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「この船は明日神戸に着く。神戸に着いたらこのルートで船を降りて。」春馬はそう言って船の見取り図と港の地図を渡した。「サンキュー。色々と世話になったな。」おれが春馬とはじめて会った翌日。おれはキズが化膿して高熱を出した。春馬は危険を承知でおれの看病に何度も通ってくれた。「ダニーは……おれの恩人だった。おれ、孤児なんだ。アメリカで幼い時に両親を亡くしたんだ。観光でアメリカに行っていたらしいけど、そこで交通事故に遭って親を亡くしたんだ。そんなおれをダニーは引き取って育ててくれた。そしてダニ
ダニーが命を懸けて繋いでくれたおれの日本への密航ーー。もう貨物船に乗り3日が過ぎた。ダニーの命の灯が消えた後、おれはソニアに背中を押された。「ダニーが繋いだ道を絶たないで、リョウ。私は平気。表の世界で生きて行く。今度こそ、本当に。カオリさんと……幸せに。」ダニーのまだぬくもりの遺る身体を抱き締めてソニアは言った。「スティーヴ、リョウを案内してあげて。リョウ、さぁ、早く。」おれのキズはまだ完全ではない。だが、ダニーの思いをムダにすることは出来ない。「ソニア、すまない……。」「うう