たりにして、この方を失えないのだと、狂おし