過日、ふとしたことから坂口三千代「クラクラ日記」(ちくま文庫)を読み返した。ネットのレビューをまず読んでみた。そのなかに、安吾は甘えたDV夫であり、三千代夫人はDV夫の妻にありがちな共依存者、また安吾が入院した東大医学部精神科の治療は持続睡眠療法に電気ショック療法など、いまではありえない原始的な治療法と嘲笑的に書き込んであった。鼻白む。令和の眼で昭和20年代半ばを見れば正しい見方なのかもしれないが、皮相で、深みと厚みに欠ける。覚醒剤・睡眠薬・アルコールで錯乱する安吾は、なるほど甘えたDV夫である