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上演中のMETライブビューイング《ラ・ボエーム》で、素晴らしい新進ソプラノに出会いました。アルメニア出身のジュリアナ・グリゴリアン。ムラのない響きで澄んだ音色ですが、中低音域に強い翳りがあり、篤い心を感じさせてくれます。こんなに若くてこんなに完成度が高いとは。ひたすら励んできたのでしょう。他人と自分を比べることもないようです。自分と自分を日々比べているのでしょう。役柄に傾注し、若い娘役を本物の若さで演じ切っていました。肉体的な若さではなく、フレッシュな精神力で。十年先、彼女はどん
来年早々にNHK-FMの『オペラ・ファンタスティカ』で珍しい古典派オペラを紹介することになりました。先日、放送収録を終えましたが、とても楽しい演奏であり、時間があればもっと詳しく説明したかったぐらいです。ただ、放送は「音楽を聴いて頂く」ことが主なので、あまり長い説明文は書けないのですね。かいつまんでかいつまんでという感じでやっています。そして、その次の私の出演回では、私が長年とても愛しているオペラを紹介することになりました。なので、そのことをクリスマス・プレゼントのように嬉しく思っていま
いつも講演会にお越し頂く皆さま、本当に有難うございます。皆さまのお陰で今年も何とか続けることが出来ました。厚く御礼申し上げます。さて、本日の講演会で出た質問につきまして、以下、紹介します。女王二人の争いの場のストレッタについて:ドニゼッティの《マリア・ストゥアルダ》のオリジナルの音型は、下記の映像の1時間10分20秒以降。長らく使われていた第三者の手が入ったスコアの音型は、下記の映像の5分09秒辺りからです。数分間、較べて味わってみて下さい。また次の講演会の折りに、ご感想やご質問が
最近、テレビで放送されていたオペラ公演で、ところどころ、テンポ取りがとても不思議なものがあり、「指揮者さんの意図はどこに?」としばらく考え続けています。最初は「誰かのミスでテンポが乱れたのかな?」とも思ったぐらい。アンサンブルが最終的に合うのかどうか、はらはらもさせられました。なぜ、そんな風に振るんだろう?演出が凝っていて指揮棒が見えにくいから、わざと遅めの差配にするのか?でも、そんなゆっくりだと歌手の声の力もかなり消耗させられるはず。いろいろ考えてみても答えは見つかりません。たま
この癖のある字体の書き手は、私が最も尊敬する人々の中のひとりです。しかしながら、お名前も顔も知りません。お立場もほぼ分かりません。2025年現在、ご存命なのかどうかも分からないのです。会ったこともなく、噂を聞いたこともありません。それでも、私が最も尊敬する人の中のお一人なのです。この薄汚れたような紙は、楽譜の中表紙。もちろん中古品です。19世紀の。そこに鉛筆書きをした人は現代人です。「2-version」と書いてあるのは、楽譜の第2版(改訂版)ということ。ユーロ記号で値付けしてある
他人が何をできるのか?といえば、やはり「募金」なのかなと思い至りました。放送局の玄関に「歳末助け合い運動」のコーナーが設置されていました。昨日の大地震、なぜ、自分の部屋が揺れているのかいないのかわからなくなり、テレビをつけて発生を知りました。インターネットでは、初めて見る文言として「気象庁は、北海道・三陸沖後発地震注意情報を発表しました。この地域で大きな地震があった際に、確率は低いものの、新たな大規模地震が発生する可能性が比較的高まるとされていますので、地震への普段の備えを再確認してく
題名が大袈裟なのですが・・・12月中に、アンブロワーズ・トマのオペラ2作についてそれぞれ文章を書くことになりました。正直なところ、これらのご依頼は結構な驚きで、「1か月でトマのオペラを2作!」と眼を瞠りました。モーツァルトやロッシーニ、ヴェルディやプッチーニならそういうことは時々あります。ワーグナーでも批評なら1か月に2作ぐらいは時々あるのです。でも、トマで!下は、若き日のトマの肖像画。「ボー・トマ(美しいトマ)」という綽名もなるほどと思いますね。ハムレット王子ってこういう顔かな?とも思
昨日ブログに書きました『ロボット、私の永遠の愛』の印象を思い返してみて、「オペラというジャンルを超えたり、境目にあったりするような作品」のことをいろいろ考え合わせたりしていました。この前NHKーFMの『オペラ・ファンタスティカ』でも紹介したのですが、フォーレの《プロメテ》は、野外で初演された超弩級の作品であり、俳優さんの比重も高いことで、「オペラ的」ではあっても「オペラ」とは呼べないものなのです。ただ、フォーレ自身がこの作品を後に改訂して、普通の歌劇場で上演できるようにはしたのですが、それで
新国立劇場のダンス公演に類するステージングとして『ロボット、私の永遠の愛』(Robot,l'amouréternel)という1時間ほどの公演に出かけてきました。主演の伊藤郁女さんのことを初めて知りましたが、ダンスに類するステージながら、客席との生の対話があったりで、非常に不思議な時間を過ごさせてもらいました。しかしながら、不思議なだけに、いろんなシーンがとても強く記憶に遺っています。途中で突然、伊藤さんが喋り出したときは結構な衝撃でした。「ダンサーは口を開かない」という私の先入観があ
いやー、今朝は寒かった昨日の冷え込みのまま迎えた朝、起きた時の外気温は2.2℃今日の最高気温予想は12℃、結果12.0℃明日の天気予報週末の予定サイクリングする事は不変で、それ以外で録画していたけど見ていなかったものモーリス・ユトリロ(日曜美術館)これはEテレで先月23日に放送されていたもの折しも【モーリス・ユトリロ展】|SOMPO美術館会期:2025年9月20日~12月14日/20世紀初頭のパリ
フランコ・ボニゾッリ(T)の最後の来日リサイタルの時であったかな・・・と思いだしています。ビゼー《カルメン》のホセ(ジョゼ)の〈花の歌〉を歌っている最中で彼の喉が急に苦しくなりました。ひーひー言いながら歌うという感になりました。しかし、性格表現としてはピカイチでした。喉の苦しさがホセの苦しみに直結したからです。ボニゾッリといえば、ときどき、「野放図」と言われていました。確かに…でも、あの〈花の歌〉は忘れ難いものです。今でも記憶にありありと遺っているのです。インヴァ・ムーラ(S)には一
2025年10月27日に訪れた花菜ガーデンの秋バラの様子です。花菜ガーデン【秋パラ:マリア・カラス】系統:HT、作出年:1965年、作出国:フランスNIKONZ8NIKKORZ50mmf/1.2S[50mm,f1.2,1/2000秒,ISO100]【撮影日2025.10.27】withND8Filter花菜ガーデン【秋パラ:マリア・カラス】系統:HT、作出年:1965年、作出国:フランスNIKONZ8NIKKORZ50mmf/1.2S[50mm
音楽雑誌さんからのご依頼で、先日、最後の来日コンサートを果たした(ご本人曰く『クラシックはこれが最後』)ナタリー・デセイさんの批評記事を書かせてもらいました。先ほどゲラ(校正刷り)があがってきたのですが、カラーページになっていて、その写真の素晴らしい構図に見とれてしまいました。自分の書いた文章が、この見事なショットに本当に合うのかどうかと思いつつも、編集者さんの感覚ではやはり、文章を読んでイメージが合う1枚を選び抜くそうなので、今回はそれで良いということなのかな・・・とも思います。ただ、ち
新国立劇場の演劇公演、『スリー・キングダムズ』最初から最後まで分からないことだらけなのに、非常に面白かったのでした。役者さんとキャラクターが、良く合っていたのかなと思います。演出家の上村聡史さんという方が、なるべく客席をほぐそうと努めて居られることもよく伝わってきました。「分からなくても楽しい」という境地、自分の専門分野では味わいにくいので(理解しなければと頑張ってしまうから)、専門外のジャンルに触れる重要性や有り難さも感じました。かなりどぎつい言葉が飛び交うステージですが、題材が厳し
12月2日がお誕生日の有名人・著名人1885年生(1950年64歳没)ジョージ・リチャーズ・マイノットさん医師悪性貧血患者の治療に成功1893年生(2002年108歳没)レオ・オーンスタインさんピアニスト・作曲家1915年生(2016年満100歳薨去)三笠宮崇仁親王殿下皇族大正天皇の四男昭和天皇の弟1918年生(1990年満71歳没)高峰三枝子さん女優、歌手『犬神家の一族』1923年生(1977年53歳没)マリア・カラスさんソプラノオペラ歌手19
昨日のブログでは、スマートフォンの小さな画面で書いたことで、誤字が多くなり失礼しました。ハヅキルーペが欠かせません。今日も、仕事先から仕事先への移動中、急なメールに慌ててしまい、夕方の公園のベンチでハヅキルーペを取り出して、手帳をチェックしてしまいました。頭が悪いうえに目も悪くなって・・・耳も悪くなったらどうしよう?でも、そんなことを想像してもしょうがないのです。老いは必ず来る。フォーレやベートーヴェンのように、聴力を失っても作曲し続けた人もいます。オッフェンバックのように、「死の当
今年生誕百五十年のラヴェル。いろんな仕事を少しずつ頂戴しました。一度墓参したことがあります。パリのホテル近くに墓所ありと気づき、朝8時に詣でました。霧深いパリの朝。前日に小さな花束を買ってありました。門番さんは恐らくは退役軍人。姿勢良く体格良く、睨みを利かせます。近づいて会釈してお墓の場所を尋ねたらそのまま案内してくれました。すぐ見つかったからか、私の喜びようが半端なかったようで、その門番さんも笑顔でした。花束を供えて一礼し、写真を撮らせてもらいました。パリ・オペラ座の仕事で行
さきほど、明日批評させて頂く予定の演奏会のスケジュールを画面で確認して、開演時間を2時間も間違っていたことに気づき、衝撃を受けています。でも、それが「老い」の兆候でもあり、独りでやってゆくことの限界でもあるのでしょう。今の段階で気づけて本当に幸いでした。とはいえ、独りで進める職業なので、細心の注意を払ってスケジューリングを確認すべく動きますが、それでも、想定外のことが起きたりします。今までで一番驚いたのは、チケット紛失でした。窓を開けたときに風で飛んで行ったよう。数日後に部屋の隅から出てき
Katayamaさんのツーラン・ドットhttps://x.com/toorukatayama/status/1981703981614432628?s=46歌劇「トゥーランドット」マリア・カラスpic.twitter.com/MFBmtiRNV6—TooruKatayama(@TooruKatayama)2025年10月24日私のツーラン・ドット
Metライブビューイングで上映中の《夢遊病の娘》は、《夢遊病の女》と訳される割合の方が多いと思います。正確に訳すなら《夢遊病患者女性単数形》でしょうか(!)だから、雅語的な訳題があっても良いとは思うのです。《椿姫》も本来は《ラ・トラヴィアータ(道を踏み外した女)》ですが、原作に沿ってこういう訳題がついています。ただ、そのオペラの原作であるデュマ・フィスの戯曲は昔から結構訳されていて、古い記録を観ると『椿御前』とか『椿夫人』と訳されたりもしていました。《ルイザ・ミラー》も、本来のイタリ
マエストロEliasGrandy(1980-ミュンヘン生まれ)。ドイツと日本のハーフの方だそうです。東京二期会の《こうもり》を振っておられましたが、あまりにテンポ取りが精妙で感嘆しました。特に、オルロフスキーのクープレやファルケが主導するアンサンブル。なんというか、良いお風呂にじっくり漬からせてくれるかのような、自然な心地よさ。あざとくないのが好感触でした。カーテンコールで出て来られた時、それほど大きな体格の持ち主ではなかったのですが、指揮しているときの彼は非常にダイナミックでした。
世田谷区で仕事を終えて鉄道駅に向かっていた最中のことです。夜の坂道で、目の前を、太った犬2匹がよたよたと横切ってゆきました。しかし、太り方が半端ない。「あれってタヌキじゃないのか?」と思いました。犬とは思えぬよたよた歩きだし。こんな都会で!しかも、多分、つがいで2匹!野生の狸は初めて見たかもしれません。タヌキは日本固有の動物なのでしょうか?世界的に珍しいとは聞きました。タヌキで私が思い出すのは、子供のころに読んだ絵本で、おなかが減ったタヌキの子供が海岸近くをうろついていて、発電所に
DMMオンラインサロンさんで「オペラ研究家岸純信の『オペラ講座』ミュージカルからオペラへ」を開講しています。本日は、そちらで無料公開している動画を一つ挙げてみました。さっき作ったばかりの15分ほどの短いものです。最近日本で話題になったオペラ公演に触れる形で、オペラの世界により親しんで頂ければと考えました。また、ミュージカル・ファンの皆さまの主たる視点についても、オペラの専門家の感覚から、簡単に説明をさせて頂いています。お時間おありの方、どうぞご自由にご覧下さい!以下、DMMオンラインサ
先日、『レコード芸術ONLINE』でドニゼッティの《ロベルト・デヴェリュー》映像批評をさせてもらいました。以前、どこかの歌劇場の来日公演の時に解説を書いたことがあり、割と良く知っている作品です。でも、久しぶりに観て聴いて、「あああ・・・」と思わず笑みがこぼれました。この作品には、ロッシーニの《ギヨーム・テル》の有名なフレーズのもじりが入っているのです。他人の空似ではなく、どう考えてもドニゼッティの側が参考にしたとしか思えません。「初演当時からいろいろ言われていたのではなかったっけ?」
ブログを書こうにも、どうにも疲れていて、うまく書けません多分、今日中に追記すると思います。この前、原稿で、フランス語の綴りのアクセント記号を打ち間違えました疲労困憊で小さな文字がよく見えなかったので。老眼も進んで痛いですせめて眠りだけは確保したい。※※ここから追記分です結局、一睡もすることなく朝を迎えました放送用の原稿を書いていて、調べなおすポイントがいくつか出てきてしまったのでした今回私が解説するオペラには、なんと、商業発売されたCDやDVDがまだ無いのですこれ
新国立劇場で上演された《ヴォツェック》の批評を書いています。久しぶりにこの楽譜を引っ張り出しました。人生で、《ヴォツェック》の批評は2度目です。ドイツ語圏の作品では断トツに好きな一作でもあり、批評をさせて頂くのは光栄でもあるのですが、何せ難しいオペラで・・・でも、近代の作品だから楽譜の印刷は読みやすい。ありがたいです。この楽譜はヴォーカルスコアですが、中表紙にオーケストレーションの一覧もあります。EinPianino(III.Akt,3.Szene)の指定もあります。シュ
先日、藤沢市で上演されたモーツァルトの《羊飼いの王様》について、いまだにちょくちょく、お尋ねがあります。大勢の方がうっすらと感じておられることを文字にすると、「主人公のアミンタ役の音域が高い、というか高すぎる」のです。《魔笛》の夜の女王のように、「高い音」が出てくる役とは違い、羊飼いアミンタ(実は王子)の音域は「全般的に高い」のでした。登場のアリアの終わり方など、目を剥くものです。そこからそこに行って、さらにそこで止まって・・・五線譜の真ん中より下の音域は要らないよ、とモーツァルトが言ってい
1980年の12月に放送されたザルツブルグ音楽祭の《ホフマン物語》で、私の人生は変わりましたー高校2年生に、楽譜を輸入させたのですからね。そのインパクトは本当に大きなものでした。この頃の思い出に残る放送は、ミュンヘンの《アドリアーナ・ルクヴルール》:マーガレット・プライス主演ジュネーヴの《ドン・ジョヴァンニ》:ホルスト・シュタイン指揮、マリア・ユーイングがツェルリーナエクサンプロヴァンスの《イポリートとアリシ》:ジェシー・ノーマンがフェードル役ザルツブルグ音楽祭の《マクベス》:ゲー
「料理研究家リュウジのバズレシピ」という動画サイトで「揚げない鶏唐揚げの作り方」が出ていて、その通りにやってみたら、本当に鶏唐揚げ風の一品が出来てしまいました。鶏肉を切り始めてから所要時間10分ちょいです。驚きました。忙しいとき、鶏もも肉を切っていろいろまぶして、耐熱皿に載せて、上からサラダ油でも少し垂らして電子レンジで・・・それで、鶏唐揚げ風即席料理になるのです。本当に助かります。出来立てで温かいし。こんな風に、動画サイトから教わることは、非常に多いなと思います。柿の皮をむかずに食べ
仕事柄、演奏について批評文を書く回数が多いのですが、字数にも限りがあるので、ポイントを絞ったり、暗喩的な形で短く纏めたりといろいろ工夫しなければなりません。私は普段、フランス語や英語の批評を、海外のオペラ雑誌をもとに読んでいますが、ほとんどの執筆者の方は具体的です。「何をもって論拠とするか」が分かりやすいのです。あと、「譬える」文例も非常に多いです。歌手の歌いぶりをスポーツに例えたり、料理に例えたり、政治に例えたり(!)・・・そういう文章を40年来読んできたので、私も多少は影響されているのか