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★★★「谷から来た女」「ひとり、そしてひとり」「誘う花」「無事に、行きなさい」「谷へゆく女」「谷で生まれた女」6話収録の連作短編集。渦巻柄が描かれたアイヌ文様の装丁が目を惹く。アイヌの出自を持つデザイナー・赤城ミワを軸にした物語。時系列はバラバラだが読み進めるうちに赤城ミワという一人の女性の輪郭や姿形が浮かび上がって来る。様々な差別を受け続けたアイヌ民族。だがミワは誰かを恨むでもなく、常に凛とした態度を崩さず包容力すら感じさせる。ミワと関わる事で己の愚かさに
似鳥鶏さんは1981年千葉県生まれ。千葉大学教育学部を卒業し、北海道大学法科大学院で司法試験の勉強をしていました。そんな中、2006年に鮎川哲也賞に応募した「理由あって冬に出る」が佳作入選し、翌年に作家デビューしました。司法試験はあと10点くらいだったそうですが・・・日常の謎系の青春ミステリを得意としていますが、テンポよくコミカルな語り口の中で、極めてトリッキーな仕掛けがあったり、事件の陰に深刻な事情や社会問題が隠れていたりして油断がなりません。また、叙述トリックのみの短編
阿津川辰海さんの作品を読むのは、「紅蓮館の殺人」、「蒼海館の殺人」、「透明人間は密室に潜む」に続いて4作目になります。上記はいずれもガチガチの本格ミステリで、論理の積み上げによる謎解きや伏線の妙で評価が高い作品でした。(それぞれ”このミス”6位、5位、2位)これらに比べると本作は肩の力が抜けた学園ミステリ連作集。昼休みに学校を抜け出してラーメンを食べに行ったり、マドンナへの告白権利を賭けた消しゴムポーカー大会を繰り広げたり・・・これぞ青春!と言うべきエピソードの数々を楽しんで
砂原浩太朗さんの作品を読むのは、「高瀬庄左衛門御留書」、「黛家の兄弟」に続いて3作目になります。これらは架空の藩である神山藩を舞台としたシリーズ物の長編時代小説で、藤沢周平を思わせる端正な文章とストーリー展開の妙でとても楽しめました。今回は上記2編と異なり、神宮寺藩の差配役・里村五郎兵衛が主人公の連作短編集です。本作も面白ければ、青山文平さんと同様、全作品を追って行くことになりそうです。里村五郎兵衛は、神宮寺藩江戸藩邸差配役を務めている。陰で“なんでも屋”と揶揄される差配役