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二十一世紀生まれとして初めて、『ゲーテはすべてを言った』(朝日新聞出版)で芥川賞を受賞された鈴木結生[すずきゆうい]さんは、本の奥付に「YouiSuzuki」というローマ字表記をされています。「you」を「ゆう」の綴りにしているわけですが、ルー大柴さんの「ユー」のように、英語の単語「you」が思い浮かぶものです。おもしろい!いかにもこの小説の作者らしい遊びだと思います。もちろん「文字どおりに」読むなら、言い換えれば筆者が「かな置き換え方式」と呼ぶローマ字表記なら、「よう」と「読まれ」ま
遠野遥「破局」(「文藝春秋」、2020年09月号)遠野遥「破局」は第百六十三回芥川賞受賞作。高山羽根子「首里の馬」ががっかりする作品だったので、遠野遥「破局」もつまらないだろうと思い、読まずにほっておいた。そのまま、ごみに出してしまえばよかった。遠野は「受賞のことば」で傘のシーンについて「自分の実力を超えた文章」(が書けた)と書いている。その部分は、たしかに美しい。私は鞄から折りたたみ式の黒い傘を取り出した。灯は一本の傘にふたりで入ればいいと言って、自分の傘をつかおうとしない。ふたりで