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「たのもー!」店内の穏やかな空気を押し分けるように、エンバースの扉が開いた。午後の陽光を含んだ秋風が一緒に吹き込み、ユメのセーラー服の裾をふわりと揺らした。「本当に来たのね。しかも早い。」カウンター越しに顔を上げたフィリスの声には、驚きと、どこか呆れたような柔らかさが混じっていた。「もう早く来たくてしょうがなかった!」「あれ?白兎(しらと)さん?」サクが席から顔を上げ、目を丸くする。「上吹越(かみひごし)くん、久しぶりだね。」「二人は知り合いなの?」「うん。剣道部の練習試
皆さん、こんにちは!おかげさまで「シン八犬伝」も、ついに第50回を迎えました。ここまで読み進めてくださった皆さん、本当にありがとうございます。八犬士たちの運命が、少しずつ結びついていくこの物語。今回から舞台は大きく変わり、甲斐の国へ!さあ、どんな出会いが待っているのでしょうか。それでは、はじまり、はじまり!◆甲斐の国に現れた犬飼現八ここは甲斐の国。今でいう山梨県でございます。山々に囲まれた、とある村。その山のふもとの道を、一人の若者が歩いておりました。犬飼現八であ
三次創作小話「忘羨その後」(133-4)(温家、客間にて)睨み合う、ウェイインとジャンチョン。その場の空気がぴりぴりと張りつめる。○「君たちの口げんかを久しぶりに聞きました。実に微笑ましい」「兄上、どうしてここに?」○「ジンイーから報告がありました。『“夷陵老祖”の剣幕が凄まじい。江宗主と大げんかになるかもしれない』と○「ふっ、心配無用です。こいつの性格は、俺が一番理解してます」○「いいか、ホアイサンが仕組まなくても、どうせ巻き込まれる運命だったんだ。お前やホアイサンが、
岩砕烈破(がんさいれっぱ)いかに頑強堅牢(がんきょうけんろう)な狗神(いぬがみ)とて、巨大(きょだい)な金物(かなもの)には太刀打(たちう)ちできぬ。敵(てき)の体(からだ)は黄金(おうごん)の煌(きら)めきこそあれ、それは真実(しんじつ)の金(きん)に非(あら)ず。節々(ふしぶし)は柔(やわ)らかく、四肢(しし)と体躯(たいく)の表面(ひょうめん)には鎧(よろい)のように黄金色(こがねいろ)の金板(かないた)があり、狗神(いぬがみ)の爪(つめ)を弾(はじ)いた。返礼(へんれい)とばかりに
こんにちわぁんリボン会長ですっ🎀いぇい「悪役やるならこんな風に」最新75話更新されました-----乾燥した冷たい風が、冬が近づいてきたことを告げている。温かいお茶で暖をとりながら、私たちは冬を乗り越えられるのかなんて雑談をしている。ハーゲンティ派の密会(笑)会場は私の自室。風のドームで囲い込み、側仕えと書陵官を一人ずつ選んで中に入れる。私は書陵官がいないので代わりに側仕えを二人。まだバイェモンはどこにも属していない設定な
あの日、最愛の存在との約束を胸に刻んだ刻から、その時間は永遠に止まったまま。贖罪という名の寒空の下、静かに蹲る鳥。その凍てついた砂時計の底を、野鳥の羽ばたきが、少しずつ、少しずつ動かし始めるまでを描く短編創作。文学・創作小説ファン必読の一編。〜朽ちる身と殺めた手とが交わる夜赦しを乞わぬ恋はひとすじ〜ようこそ、狂気と純愛の記録へこの先の文章には、物語の大事な場面や結末にふれる内容が含まれます。まだ本編を読んでいない方は、読後にお読みいただくことをおすすめします。✏️Ope
Ⅴ法王犬の後を追って、大きな建物へ向かった。近づくにつれて、人の数が増えていく。子ども、大人、年配の人。みんな同じ大きな扉から、中へ入っていった。「…何するところなんだろう」犬は扉の前まで来ると、一度だけ私を見た。そして、そのまま建物の脇へ歩いていった。「あ、待って」追いかけようとしたけれど、ちょうど鐘が鳴った。周りにいた人たちが、次々と建物の中へ入っていく。私は犬が消えたほうを見る。それから、開いたままの扉を見た。「…ちょっとだけ」中へ入った。高い天井。長い椅子
四天王(してんのう)対決(たいけつ)一方(いっぽう)、霧(きり)の結界(けっかい)に入(はい)った四柱(よはしら)は、結界内(けっかいない)に人(ひと)の気配(けはい)がないことに気(き)づく「ほう、人払(ひとばら)いか、これは厄介(やっかい)じゃのう」と子(ね)の神(かみ)が嘯(うそぶ)く。「どういうことじゃ?」と問(と)う狗神(いぬがみ)に「神格(しんかく)が高(たか)まれば高(たか)まるほど信奉者(しんぽうしゃ)を必要(ひつよう)とする、つまり、信者(しんじゃ)の信仰心(しんこうしん
「オアシス奇譚日は昇り、日は沈む。広大な荒地の果てを見た者はない。雨も降らず、岩と裂け目だらけの大地がどこまでも続いている。空に雲はなく、鳥の姿もない。風も吹かない。何千年、何万年と、荒地はその姿を変えてはいなかった。だが、中心に小さな泉が湧き、その周辺にだけわずかな人々が集まり、小さな村を作っていた。村には東と西にそれぞれ一つずつ門があったが、誰一人として荒地へ出ようとしなかったし、いつ頃からそこに村があるのかも知らなかった。知る必要がなかったからだ。二人
周囲を埋め尽くしていた幻影が、一斉に動きを止める。笑うように歪んでいた輪郭が崩れ、黒い霧となって宙へ溶けていく。今度は何度待っても、形を取り戻すことはなかった。静けさが戻った路地に、小雨の落ちる音だけが響く。ユメの竹刀を包んでいた光も、役目を終えたように消えていった。「でき、た……!」ユメがかすかに呟く。その手から竹刀が滑り落ちた。膝から力が抜け、身体が傾く。「ユメ!」駆け寄ったミースが、地面へ倒れる寸前でその身体を受け止めた。「大丈夫ですか?!」「うん……ちょっと、
焔(ほむら)の御剣(みつるぎ雷蔵(らいぞう)が水(みず)を飲(の)んだ後(あと)、琵琶姫(びわひめ)から渡(わた)された光(ひか)る団子(だんご)を食(た)べていると八咫烏(やたがらす)が来(き)て「警吏(けいり)たちは宿場町(しゅくばまち)に入(はい)った、じゃが、都(みやこ)への早道(はやみち)で敵(てき)が待(ま)ち伏(ぶ)せしておる。何(なん)としても旗(はた)を山科(やましな)の結界(けっかい)に入(い)れよ」と告(つ)げてきた。「峠越(とうげご)えの街道(かいどう)に出(で)る
Ⅳ皇帝女帝の女性にもらったパンと果物を持ったまま、私は犬の後を歩いていた。草原は少しずつ終わりに近づき、その先に石造りの町が見えてきた。高い門。まっすぐに伸びた道。同じ高さに揃った建物。道の両側には店が並び、人の流れも決まっているように見えた。「……街だ」私は少しだけ安心した。森の中のように、どこへ行けばいいのか分からないわけではない。草原のように、全部が自由に広がっているわけでもない。門の前には、立て札があった。旅人はここで登録。『宿泊場所は中央広場の案内所へ。市場は日
ローレンは杖を両手で握り直し、再び石畳へ突き立てた。降り続いていた小雨が、ぴたりと空中で止まる。無数の雫が青白い光を帯び、細い糸のように連なっていく。路地に溜まった水も、壁を濡らしていた雨粒も、全てがローレンの足元へ引き寄せられた。男が訝しげに顔を歪める。「何をするつもりだ。」その問いには答えず、ローレンは隣に立つミースへ目を向けた。「ミース。」「はいです。」ミースは短刀を逆手に持ち、濡れた石畳へ身を低く沈める。ローレンが杖を振り上げた。「一気に押し流す!」集められた水が
https://note.com/humble_puma6383/n/n911ae8ddc1ff?sub_rt=share_b『抱けない男』と『抱く女』第六夜――見んな。|陽咲とKAIの共創陽咲とKAIの共創⸻『抱けない男』と『抱く女』第六夜――見んな。朝になった。森は、昨日と同じ顔をしていた。鳥が鳴く。風が吹く。三人の男が、自分たちを殺しに来たことなど、何も知らないように。「歩けるか」クリスが言った。「誰に聞いとる」「お前だ」「歩ける」「そうか」「アンタは?
三次創作小話「忘羨その後」(133-1)(温家にて)さらに三日経ち、ウェイインとランジャンは座学に復帰した。ジンイーは待ち構えていたようで、二人が御剣から降りるとすぐに駆け寄って来た。「お待ちしてました。藍先生の本葬の手伝いができず、申し訳ありませんでした」ランジャンは首を横に振って、「滞りなく終わった。叔父上も安堵して逝くことができたと思う」三人は、歩きながら言葉を交わす。○「ジャンチョンはどうだ?うまくやってるか?」「はい、とても、うけてますよ」○「うけてる?」「はい
5年前にスタバでお迎えした真空断熱タンブラーが寿命を迎えたようです。毎日使っていて、夏場は冷たいもの冬場は温かいものを入れて飲んでいたのですが、ここ数日で保温力がガクッと落ちました。冷たいものはまだマシなのですが温かいものは30分くらいで冷めてしまいます。調べたところ、真空断熱タンブラーの寿命は数年らしいです。こちら。お気に入りだったんだけどな~。でも、第二の人生としてストロー入れとして使う予定です。そこで、新しい真空断熱タンブラーが欲しいと思
紗都子の「待つ」と対になる、弥太郎の「地べたからの一歩」を描く。飛べない鳥が風を思い出すまでの記録を描く短編創作。文学・創作小説ファン必読の一編。〜朽ちる身と殺めた手とが交わる夜赦しを乞わぬ恋はひとすじ〜ようこそ、狂気と純愛の記録へこの先の文章には、物語の大事な場面や結末にふれる内容が含まれます。まだ本編を読んでいない方は、読後にお読みいただくことをおすすめします。✏️Open:2026/10/12|🔄Update:0000/00/00YATAROREC
ミースが腰から短刀を抜き、胸の前へ構えた。ローレンが杖先で小さな円を描くと、石畳に散っていた水が細い帯となって浮かび上がった。水の帯はミースの手元へ流れ、短刀の刀身へするりと巻きつく。水は激しく動き回ることなく、薄い膜となって刃へ定着した。透明だった刀身が、淡い青色の光を帯びる。「これで影にも届く。行けるか?」「いつでも大丈夫です!」ローレンが杖を高く掲げた。頭上に青い魔法陣が広がり、路地の前方だけに細かな雨が降り始める。フィリスたちがいる場所との間には、目に見えない境界が引か
「来るぞ!」ローレンが杖を時計回りに回してから石畳へ突き立てた。杖先に青い光が灯り、足元から渦を巻くように水が立ち上がる。影の群れは二手に分かれ、ユメと祖母へ同時に襲いかかった。ユメへ向かった影の前へ、ローレンが水の壁を展開する。黒い爪が水面へ突き刺さり、激しい波紋が広がった。影は完全には消えないものの、その動きを押し留められている。ミースもユメを庇うように前へ立った。その一方で、別の影が石畳を這うようにして、祖母へ迫っていた。「させない!」フィリスは二人の前へ飛び出し、杖を
「ストーカーハンターが動く」(妄想短編作品)警察が動かない。ならば、私たちが動く。法と制度の網の目をくぐり抜けるストーカーから被害女性を守るため、影で暗躍する非公式の警護組織「ストーカー財団」。そこに所属する女性ハンター達は、日夜、AI監視システムを駆使して標的を見守っている。今回、5人体制を組んで護衛するターゲットは、都内で働くアラサー会社員・アリサ(32)だ。事前調査するとストーカーの男の執念は異常だった。アリサの通勤経路、帰宅時間、立ち寄るカフェの席のチョイス
まだ夜の名残が残っていたいつもより少し早く目が覚めたシオンはしばらく布団の中でぼんやりしていた窓の向こうが少しずつ明るくなり始めている何となくそちらを見る「……え?」窓の向こうまだ薄暗い森の中に黒い姿があったシオンは起き上がって窓辺へ寄った「……ノク?」家から少し離れたところノクが前脚を伸ばして伏せていた空はようやく夜が明けたばかりだった「こんな早くから居てたん?」ノクの耳がぴくそれだけだったシオンはもう一度空を見るそれからノクを見るそして
第十四章――接続の先に◆2026年東京◆細い雨が降っていた。岬朱音は、窓辺に立っていた。遠い記憶の中に、波の音がある。雪。暗い部屋。誰かに抱かれた温もり。そして――。「……誰だったの?」答えは、まだない。だが、もう一つだけ確かなものがあった。自分の中に、誰かの記憶が残っている。それは、もう恐ろしいものではなかった。少なくとも、以前ほどには。失われた記憶を取り戻すことが、必ずしも過去へ戻ることではない。もしかすると――。過去を
「龍の眠る場所……」リシェルは母の残した言葉を繰り返した。アルヴェインも紙を覗き込む。「心当たりは?」老司書が静かに口を開いた。「一つだけございます」「どこですか?」老司書は王都の地図を広げた。指が示したのは、王国の北。険しい山々に囲まれた場所。「ここに、古代遺跡があります」「古くから『龍の眠り場』と呼ばれている場所です」リシェルは地図を見つめた。なぜか胸の奥が熱くなる。「行かなければ……」アルヴェインが即座に答える。「僕も行きます」「殿下……」「一人では行か
痛みを知り、希望を知り、待つという飛び方を選んだ紗都子。限られた命の中で「生きたい」と願い、再会へと続く静かな奇跡を描く創作小説「静かな飛びたい」後編。〜朽ちる身と殺めた手とが交わる夜赦しを乞わぬ恋はひとすじ〜ようこそ、狂気と純愛の記録へこの先の文章には、物語の大事な場面や結末にふれる内容が含まれます。まだ本編を読んでいない方は、読後にお読みいただくことをおすすめします。✏️Open:2026/10/10|🔄Update:0000/00/00静かな飛びたい(後
【新作怪奇小説】『返せる形で』公開しました。作家・ライターの長谷川誠です。noteにて、新作短編小説『返せる形で』を公開しました。今回の作品は、借金を抱えた一家を襲う、奇妙で残酷な運命を描いた怪奇小説です。「返せるときに、返せる形でいい」借金の貸主である黒木は、そう言って微笑んでいました。ところが、ある雨の夜、父親が突然失踪します。その数日後、家に届いた一通の封筒。そこには、減額された借金の残高が記されていました。そして、家族が一人、また一人と姿を消していきます。消えた家族と
「その人から離れなさいっ!!」力強い声が響き渡った。炎をまとった杖を構え、真っすぐに影を睨みつける。「怪我はない?!」フィリスがまた声を張り上げる。少女の近くまでローレンとミースが駆けつけていた。ローレンは倒れている少女のそばへ膝をつき、素早く怪我の有無を確かめる。「立てるか?」「う、うん……。」ミースは地面へ落ちていた竹刀を拾い、少女の隣へ置いた。緋雀は倒れ込んでいる少女の祖母を助け起こしている。近くまで駆け寄ったフィリスが祖母の肩に手を置く。「痛いところはある?」「
エンバースの扉が閉まる音がして、昼の客とともに入り込んだ金木犀の香りが、店内でふわりと揺れた。「……ローレン。まさかとは思うけど。」レジの前に立つフィリスが、伝票を片手に腕を組む。その視線の先では、長身のローレンが気まずそうに頭をかき、小さくなっていた。「……すまん。財布、忘れた。」「忘れた、じゃないのよ!なんで食べ終わってから気づくのよ!」ローレンの後ろから、ミースがひょこっと顔を出した。「ごめんなさいです。私、家からお財布を取ってきます!」「ミースは悪くないわ。ちょっと待
行徳の町を見下ろす、小高い丘。その丘の上に、一人の若者が立っていた。犬田小文吾である。懐かしい町並みを見つめながら、小文吾は、ぽつり。「これが……夢にまで見た、わがふるさとか……」長い旅を終えて、ようやくたどり着いた故郷。しかし――その時である。「ん……?」小文吾の目に、不思議なものが映った。行徳の町の上空に、ふわりと浮かぶ桃色の雲。そして、その雲の上には――なんと、犬の背に乗った美しい女の姿!「な、なんだ!?女神様か!?」もちろん小文吾は知
日(ひ)ノ岡(おか)雷蔵(らいぞう)たち一行(いっこう)は、今(いま)でいう湖西線(こせいせん)・東海道本線(とうかいどうほんせん)沿(ぞ)いを縫(ぬ)うような道(みち)のりで進(すす)んでいた。当時(とうじ)は農道(のうどう)や集落(しゅうらく)の生活道(せいかつどう)しかなかっただろうから、線路(せんろ)のようにまっすぐ進(すす)むことはできなかったのだ。さらに、南西(なんせい)に幕府(ばくふ)の守備隊(しゅびたい)が警邏(けいら)のために来(き)ているとのことなので、鏡山(かがみやま
こんにちわぁんリボン会長ですっ🎀いぇい「悪役やるならこんな風に」最新74話更新されました-----「さすが、バティン様の才能を受け継いだようですね!将来が楽しみです」「あ、……ありがとうございます」今私は、チェンバロでドレミファソラシドを両手で弾いただけだ。大袈裟に褒めてくれたのは私の楽器指導に選ばれた式部官、サルカニー先生。自己紹介から抜粋すると、学生時代はバティンと親友だったそうだ。侯爵家から伯爵家へ嫁ぎ、バティンから式部