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「俺の場合はとある時空扉開閉…肩苦しいからタイムガードって言ってんだけど、そこから来たんだ。ちょっと探し物があってね。で、潤君の想い人は俺とは違って正式な段階を踏んでこっちに来たんだと思う」「どういう事?ニノは正式にここに来てないの?」「うん。早く言えば不法侵入だね」あっけらかんというニノ。だけど、そうなると次々と疑問が出てくる。だってここに数年住んでて学校に通っててさ。戸籍とかどうなってんだろ?「それはどうとでもなるの。俺のことより潤君の方でしょ?結局、その潤君の想い人が…」「
校門へ向かって歩いてる翔君の姿が見えた。ホームルームから1時間以上過ぎているが、今まで何をしてたのだろうか。隣には見慣れない奴がいた。翔君と同じクラスではない事は確かだが、それにしては親しげでなんとなく面白くない。こっちを向かせたくてじっと翔君の背中を見た。案の定、すぐに気がつき振り向いた彼に手を振ると、翔君は苦々しそうな顔を隠しもしなかった。「…潤君、やりすぎじゃない?」「何が?」「そんな事してると翔さん逃げちゃうよ。しつこいと嫌われんじゃない?」「翔君が俺を嫌うわけないだろ
こんなに身近にいたとは。全く気がつかなかった。ニノとは仲はいい方だと思う。よく話すし、外で会って2人で飲んだりもしてたし、俺の部屋に来たこともある。一度『ニノの家で飲もう』と言ったことがある。だが、なんとなくはぐらかされてしまい、それからは行きたいとは言いださなかった。白い壁にテレビや冷蔵庫なのどの最低限の家電製品や家具。床はゲームのせいだろうか配線がごちゃごちゃとしている。部屋の飾り付けはほぼしてなくて、どこか冷たく無機質に感じるのはやはりあちらの世界の住人だということが関係し
ハーフムーンhalfmoon,…ですか。半月は上弦の月。いや、ハーフムーンだしやっぱ半月か。そのまんまだよな。むしろ、それ以外の意味あんのかな?あの時の松本の言葉には適当に言っただけかもしれない。だけど、何か妙に引っかかる。…月ね。『あなたは月と…を…まで直視してはダメ』と誰かに言われてたような気がする。今思い出したくらいだから、全く見てないかといえばそんなこともない。だからといって夜空を見上げるほどロマンティックでもないが。誰に言われたのだろうか?月ともう一つはなん
もう1つの手帳。その存在はこの後すぐ分かることになる。ガタン風が少し強くなったせいか、翔君のカバンが机から落ちた。「あーあ、ファスナー開けっぱなしにしてるから」とは言っても中身はそんなに多くない。飲み物を買うために小銭を抜き取った後の財布とボールペンと手帳くらいなものだ。「この手帳から始まったんだよな…」眺めてるとあることに気づく。これ、あの手帳ではない。似てるけど少し小さいし、何より色が紫だ。「2つ持ってるってことか」でもなんの為?翔君はスケジュールはスマホで管理して
「で?それからはなんか言われたの?」大野君の話はいつも突然だ。試験勉強の為黙々とペンを走らせていたはずなのに、いきなり前の話に戻る。「いや、さすがに電車の中ではなかったけど」「翔ちゃんの家の近くの駅からここまでそんなにかかんねえもんな」乗車時間は約10分。その間、確かに何も言われなかった。だが密着度が凄くて、何度も胸を押した。そんなに混んでもない電車の中、男2人がくっついてたら変だろう?最終的には諦めて窓の方を向き、松本に背を向ける格好を選んだ。そうなると、ヤツは今度は背中を
「そりゃないわあ。そんなんで納得するわけないじゃん。男同士だぞ?」「関係ないよ。そんなの」「俺には関係あんの。とりあえずずっとじっと見るのやめて」ふふっと笑い、「それは無理」と首を横に振る。それは中学生の頃の反抗的な様子とは真逆のとろけそうな笑顔に唖然としてしまう。中学の時は何かというと突っかかってくる松本が面倒でスルーしていた。その行動が癪に触った彼は、更に輪をかけて暴言を俺に吐くという負の連鎖。中学3の一学期の部活はそんな思い出しかない。「お前さ、中学の頃俺に喧嘩ばっか売って
そうして迎えた29日目。別れの日の前日。早朝から大学へ行き、いつもの場所で準備をしていた。ガラッと扉が開き、なぜか照れたように翔君が入ってきた。「待たせたかな?」「いや、俺が早かっただけだから。、ちょうどいいよ」そこに座ってと促すと、こくりとうなづいて腰を下ろした。自分はキャンパスの前に立ち、翔君へ視線を移す。「俺がモデルなんていいの?」「翔君がいいんだよ。今から俺の29日間の全部の思いを込めて書くから」今日は休講日で、この奥の教室は誰も来ないように頼んでいる。翔君と二人、
「で?思い出せたの?」「そう言えば居たかな?どうかな?ってレベルくらいには」「それって思い出してねえじゃん。松本ってあの濃い顔のやつだろ?結構印象的とは思うけどね」「そうなんだよなあ。でも子どもの頃ってそんなに顔重視してなくない?」「まあね」大野君はこの話に特に興味もないのだろう、あくびをし始めている。彼は中学の同級生だが、高校では俺とは違うクラスだ。趣味嗜好も全く違うのに、何故だか妙にウマが合い、今でも付かず離れずの関係だ。この日もテスト出題の傾向を知りたいとお願いされ、放
『傷付けてしまう』と、いうのは俺がさっき言った言葉だ。『わかった』と『信じてるから大丈夫だよ』受話器の向こうで翔君は笑った。君の強さに、更に惹かれていくのがわかった。次の日の昼過ぎ。俺の部屋へ訪ねてきた翔君。少しだけ気まずそうな君は、遠慮がちにソファへ座った。「翔君、何おどおどしてんの?」「…今日はゆっくりできないんだ。早く戻らなきゃいけなくて。でもこれだけは直に伝えたくてさ」そう言って、コーヒーを入れようとする俺を制止した。自分の横を手でポンポンと叩きそこに座るように促
夢見が悪ったのか、その日は朝から気分が悪かった。朝飯を食べる気にもなれずに、ぼんやりと椅子に座って天助を眺めていた。体調が悪いからと休むこともできるが、二限目の授業はできれば受けたい。どうするかしばらく考えて、学校へ電話連絡をして遅れて登校する事を伝えた。玄関のドアを閉め、徒歩10分程度の駅に向かう途中、背後から視線が絡みついてきた。今日は朝からかよ…最近は自宅周辺に現れてる気がする。最寄りの駅でも近所のコンビニで見かけたことがある。ただ、俺は松本の自宅を知らない。近くに住んで
大野君から電話があったのはその日の深夜だった。翔君と同じ世界から来てこっちで生活をしてる人の経緯を少しだけ教えてもらい「うんうん」と返事をした。『…って事で、明日の夕方には話が聞けるようにしたからな』大野君は眠そうに欠伸をしているのが想像できた。「ありがとう!」『松潤…話を聞く価値はあると思う。だけどこれで何かが変わるかどうかなんて保証はないんだから、そんな期待すんなよ』「わかってるよ。それでもありがとう」受話器の向こうの大野君は『もう瞼が開かねえ』と電話を切った。期待するなと言
あいつとの出会いは3年ちょい前の中学の頃だった。部活の先輩後輩の間柄で、一つ下の松本は中二の終わりに来た転校生。松本を部活に誘った相葉とはそれなりに仲良かったが、あいつとは特に気があうわけではなかった。しばし俺に突っかかってくる松本を周りの奴らが止めるのは、一回二回ではなかった。出会いから…最初からそうだっただろうか?その辺の記憶は曖昧で、よく覚えてない。俺を嫌ってる割には、ずっとまとわりつく視線。友人からも『松本っていつもお前睨みつけてるな』と言われたことが多々あるので、これは気
頭上からひらひらと舞い落ちてきたもの。それが桜の花びらと気付くには少し時間がかかった。だってまだ2月の終わり。開花どころか、蕾すらついてない状態なのだ。手のひらで掴んだピンクのそれに、まさかと思って見上げるとやはりと言うかそこには何もなくて。それでもどこからか落ち続ける桜の花弁に胸騒ぎを覚えた。何かが変わってく。自分達の記憶が、それまで過ごした事が。そんな予感がした。潤が去った後、電車ではなくバスに乗った。行き先はどこでもいいと思って確かめもしなかったが、進むにつれ見覚えのあ
辺りを見渡すも、誰もいない。生徒会室は1階の奥にあり、窓からグラウンドが見渡せる場所に位置している為、外から見られてるのかとも思ったが、試験休みで部活をしてる生徒はいない。えっ?どうして?まさか?ぶるっと悪寒がしたが、特に霊感があるわけではない。気のせいだろうと自分に言い聞かせた。「他の生徒会委員は来ないの?」と聞くと、試験休みだからねと返された。「ニノは勉強は大丈夫なの?」「要点を押さえてるから大丈夫。試験に出る傾向とを予想すると結構いけるんだな、これが」彼は試験のヤマは殆ど
途中から走ったが、既に翔君の姿はなかった。そりゃそうか。あれから2時間以上は経ってるのもな。店の外からさっきまで2人で座ってた場所を眺めた。あの時は絶望しかなかったが、だけど大野君の話を聞いて少しだけ変わった。彼の知り合いに話を聞けば、もしかして何かが変わるんじゃないない。ダメかもしれない可能性の方が高いのは間違いない。だが、ほんの僅かに見えた光に少しだけ期待してしまう。翔君は俺の未来を知っている。だけどそれは自分といる俺のことのみだ。、千里眼を持ってるわけではないだろうし、
俺たちは二人でひとつだ。なのにいつまで経っても完全体になれない二人。どうやったら、いつになったらそうなれるの?昔はずっと一緒だった。どこでも二人で一緒で、だからいつかその日が来ると思ってた。だが今では会話どころか、目を合わせることすらない。彼はこの状態を何も感じないのだろうか。授業と簡単なホームルームを終え、帰りの準備をする。受験を控えた今、帰りにどこか行こうかなんて話してる奴らはいない。中途半端な進学校のせいか、今頃になって焦り勉強漬けの日々を送ってる奴らが多いのだ。「櫻
潤を追いかけることはしなかった。なぜなら自分は、潤にとってこの先の事を既に体験してるからだ。ふっとため息をつく。ここから立ち上がることも出来ずに、テーブルに置いたままのカップを中身を眺めていた。未来を知って、過去の遡る。辛いことなんてわかってても、予定通りに行動する。それには理由があるからだ。潤には話してないが、実はここタイム旅行をしないという選択肢もあった。未来を選ぶことができる。だがそれは潤とは今後出会えない、彼から俺の記憶を全て変えることを意味していた。こっちの世界より
夏のコンビニは涼しくていい。ガンガンに冷房に冷やされた店内が、汗をあっという間に消し去ってくれるから。今日は花火大会。昼の熱さがまだまだ残る夕方に、待ち人はまだ誰も来ていない。メールを見ると『少し遅れる』と翔ちゃんから届いていた。翔ちゃんに恋人ができたことを知ったのは、ついこの前のこと。カズがこの世の終わりみたいな顔をして、俺の家に来た時には驚いたけれど、理由を知れば納得した。それにしても松本さんはすごい。あの、超のつく鈍感な翔ちゃんと恋人になったんだし、超のつくブラコンのカズを
それってどういう事?大野君は1つ年上で、出会った時からどこか飄々としていた。もしかしたら?じっと眺めてると、苦笑いをされる。「…言っとくけど俺じゃないよ。あっち側から来た子を知ってるってだけ。ただその子の意思もあるから詳しいことは言えないけど。了解取ったら松潤にも話すよ」「翔君以外もいるんだ!」「そりゃいるだろ。翔君だけが特殊能力持ってるってなら話は別だけど。…でもみんながみんなこっちの世界に来れるって訳じゃないみたいだよ。極一部の人だけ」「そうなんだ…」「でも、まさか松潤が一目
軍曹を見送ったその夜。食堂で一人、弔いの酒を飲んでいる翔一の姿が在った。「……上官より先に逝くとは何事だ!私よりお前の方が、余程人望があっただろうが!」叩きつけるように言い、小さなグラスに入れた酒を煽ると、酒の触れた喉から胃にかけて、燃えるように熱くなって行く。何度か咳き込み、込み上げた物を手のひらに吐き出すと真っ赤な血塊だった。最近息苦しさを感じることが多くなった。だが、まだ死ぬ訳には行かない。血液を洗い流して、手を拭いていた所に、フラリと松本潤ノ介がやって来た。「珍しいですね。お
俺の目の前には正座をしてる兄と、仏頂面でそっぽを向いてるヤツか各々1名。2人を見下ろしながら、これからどうしてやろうかと俺は考える。どうしてやるも何も、決まってはいるが。とりあえず松本は死刑だ!扇風機が頼りなく回転する部屋の中には、それでもどこかヒヤリとした冷気があった。しかしそれは、この2人にとっては心地いいものではないはずだ。夏真っ盛りなはずなのに、今この部屋だけはクーラーを入れるほどの暑さなんか感じない。まさか、地球にこんなにやさしい省電力対策があったとは。「なあ…カズ
「…辛いかもしれないけど、それを上回るくらい好きなんだろ?」「好きだから余計に辛いんだよ。翔君の話が本当なら俺達に残された時間はあと10日。どうやって過ごしていけばいいんだよ。好きになればなるほど辛いなら、これ以上好きになりたくない」あまり大きくない駅のホームから見える風景は、初めて翔君を見つけた日を思い出させる。そんなに前でもないのに、すごく前に感じられた。近くの自販機でコーヒーを買ってきた大野君は俺にも入っと言って手渡してきた。手の中に治る小さな缶の液体の暖かさが伝わってきて、心だ
家に帰る道を松本と二人で並んで歩く。日はだいぶ西に傾いて、二人分の影が目の前に長く伸びていた。松本は特に何を言うまでもなく、俺の気分が落ち着くまでずっと隣にいた。ふと自分の傍らを見ると、相葉家のティッシュが山を作っていて、それを見て我にかえった。そんな俺を見計らったように「帰るぞ」と促され、玄関を出るとそこには相葉と大野の姿があった。なんとなく予想はしていたので文句は言わないが、その代わり「カズ、月曜日は覚悟しといてよ」とにんまり笑った相葉と、いつもはぼーっとしてるくせに真剣そのもの
◆「翔君と初めて喋ったのは、入学して一ヶ月経った頃だ」放課後グラウンドに忘れ物を取りに来た櫻井と、野球部を眺めてた松本。櫻井の探し物は、松本のすぐ側の木の枝に引っかかっていた。それを松本がみつけ、櫻井に渡した。ただ、それだけ。出逢ったのは偶然。翔君はそう思ってるはず。でも違う。俺はずっと前から翔君を知っていたんだ。入学式で挨拶をする彼を見て、時が止まったような気がした。それからずっとずっと気になり、目が離せなくなった。翔君が男とか、そんなのはまるで関係なかった。…今思
結局、追いかけては来ない。スマホを見ても着信はない。見てないと思いつつも、立つ瞬間にちらっと確認した翔君の表情は特に悲しい顔はしてなかった。俺から別れを切り出すことのそれすらも知ってるからだろう。昨日の出来事を知らず、逆に明日の記憶しか知らない翔君。手帳という名の台本で何もかも演じてるように見えて堪らない気持ちになる。すぐに帰る気にもなれず駅のベンチに座り呆けていた。「あれ?松潤どうしたの?」「大野君…」ふにゃとした彼の笑顔を見てると、止まっと思っていた涙腺が崩壊した。「えっ
「なんで、あんたがここに?」「探したからに決まってんだろ」さも当然のことのようにしれっと言ってのける松本は、俺が呆然としている間に隣に腰かけてきた。相葉は?言葉に出してもいないのに、俺の聞きたいことを感じ取ったのか、視線をドアに向けながら話す。「あいつならお前の名前をだしたら、『お任せします』って言って出て行ったぜ」相葉め…ただじゃおかねぇ。本当にこういう時に限って、察しがいいのだから。大野だとばかり思っていたから、完全に油断していた。相葉も相葉だ。普通初対面
結局、そのまま二人で過ごすことを選んだ。運命に逆らって未来が変わるのが怖かったのもあるが、何より翔くんと過ごせなるのが嫌だからだ。ここで運命を変えてしまうと、例えば俺の5年後と翔くんの5年前も会えなくなる可能性がある。そうなると未来も全部変わってしまうのかもしれない。20歳の僕らが恋人同士として過ごせるのはあと半月もない。一緒に過ごしていても楽しさと辛さが胸の中を交差してく。俺は思い出を重ねていくが、時間軸が逆な翔くんはメモに残ってことを演じているだけなのだから。話し合いから3
携帯も財布も持たないまま家を飛び出した。どこへも行けず、公園のブランコを漕いでいた。目の前ではちっちゃな子供達が遊んでいて、なんとも場違いで居づらい。どんどん増えてく子供達を目の前に、このままずっとここにいるわけもないと近所の相葉の家を訪ねた。俺の顔を見た相葉は一瞬驚いたような顔をしたものの、何も言わず迎え入れてくれた。肝心なところで空気を読み間違えないのが、この人のいいとこだ。それからずっと俺は、ひとりでゲームに没頭している。「ねーカズ、そろそろ休憩挟んだら?」「……」
「実は俺も大人の潤に助けられたんだ。お祭りの日に迷子になったって言っただろ?あれって35歳の潤なんだよ。俺、未来の潤に会ってるんだ」「じゃあ、俺たちって…」「5歳の頃、お互いの35歳の俺らが交互に助け合ってんの」運命なのかなんなのか。神様は俺たちをどうしたいのだろうか。翔くんは俺の世界に来たら時間軸が逆方向に動く。ってことは、今接してる翔くんは過去に向かっているって事で…混乱して頭が働かない。「俺のこと嫌になった?」小刻みに震える俺の手にそっと手を添えてきた翔くんの顔色は、至っ