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翌日もその次も杏子は欠席した。「電話したのか?」橋口は、じれったくなり怒ったように優斗に訊くが「してないよ。だって、別れたんだから・・」相変わらず、優斗も意地を張っている。業を煮やした橋口は、帰りのホームルームになると、担任に杏子のことを訊いた。「ああ、北村さんですか?北村さんね、少し体調を崩したのでしばらく休むと連絡がありました」暢気な感じの担任の言い方に橋口はさらに腹が立った。「体調ってどうかしたんですか?本人から連絡があったんですか?」立て続けに訊く。
短劇「狸猫書生2」第6集<第6集>「友人のあいだには誠実さが重要だったんじゃないか?」「君だって…」言い争いになった時、突然ふたりの姿が幼い黄月の前から消えた。猫妖神君と陶然は夜の図書館に戻っていた。時刻は深夜の午前1時ちょうど、外では雷鳴が轟いている。尻餅をついた陶然は猫妖神君が差し出した手を払い、代わりに尋ね人のチラシを突き出した。「両親は健在だろう!?」「子供の頃の黄月が、なぜ大人のきみを知っている!?」見られてし
短劇「狸猫書生2」第5集<第5集>夜の図書館にいたはずの猫妖神君と陶然は、真っ昼間の道路に立っていた。前から少女たちの集団がやってくる。誰かのファンらしくコンテストがどうのと言っているが、ふたりにはさっぱり分からない。近くに雑誌を売る露店があった。雑誌の発行は2005年7月号となっている。タイムワープに成功したのだ。事態が把握できない陶然は猫妖神君に訊ねるが、彼は曖昧にして誤魔化した。「2005年なら、青山大学はもうあるな。行ってみな
優斗は、3年に進級した。文科系を選んだクラスはそのままの持ちあがりのため、メンバーはそっくりそのままであるが、教室だけは旧校舎の1階になった。担任の教師も変わらず、結局3年間同じ担任となり、まったく変わり映えがしない。3年生にもなれば、杏子の言うようにそろそろ本気で受験に備えなければならないかなと優斗も思うのであるが、一方では、あと1年で楽しい高校生活も終わってしまうのかと思うと級友たちとバカなことをしながらもっと遊びたいという気持ちもあった。杏子は、あれからどんな気持ちで
従来歴では年の瀬という時期に上限を超えてしまいました『智子@第444代目』https://ameblo.jp/kemeno53/entry-12923814038.htmlhttps://ameblo.jp/kemeno53/en…ameblo.jp『智子@第444代目さん雑談:インフェルノナパームの技術詳細と小説風の報告』智子@第444代目@UF_dynasty·12月26日雑談…ameblo.jp『時姫さんあのドローン攻撃は、トランプ氏
短劇「狸猫書生2」第4集<第4集>王浩之は20年前の2005年に失踪した。それなのに猫妖神君が陶然と再会したのは2025年だ。下山を始めた猫妖神君は肩に乗せた子猫に訊ねるが、当然ニャーニャーとしか鳴かない。思考に捕らわれていた彼は、突然背後から肩を掴まれて、とっさに相手を突き飛ばした。「なんでここにいるんだ!?」驚いたことに、相手は図書館で居眠りしていたはずの陶然だった。目が覚めて猫妖神君がいないと気付いた陶然は、スマホの追跡アプリで
夕陽が水平線に沈みかけると、辺りの暗さが加速する。優斗は、ジーンズの砂も掃わず昼と夜の狭間に立ち尽くしていた。杏子は、まだ座ったまま下を向いている。「ねえ、どうしたのさ」「なんで、別れたいの?」「やっぱり、俺じゃだめなの?俺じゃ、物足りない?」優斗は、突然の別れ話に混乱していた。立て続けに質問を杏子に浴びせる。「そうじゃない」やっと、顔をあげた杏子は涙目になっている。(え?泣いてるの?なんで?泣きたいのはこっちなんだけど)優斗は、さらに混乱してくる。「母がね
春休みが終る頃、優斗と杏子は鎌倉へ出かけた。3年の始業式の2日前の良く晴れた日だった。杏子が前から行きたいと言っていた場所である。二人は、東京駅から横須賀線に乗り、北鎌倉駅で降りた。そこから、いくつかの寺を巡って、鶴岡八幡宮まで歩く計画だ。駅を降りるとすぐ前に円覚寺がある。北側の斜面に広がる広大な敷地は、静かで穏やかな雰囲気があった。奥に行くほどゆるやかな斜面を登っていく。あじさい寺とも呼ばれる明月院は、まだその時期ではなかったが、丸窓から見える景観も絵画のように素敵だと杏
「〜ですよ」「〜でしたね」「〜しています」「〜いるのです」「〜はわかりません」「でも、〜」「うん、それでは、〜なのですね」「こうしてはどうでしょう」(2、3歳の娘と会話する小説風に)
短劇「狸猫書生2」第3集<第3集>「何をしている」驚いた猫妖神君は、そばにあった小さな茶碗を落として割ってしまった。「見たいなら、言ってくれればいい」「その…すごい骨とう品の数だな」「先祖から受け継いだだけだ」邸宅は広く、彼の両親は相当な金持ちなのだろう。猫妖神君は質問ついでに、絵の人物がそっくりだと話した。質問攻めでうんざりしていた陶然は、王浩之の姿をした猫妖神君と絵を見比べる。「…そうだな」「あ、こうすれば見栄えが良くなるよ
もうじき3学期も終わろうとしている。今年はどうやら優斗もスムースに進級できそうである。杏子との関係では、初キスができたことで精神的に余裕ができたものの、それ以上の進展はない。考えてみれば、キスのタイミングも杏子のモーションのおかげだし、そもそも付き合い始めたきっかけも奈良の室生寺で杏子が傘をさしかけてくれたことだった。これでは男として情けない。次の“段階”は、必ず自分がリードするんだと心に決めていた。一方、橋口も、やっと熱意が伝わって加奈子と付き合い始めていた。
短劇「狸猫書生2」第2集<第2集>王譯之は、陶然のための薬草を探していた。ここは千年前の清山書院の裏山である。崖の縁に生えているのを見つけた彼は、命がけで登っていく。王譯之の手が薬草を掴んだ。と直後、足を滑らせて落下した。「王兄!!」王譯之を捜しに来た陶然が駆け寄る。「…陶兄、この薬草があれば、きみは普通の人と同じように生きられる…」王譯之は薬草を手にしたまま息絶えた。「王兄、きみが生き返るなら、この玲瓏心で…!」短刀を握
ドラマ「狸猫書生2」第1集<第1集>快晴の空は眩しく、野山の緑がよく映える。山の崖からは青山市の町並みと大きな湖、そしてそれを囲む山々が一望できた。「ここが小説”狸猫書生”の舞台か…」小型の双眼鏡とデジカメを手に崖の上に立った青年は、目を細めて雄大な景色を眺めた。ふと気配を感じて、青年は振り返った。次の瞬間、何者かが彼の体を押す。悲鳴を上げた青年は崖から転落した。夜の山中で猫の鳴く声がする。黒いもやが崖の下にゆらゆらと
遊園地が楽し過ぎて、帰るのがいつもより遅くなってしまった。杏子の家は、門限が厳しいらしい。優斗は、杏子と一緒にその駅で降りて、杏子がバスに乗るまで見届けてあげようとした。駅前のバス停は、いつもよりかなり混んでいて、乗客の列が長く繋がっていた。何だろう。待っている人に訊けば、何かのトラブルのようでかなり遅れているとのことであった。「困ったな。どうしようか」優斗が思案気に眉を寄せると「優斗は帰っていいよ。大丈夫だから」杏子は、そう言って微笑むが無理しているのが優
優斗と杏子は、つきあい始めてからしばらくはほぼ毎日のように一緒に帰っていた。ある日のこと、杏子から毎日はやめようという提案があった。友だちとの関係も大切にしたいというのである。友だちとなら日中仲良くできるじゃないかと思ったが、ここでダダをこねては男がすたると表向きは快く承諾した。後から思えば杏子の言う通りだなと優斗も思えた。従来のように、男同士でふざけながら帰るのも面白い。時には寄り道をしたり、杏子とは行けない場所にいったり、それなりに楽しい。杏子もそれは同じで、徐々に二人で帰
3学期が始まった。外は寒いが、昼休みになればグラウンドで軽い運動をする者もいれば、部室にこもる者など様々だ。優斗は、2階の教室前にあるベランダに出て仲間といつものように談笑していた。すると、突然、階上で女子の歓声がした。思わず3階を見上げると、数人の女子が柵から脚を出して騒いでいたのである。スカートから太腿が露わになっている。え?と眼を疑いながらもその奥が見えないかと思わず凝視してしまう。そう思ったのは一瞬で、そのまま見ていると覗いていると思われるのですぐに目をそらした
ドラマ「似錦」第40集大結局後編<第40集大結局>後編互いに忙しい日々が続いた。姜似はまめに便りを寄越したが、余七というといつも”想你”(会いたい)の二文字だけを伝書鳩に託す。けれども姜似が教育のための書物が欲しいと書き送ってくると、余七は姜湛や龍旦を連れて街へ繰り出し、あちこちの書店で書物を買い漁って南烏へ送った。斉王が北方に赴任することになった。出発の前日、彼は賢妃に挨拶するため後宮を訪れた。「北辺と陵安は風土が違うか
引っ越しの途中のある日、主人が興奮しながら帰ってきました。主人「俺、キミのファンになった。キミ、スゴイよ」私「なんの話よ」主人「ちょっと時間空いたから、キミの作品読んでみた。あんな考え方する人に初めて会った」私「作品?まさか…あの原稿用紙を読んだの?全部、捨ててって言ったでしょ。で、どれを読んだの?」主人「あの最後、貝になるやつ。そして第六地球文明人がで終わるやつ」私「あっアレか…」主人「いつ書いたの?」私「中学生」主人「他に読んだ人いないの?」私「いるわよ。けっこう。主に大
ドラマ「似錦」第40集大結局前編<第40集大結局>前編背後から崔旭に斬りつけられた長公主は、涙を溜めた目で彼を振り返った。握ったかんざしは彼女の腹部に深々と刺さっている。長公主は兄を害するつもりはなかったのだ。駆け寄った崔旭は、倒れた長公主を抱き起した。行き違いや諍いがあっても、崔旭にとって長公主は妻だった。それは妹として彼女をいつくしんだ景明帝も同じだ。栄陽長公主は崔旭の腕の中で息を引き取った。長興侯曹勇は謀反
※一部加筆修正しました。内容は変わっていません。冬休み中に優斗と杏子は映画を見に行った。杏子の自宅に行ったことを除けば、学校以外で会うのは初めてである。いわば、初デートと言える。杏子が何でもいいと言うので、話題になっていた「スティング」を見に行った。ポール・ニューマンとロバート・レッドフォードの共演による映画だった。それまで優斗は映画という映画をほとんど見たことがなかった。小学生の頃、姉が連れて行ってくれたものと中学生時代に友人と見に行ったもの、それと橋口に誘われて見に行った
※一部加筆修正しました。内容は変わってません。期末テストが終わった日曜日、優斗は逸る気持ちを抑えながら杏子の家に向かった。高校の最寄駅、いつもとは反対側の改札を出ると杏子が待っていた。そこから、バスで約10分。停留所からまた少し歩くと木造2階建てのごく一般的な家屋が見えてきた。「ここよ」と杏子に促されて玄関に入る。奥の和室には炬燵に入った祖母がにっこりと笑顔で迎えてくれた。「おばあちゃん、後は私がやるからいいよ」「そうかい。じゃ、ごゆっくりね」優斗はぎこちなく会釈すると
修学旅行が終ると、秋は足早にとおり過ぎていった。優斗と杏子は、相変わらず一緒に帰るだけの日々を過ごしていて、それ以上の進展はない。互いの意思確認をしていないためか、優斗は心なしか不安もあった。これだけのかわいい子なのだから、過去にも彼氏がいただろう。今だって自分の知らない人がいるのかもしれないし、いてもおかしくないと思うのである。長電話を咎められてから、以前のように帰り路しか話す機会がなくなった。杏子は、優斗が訊かない限りあまり自分の話をしない。優斗は、自分のことだけあからさま
ドラマ「似錦」第39集後編<第39集>後編甄珩は天牢に収監された。日が昇り、日が沈む。牢内の高窓から凧が見えた。彼を力づけるために福清公主が揚げた凧だ。甄珩は、塀越しに交わした会話を思う。「甄大人は死が怖い?」「怖いよ。やりたい事がたくさんあるし、まだ想いも伝えきれていないから」塀の向こうで福清公主は涙をこぼした。「福清公主、できるなら城壁の上で一緒に凧を揚げたい」もしも来世で出会うことがあるなら、福清、きみを悲しませたり
優斗は、杏子と一緒に帰る駅までの時間だけでは段々物足らなくなってきた。杏子もそれは同じで、帰宅後も電話で話すようになった。今日もまだ別れて時間が経っていないのに、明日になればまた逢えるというのに、また互いの声が聴きたくなるのである。電話をかけてくるのは専ら杏子の方であった。予め時間を決めて、家族が電話に出る前に優斗が受話器を取るのである。一旦、電話があると長電話になることも多い。RCサクセションの「2時間35分」のようにはならないが親から長いと窘められることもしばしばであった
ドラマ「似錦」第39集前編<第39集>前編問題は、崔旭が前線を放棄してまで景明帝を救いに陵安城へ戻るのか、である。雁帰城に姜似を残し、余七は説得のために崔旭の軍営へ馬を走らせた。案の定、状況を知っても崔旭は拒否する。いま無理に兵力を分散すれば、南疆の地が南烏の軍に蹂躙される恐れがあるのだ。曹勇は長公主に敵対する人物の名簿を提出した。斉王に関しては長公主に下ったと考えていい、と十九が言う。ただ斉王は、長公主が彼の後ろ盾にな
それからというもの、優斗と杏子はいつも二人で帰るようになった。学校のこと、友だちのこと、中学校時代のこと、家のことなど、優斗の口からいろいろな話が出てくる。杏子と二人でいると自分でも不思議なくらい饒舌になっているのである。杏子はいつも聞き役であまり自分のことは話さなかった。それでも優斗の話に笑ったり、うなずいたり、時には驚いたりした。そんな杏子の反応を見るのが優斗は楽しかった。杏子も優斗の話を聞くのが好きだった。優斗がこんなにしゃべれる人だとは思わなかった。話を聞いているうちに
修学旅行が終った翌日から平常授業だった。生徒たちは、修学旅行の余韻から冷めやらず、朝から教室にいくつかの塊になって話が弾んでいた。優斗も同じようにその塊の一つの中にいたが、皆が楽しげに話していても話題が室生寺にならないかと気が気ではない。自分と杏子のことを訊かれないかと冷や冷やしていたのである。極力、室生寺に触れないように話をそらすのに必死であった。ただ、一つの傘で杏子と二人で歩いていたことが知られていたとすれば、真っ先に訊かれるに違いない。そうでないということは、まだクラ
※一部加筆しました。内容は変わってません。修学旅行の最終日は奈良見学であった。その日の最後に向かったのは北部の山中にある室生寺であった。到着すると自由見学となった。優斗にとっては、ここは初めての寺である。苔生す境内に一歩足を踏み入れた瞬間、優斗はこれまで巡ってきた寺院とは違う雰囲気を感じ取っていた。濃い緑に囲まれた境内は、静けさの中に凛とした空気が漂っていた。優斗は、これまでは仲間たち皆でがやがやと回っていたが、今は一人でじっくりと見て廻りたいと思った。自然石を敷き詰めた