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ひとすじの光、闇を裂いて——月に触れぬまま燃え尽きた、名もなき星。君の微笑みも春の幻のようで、触れようとした指先から崩れるように零れていった。「待って」あの夜に叫んだ声は風に攫われ、帰らぬ季節のどこかへ消えていく。残されたのは、蒼く揺れる軌跡だけ。それが、いまも掌に灼きついている。(……だから、せめてもう一度だけ、あの月を、追わせてほしい)FleetingStarChasingtheM
気づけば、あの日こぼれた涙も夜空のひとかけらに溶けて、もう名もない記憶。歩いた。月のひかりにすがりながら影しかない道を、ただ一人、音もなく。振り返るたび、かすれた足跡が風にさらわれていく。「寂しかった」と誰にも届かぬ声で呟いた、凍える夜。それでも、今ここに、まだ立っている。冷たい風が何かを確かめるように頬をなでる。(……そうか。痛みも、迷いも、すべてが——“生きた”という証だったんだ)
一春風の駘蕩(たいとう)に、花びらは散りゆけど、──その隙間よりこぼれ落つ、一筋の淡き陽(ひ)かな。二「もはやよし」と囁く声、土の下より芽は伸びぬ。──忘れ草静かに揺れ、今を生く名もなき花。三空の青を吸ひ込みて、痛みさへ軽くなりぬ。──駘蕩とは斯(か)くも優し、悲しみを包むもの。一春風がふわりと吹いて花びらは静かに散るけれど──そのあいだからこぼれ落ちるかすかな一すじの光二「もう
一幾たび巡る春の陽(ひ)に、同じ枝に同じ花。──露と散りて土に沁み、また咲くは懺悔の色。二「忘れよ」と風は吹けど、名もなき罪、葉を揺らす。──せめて今生朽ち果て、灰と成りて返らずとも。三永久の川を渡る舟、積める荷こそ古のまま。月影欠けしがごとく、沈みゆく彼方の岸。一何度でもめぐる春の陽に同じ枝には同じ花が──露となって散り、土にしみまた咲くのはきっと悔いの色二「忘れなさい」と風が吹い