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とんかつは茶色い。少なくとも俺は、そう教わって生きてきた。ところが飯田橋には、油に入れられているのに、ほぼ白いまま帰ってくるとんかつがいる。揚げ物界でここだけ美白意識が高すぎる。飯田橋駅B4b出口から徒歩5分ほど。軽子坂のビル2階にある、とんかつ憲進。2023年3月7日オープン。高田馬場の名店なりくらで3代目店長を務めた店主が独立し、2026年には食べログとんかつ百名店にも選出されている。しかも店主は5年以上とんかつを研究し、パン粉や油はもちろん、揚げ鍋の
油そばという料理は、名前の時点で少し損をしている。ラーメン。つけ麺。油そば。ほかの二つは美味しそうなのに、最後だけ健康診断で注意されそうな名前をしている。しかも、その油そばに「最強」を掲げて商売している店がある。反省の色がまったくない。高田馬場駅から徒歩30秒。2019年2月オープンの「油そば春日亭高田馬場駅前店」。注文したのは一番人気の鳥豚油そば。今回は味玉も追加した。着丼して、まず目を疑う。これ、本当に汁なしなのか。丼には乳白色の
韓国料理屋で「今日は軽く食べよう」と言う人間を、俺はあまり信用していない。そういう人に限って、最後に鉄板へ米を投入する。しかも本人は、それを〆と呼んでいる。発言と行動が一致していない。新大久保駅から徒歩5分。2010年9月1日オープンの「マッコリの物語」。名前はやけに文学的だが、ここで繰り広げられるのは恋愛小説ではない。満腹に対する計画的犯行である。まずは大根のおかず、オムク、キムチのパンチャンから。甘辛い味付けと野菜の歯応えで食欲を刺激する。
ピザ屋に入った。店名は、NOTAPIZZA。開始3秒で話が噛み合っていない。こっちはピザを食べに来ているのに、向こうは入口から「ピザじゃない」と言い張っている。しかも店内の中央には、ナポリの名工ステファノ・フェラーラ社製の巨大な薪窯。証拠がデカすぎる。祐天寺駅東口から徒歩3分。2022年5月23日オープンのNOTAPIZZA。ナポリピッツァの伝統的な型に縛られず、もっと自由にピザを楽しむことを掲げる店で、生地は長期熟成、高加水。500℃前後ま
恵比寿で「鮨」と「おでん」を同時に掲げる店には、少し警戒する。二兎を追う者は一兎も得ず。鮨もできます。おでんもできます。そう風呂敷を広げた結果、どちらも「まあ普通」に着地する店は珍しくない。しかも店名は、江戸前鮨のどぐろ出汁おでん粋はなれ恵比寿店。長い。読み終わる頃には、もう一杯目を頼みたくなる。2025年7月18日オープン。江戸前鮨とのどぐろ出汁おでんを二枚看板に掲げる店だが、今回はコースではなくアラカルト。気になったものを好
牛タン専門店で一番怖いのは、途中から全部同じ料理に見えてくることだと思っている。焼いた牛タン。また焼いた牛タン。さっきより少し厚い牛タン。気づけば牛タンが服だけ着替えている。ところが池袋には、その牛タンを異常なほど働かせる店がある。池袋駅東口から徒歩2分。炭火焼き牛タン酒場いけたん池袋店。2023年9月22日オープン。紀州備長炭で焼くのはもちろん、低温調理、煮込み、味噌焼き、最後は釜飯。牛タンの勤務形態が多すぎる。まずはお通しからスタート
かき氷は、氷が旨ければ成立するわけでも、果物をたくさん乗せれば贅沢になるわけでもない。削った氷がどう溶け、その一瞬に蜜と果実の旨味をどこまで乗せられるか。ただ甘くて冷たいだけなら、途中で飽きる。むしろ難しいのは、最後の一口まで果実を濃く感じさせながら、重たくさせないことだと思う。その完成形を求めて、谷中のひみつ堂へ。2011年5月22日創業。屋台から始まり、現在も日光の三ツ星氷室から仕入れる天然氷を使い続ける、東京を代表するかき氷専門店の一つ。谷中の路地を抜ける
焼肉屋でスパイスやカレー粉を大量に使い始めたら、少し警戒する。肉の鮮度や質で勝負できるなら、そこまで味を重ねる必要はない。だからカレー、バター、にんにくまで並ぶと、俺の中の面倒くさい部分が少し顔を出す。本当に肉に自信があってやっているのか。それとも勢いだけなのか。向かったのは、神泉駅から徒歩2分。渋谷・円山町のほるもん倶楽部あじくら。20年以上続く実力店だが、メニューを見ると少し様子がおかしい。スリランカがいる。しかも、かなり前のめりでいる。まずはね
スープパスタと聞くと、どこか味が優しく、普通のパスタより輪郭がぼやける料理を想像してしまう。けれど、本当に旨いスープパスタは真逆だと思う。麺が沈むほどソースを張りながら、最後の一口まで味を薄めない。むしろ麺を食べ終えたあと、残ったソースまで追いかけたくなる。そこまでやって初めて、スープである意味が生まれる。下北沢のシモキタ洋麺店。店頭で予約札を取り、指定された時間に再び戻る。少し手間のかかる仕組みだが、店主がワンオペで一皿ずつ仕上げる店だと分かると、その時間
餃子屋に行って、最初に感心したのがおしぼりだった。まだ餃子は一個も食べていない。中野駅北口から徒歩1分。2026年6月25日にオープンした餃子のイペコ。店内を見渡すと、天井には餃子のシャンデリア。餃子は普通、皿の上にいる。ここでは天井にもいる。入店して数分で、この店が普通の餃子屋ではないことだけは分かった。そして最初に出てきたおしぼり。一つ一つに手描きの絵とメッセージが添えられている。これが真心こもってるし、普通に上手い。使い捨てのお
回らない寿司屋に入ると、人はなぜか自分まで回らなくなる。背筋を伸ばす。声量を落とす。板前さんの手元を見る。そして突然、育ちが良さそうな顔をする。寿司を食べるだけなのに、こちらにも若干の演技力が必要だ。そんな緊張感とは少し違うのが、新宿西口駅から徒歩3分の鮨吟。2026年6月11日オープン。本格鮨をもっと気軽に楽しませる町鮨だ。まずはタコ刺身。薄く引かれた身が皿いっぱいに並び、すだちと薬味を添える。海の中では八本脚で好き放題やっていた生き物とは思え
焼鳥屋のメニューを開いて、いきなり歴史の授業が始まった。日本初のアスパラ巻、しそ巻発祥の店。こういう元祖とか発祥を堂々と掲げられると、俺の偏屈な部分が少しだけ反応する。昔からあることと、今も美味しいことは別の話だからだ。新宿三丁目駅A5出口すぐ。南蛮亭新宿本店。1977年創業。六本木総本店からのれん分けし、新宿で半世紀近く焼鳥を焼き続けてきた老舗だ。まずはお通し。キャベツ、きゅうり、大根、人参。野菜スティックというには、かなり元気がいい。
鶏料理専門店に行くなら、鶏には少しくらい本気を出してほしい。焼く。炙る。刺す。しゃぶしゃぶする。最後にはスープまで取る。人間なら途中で一度くらい労働基準監督署に相談したくなる仕事量だが、鶏は黙って全部やる。そんな鶏の可能性を、一晩かけて徹底的に調べられる店が新橋にある。店名は、鶏調べ。もう研究機関みたいな名前である。新橋駅日比谷口から徒歩3分。2025年9月8日オープン。備長炭で焼く焼鳥と白レバーを看板に掲げる鶏料理店だ。まずは地鶏タタキ
鉄板焼きは、上質な肉を豪快に焼けば成立する料理ではない。一枚の鉄板という限られた熱源の上で、牛肉、魚介、野菜、最後は米まで、それぞれ全く違う素材に違う熱を与える。どこまで焼くのか。どこで休ませるのか。水分をどこまで残し、脂をどこまで引き出すのか。だから本当に差が出るのは、炎を上げる派手さでも、分厚い肉を見せつけることでもない。同じ一枚の鉄板から、いくつの表情を引き出せるか。その答えを確かめるため、銀座四丁目交差点、GINZAPLACE11階の「銀座山科本店
牛丼は、安くて早くて腹を満たす料理として、すでに完成されすぎている。肉、玉ねぎ、タレ、米。誰もが知っている単純な組み合わせだからこそ、上質な和牛を使えばそのまま上位互換になるほど簡単な料理でもない。脂の強い肉を大量に乗せれば、一口目のインパクトは作れる。だが、一杯を最後まで食べさせるには、肉質だけでは足りない。肉の脂とタレの濃度。玉ねぎの甘み。米への染み方。そのすべてが噛み合って初めて、高級な肉を使う意味が生まれると思う。その答えを確かめるため、銀座駅B
食べ放題は、量を食べれば得だと思われがちだ。でも、本当に難しいのは量ではない。同じ食材を何度重ねても飽きさせず、最後まで食べたいと思わせられるか。まして店名は、もつ鍋わたり。そんな店が期間限定で主役を完全に鮪へ渡し、食べ放題と飲み放題まで付けたというから気になった。立川駅南口から徒歩2分ほど。九州料理二代目もつ鍋わたり立川店へ。2021年9月1日オープン。今回注文したのは、9月まで延長された赤字覚悟のまぐろ食べ放題&飲み放題120分コース。10
鴨ラーメンと聞くと、どこか癖が強かったり、その個性を抑えるために別の素材や強い調味料を重ねている一杯を想像する。だが、鴨はラーメンに使えばそれだけで旨くなる素材ではない。脂を押し出しすぎれば重くなる。出汁を強く取りすぎれば癖が残る。反対に綺麗にまとめすぎれば、せっかく鴨を使う意味まで薄れてしまう。だから難しいのは、何を足すかではない。鴨そのものを、どこまで一杯の中に残せるか。その答えを極端なほどシンプルな方法で形にしているのが、錦糸町の中華そば満鶏軒。2
SNSで話題の再現飯や映えを前面に出した店と聞くと、どうしても料理は二の次ではないかと疑ってしまう。写真を撮って楽しい。世界観に浸れて楽しい。それだけで体験として成立してしまうからこそ、皿の上まで演出に甘えていないかは別で見たくなる。小江戸川越風鈴酒場。風鈴や暖かな灯りに囲まれた空間は、川越の街からそのまま千と千尋の神隠しを思わせる世界へ迷い込んだような非日常感がある。まずは彩り野菜のお通しから、パリパリ肉味噌ピーマン。瑞々しいピーマンに濃厚な肉味噌。シ
焼鳥は、同じ鶏を炭で焼けば成立するほど単純な料理ではない。胸、首、尻、膝、心臓、砂肝。同じ一羽でも、脂の量も水分も繊維も違う。火を入れすぎれば水分は抜け、弱ければ炭で焼く意味が薄れる。一本の串というシンプルな形だからこそ、その部位をどこまで最適な状態に着地させられるかで、焼き手の力量がそのまま出る。その焼きの違いを確かめるため、新宿西口駅から徒歩3分、鳥たか新宿店へ。2026年6月5日オープン。西新宿のビル6階にあり、備長炭で焼き上げる焼鳥と鶏料理を軸
演出の派手さだけで料理を特別に見せる店は少なくない。煙を立たせる。炎を上げる。目の前で何かを開ける。驚きは作れても、その瞬間を過ぎれば料理まで印象に残る店は意外と少ない。本当に記憶へ残る演出とは、料理から意識を逸らすものではなく、味わう前の期待を高め、その一皿の価値まで引き上げるものだ。元麻布の地下に構えるVinIX。銀行をコンセプトにした店内は、黒と赤を基調にした重厚な空間。通帳を模したメニューや貸金庫を思わせる意匠が散りばめられ、完全個室の扉が閉まると外の喧騒は
餃子屋に求めるのは、奇をてらった変化球じゃない。焼き目が香ばしくて、餡にちゃんと旨味があって、気づけばもう一個に手が伸びる。そこに酒があれば、それでいい。むしろ餃子は、盛れば盛るほど旨くなる料理ではないと思っている。肉汁を増やしすぎれば重くなる。皮を厚くすれば食べ応えは出ても、何個も食べたい軽さは消える。小さな一個の中で、どこまでバランスを取れるか。向かったのは、中目黒の山手通り沿いにある餃子の円山。赤い庇に大きく入った店名。店先には赤い丸椅子が並び
辛いラーメンは、辛ければ辛いほど旨いわけではない。唐辛子を増やせば刺激は強くなる。でも、その奥に旨味がなければ、結局は舌を刺激して終わる。逆に冷麺も、ただ冷たく甘酸っぱければいいわけではない。熱と辛さで押す一杯。冷たさと甘さで引く一杯。その正反対の二品だけで勝負しているのが、早稲田のてぐたんラーメン。2026年6月3日オープン。都電早稲田駅からすぐ、グランド坂沿い。メニューは、てぐたんラーメンと甘タレ・ビビン冷麺の二品のみ。大盛りも、トッピングも、
チェーンのカレーと聞くと、どこで食べても同じ味だと思われがちだ。確かにベースは同じ。だが、辛さを変え、肉を足し、揚げ物を乗せ、野菜を加える。さらに食べている途中で味まで動かせる。CoCo壱番屋ほど、同じカレーなのに注文する人間の好みがそのまま一皿に出る店も珍しい。西新宿五丁目駅前通店で選んだのは、豚しゃぶカレーを3辛。そこへソーセージ、コロッケ、ほうれん草をトッピングした。そしてもう一つ。注文時にお願いすると無料でもらえる、とろ~り甘くなるソース。
味噌ラーメンは、味噌を濃くすればそれらしくなる。塩気、甘み、油、辛さ。力のある要素を重ねれば、一口目のインパクトは簡単につくれる。だが、その強さで出汁や麺まで消してしまえば、最後に残るのは、味噌味だったという記憶だけだ。専門店に問われるのは、味噌を何種類使ったかではない。一杯の中で味噌、出汁、麺を共存させ、らーめん、まぜそば、つけ麺を、それぞれ違う料理として成立させられるかだ。その答えを確かめるため、武蔵境駅北口から徒歩5分、東京味噌らーめん鶉へ。武蔵
観光地にある焼肉屋と聞くと、どこかでロケーションという甘えを疑ってしまう。景色がいい。旅先というだけで気分も上がる。けれど、本当に美味い店はそんな下駄を必要としない。網の上に置かれた肉、その一枚だけで客を黙らせる。山梨県忍野村の炙り焼肉おさ。ふらりと立ち寄ることのできない完全予約制。夕暮れの道沿いに現れるのは、派手な看板を掲げた店ではなく、一軒家のような控えめな佇まい。大きなおさの暖簾をくぐり、席へ着くと、目の前のロースターがゆっくりと熱を帯びていく。まず
行列ができる店は、それだけで味まで証明されたように見える。だが、人が並ぶ理由には知名度、立地、SNS、旅行客への広まり方まである。行列の長さと一杯の良し悪しは、一度切り離して見た方がいい。まして店名は無敵家。大きな名前と話題性を外した時、豚骨、背脂、醤油だけでどこまで食べさせられるのか。池袋駅東口から徒歩3分、明治通り沿いにある麺創房無敵家へ。大きく張り出した看板と濃い木目の外壁。入口には待機列を整えるロープが張られ、その奥にカウンター17席だけの店内
チャーハンは、中華料理の中で脇役に置かれやすい。主菜の横、あるいは酒席の締め。誰もが知る料理だからこそ、それだけを目的に店へ向かわせるのは難しい。専門店として主役を張るなら、豪華な具材や濃い味に頼らず、米一粒で食べ切らせる理由が必要だ。新橋駅から徒歩1分。ニュー新橋ビル地下1階、独特の熱気が漂う通路を進んだ先にあるチャーハン王新橋店へ。ガラス越しに客席の活気が伝わる、気取らないチャーハン専門店だ。注文したのは、1日150食限定のチャー王セット。極
焼肉は、脂が多ければ多いほど旨いわけではない。サシの強い肉は一口目のインパクトを作りやすい。だが、タン、ハラミ、ホルモン、ロースと食べ進め、最後までまだ肉を食べたいと思わせるには、脂の強さだけでは続かない。部位ごとの食感と旨みをどう繋ぎ、どこで口を切り替えさせるか。気取らない焼肉ほど、実はその組み立てに店の力量が出る。その答えを確かめるため、恵比寿駅から徒歩3分の焼肉宝来へ。2026年5月18日オープン。扱うのは、32か月以上長期肥育した黒毛和牛の雌牛
四川料理を、辛さと痺れだけで語るのは少し雑だと思う。唐辛子を増やせば辛くなる。花椒を利かせれば痺れは強くなる。だが、その刺激を何で支え、どんな香りを重ね、一皿食べ終えるまで単調にさせないか。四川料理の面白さは、むしろその先にある。その答えを確かめるため、京急川崎駅から徒歩4分、GEMS川崎8階のMANYUへ。2026年4月に日本初出店。中国では20店舗以上を展開し、メニューにはSINCE2011の文字が入る。エレベーターを降りると、まず印象に残るのは四川
スーパー銭湯は、風呂に入って帰るだけの場所ではない。サウナに入り、汗を流し、水風呂で身体を締める。少し休み、腹が減ったら飯を食べ、漫画を読み、眠くなれば横になる。そして気づけば、またサウナに戻っている。本当に使い勝手のいい温浴施設は、風呂やサウナ単体のスペックではなく、一日という時間をどれだけ気持ちよく預けられるかで決まると思う。その意味で、かなり完成度が高かったのがRAKUSPAStation武蔵小金井。2025年12月5日オープン。JR武蔵小金