山本博文先生の「切腹」に次いでまたも切腹の本です。千葉徳爾先生は民俗学者で、なぜ日本人はハラを切るかという問題に民俗学の立場からアプローチします。古来ハラには魂が宿るとされていたところから内臓を露出して神に「赤心」を示すイケニエが切腹の原初の姿だったのではないかという指摘には南方熊楠や柳田国男からの引用と相まって説得力があります。ただそれだけではなく昂揚した精神状態のなかでエロスへの情感に支えられて切腹を遂げるのではという指摘にも考えさせるものがありました。広く文献を渉猟し中国など近国の比較例を