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ロンドンの深秋のある夜。テリィは、幼馴染でもあるエドガー侯爵家の長男フィリップ卿の私邸へ招かれていた。彼は幼いころからの数少ない友人のひとりであり、貴族社会のしがらみを嫌いながらも、その地位と教養を活かして文化活動に力を注ぐ人物だった。「君の名は、すでに劇作家や演出家たちの耳にも届いている。ただ、ロンドンの舞台というのは、才能だけでは立てない場所だ。まずは人脈という名の地盤を築くことだよ」そう言って彼は、テリィのために演劇関係者を招いた小規模な晩餐会を企画した。慈善演劇の企画を通してテ
EleannaS作、キャンディ・キャンディ海外2次小説「Terry'sJournal(テリーの日記)」を読み終えました。Terry'sJournal-EleannaS-Wattpadちょっと脱線して、昨年12月の読んだ「ScarletRose」の続きが出ている事を、作者ご本人様から教えて頂きましたので、77章、78章から2つに結末が分かれる両サイドのお話共に読みました。79章パート1まで更新されていました。続きが待ち遠しいです。ぜひ、読んでみて下さい。長いお話
ロンドンの深秋。霧が石畳を包み、街灯の光さえも濡れた空気の中に沈んでいた。馬車の車輪が遠くを通り過ぎ、トラムの鈍い金属音が霧の奥でゆっくりと消える。夜と朝のあわいのような灰色の街を、テリィは歩いていた。オファーがあった劇場とは別の劇団。煤けた壁、湿った木の匂い、出入りする裏方の声はどこの劇団も似ていた。テリィは、一つひとつの扉の前で立ち止まり、深呼吸してからノックをした。「お忙しいところ失礼します。ニューヨークのブロードウェイの舞台に立っていました、俳優のテリュース・グレアムと申します
ブロードウェイでの退団の報せは、大西洋を越えてロンドンの演劇界にも届いていた。ストラスフォード劇団の名俳優、“テリュース・グレアム”という名前は、この街でも静かな熱を帯びて囁かれていた。「もし彼がロンドンに来るなら、ぜひ我が劇団へ」そんな声が、水面下でいくつも上がっていた。特に、ストラスフォード劇団と旧知の劇団主宰たちは、テリィ本人の意志を確かめる前から、紹介状や招待の手紙を準備していた。だが、テリィはすぐには動かなかった。ロンドンでの新生活。慣れない街の空気、特に子どもたちの学校や妻
煌びやかなシャンデリアがきらめくプラザホテルのレストラン。金糸のように光るクロスの上に、磨き上げられたカトラリーが整然と並んでいる。キャンディは胸の奥をそわそわさせながら入口を見やった。――ポニーの家で共に育ち、村の診療所で共に働いた仲間が、こんなところで再会するなんて。やがて現れたのは、少し緊張した面持ちで立つ女性。髪をすっきりまとめ、淡い青のワンピースに身を包んでいる。その姿を見た瞬間、キャンディの目がぱっと見開かれた。「……エミリー!」「キャンディ!」二人は駆け寄り、抱き合
ニューヨーク郊外の高級住宅街。レンガ造りの瀟洒な建物の最上階にあるペントハウスが、テリィとキャンディの新しい住まいだった。1924年7月の朝。窓を開けると、夏の陽射しが白く輝き、街路樹の葉がざわめく音が涼しげに届いていた。ポニーの家では朝から子どもたちの声で賑やかだったが、ここは驚くほど静かだ。その静けさを破るように、ドアのベルが鳴る。「おはようございます、キャンディスさん」やって来たのは、テリィが以前より雇っていた通いの家政婦マーサ・グリーン。ふくよかで柔らかな笑顔の女性だ。毎日
Keyag作、キャンディ・キャンディ海外2次小説「CrónicasdeAmor(ChroniclesofLove)」を読み終えて。"Teamé,teamoyteamaré."(AlbertaCandy)「私はあなたを愛していた、私はあなたを愛している、そしてこれからもあなたを愛する」(アルバートからキャンディへ)ラブクロニクル第1章、キャンディーキャンディーの二次創作|ファンフィクション58章からなる長編で完結する、アルバートさん側のお話です。と
ポニーの村の小さなホテルを出たのは、翌朝の9時だった。村の空気は透き通っていて、昨日の祝福の名残が、まだどこかに漂っているようだった。「さて、行くか」マイケルが軽く伸びをする。「うん。長旅だからな」ケビンが運転席に乗り込み、エンジンをかけた。車はゆっくりと村を離れ、舗装の甘い田舎道へ滑り出す。ハンドルが少しだけ震えるたび、昨日の笑い声や歌声がふっと蘇る。しばらく沈黙が続き、それを破ったのはマイケルだった。「なぁ、ケビン」「ん?」マイケルは窓の外を見たまま、ぽつりと言った。
初夏の風が、アードレー家の庭を優しく撫でていた。穏やかな陽光が書斎の窓から差し込む中、アルバートは静かに机の引き出しを開けた。そこには、二つのものがあった。ひとつは、白い封筒に「T・G」とだけ記された、差出人不明の手紙。そしてもうひとつは、古びた革のノート。セントポール学院時代、キャンディが綴っていた日記帳だった。あれから何年も経っている。キャンディはその日記を手元に置くことを選ばなかった。「預かってもらえませんか」そう差し出された日、彼女の目は、どこか怯えていた。日記を読み
長い救護活動を終え、ようやく自宅の扉を開けた。玄関を閉めた瞬間、耳にこびりついていたサイレンや人々の叫び声が、まだ頭の奥でこだまする。静けさが返ってきたはずの家が、むしろ不気味に思えた。マーサが振り返り、小声で「おかえりなさいませ」と言ってくれる。その目に浮かんでいたのは安堵と心配。彼女は眠る子を見守ったまま、気遣うように静かに立ち去った。ここは安全な場所だ。そうわかっているのに、胸の鼓動は荒く、肩は強張ったままだった。寝室へ入ると、ベビーベッドの中で長男が小さな寝息を立てていた。
数週間後の午後、テリィは書斎で資料を読みながら、窓の外の庭をちらりと見た。キャンディが花壇にしゃがみ込み、咲きかけのバラをじっと見つめているのが見えた。どこかおかしい。なぜなら、その指先は動かず、ただ茫然と花を見つめているだけだったからだ。胸がざわつく。太陽のような彼女が、今は影のように静かだった。テリィは書類を置き、窓に手をかけた。「……キャンディ?」声はガラスに吸い込まれ、届かない。彼女はゆっくり立ち上がると、庭の端へ歩き始めた。その背中の小ささに、テリィの胸にじわりと冷たい
8月に久しぶりに子供時代の友人に会った際、キャンディキャンディの漫画だけは持っていると聞いて、子供時代に仲間が少なくあまり聞くことができなかったあの質問を今更に投げてみた、そう、やってみたかったのです「誰が好きだった?テリィ?」「そうねえ、テリィはないねだれだっけ、名前忘れたけどあの兄弟の性格のいいほうの・・・」「ああ、ステアね」テリィ推しの自分ですが、好きな男性に順番につけるとすると1テリィ2アンソニー3ステアなぜアルバートさんがいないのか理由
数日後。ストラスフォード劇団の稽古場には、吐く息の白ささえ消えるほどの緊張が再び漂っていた。今日は、戦場ではなく「言葉」で観客を揺さぶるシーンの稽古日。「第3幕、市民に向かっての演説だ。テリュース、準備を」演出家モートンの低い声が響く。木剣も鎧もいらない。舞台の中央に立つのは、稽古着姿のままのテリュース・グレアム。彼の前には、市民役を務める俳優たちが十数人。ざわめきと不満を抱えた群衆に見立てて並んでいた。テリィは深く息を吸い、台本を閉じる。視線を上げると、その場の空気が変わった
テリィ―『コリオレイナス』最後に現れたのは、テリュース・グレアムだった。一歩、また一歩と舞台中央へ進み出るその姿に、場内の空気が変わる。客席から洩れる衣擦れの音さえ消え、ただ彼の足音だけが劇場を支配していた。幕が開き、暗闇の奥から一人の影が歩み出る。赤いマントが揺れ、革の胸甲が舞台の光を受けて鈍く輝いた。剣を腰に佩き、逞しい腕と鍛えられた脚を露わにして、テリィが現れる。場内が暗転し、太鼓が鳴り響いた。舞台に火花のような照明が走り、戦場のざわめきが流れ込む。鎧に身を包んだ兵士役
(事故から数週間後)脇役だが、テリィにとっては重要な“舞台”。そしてその裏で、彼はひとつの準備を進めていた。キャンディを、舞台に招待したのだ。しかも片道切符で。再会の想いを胸に秘めて、彼は演技に没頭しようとしていた。だが周囲の空気は、以前とは違っていた。稽古が終わると同時に、イアンが無言でテリィを見つめていることに気づいた。(……なんだ?)何日も続いていた嫌な視線。だが今日のイアンの表情は、いつも以上に険しい。「テリュース」ぽつりと名を呼ばれる。「……少し話がある」その声
秋の陽が少しずつ傾き始めた午後。セントポール学院の湖には、白い帆を掲げたボートが並び、水面にゆるやかな波紋を描いていた。レガッタの授業。男子生徒たちが艇を競わせ、女子生徒たちは桟橋や湖畔から声援を送る。華やかな授業のはずなのに、シャルルの胸の奥は、ひどく静まり返っていた。向かい風の中、オールを握るテリュース・G・グランチェスターの姿が見える。濡れた前髪が額に貼りつき、白いシャツの袖を捲った腕が、光を受けてしなやかに動く。水を切る音。歓声。そのどれもが、シャルルの耳には遠く響いた。
この子達は横須賀市内のガストのレジの脇で売られていました。。かわいい⭐︎ふと買いたくなりましたがたしかうちにもあるな、と諦め探してみました何年か忘れられていましたが箱の中にいまして毛質も色も異なりふっさふさですあかちゃん風のものと比べるとだいぶ大きいです自分で買った記憶がなくて。。??"私が子供の頃、濃茶のパーマのショートヘア目の大きな女の子で(キャンディキャンディのような瞳)青いパンツを履いている2頭身のような人形を持っていてお気に入り
PatyAndrew作、キャンディ・キャンディ海外2次小説「ElCastillodelasAlmasSilentes(沈黙の魂の城)」を読み終えました。Lasparedesescuchan,lassombrasobservan...yelamortieneunprecio.壁は聞き耳を立て、影は見守る…そして愛には代償が伴う。(goole日本語訳)"ElCastillodelasAlmasSilentes"-Capítulo1
冬の夜気が窓を揺らす中、アパートの部屋は小さく温かった。ストーブの灯りがゆらゆらと揺れ、壁に影を映す。キャンディは湯上がりで頬がまだ赤く、ハードな仕事で疲れがにじんでいるようだった。「……もう眠っちゃいそう」ベッドに座り込んだ彼女の声は、どこか甘くかすれていた。テリィは台本を置き、その表情に自然と足が動いた。「髪、濡れたままだろ。風邪ひく」タオルを取り、そっと髪を包む。指先が触れるたび、キャンディの肩がわずかに揺れた。(……かわいい)そう思った瞬間、胸の奥に熱が灯る。タオル
「……スザナさん、昔から演劇が好きだったんですか?」「そうね、たぶん、物心ついたときから。家では”変わり者”扱いされてたけど、本の世界だけが私を自由にしてくれた」「それ、わたしも一緒です。図書室で本ばっかり読んでた。中学のころなんて、演劇部にも居場所がなくて、脚本だけ書いてたわ」「マデリーンは演じないの?」「自分が舞台に立つの、嫌いなんです。誰かになりきるって、なんだか怖くて。でも、誰かが自分の言葉で動くのは……最高にしびれる」スザナはその言葉に、小さくうなずいた。「舞台に立っても、
ショパン千穐楽の朝。キャンディは鏡の前で支度を整えようとしたところ、ふと背後から聞こえる子どもの咳に顔を曇らせた。熱を測れば、オリヴァーの額は熱く、体はだるそうにしている。「ごめんね、テリィ、オリヴァーに付いていてあげたいの」「いや、仕方ないさ、気にするな」キャンディは舞台へ行くことを断念したが、そのかわり日々を支えてくれている通いの家政婦・マーサにチケットを託す。「マーサ、代わりに観てきてちょうだい。そして彼のこと、教えてくれる?」マーサは目を丸くしながらも、キャンディの願いを受
1929年1月下旬の午後。外は冬の冷たい風が吹き抜けていた。曇天に覆われたブロードウェイの街並みには、前夜の雪がところどころに残り、道端の排気にまみれて灰色に変わっている。稽古場の窓ガラスも白く曇り、息を吐けばすぐに曇りが広がった。その稽古場に、いつになく多くの俳優とスタッフが集まっていた。長机を円形に並べ、その周りに椅子を置き、全員が台本を手にして座っている。空気は重く、誰もが落ち着かない様子だった。理由はひとつ――今日は《コリオレイナス》の初めての全員読み合わせの日であり、そして劇団
先週あさきゆめみしを何とか読み終えた。光源氏が登場する第1部と2部までは大勢の人が知るところ。殆どの人が1.2部が人気ですがこの3部も悪くないです。光源氏亡きあとの第3部は読んだことがなかったのですが、個人的にはとても興味深いなあと、現代の恋愛に通じていてリアリティがあり面白いと感じる内容でした。光源氏の息子の薫(実は息子ではない)の恋愛が描かれているわけですが、この薫、イケメンでステータスもありながら、自己肯定感が低いのか性格なのか、誠実で理性的なのに勢いよく迫れず恋が成就
第2幕と3幕の幕間でのこと。「アニキ、アニキ」「おぉサム、お前持ち場はどうした?」「ロイが痙攣して倒れて、今隣りの診療所にいるからと伝えに来た」「なに?!で、ロイは?」「機材室にどこかのお嬢さんいただろ?その人と診療所にいる。すぐに医者に診てもらって大丈夫だという話だから。終わったら診療所に行ってくれ」「ああわかった。発作が出たんだと思うたぶん」「じゃ伝えたから」「あぁサム、ここにいたのか。話は聞いたけど、大丈夫だったのかい?」支配人がサムを探していた。「はい、大丈夫だと医者
数日前、父のタウンハウス。晩餐の間に入る直前、テリィは一度足を止め、父へ向き直った。煤の匂いがわずかに染みついた廊下に、二人の声が静かに響く。「父上……ひとつ聞きたいことがあります。」公爵は歩みを止め、細い眉をわずかに上げた。「なんだ、テリュース。」テリィは一瞬ためらい、しかしまっすぐに言った。「僕たちのタウンハウスのことです。……本来なら、私自身の稼ぎで用意すべきものでした」キャンディが少し驚いたように彼を見る。テリィは続けた。「子どもたちのためにイギリスへ戻ると決めたのは私で
スザナの訃報を知ったのは、いつになく底冷えのする朝だった。冷たい手に息を吹きかけながら、いつものように新聞を開いた時である。それは天からの雷いかづちのように、キャンディの頭上に落ちてきた。同時に、当然ながら、テリィのことが頭に浮かんだ。あの晩──私とテリィは、墓場まで持っていく秘密を共有した。言葉には出さない、無言の誓約。翌朝、駅で別れた以降の彼の消息をキャンディは知らない。どうやって病院へ戻り、どのようにスザナに説明をして、あの後、二人がどんな
ブロードウェイでのハムレット・ファイナルの幕が下りてから半年。春の陽射しがブラインドの隙間から差し込む午後、テリィは引っ越したペントハウスの書斎の机に向かっていた。机の引き出しを開けると、未使用の便箋と封筒の束がそのままになっていた。何度か手に取っては、また戻していたそれを、今日は静かに取り出す。シカゴでの巡業のとき、たった一度見かけた彼女の横顔。それが幻だったのか本当だったのか、今でも確かめる術はない。けれど、あのとき胸が高鳴った感覚だけは、まぎれもない真実だった。「会えるわけな
「月が滑り落ちてきそう」上弦の月を見上げて、キャンディが言った。テリュース・グレアムは、地上に向かって星の河を緩やかに前進する舟を想像した。薄いグリーンの夜着が淡い光に透けている。その面積が徐々に大きくなる。「カーテンを閉めてくれ」──錯覚だ。「何故?」彼女が振り向く。「こんなに綺麗なのに」「君を攫われそうで、怖い」「……え?」訝しげに微笑む顔。「テリィったら想像力が豊かなのね……きゃッ」テリィは、彼女の両手をシーツに拘束する。「怒ったの?冗談よ
数日後、シャルルは偶然、ニールたちの会話を耳にした。「キャンディというヤツは、みなしごでさ。僕の家に奉公できてたんだ」その言葉に、シャルルは足を止めた。胸の奥に、あの日の出来事が蘇る。あの優しさは、強さから生まれていた。彼はそのとき初めて知った。自分を救ったのは、哀れみではなく、同じ痛みを知る者の手だったのだと。そして、シャルルの心のどこかで、彼女をもっと知りたいという思いが、静かに芽生えていった。それがやがて、テリィの心を揺るがせることになるとは、このときはまだ誰も知らなかった。
久しぶり〜のキャンディ♡キャンディネタでございますがもおね、難産で・・・アンソニーのことを書きたいと思いつつ時ばかりが過ぎていき・・・まとまっているのか分かりませんがよろしければお付き合いくださいコミックス全9巻中アンソニー登場は1、2巻のみ2巻目であっという間に…はじめからアンソニーは幻のような、儚げな気がしていたから、死んでしまったことに驚きはない娘が以前、漫画キャンディ♡キャンディの感想をこう述べていましたがなるほど、どことなく儚い雰囲気がある『アン