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お待たせいたしました。今夜は妊娠判定時のβ-hCGの値が低い時についてです。値が低くても妊娠継続することはあり得ます。4w2dでhCGが8程度あれば出産まで行く可能性はゼロではありません。理論的には、3w5dで判定するなら5未満でも出産に至る可能性があるということです。実際、数値が非常に低いと思われたがその後出産に至った方々は、最初から「可能性低いけど出産まで行くかも!」と分かっていたわけではなく、実際には判定時にまさか出産まで行くとは患者さんも担当医も誰も思っていなかったわけですが、様子
本論文は、細菌感染した胚の新しい対処法に関する症例報告です。F&SRep2022;3:168(中国)DOI:https://doi.org/10.1016/j.xfre.2022.05.002要約:3年間の不妊歴のある31歳の女性の採卵を実施し、20個の卵子に対して体外受精(ふりかけ法)を行なったところ、正常受精(2PN)9個、1PN3個、3PN以上2個、未受精成熟卵3個、未熟卵3個を得ました。しかしday1で、全ての胚に細菌感染(細菌混入=contamination)が生じて
リプロダクションクリニック「大阪」「東京」は毎日診療をいたしております。5月の松林の診察日については、下表をご覧下さい。診察日を記載していますので、お間違いないようお願いいたします。今月は学会のため一部変則的になっています。当院は、高度な診療を行うため、常勤と非常勤を合わせて、現在生殖医療専門医が23名おります。当院は松林、竹内、土信田、大原を中心に議論を重ね、一貫したリプロダクションクリニックの治療方針を徹底しておりますので、松林が不在の日にも不都合がないようになっておりま
俗にいう「遺残卵胞」に関する記事、第5弾です。すでに過去記事で何度も述べていますが、「遺残卵胞」というのは、俗称通称の類であって、正式な専門用語ではありません。以下の5種を中心とした月経中に18~25mm程度の卵胞のような所見が見える様々な状態場合を、十把一絡げにまとめて総称してしまったものが「遺残卵胞」です。5種類の内訳は、①黄体遺残②黄体化未破裂卵胞③単純性嚢胞(simplecyst)④機能性嚢胞(functionalcyst)⑤本物の卵胞となります
日本は世界で最も妊産婦死亡率(=母体死亡)が低い国の1つであり、おおむね出生10万あたり5人(約0.005%)、年間40人強です。これを多いとみるか少ないとみるかは色々感じ方もあると思いますが、率で言えばほとんどないように見えるし、いくら減ったとは言え年間出生数は100万人弱(コロナでその後さらに減ったが)おりますので、実数を見ると意外と多いなと思った方も多いかもしれません。発展途上国だと10万あたり1000人以上(1%以上)で日本の200倍の死亡率です。この数字を日本にあてはめたら、毎年
続きはいつなんだ、と外来で質問が何人かありました。お待たせいたしました、今日は体外受精に入る前の事前検査・体質づくり(下)です。よくある質問が、「サプリメントは何か飲んだ方がよいでしょうか」というものです。もちろん、不測のものがあれば補ったほうがよいことには異論はありませんが、自分にとって何が必要か、ということを知ることが大切です。リプロダクションクリニックでは、卵の質や数については「血中DHEAs、テストステロン、ビタミンD、甲状腺」について採血をして不足分を補っています。D
始まりがあれば終わりがある、不妊治療には様々な終わり方があります。理想は無事に妊娠出産し、欲しいだけ出産してやり切って治療を終結するパターン。1人でよいという方から、4・5人目を治療する方まで様々です。1人目は出産できたが、2人目治療でうまくいかず、様々な理由で治療断念という方もおられます。子育てをしながらの通院は、時間的な制約も大きく、また経済面では治療費の工面自体はできたとしても、(夫婦だけの時は節約しながら治療もありだが)できるかどうか分からない2人目のために目の前にいる子に十
今日は、「排卵」をどう診断するのか、お話してみたいと思います。排卵時に起こることは、①排卵直前におりものが増える(排卵の兆候というよりE2上昇の兆候なので、E2が上昇している状況なら排卵前でもおりものは増える)②排卵直前まであった卵胞が排卵後にはなくなる③排卵後には排卵側の卵巣付近に腹水がたまる(ことがある)④排卵前と比べて排卵して3~4日後から内膜の見え方が変化する⑤卵胞期に上昇し続けたE2値は排卵直前から低下をはじめ、排卵ごろに最低値を示し、再上昇する⑥卵胞が1個の場合、P
こんにちは⭐⡱もうポカポカで春の陽気ですね('ω')/もう眠くて眠くて....夕方が近づいていつも後悔何もしない日々が更新されていきます笑さて、先日書いた膣錠の続きです(ノД`)わたし肌が激弱で膣錠との相性は最悪....最初のウトロゲスタン膣錠ではドロドロとした残骸がおりものに混ざってでてくるのでお股はめっちゃ荒れました。赤くただれて痒い.....なんなら腫れ上がってました笑しかしリプロの内診では何も言われず自己申告で塗り薬を処方して頂きました私のウトロゲスタン膣
Q地方在住、41歳一人目も体外受精で妊娠出産し、現在二人目希望で通院中です。一人目のときから胚盤胞は得られやすいのですが、グレードのいい胚を移植してもなかなか妊娠しないという現状があります。子宮鏡検査や、血栓関連、自己抗体などは調べ、原因不明と言われています。一人目は何度か移植して、原因は特定できてないもののプレドニンとアスピリンを処方され、妊娠しました。二人目の治療はこれまで、2つの病院で5日目胚盤胞を計5回移植しました。そのうち3回は市販の妊娠検査薬(感度50mlU)でBT5〜10くら
本論文は、ART治療(体外受精、顕微授精)における卵巣過剰刺激症候群(OHSS)のリスク予測モデルの検討です。F&SRev2025;6:1(英国)DOI:10.1016/j.xfnr.2024.100086要約:2023年10月までに発表された14論文782名で、ART治療におけるOHSSリスクの予測モデルについて評価しました。最大の予測因子は女性年齢(7論文)で、次点に卵胞数(6論文)でした。内部検証済みは42.9%(6論文)でしたが、外部検証済みの予測モデルはありませんでし
Qリプロ大阪にて第一子を無事に授かり、現在第二子を妊娠中です。本当に人生が変わりました。ありがとうございます。第三子を考えておりますが、どうしても気になることがあるのでご質問させていただきたいと思います。ホルモン補充療法をすることによって、体への負担、がんリスクが気になります。2人ともリプロ大阪でホルモン補充により授かりました。採卵一回、移植は第一子は1度で授かり、第二子は3度目で授かりました。移植で使った薬により体の倦怠感がひどく、精神的にも苦しかったです。移植が続くとやはり、体に薬が
胚盤胞でしか移植・凍結しないクリニックでは、良くも悪くもこういう悩みはないのですが、初期胚でも凍結できる、あるいは自分で選択可能となると、なかなか決められない命題が、「胚盤胞まで培養するか、初期胚で移植・凍結するか」です。胚盤胞でしか移植・凍結しないクリニックの言い分は、「胚盤胞のほうが妊娠率がいいから」ということなんですが、確率なんて誰にでも当てはまるものではありません。例えば、大学受験予備校でA塾とB塾があったとして、仮にA塾のほうが合格率が高い、みたいなデータがあったとしましょ
Q36歳、リプロで凍結胚盤胞を移植し2人目妊娠中、第1子は5歳男児で保育園に通っています。妊娠26週頃、頸管長が23mmで管理入院を1週間ほどしました。その間はウテメリン分3の服用と、NSTを1日2回行いました。入院中、張りは一度も確認出来ませんでした。退院後も頸管長はほぼ変わらず自宅安静をしていましたが、妊娠30週頃20mmを切っており、本当であれば即入院と言われましたが自宅安静で過ごしています。海外では切迫早産の指摘があっても長期入院や点滴管理は行わないことがスタンダードだと知りました
よく、子宮内膜が厚いから生理の量が多いとか、子宮内膜が薄いから生理の量が少ないなどと言ったりします。これってどのくらい正しい考え方なんでしょうか。そこで今日は、この推論はどのくらい正しいのかを数学的に考えてみましょう。ということで、一体何のブログだって感じですが中1にタイムスリップ♡では早速子宮内腔の体積(容積)はどのくらいなのか考えてみましょう。本来は境界線は曲線ですからいくつかの部分に分けて近似式作って積分してもいいし、エコー写真をAIに読ませて面積求めて回転させて体積ですってことにして
本論文は、自然妊娠とART妊娠(体外受精、顕微授精)における胎児発育曲線を算出したものです。F&SRep2025;6:52(スイス)doi:10.1016/j.xfre.2024.11.008要約:単胎妊娠1,061名を対象に、ART妊娠716名合計2,803回の胎児計測値と自然妊娠345名合計1,143回の、妊娠4週6日〜10週6日の頭殿長(CRL)に基づく胎児発育曲線を作成しました。CRLはART妊娠よりも自然妊娠で有意に大きくなっていました。既存の胎児発育曲線(Robin
本論文は、TESE精子の受精率、胚盤胞率を検討したものです。F&SRep2025;6:31(米国)doi:10.1016/j.xfre.2024.11.007F&SRep2025;6:15(米国)コメントdoi:10.1016/j.xfre.2025.01.012要約:2017〜2023年に、精巣精子(TESE)を用いた顕微授精(ICSI)を行った91組120周期と対照群114組122周期(原因不明不妊症、精液検査正常、射精精子を用いたICSI)の培養成績と妊娠成
Q初回妊娠(人工授精)12週目で心拍停止を確認し稽留流産と診断されました。大きさは9w相当であったので、心拍確認後間もなく停止したのだろうと思います。自然排出か手術(吸引法)かの選択で、手術を選びました。手術は稽留流産診断後、2週間後に予定を組んでおりましたが、入院前日にロキソニン内服で軽快する腹痛があり、自然排出しました。その際、夜用ナプキンが2分程でいっぱいになる位の出血があり、カウント出来る範囲で420gとトイレへ流れ出た量もあります。病院へ行き診察時に再度出血し、内診中に600以上出
Q地方に住んでおり、田舎なため今現在通っている不妊治療クリニックしか通えない状況です。そのため、通院中のクリニックでやっている人工授精の方法が正しいのか先生の意見をお聞きしたく、メッセージを送りました。今通っているクリニックでは卵胞チェックを行い「○日に人工授精をしましょう」と数日前に人工授精の日程が決まります。そして人工授精前に卵胞チェックをしますが、17ミリの卵胞で人工授精をする、ということが続いています。「○日に人工授精」と決まっていても、直前の卵胞チェックで卵胞が小さいと延期になりま
過去に何度か書いていますが、筆者は「妊娠率」という言葉が好きではありません。一見、いかにも分かりやすい言葉でありながら、曖昧で相手を煙に巻き、多くの誤解を生む言葉だからです。妊娠率を語るならば、少なくとも少しでも専門家を自任する先生方が何か書くときは、それが文脈からどれであるか明確でない限りは「採卵あたりの(累積)妊娠率」「採卵あたりの(累積)生産率」「移植あたりの妊娠率」「移植あたりの生産率」など具体的に記載するべきです。さて、いきなり脱線してしまいましたが、本題に入りたいと思います。P
IgA腎症と妊娠に関して時々質問がありますので、最近の論文をご紹介します。①AmJNephrol2016;44:187(中国)doi:10.1159/000446354要約:2015年までに発表されたIgA腎症と妊娠に関する4論文のメタアナリシスを行いました。IgA腎症の273名376妊娠とIgA腎症で妊娠していない241名を比較しました。妊娠の有無によりIgA腎症の腎機能に有意な変化を認めませんでした。しかし、IgA腎症合併妊婦では、死産が12.2倍、早産が8.5倍、低体重
本論文は、ART治療(体外受精、顕微授精)と重度の母体合併症の関連についての検討です。FertilSteril2025;123:262(米国)doi:10.1016/j.fertnstert.2024.09.015要約:2019〜2022年に出産した低リスクの妊婦(産科合併症指数OB-CMIスコア0)39,668件を対象に、ART治療と重度の母体合併症の関連について後方視的に検討しました。454件(1.1%)がART治療で妊娠していました。重度の母体合併症は2.4%(94
以前も書きましたが、日本は世界で最も妊産婦死亡率(=母体死亡)が低い国の1つであり、おおむね出生10万あたり5人(約0.005%)(年間40人強)です。これを多いとみるか少ないとみるかは色々感じ方もあると思いますが、発展途上国だと10万あたり1000人以上(1%以上)で日本の200倍の死亡率であり、この数字を日本にあてはめたら、毎年8000人以上が出産で亡くなっている計算になりますので、日本の周産期医療がいかに優秀であるかがお分かりいただけるかと思います。また、母体の生命だけでなく、胎児・
Q第2子希望、リプロ大阪通院中これまでに前院で7回、リプロで2回の採卵を行いました。AMH1以下なので数はそれほど期待できません。リプロでの1回目の採卵で10mm以上の卵胞数(右2個、左5個)に対して回収個数(4個)が低めでした。その際に医師に口頭で4つ採卵したが右から3つ取れた旨を伝えられました。そのため、2回目の採卵で左右それぞれから何個取れるかを確認していただきました。その結果、10mm以上の卵胞数(右1個、左2個)に対して右から1個のみしか採卵できませんでした。前院では左右どちらか
・・・こんな題名の記事を書くくらいだから、2倍にはならないんでしょうけど、じゃあどうなんでしょうか。ということで、今日は、2個移植について、数学的見地から解説していきたいと思います。もちろん、人間の体はそんなに計算通りにはなりません。理論値と実測値は常に異なります。とは言え、理論値上はどうなるのかということを知っていることは大切なことです。女性年齢28歳で良好な胚盤胞(4AA)が2つあったとしましょう。移植は今回で初めてだとします。初回の移植で1個移植を行って妊娠する可能性を仮に60
体外受精(採卵)にあたっては、一般的には排卵抑制を行っていますので、採卵の約34~38時間前にトリガーとして点鼻薬かhCGなどの注射が必要であり、これをしなければ成熟卵は得られません。従って、採卵日は、採卵日程を決定する日から日付でいうと2日後以降であることが99%です。一方、自然の排卵の場合は、発育する卵胞から分泌されるE2が増加すると脳からLHの律動的分泌が起こり(LHサージ)、排卵が起こり、排卵となります。いわゆる排卵検査薬は、排卵そのものではなく、その前のLHサージを検査するキット
卵子の成熟については、以前の記事で詳しく解説しました。以前はいかに成熟卵を取るかということを書きましたが、今日は「採れた卵子が未熟卵だった場合」について説明します。卵子の成熟には様々な過程がありますが、学術的なことはさておけば、生殖医療における卵子は、2つの段階の未熟卵「GV卵(germinalvesicle)(第一減数分裂前期、もしくは卵核胞期:卵核胞という核が卵子内に確認できる状態)」「MⅠ期(第一減数分裂中期:卵核胞が消えた状態)」(GVのほうがより未熟、MⅠのほうがまだ成熟度が高
AMHは、卵子の数を推定するのにとても重要な検査です。数年前までは自費でしか検査ができず、2022年からは一部保険適用で検査できるようになりましたが、体外受精を前提とした場合のみで、これから妊活を始める段階では自費でしか検査ができませんでした。しかしごく最近になり、不妊症という病名がつく状況であれば誰でも保険で検査できるようになりました(ただし保険で検査できるのは半年に1回)。「AMHは残りの卵子の数を調べる検査です」とか「卵巣年齢の検査です」という説明がよくなされますが、大筋ではそんな感
Qリプロ東京に45歳から転院し、現在47歳、第3子治療中前医にて、第1子、第2子ともにホルモン補充周期、SEET法+単一胚盤胞移植で、第1子は初回移植、第2子は子宮内膜ポリープ手術後初回移植(移植は2回目)で出産しています(41歳と43歳で出産)。44歳より前医にて第三子治療を開始しましたが結果が出ず(帝王切開既往のため単一胚盤胞移植、新鮮胚1〜2個移植→全て陰性か一桁台のhCG)、リプロ転院後採卵し、今までに胚盤胞移植4回行い全て着床、3回妊娠、3回流産です(転院後の2年前に行ったリ