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脚本:澤井香織・今泉力哉。監督:今泉力哉。見れば見るほど興味の尽きない、おもしろい映画であった。この映画、人物を集中的に描くとき、音楽を前面に出さない。極力音楽を使わぬよう自制しているようにさえ見える。演出は主人公ちひろさん(有村架純)をとにかく丁寧に、丁寧に描写している。この人物、一見、何を考えているのかわからない。わからないが、わからないなりにこの女性の優しさ・愛・いたわりの心みたいなものを、演出は淡々と描いてゆく。この丁寧かつ淡々としたドラマ作りはだんだん彼女のいたみ
なんとなく鑑賞する機会があったので、鑑賞した次第である。観ていて強く思わされたのは、カーソン・マッカラーズの「心は孤独な狩人」という本である。その本は1940年に発表されたアメリカの小説であり、2020年には村上春樹が翻訳した。その本では耳が聞こえない男性が主人公である。小説の様々な登場人物は耳が聞こえない主人公に自分の話を語り続け、主人公は主に読唇術でそれを理解する。その繰り返しの中で主人公は「聞き手」として、様々な登場人物の心を癒していくという話だ。「ちひろさん」の中で、ちひろとい