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心、境界線⑦数メートル先のヨンと確実に目が合い、ベンチの後ろに隠れているウンスとしては言い訳が出来ず、驚いた表情で此方を見下ろして来るヨンをただ見上げていた。「・・・何してるんだ?」「・・・お、落し物を探して」「落し物?」ヨンはベンチへ数歩近付いたが直ぐに止まり、ジッとその場からまだ座っているウンスを見つめ、「・・・話、聞いていたか?」「は、話?・・・少しだけ」少し間の後尋ねて来たヨンにそう答えてしまうが、実際終始聞こえていたなどとは絶対に言えない。それに聞いたからといってどうす
心、境界線⑥彼の行動に呆れた者達は彼に話し掛ける事も無くなり、女性達もまた失望したのか彼で盛り上がる事も少なくなっていき、アン医師は孤立するヨンを心配したが彼は変わりなく普通に仕事をしていた。そして、アン医師は女性に謝罪して回るヨンの様子を見て気付いた事があった。それは付き合っていた女性は全て病院のスタッフ達だけで他職業は一人もいなかったのだ。これをイ医師に尋ねると、さも当たり前の様に話し、「だから、それさえも彼は気付いていなかったのですよ」何時もの淡々とした口調で返して来た。「そ
心、境界線⑤「お食事ありがとうございました。久しぶりに沢山飲めて楽しかったです!」「いえいえ、こちらこそありがとうございます」お互い礼を言い合い思わず笑ってしまったウンスとヤン医師は、レストラン入口で会話をしていた。「・・・私はユ先生はもっと大きな病院の方が良いと思ったのですが、貴女の考えを聞いて良かったです」「そんなっ、・・・ヤン先生に気を使わせて本当に申し訳ありません」「私はユ先生の為にお手伝いしますよ。あ、今回のお返しに」「えー、別に良いのに、おっと―・・」足元がふらつきよ
心、境界線④「わぁ、ありがとうございます!」ウンスは手に渡されたコーヒーと期間限定のパイに歓声を上げた。「申し訳ないね、お礼がこんな安いもので」申し訳なさそうに言うヤン医師の隣には2人では食べれるかという程のサンドイッチやパンが入った紙袋がまだあった。「他のスタッフ達も食べてくれたら嬉しいんだけど」「大丈夫です、皆喜んでくれますよ」そう言い笑いながらウンスも早速手にしたパイを口に頬張った。1週間前にヤン医師が上層部に申請した最新機器購入と更には医師達への実績に基(もとずく)正
心、境界線③三日後。ヨンが違う科の女性スタッフと別れたとの話が流れアン医師は椅子からずり落ちそうになった。「大丈夫ですか?アン先生?」「あ、ああ、え?付き合って間も無いのに?」「ええ、しかも話によると飲んでいる最中に『ごめん』と言って来たみたいです」「はあ?」「とはいえ、前の彼女もそんな感じで振られていますから、話してみて合わないと判断したのかタイプじゃ無かったのか・・・」呆れる様に話す看護師の言葉にアン医師は徐々にヨンの性格が危ないものではないか?とさえ思い始めていた。あまり
心、境界線②チェヨンとそういう関係になったのはウンスが総合病院に勤務してまだ1年も経っていない頃で、同じ外科仲間と夕飯に行った際に集まった数人の1人が彼だった。彼もまた兵役を終わらせてから来た為まだ1年いるかどうかで、お互い話す様になったのは自然な事かもしれない。既に二次会に行く必要も無い程に、大量にアルコールを摂取したウンスはタクシーを呼んで欲しいと同僚医師達に頼んでいたのだがそれを聞いていたヨンが自分が送ると言って来た。普段口数少ないヨンがウンスと仲良く話す姿を見ていた医師達は、彼にウ
*この話もどれにも繋がらない短編です。心、境界線①居合わせたのは当然偶然だったが、近くの席に座ったのか?と問われればそれも何となくとしか言えなかった。同僚から誘われるままに最近出来たという中華料理が美味いと噂の店に入ってみれば、数年前に傍で聞いていたよく知る声が聞こえて来た。女性の声など皆同じだと思っていたが、過ごしてみるとなるほどそれぞれ特徴があるのだなとあの頃気付いたものだったが・・・。しかし今は関わる事もすれ違う事も無くなってしまい、同じ職場だった彼女が違う病院へと転勤してからは
あの場所でもう一度◇(16)【崔医師と李医師の会話】「自然にその流れに持ち込む為にはどうしようか?」呟きか?それとも自分に質問しただけなのか?突然のヨンの発言に口に含んだ酒を吹きそうになり、イ医師は口を咄嗟に抑えた。漢江近くにある店は年々お洒落な装いに変貌しているが、それでも長年営業している大衆食堂等もありそういう場所は旅行客より地元民の集まり場所になっていた。暑気払いだ、納涼会だとの項目で満席の店内は冷房を効かせても汗ばむ湿度になっている。常ならば勤務終わりのイ医師やヨンは衣服を
あの場所でもう一度◇(15)ふと気付いたのは2人で夕食をし、他愛無い会話をしている時だった。どうしてそんな時に?思い出した自分にも呆れてしまうが、考えたらとめどなく溢れ逸らそうとしても戻って来てしまう。2人で立ち寄った何気無い定食屋。向かいに座ったウンスはにこやかに話しながらも手を動かし食べ物を口に運んでいる。「へぇー、ジムに行き始めたの?」ヨンが最近再び通い始めた事をウンスに話すと、時間は大丈夫なの?と不思議そうな眼差しを向けながらも凄いわね、と褒めてくれた。「でも、どうしてまた
誓約恋人㉘〔最終話〕三日経ってもチェ製薬会社の話題がメディアで流れ続け、お客もまた店に来て繁盛している。普通の女性が財閥入り出来た話題性と実はヨンとウンスのご先祖の繋がりを結び付け、『まるでドラマの様だ』と盛り上がっている。それに加え、ヨンの顔が俳優なみに美形でもあり何処かの事務所がスカウトしに来たとかで――。「あらあら、私には来なかったわねぇ・・・」ムスッとするウンスを見て、『何を張り合っているんですか?』とスタッフ達に呆れられてしまったが、どうやらウンスに話に行く事はチェ家か
誓約恋人㉖「・・・あのー?」駐車場から帰って来たトルベ達が、店前で2人の世界に入っているヨンに恐る恐る声を掛けると何だと睨まれた。――いや、俺達が悪いのか?困惑顔でトルベの後ろにいるトクマンも見つめており、ウンスも我に返るとヨンから離れ様と手を伸ばしたが彼は嫌だと言わんばかりにガッチリと腕を動かさない。「ちょっと、チェヨン」「まだイベントが終わっていないからユウンスも中にいて欲しい」「いるけど・・・」製薬会社の面々の痛い眼差しが気にならない事も無く、どうしたものかと考えていたがヨ
誓約恋人㉕「・・・・そうなの?」ヨンの周りに集まっている製薬会社の上層部とその中でしきりに自分の娘の内定を喜び彼に礼を言う父親。そして実は製薬会社の関係者だったサラさん。何となくついこの間も似た様な光景を見た気がするが、その違いはヨンが承認しているかいないかの差だろうか。彼女の父親を見ると会議室で見た事もあり、重役ともわかる。まるで自分など見えないかの様に彼らはヨンに話し掛け、サラの優秀さを褒めていた。「・・・・・」以前彼の叔母さんが話していたのは代々チェ家の婚約者はチェ家と関わり
誓約恋人㉔「・・・これも送ったのですか?」「はい、定期発注の中にリストがありましたので、送りましたが・・・駄目でしたか?」「いいえ、大丈夫です・・・。ですが、これは俺の専属契約先なので次回は送らないで下さい」「そうでしたか・・・すみませんでした」しゅんと肩を落とすサラに、「あー、そこまで落ち込まないで下さい。他の業務は彼奴らよりとても役に立っていますので」ヨンの言葉に素早くトルベとトクマンの鋭い眼差しが向いたが、引き続きよろしくとサラに言いヨンはその場を離れた。サラは眉を下げたま
誓約恋人㉓ヨンがあっさり承諾した事に叔母と秘書は大丈夫か?という不安な眼差しを送ったが、それを横目に彼は彼女達の内心を呼んだ様に大丈夫ですと返した。「あぁ、そういえば本社の方々も視察に来ると聞きましたが?」「まあ、本社の奴等の考えそうな事だよ」「始めだけの勢いでそのうち下がっていくと嘲笑っているのかもしれませんね」「なら気をつけな」「承知しています」ヨンはテーブルの上にあったその女性の書類を持つと一旦実家に戻ると言い部屋から出て行ってしまい、その後ろ姿を見送っていた秘書は心配そうな
誓約恋人㉒『プラチナコスメアワード大賞を受賞したチェ製薬会社のコスメ店が遂に江南区に出店という事で、新会社社長のチェヨン氏、お気持ちはどうですか?』『はい、元々この場所に出店したいとの希望はありましたので夢が叶い幸せです』『キャー!』『元はチェ製薬会社の会社でもありましたよね?自社を減らす事に何か戸惑い等はありませんでしたか?』『いいえ、チェ製薬会社の関係者も納得した上ですし、この会社に残りたいと言ってくれた社員もおりまして。本当に有り難いと思っています』『キャー!』『あぁ、やはり
※アメ限の予定でしたが大丈夫そうなので普通記事になりました。´-`)気持ちの行方②『ヨン氏に似合う役があるんだけど、考えてみないか?』そんな話をマネージャーから聞いたのは1年前の事だった。現代ドラマしか出なかった自分に時代劇にも挑戦してみろと彼は話す。「あまりそういうのは・・・」『いや、今は色々挑戦した方が良いと思うよ』「・・・身体鍛えないとなぁ」『頑張って!』「・・・はあ」軽く言うマネージャーに呆れた眼差しを送りたかったが、何せスマホ越しな為わからないだろう。ため息を吐き
気持ちの行方①カチャンカチャン・・・・・。ウンスは何の音かと周囲を見渡したが、見えるのは果てしなく広がる草原と点々と生えている黄色い野花しか見えなかった。――・・・ここは?見た事も無い場所と、自然の中には不似合いな程の機械的な音。しかし、ふと草原の端を見るとそこには大きな木があり誰かが座っている。慌て走り近付いたが、座っている男性は此方に気付かずずっと崖の下の長年誰も立ち入っていないただ広いだけの森とそこから空へと繋がる境目をぼんやりと眺めていた。「あの、すいません。ここは何処です
契約恋人㉑〘一応END〙どうすればいい?メヒは焦り気味に部屋をウロウロと歩き出し、スマホを手にし電話を掛けようとしたが再び下ろした。こうなったら少し前に別居している母親に頼むしかしないと考えたが、彼女は既にこの国にはいず何処に行ったのかもわからなくなっていた。「貴女もこの家にいると危険よ?私にはもう手に追えないわ」そう言い出て行った母親をその時は内心嘲笑っていた。でもこんな事になるなら私も出れば良かった、まさかタン家とチェ家が何の繋がりも無かったなんて知らなかった。だから父親は会社の
契約恋人⑳ソウル市にあるウンスのマンションに着いたのは、高速道路の渋滞もあり結局夜になっていた。「此処でいい」「わかった」マンションの近くにある駐車場に車を停め、ヨンがウンスの鞄を出し渡すとありがとうとウンスはそれを受け取った。「秘書の方にいきなり地元に連れて行くって言われて、慌てて用意したし、家もそのまま放置しているのもあるのよね」「すまなかった」「いいわよ、もう過ぎた事なんだから」そういえばとウンスはヨンをちらりと見上げ、「貴方今からまた帰るの?」「いや、ソウル市内にある
※こちらの話はあくまでも“契約恋人”のウンス、ヨン、世界設定だと思って下さいませね。契約恋人⑲叔母はいず、だが先程会議室にいた上層部の面々が再び集まり、その中心にヨンは椅子に座り黙っていた。「何ですか?まるで尋問の様ですが?」「そういう訳ではありませんが・・・」「我々はただ正直なチェ氏の言葉が聞きたいだけです」上層部の中でも比較的若い役員のイ氏がヨンの鋭い眼差しに圧され戸惑うと、すかさず隣りに座る古株の役員が声を出した。彼もヨンの父親と知り合いで、タン氏の様に企んではいないが考えが一
契約恋人⑱「こんな広い部屋を1人で使っているの?」「元は両親が使っていた部屋で、1階上に上がったので空いただけなんだ」そもそもヨンが人事部や他の部署にデスクを置くと皆緊張するのか黙ってしまうという。「貴方が無愛想にしているから不機嫌だと思って声を掛け難くなるんじゃないかしら?」「多分、それだと思う。だから移った」「そこは昔と変わらないのねぇ」笑いながら言うウンスを眉を下げてヨンは見ていたが、インスタントコーヒーしか無いがとそれをテーブルに
契約恋人⑰結局ウンスが予約した部屋は使われる事は無く、チェックアウトする際はヨンが2つのキーをフロントに返した。「ありがとう」「あ、ありがとうごさいました」キーを返して来たヨンにフロントスタッフは焦りながら受け取り、支払いは2部屋ともヨンが払うと言う事に正面の2人をスタッフ達は伺ってしまう。何しろ彼の片手はずっと女性の手を握り締めているのだ。「まだ時間があるなら少し寄りたい場所があるんだけど」「今日の夜までに帰れればいいから」「なら、大丈夫そうだね」そんな会話をしながら2人は去
※こちらも他とはクロスしないお話です。契約恋人⑮あの怒りは一体どこから薄まっていたのか?はたして本当はチェヨンに対してあの時程の憎しみは残っていたのか?俯く自分に覆い被さり全体重を乗せていないにしても、それでも背中に掛かる硬い筋肉と重さを感じながらウンスはそう考えていた。本来の彼は自分が記憶していた不器用な少年そのままで、彼が悪人で無い事をわかってしまうとふつふつとあった怒りは急速に小さくなっていく。正直な所、自分ではもうこの感情をどう扱って良いかわからなくなっていた。不安、行き場
※こちらの話はあくまでも“契約恋人”のウンス、ヨン、世界設定だと思って下さいませね。契約恋人⑭――・・・家具設置は反対だけど、デザインは殆ど同じ色合いなのね。ドアを開けたヨンに連れられ中に入ったウンスはそんな事に気を取られ、キョロキョロと部屋内を見渡していると前を歩くヨンが振り返った。「飲み物を出すから、そこのソファーに・・・」しかし、言葉を途中で切りヨンは下を見たまま動かなくなり、固まったヨンを不思議に感じウンスも視線を落としたが――。「あ」と小さい声が出た。ヨンが廊下からずっ
※こちらの話はあくまでも“契約恋人”のウンス、ヨン、世界設定だと思って下さいませね。契約恋人⑬「多分あの女性、チェヨンの事が好きだったのだと思うけど・・・。数年間待つって中々大変だと思うし」ウンスの言葉に何故かヨンは黙ってしまい、横にいるウンスを見つめている。そして、その問いに答えたのは彼では無く叔母だった。「ひたすらヨンだけを待っていた・・・という訳ではなさそうでしたが」「・・・あ、そうなんですか?」「アン・ジェウクがメヒに従っていたのも、過去に2人の間に何かあった様ですから」
※こちらの話はあくまでも“契約恋人”のウンス、ヨン、世界設定だと思って下さいませね。・・・長いから、寝る前にでもどうぞ(^ω^)_凵契約恋人⑫「そんな・・・族譜にはまだ第一夫人の名があった筈だ」ヨンの父親が確認したと返すとヨンは再び確かにと頷いた。「実際どちらが本物なのか?と俺も困惑しました。ですので、タン家の親族であるタン・トンウン氏に聞きに行ったんです。そうしたら――」ヨンが話す内容は、2つの巻物を持ち釜山市に住んでいるタン・トンウン氏の元に向かうといきなり謝罪を受け彼が話し出し
契約恋人⑪タン家の2人が約束したホテルのレストランに向かうと、チェ家のヨンの両親だけがテーブルに座って待っていた。「後からヨン氏が来るのかもしれないな」「・・・そうかしら?」自分に断って来たヨンが食事会などしたいと思う筈が無い。来るとすればそれは婚約破棄の為で、もしかしたらあの女性も連れて来るのではないか?とまでメヒは考えていた。テーブルの傍に行くと両親は椅子から立ち上がり、メヒの父親と握手をし、にこやかに話始める。「やぁ、久しぶりだね!」「数ヶ月前にアメリカでお会いしましたが、
※こちらも短編という、他とはクロスしないお話です。・・・もうさ、〖短編〗取りますよ笑《下に追記有り》0725契約恋人⑩『チェヨン、もしかしてあの話会社で広がり始めたんじゃないの?』「・・・え?」出勤し何時もの如くウンスからのメールを待っていると、何故か電話が掛かって来て喜んだが彼女からの第一声に反応が出来ず固まってしまった。『この間から微妙に男性客も増えて・・・手術では無く何かを買って行くだけだから、尋ねたりはしないけど―』「そっちに―」『来なくていい。とりあえず、聞いておきた
※こちらも短編という、他とはクロスしないお話です。契約恋人⑨レストランに入り2人が店内を見渡すと、窓側のテーブル席にヨンの両親が座っていた。「俺も2人に会うのは2年ぶりなんだが・・・」「貴方、祝日に帰らなかったの?」「親のどちらかが必ず急用が入って2人が揃わなかった」「ご両親が役員なのも大変ね・・・」話しながら席に近付くと父親が2人に気付き、一緒に来たウンスを不思議そうに見つめていたが、あ、と口を開け、「君は・・・、もしかして大邱市のユさんのお嬢さんかい?」「はい、お久しぶりで
※こちらも短編という、他とはクロスしないお話です。契約恋人⑧チェ製薬会社の方が来ていると受付からの呼び出しにチェヨンか?と少なからず警戒して行くとそこには知らない男性が立っていた。「チェ製薬会社のアンと申します」「はい」「こちらにチェ氏から幾つかの商品が納品されているとの報告がありまして」――・・・あ、まさか。業者間での割引適用より少しだけだが更に安くして貰っている事は知っていた。それはチェヨンの特権を使うので構わないと言ってはいたのだが、やはりその報告は会社には伝わる筈で何故こ