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今日の労働判例【明治安田生命保険事件】(東京地判R5.2.8労判1327.97)この事案は、保険会社Yとの間でアドバイザー見習い契約を締結していたXが、MYライフプランアドバイザーとなれなかったことが違法である、として争った事案です。裁判所は、Xの請求を否定しました。1.無期契約か有期契約かXは、見習契約について、無期契約が締結されたと主張しました。それは、Xの力量を見極めるのが見習契約であり、試用期間として評価し、扱うべきである、そうでないと試用期間について積み重ねられ
今日の労働判例【中倉陸運事件】(大阪高判R6.1.19労判1327.92)この事案は、障害者等級3級の従業員Xが、障害者手帳を入社後に会社Yに示したところ、退職勧奨され、退職した(Xは、解雇された、とも主張している)事案です。2審も1審(「中倉陸運事件」京都地判R5.3.9労判1297.124読本25.100)と同じく、合意退職が有効であるとしつつ、Yに、Xへの慰謝料80万円の支払いを命じました。1.実務上のポイント障害者であっても、納得して退職したことが証明されれば、退
今日の労働判例【K’sエステート事件】(東京高判R6.12.24労判1327.73)この事案は、従業員Xの解雇を会社Yが撤回したにもかかわらずXが職場復帰しなかったなどとして、Yが給与を支給しなかったため、Xが給与の支給などを求めた事案です。1審はXの請求を全て否定しましたが、2審はXの請求をかなり広く認めました。なお、2審ではYが、Xに関して負担した社会保険料の支払いをXに請求しましたが、裁判所はこれも認めました。1.2審のポイントXが職場復帰しなかったことを理由
今日の労働判例【国(在日米軍厚木航空施設・パワハラ)事件】(東京高判R5.6.28労判1327.61)この事案は、米軍基地Kで働いていた元従業員Xが、上司などからハラスメントを受けメンタルとなったなどとして、Kの代わりに責任を負う日本国政府Yに対し、損害賠償を求めた事案です。2審は、1審と同様、Xの請求の一部を認めました。2審の認めた損害賠償金額の方が、1審の認めた金額(55万円)よりも大きく(165万円)なっています。1.1審と異なる点1審よりも金額が大きくなったのは、
今日の労働判例【国立大学法人電気通信大学事件】(東京高判R5.10.23労判1327.36)この事案は、一コマだけ授業を担当していた非常勤講師Xを大学Yが雇止めした事案で、Xは雇止めを無効と主張しましたが、裁判所は有効としました。1.判断枠組み本判決で注目されるのは、更新の期待(労契法19条各号)と更新拒絶の合理性(同条本文)の関係です。条文の記載を見ると、まず第1段階で更新の期待の有無が判断され、そこで更新の期待が認められた場合に、次に第2段階で更新拒絶の合理性の有無が
今日の労働判例【近江アサノコンクリート事件】(大阪高判R6.2.13労判1327.15)この事案は、ミキサー車の運転手Xが、日雇いの運転手として長年勤務してきた会社Yから雇止めされたためその無効を争った事案で、1審2審ともにXの主張を認め、相当期間について雇用関係があったとして賃金の支払いを命じました。2審の判断の方が詳細ですので、2審の判断を検討しましょう。1.労契法19条の類推適用結局、労契法19条2号を「類推適用」したのですが、直接の適用は認めませんでした。反復継続して
今日の労働判例【日本郵便(経過措置)事件】(大阪地判R6.6.20労判1327.5)この事案は、有期契約者Xらが会社Yに対し、無期契約者だけが「経過措置」を受給している状況が同一労働同一賃金の原則に違反すると主張して、賠償などを求めた事案です。裁判所はXらの請求を否定しました。1.不合理性は継続するか注目される1つ目のポイントは、判決では後回しにされた論点ですが、この事案の特徴でもある「経過措置」の構造に関する裁判所の評価です。少し込み入っていますので、この経過措置の
今日の労働判例【国・中労委(ファミリーマート)事件】(東京高判R6.3.13労判1326.66)この事案は、コンビニエンスストアを統括・運営する会社Fと契約し、コンビニエンスストアを法人・個人として経営する者(や役員)達が労働組合Xを結成し、団体交渉をYに申し入れたところYがこれを拒絶した事案です。XはYの交渉拒絶が不当労働行為に該当する、と主張して都労委に救済申し立てをしたところ、都労委はこれを認めましたが、逆に中労委Yは、Xの組合員達は労組法上の労働者ではないとして、これを否定
今日の労働判例【モルガン・スタンレー・グループ事件】(東京地判R6.6.27労判1326.14)この事案は、国際的な証券会社の日本社Yで勤務する韓国人従業員Xが、上司から直接人種差別(レイシャルハラスメント)を受けた、Yから昇進差別として間接的にレイシャルハラスメントを受けた、等と主張し、損害賠償などを求めた事案です。裁判所は、Xの請求を全て否定しました。1.事案の概要Xは、年収1億円ほどの管理職者です。自分自身がデリバティブ取引のプラットフォーム(基盤となる環境)を作り
今日の労働判例【社会福祉法人滋賀県社会福祉協議会(差戻審)事件】(大阪高判R7.1.23労判1326.5)この事案は、溶接などの技術を買われて途中入社した技術者Xが、当該事業の縮小・廃止に伴い他の業務に配置転換された事案で、Xが、配置転換が無効であるとして、慰謝料の支払いなどを雇用主Yに対して請求しました(最高裁の判断に関係する部分のみ検討します)。一審・二審はいずれも、Xの請求を否定しましたが、最高裁(最二小判R6.4.26労判1308.5読本25.249)は、Yには配置転換する
今日の労働判例【ユーアイ警備保障元従業員事件】(秋田地判R2.6.25労判1325.65)この事案は、個人所有の車両を営業車両として利用するための給油カードを不正利用した従業員Yに対し、約束した金額の返還を会社Xが求め、これに対してYがXに対し、未払賃金や退職金の支払いを求めた事案です。裁判所は、Xの請求を否定し、Yの請求の一部を認めました。1.弁済同意書XはYに対し、給油カードの不正利用による利得分として150万円ほどを返還するように迫り、同意させました。しかし裁判
今日の労働判例【スター・ジャパン事件】(東京地判R3.7.14労判1325.52)この事案は、外資系企業の日本法人Yの経理課長Xが、管理監督者に該当しないことを理由に、未払残業代等の支払いを求めた事案です。裁判所は、Xの請求をおおむね認めました。1.判断枠組みと考慮要素裁判所は、「経営者と一体的な立場にある者」が管理監督者であるとして、大きな枠組みを示したうえで、より具体的な判断枠組みとして、①事業主の経営上の決定に参画し、労務管理上の決定権限を有しているか(経営上重要な
今日の労働判例【長崎市・市選挙管理委員会事件】(福岡高判R3.10.14労判1325.37)この事案は、市役所Yの職員Xが統合失調症を発症していた状態で退職願を提出し、Yがこれを受理してXを依願免職した事案です。裁判所は、依願免職を無効としました(公務員としての地位を認めました)が、配慮不足による損害賠償は否定しました。1.依願免職の有効性ここで裁判所は、Xの職場での言動に変調が生じていたこと(独り言が増えるなど)、H28.3.24にXが退職願いを提出したこと、その際、日
今日の労働判例【ACラーニング事件】(東京地判R4.8.17労判1325.32)この事案は、英会話学校を経営するYが、コロナ禍の影響で業績が悪化したため、英語講師Xを解雇した事案で、裁判所は解雇を無効としました。1.判断枠組み裁判所は、いわゆる「整理解雇の4要素」を判断枠組みとして設定しました。すなわち、①人員削減の必要性、②解雇回避努力、③人選の合理性、④解雇手続の相当性、の4つを判断枠組みと設定しました。特に注目されるのは、「使用者側の事業上の都合を理由とし、解雇され
今日の労働判例【アスパーク事件】(東京地判R5.9.21労判1325.24)この事案は、技術者を派遣する事業を行っている会社Yが、技術者らに対して、コロナ禍の業務減少・経営不振を背景に休業を命じたところ、その間賃金の6割しか支払われなかったことから、技術者Xが差額などの支払いを求めた事案です。裁判所は、Xの請求を否定しました。1.民法536条2項Yは、休業中の従業員に対して給与の6割を支給していました。これは、②労基法26条に則って支給したものです。他方Xは、①民法536
今日の労働判例【甲府市事件】(甲府地判R6.10.22労判1325.5)この事案は、市役所Yに勤務する公務員Kが、仕事のストレスから自殺したため(公務上の災害と認定されています)、遺族(Kの父母)XらがYに対して損害賠償を請求した事案です。裁判所はXらの請求を概ね認めました。1.労働時間裁判所の判断で注目される1つ目のポイントは労働時間の認定です。Kは、慣れない仕事(市役所の各部署の人員を管理するほか、市役所内の他の部署の管理職者と人員削減などの折衝を行うなど)を任され、
今日の労働判例【テレビ東京制作事件】(東京地判R5.6.29労判1324.61)この事案は、制作会社Yの従業員Xが、残業代など未払賃金を支払うことと、いくつかの懲戒処分が無効であること、いくつかのY側の言動・措置が違法であり、損害賠償すべきこと、等を求めた事案です。非常に論点の多い事件ですが、裁判所はXの請求の一部を認めました。1.みなし労働時間特に注目されるのが、事業場外のみなし労働時間制の適否に関する裁判所の判断です。判決言渡しの時期は本判決よりも後になりますが、❷「
今日の労働判例【ホープネット事件】(東京地判R5.4.10労判1324.37)この事案は、メンタルを理由に休職していた従業員Xが、会社Yへの復職を希望したのに復職できず退職となってしまった事案で、メンタルは業務上の傷病だから解雇できない、復職できたはず、等として、従業員の地位にあることの確認や賃金・損害賠償の請求をした事案です。裁判所は、Xの請求を全て否定しました。1.業務上の傷病かどうかここでは、Xがハラスメント(7つのエピソード)を受け、それによってメンタルになった、
今日の労働判例【国・中労委(ワットラインサービス)事件】(東京高判R6.11.6労判1324.5)この事案は、会社Xの仕事をしていた個人事業者らKらが、組合Lに加入して労使交渉を求めたところXがこれを拒否した事案です。Lが都労委Yに救済命令を申し立てたところ、YがXのLに対する対応が不当労働行為に該当するとして救済命令を発したため、Xの再審査申し立てとYによる棄却後に、救済命令の取り消しを求めて訴訟を提起しました。1審2審いずれも、Xの請求を否定しました。1.Lが法適合組合か
今日の労働判例【クローバー事件】(静岡地沼津支判R5.3.27労判1323.64)この事案は、介護施設Yの職員ら16名(Xら)が、残業代の未払分の支払いなどを求めた事案です。裁判所は、Xらの請求を広く認めました。1.変形労働時間制の違法性ここで特に注目されるのは、変形労働時間制が適用される、というYの主張を裁判所が否定した点です。これは、1か月ごとの変形労働時間制としてみても、半月ごとの労働時間制としてみても、いずれも違法である、という判断です。1か月ごとの変形労
今日の労働判例【あさと物流事件】(神戸地判R6.5.13労判1323.57)この事案は、残業代が適切に支払われていないと指摘された会社Yが給与に関する就業規則を変更したところ、この就業規則の変更は無効であり、旧規定に基づき未払賃金を支払うよう従業員Xが訴えたものです。裁判所は、Xの請求を概ね認めました。1.不利益な変更Yは、基礎賃金(残業代などを計算する際の基礎となる部分)に含まれるべき歩合給を、就業規則を変更してこれを基礎賃金に含まれない基準外手当(運行時間外手
今日の労働判例【ユナイテッド・エアーラインズ(整理解雇)事件】(東京地判R6.1.22労判1323.46)この事案は、アメリカの航空会社Yのアメリカ本社で採用され、アメリカで正式採用前の訓練を受けたのちに入社し、成田空港をベースに勤務していたが、コロナ禍の影響による成田ベースの閉鎖に伴って解雇された従業員Xらが、解雇の無効を争った事案です。裁判所は、日本の裁判所が判断する事案ではないことを理由に、Xらの請求を門前払い(却下)しました。1.論点ここでは、仲裁法附則4
今日の労働判例【学校法人和洋学園事件】(東京高判R6.4.25労判1323.32)この事案は、35年間続いてきた定期昇給がなかったことについて、従業員Xらが、給与の差額分の支払いを学校Yに対して求めた事案です。1審2審いずれも、Xらの請求を否定しました。1.論点と判断ここでは、2つの論点に関し違法性が議論されました。1つ目の論点は、定期昇給が合意されていたかどうかです。この点は、合意があったかどうか、という点です。裁判所は、給与規定の定期昇給の規定上、「予
今日の労働判例【大浜資材事件】(大阪地判R6.7.10労判1323.23)この事案は、会社Yの経営に批判的な労働組合Kでの活動を止めない従業員Xらに対し、自宅待機を命じた事案で、Xらは、①自宅勤務する義務がないことの確認と、②損害賠償の請求を求めました。裁判所は、①を否定しましたが、②は一部認めました。1.自宅勤務の義務(①)についてこの点は技術的な要素の強い理由で、Xらの請求が否定されました。すなわち、Yは自宅「待機」を命じたのであって、自宅「勤務」を命じた
今日の労働判例【京王プラザホテル札幌事件】(札幌高判R6.9.13労判1323.14)この事案は、有名なホテルYの宿泊部部長であったXが、ハワイでの娘の結婚式に参加するために有休を取得しようとしたところ、その前日に有休の時期が変更されてしまい、結婚式に参加できなかったため、損害賠償を請求した事案です。1審(札幌地判R5.12.22労判1311.26読本25.190)は、Xの請求を全て否定しましたが、2審は請求の一部を認めました。1.1審と2審の違い結論的に2審はX
今日の労働判例【東光高岳事件】(東京高判R6.10.17労判1323.5)この事案は、会社Yの子会社Kに定年後再雇用されて1年目の従業員Xが、YのK吸収合併後に契約更新を迎えるにあたり、Yから提示された契約条件を不服としてこれを拒否し、XY間で交渉が行われたがまとまらず、契約が終了してしまった事案です。Yが従前の契約条件で労働契約が継続していることを求め、訴訟となりました。1審(東地判R6.4.25労判1318.27読本25.93)2審いずれも、Xの請求を否定しました。
今日の労働判例【イタリア共和国外務・国際協力省事件】(大阪地判R5.3.22労判1322.48)この事案は、イタリア政府の日本での機関で働いていた日本人Xが、試用期間経過後本採用されなかったことから、イタリア政府Yに対し、本採用拒否が無効であることを前提に、雇われている状態にあることの確認と、未払賃金の支払いなどを請求した事案です。裁判所は、Xの請求を一部認めました。1.国際民事訴訟法の構造最初の問題は、果たして日本の裁判所がこの事件を審理できるのか、という国際民
今日の労働判例【リンクスタッフほか事件】(東京地判R6.2.28労判1322.31)この事案は、外国人のシステムエンジニアXが、実際には習得していないプログラミング言語での業務を指示されたが、Xの求めにもかかわらず業務の変更がされなかったため、退職し、転職しようとしたところ、会社Yがこれを強く慰留したため、Xが出社しなくなったところ、Yが3回にわたって減給処分をした事案です。さらにXは、Yが社宅の家賃や家具の購入費を給与から控除(相殺)したことが違法であるとして、その返還も求め
今日の労働判例【SES会社経営者ら事件】(東京地判R6.7.19労判1322.14)この事案は、システムエンジニアとして雇われた元従業員Xらが、会社や代表者Yらに対し、入社前に不当にスクールの受講料を支払わされ、不当な業務をやらされた、としてこれらによる損害の賠償を請求した事案です。裁判所は、Xらの請求を概ね認めました。1.事案の悪質性詳細は裁判所の認定した事実を実際に読んでください。概要として、入社前にスクールを受講(有償)させられ、入社後は偽の経歴書を作成
今日の労働判例【学校法人羽衣学園(羽衣国際大学)事件】(最一小判R6.10.31労判1322.5)この事案は、大学教員Xが、有期契約の更新を拒絶されたことについて、①労契法18条による無期転換がなされ、あるいは②労契法19条各号による更新の期待があり、かつ、更新拒絶の合理性がない、等として、大学Yの教員の立場にあることを主張した事案です。1審(大阪地判R4.1.31労判1274.40、23読本165)は、Xの請求を否定しましたが、2審(大阪高判R5.1.18労判12