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イギリスの女流推理作家ホリー・ジャクソンによる長編小説。五年前に起こった少女失踪事件の謎を追いかける、女子高校生ピップの活躍を描いた一冊です。高校の最上級生のピップは夏休みの自由研究で、五年前に自分の町で起きた十七歳の少女アンディの失踪事件を調べている。その当時、地元の警察が捜査に乗り出したが、彼女の行方は掴めなかった・・・。ところが事件の四日後に事態は一変。―――彼女の交際相手のサル・シンが、嘘のアリバイを述べたことが判明、彼は容疑者と見做される・・・。やがて
第一話を読む▷指の記憶第一〇二話苗字―四月―玲が寝室に入ると、紗和は枕に頬を押しつけていた。窓は細く開けてあり、レースのカーテンがときどき内側へ膨らんだ。ベッド脇の小さなテーブルには、読みかけの本と、昨日からほとんど減っていない水のグラスがあった。新しい水に替えて、玲はベッドの端に腰を下ろした。「少し飲みませんか」紗和は目だけを動かした。「今、ドライ・ハンガーストライキ中なの」「……何に抗議しているんですか」「水分補給の強要」「要求は?」「そっとしておい
最近のスパイシーによって、心も体もすっかり後ろ向きになってしまった。やっと来た休みの日も、いつもなら近場で精一杯ストレス発散するのだけど、そんな元気もやる気もなく。なんとか外に出たものの、やっぱり全身がヒリヒリするから全然楽しめない。アーメン、ちきしょうめん。時が経つのを静かに待つしかない。が、しかし。今日はそんな悠長なことを言っていられない。息子が待ちに待った大運動会なのだ。何カ月も毎日練習して、家に帰ると今日はあれをしたこれをしたと、つぶらな瞳で語りかけてくる。
「え~っ」よくよく見ると、確かに何かが見える。「よくわかったねぇ」さすがに木々に隠れて、よく見えない。普通ならば、見落としてしまうところだ。とりあえず、近づいてみよう…と、ゆっくりとミチオが高度を下げて、近付いて行く。「あぁ~けっこう大きいねぇ」近付いてみると、コンクリートの倉庫みたいなものと、かやぶき屋根が見えてきた。さらに進んで行くと、全体像が見えてくる。「あ~っ、ホントだ。確かに、何かの建物があるねぇ」ようやく裕太と颯太が、反応する。「なんで、ジュン
夫婦になる小さな家で二人暮らしを始めて、しばらくすると入籍の日がやってきた。秋の日だった。入籍する日を決めるとき、せっかくなら少しでもいい日にしたいと思って、その日を選んだ。婚姻届を用意して、必要なものを揃えて。いよいよ、この紙を出したら夫婦になる。そう思うと、少し不思議だった。付き合い始めた頃は、結婚するなんて思っていなかった。結婚願望もなかった。それが今は、彼と一緒に暮らしていて、家を建てていて、結婚式の準備までしている。人生は、いつの間にかこんなふうに変わるのだなと思っ
ゆっくりと、穴の向こうに足を踏み入れると…「とにかく、慎重にね!少しの変化も、見逃さないでよ」カガリがアキに向かって、そう告げる。「だったら、この人は?」アキはまっすぐに、この綿毛の方を指差す。もっとも、姿は見えなくて、声のみなのだが…「あっ!」ふいにカガリが、何かを思い付いたのか、「ねぇ」アキの腕に触れる。「あの鏡…まだちゃんと、持っているよね?」アキの顔をのぞき込む。「えっ?あっ、もちろん、持ってるけど…」そういえば、さっきもポケットに突っ込んだままだ
撮った写真を満足そうに眺めながら、セツナがふと口を開く。「よし、じゃあ今度はルカを抱っこしよう!」「わーい!」ぴょんっとルカがセツナの腕の中へ飛び込んだ。「セイももっとこっち!」「えっ……」「ほらほら」セツナが手招きする。セイは少しだけ横へ寄った。「まだ遠いなぁ」「……これ以上ですか?」「もちろん!」セツナは笑いながら、セイの腕を軽く引っ張る。「はい、これくらい!」「っ!?」肩と肩が触れた。(ち、近い
潤くんのお手伝いは、俺が思っていたよりも早く終わってしょおくん、お待たせ♪えっ?もういいの?うん、おじいちゃんがね、『もういいよ』って。おじいちゃん?うん、僕の母さんのお父さん。あぁそれでここを手伝ってたんだ、、、良かったぁ〜、ここに入って♪えっ?あ、いや、ず〜っと潤くんに会いたいと思ってたから、、、えっ///そんなに僕に会いたかったの?俺の『会いたかった』と言う言葉を聞いて赤くなる潤くんに、あ、、、、えっとほらハンドタオル貰ったのにちゃんとお礼を言えて
第一話を読む▷指の記憶第一〇一話診察室の外―四月―大きな病院の産科外来は、朝から混んでいた。受付番号が表示されるたび、待合室のあちこちで人が立ち上がる。玲は紗和の隣に座り、問診票の最後の欄に目を通していた。「吐いた回数、昨日は四回で合っていますか」「五回」玲が顔を上げた。「夜中も?」「三時くらいに」「起こしてくれればよかったのに」「玲さん、寝てたから」玲は何も言わず、数字を訂正した。転院してから二度目の妊婦健診だった。前回は紹介
「うーん、この辺りは、あまり変わっていないみたいだ」来たことがない、という割りには、じいちゃんはよく知っているようだ。ミチオに何事かささやくと、ポンポンと首筋の辺りを撫でる。「もっとよく見えるようにと、ちょっと上がるぞ。しっかりとつかまれ」じいちゃんがそう言うと同時に、フワリと舞い上がる。そうして茂みを見下ろすくらいの高さまで上がると、ゆっくりとなぞるように、進んで行く。「何か見えるか?」「うーん、まだよくわかんない」最近、よく目がかすむ…というじいちゃんに代
あくまでも、カガリは冷静だ。アキのように、焦ったり怒ったりはしない。「それが、賢明だな」綿毛まで、カガリに賛成する。「え~っ、何でよぉ」それだと私が、バカみたいじゃないのよぉ。アキとしては、面白くない展開だ。「魔王はね、こんなもんじゃないと思うわ。きっと…幾らでも、姿を変えられるのよ。もしかしたら、今、ここにいるのが…魔王かもよ」さらにカガリが、アキを脅かしてくる。「え~っ、うそっ!」すぐに反応するアキを見ると、「ね、だから、うかつなことを言ったら、ダメ!」
「よし、みんな準備いい?」「はーい!」ぴこん、とタイマーの音が鳴る。「はい、チーズ!」パシャ。撮れた写真を見て、セツナがぱっと笑顔になる。「わぁ!いい感じに撮れてる!ルカ、すっごくかわいい~!ねぇ、セイも見て!」ルカも画面を覗き込みながら、嬉しそうにぴょんぴょん跳ねた。「ほんとだー!」画面には、ツリーの前で並んだ3人の姿がきれいに収まっていた。「ちゃんとツリーも全部入ってる!」「移動できるから便利ですね」「うん!この機能すご
第九十九話を読む▷指の記憶第一〇〇話手の届くところ―四月―前の妊娠では、食べ物の匂いが駄目だった。炊きたてのご飯も、焼き魚も、玲が朝に淹れるコーヒーも。冷蔵庫を開けただけで胃が持ち上がり、何も食べていないのに、いつも満腹のような気持ち悪さがあった。今回は、腹が減った。朝は空腹で目が覚める。トーストを焼けば食べたいと思うし、昼には自分でうどんを温めることもできた。味も匂いも嫌ではない。むしろ、食事の時間が楽しみなくらいだった。ところが、食べ終えて
咳が止まらない。鼻水も黄色くなってきた。来たか、ついに来たか?ある程度の余裕を持ちながら、熱だけ出なければなんとかなんとかなると強気の構え。しかし、咳が止まらないと本当きつい。お陰で体中が痛い。そういう日に限って、人と話す仕事が多い。必死に咳を抑えながら、ウーウー唸って面接をする。ついには我慢できなくなって、弾けるほどに咳した。面接相手から「大丈夫ですか?ごゆっくりで大丈夫ですよ」と言われる始末。その優しさに心を打たれながら、なんとか面接を終える。そして、そして静か
何で、そんな施設があるのだろう?裕太は気になるけれども。「さぁ、それはワシにも、よくわからないよ」じいちゃんがあっさりと、そう言う。徐々に島の奥に、近づいてきた。「ほら、あそこだよ」ジュンペイがまっすぐに、指し示して見せる。「こんなところまで、来たのか?」自分たちよりも、かなりの距離を歩いて来たことになる。「そうだよ」ヘヘッとジュンペイが笑うと、鼻の下を人差し指でこする。「へぇ~」感心したように言うけれど、なぜだかじいちゃんは上の空のように見える。どうしたの
いくつかの分野に章を分けています。まずは住宅ローン編からどうぞ!住宅ローン編第21話10月31日住宅ローン編第21話十月三十一日-未来銀行(CML)-カクヨム審査するのは、人ではない。未来だ。kakuyomu.jp次回更新までお待ちください!
「魔王は、むやみやたらと、人間や子供を襲ったりはしないんだ。普段はおとなしくしている。だから、これだけは信じてくれ」綿毛がそうは言うものの…アキには、どうも信じられない。困ったように、アキは視線を泳がせる。「カガリちゃんは、どう思う?」早速アキが、カガリに向かって尋ねる。「それは、わかんないなぁ。だってまだ、会ったこともない相手だからなぁ」ポンとカガリが言うと、「ホントにそうか?」いきなり綿毛が、話しかけてくる。(一体綿毛は、どこに隠れているんだ?)
「えっ!?なにこれ!」目の前に現れたウィンドウに、セツナが驚きの声を上げる。セイも画面へ視線を向ける。「なるほど……」表示された説明へ目を通し、小さく頷く。「これは移動式の撮影ウィンドウですね」「移動式?」「はい。撮影画面を空中へ配置して、任意の位置から撮影できる機能のようです」「へぇー!」セツナが指先で軽く動かすと、ウィンドウも空中をふわりと滑るように移動した。「わっ、動いた!」「セルフタイマー機能もありますね」「ほんとだ
(潤くんに会いたい!)悶々とした日々を送る事数ヶ月、漸く時間が取れたのは、大学の前期試験が終わり夏休みに突入したその日。バイトのシフトも入ってないし、(よし!今日一日潤くん探しをするぞッ❗️)こんな事をしようと思う俺は、かなりイタいヤツなのかもしれないけど、(でも会いたい❣️)(潤くんを思う気持ちが強ければ、きっと神様が味方してくれる筈❣️)そう信じて、2月に潤くんと会ったあのコンビニへと向かった。ドキドキしながらコンビニの外から中を覗くと、残念ながら
第九十八話を読む▷指の記憶第九十九話王妃の冷蔵庫―三月―帰宅すると、ダイニングテーブルに紙袋が三つ並んでいた。厚手のクリーム色の紙に、控えめな金色の文字。持ち手は布紐で、どれも妙に立派だった。紗和は靴を脱ぎながら、その袋を見た。知っている店だったが、買い物をしたことはない。キッチンでは玲がシャツの袖をまくり、買ってきたものを冷蔵庫に移していた。「ただいま。先生、買い物?」「おかえりなさい。はい。帰りに寄ってきました」「すごい。何かのお祝い?」「いえ。
竜のミチオは、とてもなめらかに、しかもスピーディーに進んでいるので、多少身を乗り出したくらいでは、激しく揺れたりはしない。「そうだなぁ~ここをまっすぐ行くと、遺跡のようなものがあったと思うけど」助け船をよこすように、じいちゃんが言うと、「あっ、それ!それ!」ジュンペイが嬉しそうに、人差し指を突き出す。(おいおい~人を指で差したら、ダメなんだぞぉ)裕太はちょっと、ジェラシーを感じる。やけにジュンペイが、じいちゃんにからんでいて、しかもじいちゃんも、まんざらではないようで、
(そんなの…わかるわけが、ないじゃない)そんなことよりも、一刻も早く、ショータとユウジを見つけなくては、とアキは焦る。「アキちゃん、そんなにあわてなくても、大丈夫よぉ」アキの思いを知ってか、知らずか…カガリがのん気な声でそう言う。「だけど…みんなが危険な目にあってたら?魔王に何かされていたら…もう遅いのよ」思いつめるあまり、アキはカガリに向かって、噛みつくように言う。「それは、心配いらない。大丈夫だよ」突然、男の声が聞こえる。例の綿毛の声だ。(あら?いなくなっ
セツナは楽しそうにルカの写真を撮り続けていた。その様子を眺めていたセイは、小さく微笑む。(本当に楽しそうだ……)すると、セツナが勢いよく振り返った。「よし!次は3人!」「……はい?」「ツリーの前でルカも一緒に3人で撮ろう!」「えっ……ぼ、僕もですか?」「当たり前でしょ。せっかく3人おそろいなんだから」セツナは笑って言う。その言葉に、セイは少し照れながらも、小さく頷いた。「……分かりました」クリスマスツリーの前へ並ぶ3人。赤
本日も朝からポッポの様子見。今まで頑なに巣に籠っていたお母ちゃんの動きが変わった。2羽の子どもが雛に返ってからは、巣にいないことが多くなった。エサを探しに行っているのか、産後のリカバリーに出ているのかはわからないが、残された2羽が襲われないかそっと見守る。なにせ、新しい家族だからな。にしても、すっかり外は寒くなった。もう秋も中盤に向かっている。本日もスパイシーなり。これからどんどん寒くなっていくから、ここで踏ん張らないといけない。丁度一年前のことを思い出すと、まさに
「気候変動とか、問題になっているだろ?恐竜たちも、今の気候に、どれだけ耐えられるのか?将来的に、クローンを作った場合でも、生き続けることが出来るのか…と、調べてみたくなったんだろうなぁ」思いのほかあっさりと、子供たちに打ち明ける。(まさか、先生も、何らかのかかわりがあるのだろうか?)裕太はちょっと、気になっている。「でジュンペイ君は、どのあたりで見つけたのかな?」思い出したように、じいちゃんがジュンペイに尋ねる。「え~とぉ、どの辺りだっけ?」うー
「で、あのガラスケース…どうなった?」さっき無造作に、移動させたけれど…あれは、どうなったのだろう?ふとアキの中に、疑問が湧きおこる。「あっ、この近くにあるんじゃない?」自分の最後の行動を思い起こす。「確か…この辺りにあるはずよ」振り返って探すけれど、すでに影も形もない。あんな大きなものが?「え~っ」一体、どうなっているんだ?とても信じられない。アキはキツネにつままれた思いがするけれど「あきらめて、帰ったんじゃない?」サラリと、カガリが言ってのける。「え~っ、
運営からのお知らせについて語り合った後、再び穏やかな時間が戻る。セツナはカップへ口をつけながら、満足そうに息をついた。「はぁ~。さっきのディナーおいしかった~」「そうですね」「ルカもおいしかったー!」ルカが嬉しそうに耳をぴこぴこと動かす。その微笑ましい姿を眺めていたセツナが、不意に何かを思い出したように目を見開いた。「あーーーーっ!!」「ど、どうしました!?」突然の大きな声に、セイが思わず姿勢を正す。「サンタ衣装の写真撮ってないじゃん!
やっと潤くんに会えた❣️これからバラ色の人生が始まる!と思っていたけど、そう上手くはいかず、ね、潤くんこのハンドタオルもうちょっと貸してて貰えない?あとで洗って返すから。うんいいよ、、っていうか、返して貰わなくても大丈夫だから。えっ、それじゃ悪いよ。ううん、僕が驚かせてしまったせいで、しょおくんコーヒー溢しちゃったでしょ?だからそのお詫び、、、って言ったらおかしいかもしれないけど、良かったら使って。イヤ、でもそれじゃ悪いよ、、、ううん、いいからいい
第九十七話を読む▷指の記憶第九十八話言葉の手前で―三月―「……おばあちゃん、死んじゃうかも」紗和はソファの上で、膝にかけた毛布を握りしめた。玲はテーブルに並べた超音波の写真を、もう一度見比べていた。「お祖母様ですか」「うん、ショックで」「……まだ何も話してないでしょう」「だから心配してるの!」紗和は玲の手元を覗いた。「ねえ、前のとき、おばあちゃんがどれだけ驚いたか覚えてる?」「覚えていますよ」「大事に育てた孫娘が、結婚もしな
そんな大事なことを、ペラペラと話してもいいの?裕太は怪しむけれど…じいちゃんはヘラッと笑って、「いいんだ、いいんだ!いずれは話すつもりだったし…キミたちの力を、貸してもらうつもりなんだから、この際しゃべった方がいいんだ」スッキリした…と、じいちゃんは大きく伸びをする。「え~っ、先生に、怒られない?」「いいんだ、先生だって、きっとキミたちならば、しゃべってもいいと言ってくれると思うよ」どれだけ先生と親しいのか、じいちゃんには全く迷いがない。「実験って、どんな