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話は数時間前に遡る。◆白衣のポケットからバイブ音がした。院内用のは首にぶら下げてるので、私物の携帯だ。誰だろうと取り出すと、そこには予想外の名前。「え?も、もしもし?サトシクン?どうしたの?」『驚き過ぎだよ。翔君』そりゃ驚くだろう?だって彼は長い休暇中。彼は仲がいい人達にも[色んなことから完全に離れたいから、緊急時以外はしばらく連絡してこないで]と、連絡していた。もちろんメンバー3人はそれに該当しない。だけど、俺は『その以外の人間』側だ。だから全くしなかったし、彼からも連
少し震える指で数字を押す。数秒後に電話越しに伝わってきた声。彼の少し低い声色のそれは、君と俺を結ぶ頼りない細い糸のようにも思えた。◆「俺、本当に芸術わかんないよ。それでもいいの?」「うん、それの方がいいんだ。感想とかがあるともっと嬉しいけど」名刺に載っていた番号は会社携帯のもの。不安とは裏腹にすぐ繋がり、あっけなく会う事ができた。翔君から指定されたのは、駅近くの有名なカフェ。最初は少し警戒していたようだが、俺が『スランプ気味で、同じ芸術家仲間ではない人にまっさらな状態で
Sside『翔・・・わかってる?私の名前は"じゅん"じゃない。"じゅんな"よ。』純名を抱きながらも潤の名前を口に出していた事を指摘され、ハッとして動きを止めた俺を残し純名は寝室を出て行った。似た名前の上、潤との事など知る訳がない純名だけど、自分ではない他の人の名を呼ばれていた事に勘のいい彼女は気付いたのだろう。純名は何も悪くない。あの頃と何も変わらず魅力的な女性だった。そんな彼女を抱いていても、もう前のようには満足できず、潤の事ばかり考えてしまう俺が何処どこまでも身勝手な男な
「ど、どうしたの?」いきなりの登場に、思考も身体も固まってしまい動けない。動揺からか、返事の声が小さくなった自分に驚いた。「潤、大丈夫?」翔君は大きめな声。この辺りは閑静な住宅街だし、感情に響くんじゃないだろうか?って心配するほどに大きくはっきりした声だった。「翔君、もう少し声小さくした方が…あと大丈夫だよ。ってか、なにが『大丈夫?』」心配されるようなことは何もない。だけど翔君が血相を変えてる理由が、もし俺の心配なら。そうならすごく嬉しいのだけど。縁側から入ってこようとしてる
妄想小説です。ご注意ください。BLの意味がわからない方はブラウザバックでお願いします。和の助言、そして時代の情勢から潤たち【J・キッド】は海賊としての活動を再開することはなく、この場所で【便利屋】として生きていく決断をした。潤は和に頼まれて週に2〜3回、彼の家に通って掃除や料理などのヘルプを続けていた。あの場所は潤にとって、今は少しだけ辛い場所でもある。けれど和が自分を心配して声をかけてくれているということ理解はできていて、潤は彼の厚意を素直に受けることにし
二宮はその日、途方に暮れていた。…この状態、いつまで続くんだろ?呆れるやら感心するやら、だ。目の前にはやつれているが、濃い顔のイケメンがひとり。ソファの上から全く動かず、作品がぎゅっと詰まっているファイルを眺めている。だからと言って仕事をしているのではない。何故ならその赤いファイルの中身は、写真や絵など手法は違えど同じ人物。幾つしむように指でなぞり、眺める。この動作をずっと繰り返しているからだ。彼はその人物から目を離さず、そして何度目になるかわからないため息をついたとき、二
Ssideベッドルームに戻ってみたが、潤は相変わらず夢の中の住人だった。潤に背を向けるよう、俺はベッドの端に腰かけた。自分がオメガだと潤にばれていたのは想定外だった。うまく隠せれていると思っていたからだ。どうしようか・・・こいつに口止めする?・・・・・・でも、わざわざ口止めをしなくても、こいつは言いふらしたりしないだろう。だって、今までも知ってはいたのに誰かに話した様子がないからだ。・・・このままで、いいか。ふと、振り返って潤を見た。(かわいい寝顔、してんな
妄想小説です。ご注意ください。BLの意味が分からない方はブラウザバックでお願いします。「翔・・・俺は風呂の準備をしていただけだ」「・・・なんで?今までは一緒に起きて、一緒にやってたのに・・・!」泣きながら訴える翔に、「あー・・・翔・・・その姿で和の前に出る勇気あるのか・・・?」潤が翔を抱きしめて背中をポンポンしながら困ったような声色でそう言うと、「・・・へ?」翔は漸く自分の状況を確認して、「え・・・?・・・・は?」真っ赤になった。
こちらはBLの妄想小説になります。苦手な方は御遠慮ください。****************お互い程よく酔った頃、どちらともなくいつものようにベッドルームになだれ込んだ。うつ伏せにされた俺の背に、それでも自重を支えながら程よい圧迫感だけを乗せて覆い被さる潤が、俺のいいところを執拗に攻める。「ね…ここだよね、翔くんが好きなとこ」「っ……んッ」「声、聴かせてよ」潤は俺の声を聴きたがる。俺だって潤の要求ならできればきいてやりたいけど、プライドが邪魔をしてず
Sside「ね、しょ、く、ん。キモチイイ?」「ちがっ、ちがっ」「ね。ちがわ、ないよ?オレ、キモチイイ」「じゅ・・・い、ああああああああ!」「ね、キモチイイ、ね」俺のハジメテ体感する時間。こんなハズないのに、こんなハズないのに・・・潤は、潤は。いつも、いつも。甘ったれて、わがまま言って、すぐ拗ねて、ふくれっ面がかわいくて。従順で、照れて笑う姿が、ああ、潤だなって・・・「しょおくん、目、開けて。オレ、見て、ね?」いつもの潤の声がする。ああ、終わっ
翔君は何も言わない。我儘も言わないし、会いたいって言葉も一度もない。望むのはいつだって俺。でも、それでも良かった。側にいてくれるだけで嬉しかったんだ。だって、好きだった。初めから好きだったから。俺たちは大っぴらには言えない関係で。まっすぐに伸びてる翔君の道と、複雑に入り組んでる俺の道。各々の二つの未来への道は、最終的に交わる事はない。それを知りつつも、翔君が気づかないのをいいことに、誤魔化すように関係を続けてきた。それは、全てあなたが好きだったからだ。◆あの日、翔君は爽
こちらはBLの妄想小説になります。苦手な方は御遠慮ください。****************「あ!松潤もしかして道着姿見たことないでしょ」着いたのは剣道部の活動場所、第二体育館。中を覗きながら背後の松潤に話しかけた。けど、松潤からの返事はない。そりゃそうだ。今の発言もきっと良い気はしなかった、よな。なんだかもう、翔ちゃんに関しては全部がマウントみたいになっちゃうのは自覚してた。ごめんと思いながら、でもこれくらい許してよとも思ってる。「先生いないじゃん」
妄想小説です。ご注意ください。BLの意味がわからない方はブラウザバックでお願いします。「・・・なぁ、翔・・・海に行ってみないか?」あの日から数日後、午前中の家事を終えた潤が翔を散歩へと誘う。「・・・海・・・は・・・怖い」翔は潤の誘いに戸惑い、不安げな視線で彼を見つめ、「俺も一緒に行く・・・」半ば強引に腕を取った潤に、「・・・ジン・・・?」翔は引っ張られるような形でついて行く。やがて波の音が聞こえるくらいの場所まで辿り着き、小さな路