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末摘花③【光源氏18歳:末摘花の容貌】*はじめから読む場合はこちら*「末摘花」第3章はこちら・・・・・・・・・・・・・・・二条の院におはしたれば、紫の君、いともうつくしき片生ひにて、「紅はかうなつかしきもありけり」と見ゆるに、無紋の桜の細長、なよらかに着なして、何心もなくてものしたまふさま、いみじうらうたし。古代の祖母君の御なごりにて、歯黒めもまだしかりけるを、ひきつくろはせたまへれば、眉のけざやかになりたるも、うつくしうきよらなり。「心から、などか、かう憂き世を見あつか
末摘花③【光源氏18歳:末摘花の容貌】*はじめから読む場合はこちら*「末摘花」第2章はこちら・・・・・・・・・・・・・・・二条の院におはして、うち臥したまひても、「なほ思ふにかなひがたき世にこそ」と、思しつづけて、軽らかならぬ人の御ほどを、心苦しとぞ思しける。思ひ乱れておはするに、頭中将おはして、「こよなき御朝寝かな。ゆゑあらむかしとこそ、思ひたまへらるれ」と言へば、起き上がりたまひて、「心やすき独り寝の床にて、ゆるびにけりや。内裏よりか」とのたまへば、「しか。
【桐壺】(9首)■限りとて別るる道の悲しきにいかまほしきは命なりけり■宮城野の露吹きむすぶ風の音に小萩がもとを思ひこそやれ■鈴虫の声の限りを尽くしても長き夜あかずふる涙かな■いとどしく虫の音しげき浅茅生に露置き添ふる雲の上人■荒き風ふせぎし蔭の枯れしより小萩がうへぞ静心なき■尋ねゆく幻もがなつてにても魂のありかをそこと知るべく■雲の上も涙に暮るる秋の月いかで澄むらむ浅茅生の宿■いときなき初元結いに長き世を契る心は結びこめつや■結びつる心
末摘花②【光源氏18歳:末摘花との逢瀬】*はじめから読む場合はこちら*「末摘花」第1章はこちら・・・・・・・・・・・・・・・秋のころほひ、静かに思しつづけて、かの砧の音も耳につきて聞きにくかりしさへ、恋しう思し出でらるるままに、常陸宮にはしばしば聞こえたまへど、なほおぼつかなうのみあれば、世づかず、心やましう、負けては止まじの御心さへ添ひて、命婦を責めたまふ。「いかなるやうぞ。いとかかる事こそ、まだ知らね」と、いとものしと思ひてのたまへば、いとほしと思ひて、「もて離
末摘花①【光源氏18歳:新恋人切望】*はじめから読む場合はこちら*「若紫」第5章はこちら・・・・・・・・・・・・・・・思へどもなほ飽かざりし夕顔の露に後れし心地を、年月経れど、思し忘れず、ここもかしこも、うちとけぬ限りの、気色ばみ心深きかたの御いどましさに、け近くうちとけたりしあはれに、似るものなう恋しく思ほえたまふ。いかで、ことことしきおぼえはなく、いとらうたげならむ人の、つつましきことなからむ、見つけてしがなと、こりずまに思しわたれば、すこしゆゑづきて聞こゆるわ
若紫⑤【光源氏18歳:若紫を盗み出す】*はじめから読む場合はこちら*「若紫」第4章はこちら・・・・・・・・・・・・・・・かの山寺の人は、よろしくなりて出でたまひにけり。京の住処尋ねて、時々の御消息などあり。同じさまにのみあるも道理なるうちに、この月ごろは、ありしにまさる物思ひに、異事なくて過ぎゆく。秋の末つ方、いともの心細くて嘆きたまふ。月のをかしき夜、忍びたる所に、からうして思ひ立ちたまへるを、時雨めいてうちそそく。おはする所は、六条京極わたりにて、内裏よりなれば、すこしほど
若紫④【光源氏18歳:藤壺宮の懐妊】*はじめから読む場合はこちら*「若紫」第3章はこちら・・・・・・・・・・・・・・・藤壺の宮、悩みたまふことありて、まかでたまへり。主上の、おぼつかながり、嘆ききこえたまふ御気色も、いといとほしう見たてまつりながら、かかる折だにと、心もあくがれ惑ひて、何処にも何処にも、まうでたまはず、内裏にても里にても、昼はつれづれと眺め暮らして、暮るれば、王命婦を責め歩きたまふ。いかがはたばかりけむ、いとわりなくて、見たてまつるほどさへ、現とはおぼえぬぞ、わ
若紫③【光源氏18歳:若紫への思慕】*はじめから読む場合はこちら*「若紫」第2章はこちら『『源氏物語』第五帖「若紫」~第2章~』若紫①【北山へ加持祈祷】*これより以前の「夕顔」第9章はこちら*はじめから読む場合はこちら*「若紫」第1章はこちら・・・・・・・・・・・・・・・「あはれなる人…ameblo.jp・・・・・・・・・・・・・・・明けゆく空は、いといたう霞みて、山の鳥どもそこはかとなうさへづりあひたり。名も知らぬ木草の花どもも、いろいろに散りまじり、錦を敷けると見ゆるに、
「…いかにかまへて、ただ心やすく迎へ取りて、明け暮れの慰めに見む。兵部卿宮は、いとあてになまめいたまへれど、匂ひやかになどもあらぬを、…」ーーーーーーーーーーーーーーー【源氏物語イラスト訳】大学入試頻出の『源氏物語』も現代語訳とイラストを組み合わせてビジュアル的に理解すれば、速読力が身につきます。「…いかにかまへて、ただ心やすく迎へ取りて、訳)「…何とかしてきっと、ただただ気軽に自分のもとに迎え入れて、明け暮れの慰めに見む。訳)毎日の慰めとして一緒に暮ら
「…よしや、命だに」とて、夜の御座に入りたまひぬ。女君、ふとも入りたまはず。ーーーーーーーーーーーーーーー【源氏物語イラスト訳】古文の『源氏物語』は、読解が非常に難解です。イラスト訳では、現代語訳とイラストの組み合わせでイメージをもって、速読学習できます。「…よしや、命だに」とて、訳)「…仕方ない、せめて『命』だけでも…」と言って、夜の御座に入りたまひぬ。訳)夜のご寝所に入りなさった。女君、ふとも入りたまはず。訳)葵の上は、すぐにも入りなさら
女君、例の、はひ隠れて、とみにも出でたまはぬを、大臣、切に聞こえたまひて、からうして渡りたまへりーーーーーーーーーーーーーーー【源氏物語イラスト訳】源氏物語イラスト訳では現代語訳とイラストをあわせて読解していくことにより大学受験の古文速読トレーニングとなります。女君、例の、はひ隠れて、訳)女君は、いつものように、物陰に隠れて、とみにも出でたまはぬを、訳)すぐには出ていらっしゃらないのを、大臣、切に聞こえたまひて、訳)父左大臣が、ひたす
我が御車に乗せたてまつりたまうて、自らは引き入りて、たてまつれり。もてかしづききこえたまへる御心ばへのあはれなるをぞ、さすがに心苦しく思しける。ーーーーーーーーーーーーーーー【源氏物語イラスト訳】我が御車に乗せたてまつりたまうて、訳)自分のお車にお乗せ申し上げなさって、自らは引き入りて、たてまつれり。訳)自分は控えめにして(下に)お乗りになった。もてかしづききこえたまへる御心ばへのあはれなるをぞ、訳)大切にお世話申し上げなさっている左大臣のご配慮が
「…のどやかに一、二日うち休みたまへ」とて、「やがて、御送り仕うまつらむ」と申したまへば、さしも思さねど、引かされてまかでたまふ。ーーーーーーーーーーーーーーー【源氏物語イラスト訳】「…のどやかに一、二日うち休みたまへ」とて、訳)「…のんびりと、一、二日、少しお休みなされ」と言って、「やがて、御送り仕うまつらむ」と申したまへば、訳)「このまま、お送り申し上げよう」と申し上げなさるので、さしも思さねど、訳)そうしたいともお思いにならないけれど、
大殿、参りあひたまひて、「御迎へにもと、思ひたまへつれど、忍びたる御歩きに、いかがと思ひ憚りてなむ。…」ーーーーーーーーーーーーーーー【源氏物語イラスト訳】大殿、参りあひたまひて、訳)左大臣殿が、参りあわせなさって、「御迎へにもと、思ひたまへつれど訳)「お迎えにもと、思っておりましたが、忍びたる御歩きに、いかがと思ひ憚りてなむ。訳)人目を避けたご外出のため、どうしたものだろうかと心ひそかに気兼ねして…。【古文】大殿、参りあひたまひて、「御迎
聖の尊かりけることなど、問はせたまふ。詳しく奏したまへば、「阿闍梨などにもなるべき者にこそあなれ。行ひの労は積もりて、朝廷にしろしめされざりけること」と、労たがりのたまはせけり。ーーーーーーーーーーーーーーー【源氏物語イラスト訳】聖の尊かりけることなど、問はせたまふ。訳)北山の聖が霊験あらたかであったことなどを、お尋ねあそばす。詳しく奏したまへば、訳)詳しく奏上なさると、「阿闍梨などにもなるべき者にこそあなれ。訳)「阿闍梨などにもなってもよい人であ
君は、まづ内裏に参りたまひて、日ごろの御物語など聞こえたまふ。「いといたう衰へにけり」とて、ゆゆしと思し召したり。ーーーーーーーーーーーーーーー【源氏物語イラスト訳】君は、まづ内裏に参りたまひて、訳)源氏の君は、まず宮中に参内なさって、日ごろの御物語など聞こえたまふ。訳)ここ数日来のお話などを申し上げなさる。「いといたう衰へにけり」とて、ゆゆしと思し召したり。訳)「とてもひどくやつれてしまったなぁ」と言って、とんでもないこととお思いになっている。
うちうなづきて、「いとようありなむ」と思したり。雛遊びにも、絵描いたまふにも、「源氏の君」と作り出でて、きよらなる衣着せ、かしづきたまふ。ーーーーーーーーーーーーーーー【源氏物語イラスト訳】うちうなづきて、「いとようありなむ」と思したり。訳)こっくりと頷いて、「きっととてもすてきでしょうね」とお思いになっている。雛遊びにも、絵描いたまふにも、「源氏の君」と作り出でて、訳)お人形遊びにも、絵を描きなさるにも、「源氏の君」と作り出して、きよらなる衣着せ
この若君、幼な心地に、「めでたき人かな」と見たまひて、「宮の御ありさまよりも、まさりたまへるかな」などのたまふ。「さらば、かの人の御子になりて、おはしませよ」と聞こゆれば、ーーーーーーーーーーーーーーー【源氏物語イラスト訳】この若君、幼な心地に、「めでたき人かな」と見たまひて、訳)この若君(若紫)は、子供心に、「素晴らしい人だなぁ」とご覧になって、「宮の御ありさまよりも、まさりたまへるかな」などのたまふ。訳)「父宮のお姿よりも、まさっていらっしゃるな
「この世のものともおぼえたまはず」と聞こえあへり。僧都も、「あはれ、何の契りにて、かかる御さまながら、いとむつかしき日の本の末の世に生まれたまへらむと見るに、いとなむ悲しき」とて、目おしのごひたまふ。ーーーーーーーーーーーーーーー【源氏物語イラスト訳】「この世のものともおぼえたまはず」と聞こえあへり。訳)「この世の人とも思われなさらない」とお噂申し上げ合っていた。僧都も、「あはれ、何の契りにて、かかる御さまながら、訳)僧都も、「ああ、どのような因縁で、このよう
飽かず口惜しと、言ふかひなき法師、童べも、涙を落としあへり。まして、内には、年老いたる尼君たちなど、まださらにかかる人の御ありさまを見ざりつれば、ーーーーーーーーーーーーーーー【源氏物語イラスト訳】飽かず口惜しと、言ふかひなき法師、訳)満ち足りなく残念だと、取るに足りない法師や、童べも、涙を落としあへり。訳)子供の召使いも、涙を落とし合っていた。まして、内には、年老いたる尼君たちなど、訳)それにもまして、室内では、年老いた尼君たちなどが、
「乱り心地、いと堪へがたきものを」と聞こえたまへど、け憎からずかき鳴らして、皆立ちたまひぬ。ーーーーーーーーーーーーーーー【源氏物語イラスト訳】「乱り心地、いと堪へがたきものを」と聞こえたまへど、訳)「気分がすぐれず、とてもつらいのになぁ」と申し上げなさるけれど、け憎からずかき鳴らして、訳)無愛想にはならない程度に琴を掻き鳴らして、皆立ちたまひぬ。訳)一行は出立なさった。【古文】「乱り心地、いと堪へがたきものを」と聞こえたまへど、け憎か
「これ、ただ御手一つあそばして、同じうは、山の鳥もおどろかしはべらむ」と切に聞こえたまへば、ーーーーーーーーーーーーーーー【源氏物語イラスト訳】「これ、ただ御手一つあそばして、訳)「これで、ちょっとご演奏をひとつお弾きになって、同じうは、山の鳥もおどろかしはべらむ」訳)同じことなら、山鳥をも驚かしてやりましょう」と切に聞こえたまへば、訳)と一途に申し上げなさるので、【古文】「これ、ただ御手一つあそばして、同じうは、山の鳥もおどろかしはべらむ」と
例の、篳篥吹く随身、笙の笛持たせたる好き者などあり。僧都、琴をみづから持て参りて、ーーーーーーーーーーーーーーー【源氏物語イラスト訳】例の、篳篥吹く随身、訳)いつものように、篳篥を吹く随身や、笙の笛持たせたる好き者などあり。訳)笙の笛を持たせている風流人などもいる。僧都、琴をみづから持て参りて、訳)僧都は、七絃琴を自分で持って参って、【古文】例の、篳篥吹く随身、笙の笛持たせたる好き者などあり。僧都、琴をみづから持て参りて、【訳】
弁の君、扇、はかなううち鳴らして、「豊浦の寺の、西なるや」と歌ふ。人よりは異なる君達を、源氏の君、いといたううち悩みて、岩に寄りゐたまへるは、たぐひなくゆゆしき御ありさまにぞ、何ごとにも目移るまじかりける。例の、篳篥吹く随身、笙の笛持たせたる好き者などあり。ーーーーーーーーーーーーーーー【源氏物語イラスト訳】人よりは異なる君達を、訳)普通の人よりは格別にすばらしい貴公子に対し、源氏の君、いといたううち悩みて、岩に寄りゐたまへるは、訳)源氏の君が、とてもひどく苦しそ
岩隠れの苔の上に並みゐて、土器参る。落ち来る水のさまなど、ゆゑある滝のもとなり。頭中将、懐なりける笛取り出でて、吹きすましたり。弁の君、扇、はかなううち鳴らして、「豊浦の寺の、西なるや」と歌ふ。ーーーーーーーーーーーーーーー【源氏物語イラスト訳】岩隠れの苔の上に並みゐて、土器参る。訳)岩陰の苔の上に並んで座って、酒杯を差し上げる。落ち来る水のさまなど、ゆゑある滝のもとなり。訳)落ちて来る水の様子など、風情のある滝のそばである。頭中将、懐なりける笛
「いといみじき花の蔭に、しばしもやすらはず、立ち帰りはべらむは、飽かぬわざかな」とのたまふ。ーーーーーーーーーーーーーーー【源氏物語イラスト訳】「いといみじき花の蔭に、しばしもやすらはず、訳)「とてもすばらしい桜の花の下に、しばしの間も足を止めず、立ち帰りはべらむは、訳)引き返しますとしたらそれは、飽かぬわざかな」とのたまふ。訳)もの足りないことだなぁ」とおっしゃる。【古文】「いといみじき花の蔭に、しばしもやすらはず、立ち帰りはべらむは
頭中将、左中弁、さらぬ君達も慕ひきこえて、「かうやうの御供は、仕うまつりはべらむ、と思ひたまふるを、あさましく、おくらせたまへること」と恨みきこえて、ーーーーーーーーーーーーーーー【源氏物語イラスト訳】頭中将、左中弁、さらぬ君達も慕ひきこえて、訳)頭中将、左中弁、それ以外のご子息もお慕い申し上げて、「かうやうの御供は、仕うまつりはべらむ、と思ひたまふるを、訳)「このようなお供には、お仕え申し上げましょう、と思っておりますのに、あさましく、おくらせたまへ
御車にたてまつるほど、大殿より、「いづちともなくて、おはしましにけること」とて、御迎への人びと、君達などあまた参りたまへり。ーーーーーーーーーーーーーーー【源氏物語イラスト訳】御車にたてまつるほど、訳)お車にお乗りになるころに、大殿より、「いづちともなくて、おはしましにけること」とて、訳)左大臣邸から、「どこへとも言わなくて、お出かけになってしまったことよ」と言って、御迎への人びと、君達などあまた参りたまへり。訳)お迎えの従者たち、ご子息たちなどがたく
御返し、「まことにや花のあたりは立ち憂きと霞むる空の気色をも見む」と、よしある手の、いとあてなるを、うち捨て書いたまへり。ーーーーーーーーーーーーーーー【源氏物語イラスト訳】御返し、「まことにや花のあたりは立ち憂きと訳)お返事、「本当だろうか。美しい花の付近は立ち去るのがつらい、と。霞むる空の気色をも見む」訳)霞んでいる空の様子、つまり若紫をかすめ取ろうとするあなたのご様子を見てみましょう」と、よしある手の、いとあてなるを、うち捨て書いたま
御消息、僧都のもとなる小さき童して、「夕まぐれほのかに花の色を見て今朝は霞の立ちぞわづらふ」ーーーーーーーーーーーーーーー【源氏物語イラスト訳】御消息、僧都のもとなる小さき童して、訳)お手紙は、僧都のもとにいる小さい子どもの召使いを使って、「夕まぐれほのかに花の色を見て訳)「(昨日の)夕暮れ時にかすかに美しい花の色を見て今朝は霞の立ちぞわづらふ」訳)霞が立つ今朝は、立ち去りがたい気がします」【古文】御消息、僧都のもとなる小さき