池波正太郎の作品が世代を越えて読み継がれてきた理由は、単に時代背景の面白さや事件の緊張感にあるのではありません。そこには、どの時代を生きる人の胸にも静かに触れてくる、人間の弱さと強さ、そして哀しさと温かさが、深い眼差しで描かれているからです。鬼平犯科帳の中の一編である老盗の夢も、その代表的な作品のひとつです。時代劇を知らない若い世代にこそ、ぜひ触れてほしい人間の物語が、そこにはあります。老盗の夢に描かれるのは、派手な剣戟や大事件ではありません。人生の終わりに差しかかろうとする一人の盗賊の、静かな