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【日本郵便(住居手当)事件】(東京高判R6.12.12労判1334.35)この事案は、有期契約者Xらが、無期契約者らとのいくつかの処遇の違いが、同一労働同一賃金のルールに違反するとして、会社Yに損害賠償などを求めた事案です。1審2審いずれも、Xらの主張を否定しました。1.経過措置ここで最も注目されるのは、「(本件)経過措置」と称される手当が従前住居手当を支給されていた無期契約者だけに支給されていることの違法性への判断です。この経過措置は、住居手当を有期契約者にだけ支給す
【羽曳野市事件】(大阪地判R7.1.22労判1334.18)本事案は、市役所Yから中途採用された公務員Xが、試用期間を延長されたうえで免職処分とされたところ、Xがこの免職処分などを違法として争った事案です。裁判所はXの主張を概ね認めました。1.特徴この事案の示した、試用期間延長の合理性の判断基準は、①延長するかどうかの裁量権がYにあること、②必要性・合理性があること、③その他、「合理性をもつものとして許容される限度を超えた不当なもの」でないこと、の3点に整理できるでしょ
【兵庫県公立大学法人(振動病)事件】(神戸地姫路支判R7.1.23労判1334.5)本事案は、大学Yの事務職員Xが、チェーンソーなどを使って草刈りなどの業務に従事していたところ、振動病に罹患したとして労災が認定され、さらにYに対して損害賠償を請求した事案です。裁判所は、Xの請求を一部認めました。1.2時間/1日ルールの順守まず、労安法に関する指針で示されている、特定の振動工具の一日の利用時間を2時間以内にするべきというルールが守られたかどうかが問題となりました。Xは、様
【アズビル事件】(東京高判R6.11.19労判1333.78)本事案は、空調メンテナンス会社Aに雇われた技師Xが、Xに業務委託した会社Yに対し、違法な偽装派遣により直接雇用関係が発生した(派遣法40条の6)として、XY間に雇用関係があることの確認などを求めた事案です。1審・2審いずれも、Xの請求を否定しました。1.論点Aは労基署から、無登録派遣であるとして是正指導書と指導票を受領したため、従業員を派遣の携帯に切り替え、改善報告書を提出していました。このこともあって、違法
【アクセンチュア事件】(東京高判R6.12.17労判1333.58)この事案は、入社時の履歴書に記載された職歴が事実に反する虚偽であるとして、会社Yが内定とした従業員Xを解雇したところ、Xが、Yの解雇を無効であるとして訴訟を提起した事案です。1審・2審いずれもXの請求を否定しました。1.判断枠組み(ルール)裁判所は、まず、一般的な判断枠組みを示しました。すなわち、大日本印刷事件の最高裁判決から、以下のように引用しました(最二小判S54.7.20労判342.16)。そ
【ガソリンスタンドA社他(盗撮)事件】(鳥取地倉吉支判R7.1.21労判1333.45)この事案は、ガソリンスタンドの男性従業員Y1が同僚の女性従業員Xの勤務中の容姿を無断で繰り返し撮影したことから、Xが会社Y2に善処を求めたが十分な対応をしなかったために心身症と診断され、休職を余儀なくされたとして、Yらに損害賠償を請求した事案です。裁判所はXの請求を一部認めました。1.ハラスメントかどうかY2が、ハラスメントの通報を呼び掛けており、Xもこの通報窓口に通報したにもかかわ
【国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター事件】(東京高判R7.3.27労判1333.5)この事案は、経営再建に際し、昭和23年ころから国立病院の精神科担当者に支給されてきた「特殊業務手当」(廃止時点での呼称)を病院Yが廃止したところ、それによって不利益を受ける従業員Xらが同手当の支払いなどを求めた事案です。1審(「国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター事件」東京地立川支判R5.2.1労判1301.31読本25.■)は、Xの請求を否定しましたが、2審はXの請求を広く
【トワード事件】(福岡地判R5.2.28労判1332.98)この事案は、倉庫でフォークリフトの操作などを行っていた女性従業員Xが双極性障害を発病し、労災認定を受け(行政労災)、会社Yに損害賠償を請求した(民事労災)事案です。裁判所はXの請求を概ね認めました。1.因果関係(業務起因性)発病前の1か月の残業時間が、近い方から126時間41分、182時間58分、100時間55分、とそれぞれ認定されており、精神障害の業務起因性に関する判断基準に照らせば、極めて強い業務上のストレスが
【大栄青果事件】(福岡地小倉支判R5.6.21労判1332.86)この事案は、青果市場のセリに参加する卸売業者Yの従業員らXらが、残業代や退職金などが未払いである、等と争った事案です(団交拒否の問題は省略します)。Yは、R3.3.31に、Xらを解雇するとともに、解散し、訴訟はYの清算人が遂行しています。裁判所は、Xらの請求を広く認めました。1.基礎賃金額残業代を計算する基礎となる基礎賃金(労基法37条)について、裁判所は非常に簡潔に、支給されていた諸手当全てをこれに含め
【富士吉田市(職場復帰期待権侵害等)事件】(甲府地判R5.6.27労判1332.70)この事案は、市営病院Yの歯科医師Xが懲戒免職されたが、裁判によってこれが無効とされて確定し、病院に復帰したものの、❶訴訟中の給与も支払われず、❷従前の歯科診断などを伴う業務を伴わない口腔内クリーニング業務だけを指示され、❸記者会見で市長がXの不当な言動を指摘する、などした事案です。裁判所は、❶訴訟中の給与全額の支払い、❷歯科診断業務を外したことなどへの100万円の慰謝料の支払い、❸市長による名誉
【謙心建設事件】(東京高判R6.5.22労判1332.56)この事案は、トラックを保有する建設会社Xの業務委託先A社に勤務していたYが、Xのトラックを2回、自損事故で毀損させたところ、XがYに対して損害賠償を請求した事案です。裁判所は、1審2審共にXの請求を否定しました。1.求償制限会社が従業員に対して損害賠償を請求したり、会社が従業員に代わって賠償した損害金の求償をしたりする場合に、それが「事業の執行」について生じたものであれば、従業員に責任がある場合であ
【オフィス・デヴィ・スカルノ事件】(東京地判R6.12.12労判1332.37)この事案は、著名な芸能人Kの事務所Yが、従業員らXらを不当に解雇した、等として争われた事案で、労働審判で決着しなかったことから訴訟となり、裁判所はXらの主張を広く認めました。1.3つの訴訟この事案について、訴訟が3つ起こされました(なお、例えば本事案はX1とX2がそれぞれ提起した2つの訴訟が併合されており、技術的にみれば2件の事件ですが、併合されて一括処理されていますので、実質的には1つの訴訟、と評
【ジェットスター・ジャパン事件】(東京地判R7.4.22労判1332.15)この事案は、(元)客室乗務員ら(Xら)が、航空会社Yに対し、休憩時間のない乗務勤務の差し止めや損害賠償等を求めた事案です。裁判所は、Xらの請求を一部認めました。1.労基法施行規則32条1項ここでは、裁判例を見ている限り普段見かけないルールが問題となりました。1つ目は、航空機の「給仕」に関する特別なルールです。すなわち「給仕」が「長距離」継続乗務する場合、休憩時間を与えなくてもよい、という
【T4U事件】(東京地判R6.3.28労判1331.87)この事案は、営業担当者Xが、会社Yに約3年半在籍した間、残業代などが支払われなかったとしてその支払いなどを求めた事案です。裁判所はXの請求を相当広く認めました。1.固定残業代Yは、固定残業代の合意があったから残業代支払い義務が無い、と主張していますが、裁判所はそれを否定しました。固定残業代が認められるための条件は、近時、非常に複雑化しており、(まとめ方について議論がありますが)①判別可能性(固定残業代部分と基
【日本硝子産業事件】(静岡地判R6.10.31労判1331.64)この事案は、執行役員Xが傷病休職を取得し、復職する際、会社Xによる「試し勤務」を拒否したため、XがYを就業規則の規定に基づいて退職扱いとした事案です。Xは、ハラスメント被害による傷病である(したがって退職は無効)、残業代が不払いであるなど、様々な主張をし、他方、Yは立て替えた社会保険料の支払いをXに対して求めました。裁判所は、Xの請求を全て否定し、Yの請求を認めました。1.管理監督者注目される第1のポイントは
【山口県厚生農業協同組合連合会事件】(神戸地判R6.12.18労判1331.47)この事案は、産婦人科の部長医師Kが自殺した事案です。先行する別件訴訟で労災が認定されていますが、遺族Xらは病院Yに対し、民事労災(損害賠償)も請求しました。裁判所は、Xらの請求を否定しました。1.理論構成行政労災が認められたのに、民事労災が否定されました。もちろん、理論的にはこのような事態は生じ得ます。行政労災では、業務起因性(因果関係)があればそれで支給認定されますが、民事労災の場合には、こ
【国立研究開発法人理化学研究所(雇止め)事件】(さいたま地判R6.12.20労判1331.35)この事案は、研究者Xが研究所Yに対し、チームリーダではなく上級研究員として契約更新されたことが違法であるとして、チームリーダーの地位にあることの確認や、給与の差額の支払いなどを求めて争った事案です。裁判所はXの請求を全て否定しました。1.地位確認の訴え(否定)近時、労働者には一般的に特定の地位で働く権利はない等の理由で、地位確認の請求を却下(門前払い)した裁判例があります(「学校法
【全日本建設運輸連帯労働組合関西地区生コン支部(強要未遂等)刑事事件】(京都地判R7.2.26労判1331.5)この事案は、労働組合Kの幹部Yらが、複数の生コン会社に対し、ストライキを予告したり、実際にストライキをすることで、各会社から不当な利得を得たり、得ようとしたりしたことが合計4件の犯罪に該当するとして、検察官Xが起訴した事案です。裁判所は、いずれも無罪としました。1.無罪判決のポイントYらにとって不利な事情はいくつかありますが、例えばある会社は1億5千万円を支払
【JR北海道(パワハラ)事件】(函館地判R6.3.27労判1330.74)この事案は、従業員Xが上司からハラスメント・プライバシー侵害・精神的攻撃等を受け(20のエピソード)、無痛性甲状腺炎・適応障害を発症したなどとして、会社Yに対して損害賠償(500万円+弁護士費用)を請求した事案です。裁判所は、その一部(4のエピソード、50万円+弁護士費用)を認めました。1.判断の分かれ目請求が認められた4つのエピソードは、①エピソードが事実として認定されることを前提に、②それがプライバシ
【VelocityGlobalJapan事件】(東京地判R6.9.25労判1330.69)この事案は、従業員Xが勤務先の会社Yから解雇されたことの違法性などを争った事案です。少し込み入っていますが、Xは当初、Yの取引先B社で勤務し、その後Yの取引先A者で勤務しました(派遣法違反の点は省略します)。YがXを解雇した理由には、Aの機密情報を入手した、Bの機密情報を流用した、ハラスメントを理由にXがAを脅迫した、などとするものでした。しかし、裁判所はいずれも否定し、Xの請求を肯定したのです
【奈良県(うつ病自殺)事件】(奈良地判R4.5.31労判1330.53)この事案は、奈良県Yの職員Kが自殺したため、遺族Xらが民事労災としてYに対し損害賠償を請求した事案です。裁判所はXの請求をかなりの範囲で認めました。1.まじめで几帳面な性格①(減額)ここで特に注目されるのは、Kのまじめで几帳面な性格が、2か所で問題にされた点です。1つ目(判決で議論される順番としては2番目)は、減額(過失相殺、損益相殺、素因減額など)の可否です。これは、電通事件最高裁判決(最2小
【明和住販流通センター事件】(東京地判R6.3.21労判1330.39)この事案は、上司に対して酷い言動をとるなどした従業員Xが、会社Yから降給降格され、懲戒解雇されたところ、いずれの処分も無効として、地位確認や損害賠償を求めた事案です。裁判所は、Xの請求の一部を認めました。1.ハラスメント注目される1つ目のポイントは、Xの上司に対する言動がハラスメントであるとして、降給降格処分を有効とした(この点に関するXの請求を否定した)点です。具体的には、メールで、パソコン画
【神奈川県・県教委(A学園)事件】(横浜地判R6.11.6労判1330.25)この事案は、私立高校の教員Xが女生徒2名に対してそれぞれハラスメントをしたとして懲戒解雇され、合わせて県教委Yから教員免許を取り上げた事案です。Xは学校を相手とする訴訟も提起していますが、Yに対し、教員免許の取り上げの無効を争った事案です。裁判所はXの主張を認めました。1.独自審査が必要か?本事案では、まず、規範が問題となりました。すなわち、教員免許を取り上げる要件が議論されました。(取
【学校法人明徳学園事件】(京都地判R7.2.13労判1330.5)この事案は、学校Yの常勤講師だったXが事務職員に配置転換された事案で、XがYに対し、常勤講師の地位にあることの確認や、専任講師との給与の差額の支払いなどを求めた事案です。裁判所は、Xの請求の一部を認めました。1.職種限定合意の有無、権利濫用の有無(いずれも否定)第1に注目されるのは、Xが常勤講師としての地位にあることの確認を求めたのに対して、裁判所がこれを否定する際、①職種限定合意があるかどうか(否定)、②Y
【柏書房事件】(さいたま地判R4.4.19労判1329.82)この事案は、試用期間満了時に本採用されなかった元従業員Xが会社に対し、解雇は無効であると争った事案です。裁判所はXの請求を否定しました。1.試用期間の有無裁判所は、就業規則に規定されていたことを主な理由に、試用期間の合意があったと認定しました。Xは、規定の「従業員」が正社員を意味し、契約社員だったXはこれに該当しないと主張しましたが、他の条文での文言などを理由に、裁判所はこの主張を否定しています。結果的に
【日本サーファクタント工業事件】(東京高判R6.8.28労判1329.52)この事案は、定年後再雇用された従業員Xが、会社Yによる処遇に関し様々な観点から違法であると争った事案です。裁判所はその一部について請求を認めました。1.退職一時金と退職年金裁判所は、退職一時金の請求は否定しましたが、退職年金の請求は一部認めました。退職一時金については、旧労契法20条の問題と位置付けました。そのうえで、退職金規定の趣旨を認定し(退職後の生活保障、労務の対価の後払い、功労報
【国・中労委(ジェイアールバス関東)事件】(東京地判R6.12.5労判1329.43)この事案は、会社Zの労働組合Kを脱退した元組合員(従業員)Xが、都労委に救済を申し立てました。それは、ZがXに対しKを脱退するように不当に干渉したというものです。都労委はこれを違法として救済命令を出しましたが、中労委Yは都労委の判断を否定しました。XがKを脱退して別の労働組合に入ったため、救済命令を出す理由がなくなった、という趣旨の理由です。そこでXは裁判所に対し、中労委Yの決定の取
【マンダイディライト事件】(大津地判R6.12.5労判1329.36)この事案は、会社Yが従業員Xに示した募集の条件(無期契約、試用期間2か月)と雇用契約の条件(有期契約2か月)が違うところ、2か月で契約を打ち切ったため、Xがその無効を主張しました。裁判所はXの主張を認めました。1.理論構成裁判所が示した理論構成は、概要、以下のとおりです。①募集資料の条件で契約が成立した。Yが示した募集条件が契約の申込みであり、採用の通知(電話)がこれに対する承諾である。承諾の際、
【国立大学法人大阪大学事件】(大阪地判R7.1.30労判1329.5)この事案は、大学Yの非常勤講師Xらが、契約更新されなかったことが違法であると争った事案です。裁判所はXらの請求を否定しました。1.労働者性この判決の特徴は、労契法19条の更新拒絶に関する議論に触れず、Xらがそもそも労働者ではないことを理由にした点にあります。具体的には、まず規範として「使用従属関係(使用従属性)」のあるかどうかとし、具体的な判断枠組みとして、「①原告らが被告の指揮監督下において労務
【メドエルジャパン事件】(東京地判R5.4.28労判1328.65)この事案は、外資系の会社Yの新任代表取締役が、従業員Xに対し、退職勧奨や配置転換、賃下げなどを行ったことが違法であるとして、損害賠償などを請求した事案です。裁判所は、Xの請求の多くを認めました。1.ハラスメントの認定職場環境配慮義務違反、と表現されていますが、Xに対するハラスメントが認定され、あるいは一部については否定されたのですが、否定されたポイントは以下のとおりです。・退職勧奨退職勧奨自