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俺の好きな食べ物を3段の重箱にぎっしり詰めて持ってきた母ちゃん「美味い!」どんな高級な料理もどんな美味しい料理も母ちゃんの味には勝てないもう二度と食べられないって諦めてただから・・・鼻の奥がツンとしてちょっとだけしょっぱく感じる「ほんと?」俺が食べる度に顔を覗き込んで味はどうって顔をする?「ずっと食べたいって思ってた・・・偶に自分で作る時この味を出そうと頑張ってみるんだけどどうしても同じにならないの何が足りないのかなって・・・
何から話して良いのか考えてしまうけど先ずは・・・確めなくてはいけないことがある「不躾な事は重々承知していますですが・・・最初にお伺いすべきだと思いました正直な気持ちを聞かせてください」お母さんも同じ気持ちのような気がした翔君が居ない処で聞きたい事があるはず「何なりと聞いてください」お母さんはある程度予測していたのか落ち着いた様子で小さく頷いた「翔君から僕のことを聞いた時どう思われましたか?同性の恋愛、それと・・・」「一族の事です
親子水入らずんでゆっくり過ごして欲しいアトリエの倉庫と化してる部屋で画伯の写真集を眺め乍ら思う「サクちゃん、俺たちこのまま帰るから後は任せて良い?」画伯が部屋の鍵を僕の目の前で見せる「良いですけど・・・もう帰りますか?」一人だと少し淋しい気もする「3人とも残ってると暁さんが気を使うでしょサクちゃんは寝室で寝転がってな」「ドアに貼っておくから」翔兄が紙きれをヒラヒラさせる『俺たちは家に帰りますご両親がお帰りになる時サクちゃん
収録の時には、もう出血も収まって腫れもなかったから、メンバー以外は知らない秘密になった。帰り支度をしていたら、当然のように松本が智君のところに来て〔このあと、すぐに行ける?〕って聞いていた。自分で撒いた種とはいえ、こんな時にアルコールはダメだろ「それは、やめた方が良いんじゃないかな?」思わず本音が口をつく〔へぇ、そんなこと言えた義理かな?誰がそうしたんだよ〕松本は即、挑んでくるような眼をしてきた。殴りたかったのは、お前の方なのに……『やめてよっ!もうっ……翔君だってやりたくて
路地裏の小さな店お洒落でも何でもないけど店の名前になってる『カンテラ』手提げ用のランプを指す暗闇を照らす希望の光それとも仄かな灯りの元に集う人の憩いの場って意味かな?マスターに聞いても答えないだろうな「スペイン語だって知ってた?」って言いそうだけど狭い階段を上がっていく一つ飛ばしは難しい段差ここが憩いの場所だって気が付く人しか入れない不思議な喫茶店踊り場で深呼吸翔のお母さんがいるどんな顔をして入ればいいのか?両の人差し指で口角をあげて『にっ!』笑
画伯がコーヒーケトルに水を入れてクッキッグヒータの上に置いたそれから手動のミルを手に取って二人分の豆を入れて挽き始める「かなり年代物のミルですね」「木で出来てるから?」ゴリゴリと音を立ててハンドルを回しながら俺の方を向く「カンテラのミルに似てますね」確かあれ年代物だと聞いたけど「似てて当然かな同じメーカのだから向こうのは年代物だけどこれは現代のだよ」「クラッシック調って言うのですね」「ここの取っ手を握って箱を引き出した時
貴方が俺に向ける視線がかなり痛い画伯から話は聞いたけど口止めされてたから言いたくても言えなかったの!っと心の中で弁解をしながら長の隣に座る長はずっと画伯の後ろの方を見つめている画伯の後ろに誰がいるのかは・・・俺には見えないけど翔兄がギョッとした顔で視線を長に向ける古の長の力は計り知れないその上、現代の長が力を増幅させるのだから実体になるのは朝飯前のような気もするがそれにしてもリアル・・・本当に隣に座ってる感じ息遣いまで聴こえてきそう『私は・・・
アトリエの扉は開けたまま描きかけの絵の前の丸椅子に座る肇の姿が見えた貴方がゆっくり中に入って隣りの丸椅子に座る「さっきは済まなかったな・・・八つ当たりも良い処だな・・・」肇は何も言わずに頭を左右に振る「先走ったのは翔じゃなく俺の方だ・・・肇の夢が自分事の様に嬉しくて・・・お前の夢はまだ卵なのに・・・勝手に孵化させようとした」肇の夢を俺たちの夢にしてたそれは否めない(俺も同じ)だから嬉しかった・・・「ううん・・・僕も・・・
待ち合わせ場所は『カンテラ』の最寄り駅と言っても電車で来るわけではないそう思って電車に乗ってるとメールが入った『待ち合わせの駅まで電車で向かっています』思わず椅子からずり落ちそうになった母は所謂箱入り娘のお姫様公共交通機関の移動は殆どした事がない(新幹線は別だけど)「電車に乗ってるの?」短い返信を入れる「ええ、電車って楽しいのねどっちの出口に行けば良いの?」どうやって駅まで来た?最寄駅からだと1番ホームだろうか『どの駅から乗ったの?俺も電車で
朝ご飯を食べて部屋の掃除を済ませたあと画伯に電話を入れた和也さんと一緒に画伯が迎えに来てくれることになった父ちゃんが真面目な顔をして俺の前に座る「智、今日は『行ってらっしゃい』を言わせてくれないか?」「いってらっしゃい?」どう言う意味か分からず聞き返すと父ちゃんの隣に座った母ちゃんが言葉を繋いだ「お父さんと相談したの二人で里に送り出したいってだって、この前は逆だったでしょ?」「『行ってらっしゃい』の言葉と『お帰りなさい』はセットだ
ゆったりと流れる時間の中で二人きりの時間を過ごした古の二人茜色に染まり始めた空を手を繋いだまま眺める「夏の空は陽が沈んでもまだ明るくて・・・早く帳が下りないかと心待ちにしたものだだが、今は瑠璃に染まるのを待って欲しいと願ってしまう」「夏の夜は更けるのが遅いからな・・・私も姿を隠してくれる瑠璃の空を心待ちにしていたふふ・・・お前の温もりを感じながら陽が沈むのを見られるとは・・・私も一緒に願うよ・・・」陽が沈み静まり返った都に虫の音と牛車
懐かしい音が聴こえる懐かしい匂いも・・・目を開けたら既に陽が昇ってていつ振りだろう・・・こんなゆったりとした朝を迎えたのむくっと起き上がって音のする方を見る「あら、起きたの?」母ちゃんが俺の方を向いてニッコリ笑った子どもの頃みたいで何だか擽ったい「おはよう・・・久し振りに寝坊した(笑)」「おはよう・・・あら、そうなの?」意外って顔で驚いた顔をする長の朝は早いんだよ「長の朝は早いからね」母ちゃんが可笑しそうに笑う「
部屋の片づけを済ませてダイニングに向かう翔兄が不器用な手つきで珈琲豆をミルで挽いてた画伯がキッチンで朝ご飯の準備見馴れた光景も今日で見納め何だかちょっと淋しい気持ちにもなる「おはようございます」「おはよう」二人が俺の方を見てにっこり笑う「翔兄、今日はゆっくりだね」「ふふ・・・お前ねぇ・・・今日は休日だぞ(笑)」呆れた顔で含み笑い「此奴も日曜は休みだ」画伯もクスクス笑う仕事を辞めてから平日と休日の感覚が全くないどれだけプ~太郎だっ
ぐっすり眠る翔の腕の中から抜け出しカーテンを開ける東の空の海と空の境目に曙色の筋が引かれていく陽が昇る前の一番美しい景色空に蒼が帰って来る瞬間床に座り朝の儀式を始める(かなり簡略だけど)その後は瞑想の時間心を無にして・・・『智・・・里を離れてる時ぐらいは儀式は必要ないと思うが(笑)』「そうですが・・・一日の始まりは儀式から瞑想一連の事をしないと落ち着かないので蒼穹殿とは蒼穹の一族を祀る祠だったのですね」『そう言うことになるな』
突然の思い付きで貴方に話してしまったけど実現可能だとタカを括ってた画伯の家に着くなり話をするといつも柔和な笑みを浮かべている画伯が難色を示した「サクちゃん・・・難しいかも・・・」「難しい?無理って事ですか?」「無理と言うか・・・何の準備もせずに会うのは無謀・・・」隣りで聞いてた翔兄が大きく溜息をついた「お前何も分かってないのな暁さんのご両親と逢うためにどれだけ準備してるのか分かってる?」「それは承知していますですが、先日
玄関の扉が開いて和也さんが貴方のご両親を中に入るように促すのが見えた画伯が満面の笑みを浮かべて「お待ちしておりましたどうぞお上がりください」そう言って壁側に身体を寄せる初めてお会いするご両親ドキドキが止まらなくて手汗が止まらない・・・その上・・・まともに顔を見ることも出来ない俺って意外と小心者?失礼のないようにお辞儀をして顔を上げる時にチラッとご両親を見る顔立ちは・・・お母様に似てる?鼻筋はお父様似かも?そんな事を考え乍ら中
まどろみの中で日が昇るのを待つ時間縹色が広がる空に白い雲が浮かんでた暗くても白く見えるから不思議だ着替えを済ませて下に降りて行く車を駅のパーキングに停めてそこから電車で向かうつもりだ「翔さん、おはよう」玄関ホールにあるソファーに座った母が笑みを浮かべて声を掛けてきた「母さん・・・おはようどうしたの?」母には2泊3日で翔兄の家に行くと伝えてある「早く出掛けるって言ってたから送り出してあげないとって思って」「その為に起きたの?」「そん
庭を眺めながらお茶を飲んだのはいつ振りだろう「あれからね、少し手を加えないようにしたの」庭に視線を残したまま茶目っ気たっぷりの顔で笑う「あれから?」「画伯が言ってたでしょ?」「ああ、そんなこと言ってたね」「そしたらね、不思議でしょなんだかホッとしたの・・」母がすごく穏やかな顔をした「ホッとしたって?」「庭木も自由に咲きたいわよね手入れは最小限で良いのそう思ったら何だか肩の力が抜けたの」母の言いたい事は庭木ではなくて
画伯に言われた通り、翔兄に電話をすると無駄な事は一切言わずに「今すぐ行く」とだけ言って電話を切ったあの人、ここの場所知ってる?そっちの方が心配になる「画伯、直ぐに来るそうですマスター・・・ちょっと電話して来ます」「径君に?」「ええ、心配してると思うので」流石にこの時間、屋敷表に出て居るはず「窓側で電話しなさい店は閉めるから客は来ないよ」俺が翔兄に連絡している間にバイトくんを帰して店を閉めたマスター(行動が早い)カウンター席の画伯は珈琲を
海岸線を車を走らせるてっきり貴方のご両親の家だと思っていた俺行先を告げられて面食らう「今日も画伯の事務所ですか?」かなり不満げな声を出してしまった「念には念を・・・ご両親の希望でもある」「ご両親の?」「子を想う気持ちからだよ万が一表沙汰になった時今以上に監視が厳しくなったら困るそれを懸念してのこと・・・サクちゃんが思うほど単純ではないよ」初めて見る画伯の難しい顔俺に同行して実家に行ってくれた時でも笑みを浮かべて飄々とした顔で
満開の花の様に満面の笑みを浮かべた四人その笑顔を見てほっと安堵した社長と副社長「智大殿、素晴らしい茶席をご用意くださり感謝申し上げます」翔旦那が社長に「さとし殿、二人を連れて来てくれて本当にありがとうこのような花見なら何度でもと思ってしまいます」若主人がさとちに感謝を伝える「たのちかった?」「ええ、最高に楽しかったです」「今日の日は私たちの一生の宝となりました」二人が笑みを浮かべて頷き合う「よかっちゃ!おいらもなのだいじなだ
最後の花火が上がり気が付いたら離宮とは違う場所「ここはどこ?」「離宮ではないようだね」「あの場所でもない」「ああ、あの建物ではないな」4人で顔を見合わせて首を傾げていると「こちらはサクライ侯爵家のお城です私は最初からこちらに居ましたので」綾野君が真面目な顔で答えを教えてくれる「侯爵家・・・今でもいるんだな」現在の日本には貴族制度はない故に爵位を持ってる人はいない「侯爵家・・・それは何かの位か?」「翔様の時代で云う、
夕食を頂き、ここからは径君の自由時間となる(長はずっと離れの中)小瀧が来てからは径君も動きやすくなったそれまでは屋敷表には数名の当直がいたが現在、当直者はいない綾野君を筆頭に小瀧、径の二人が長の警護に当たるそこに和也は含まれていない(長老家は守られる方だからだ)そんな数名(一人は長当人)で警備が大丈夫なのかと思うかの知れないが屋敷の外には、警備員の詰め所があり数名が常駐し巡回をしているセキュリティ対策も万全だから心配はいらないつまり、長本人が屋敷内の巡回を行うのだか
裏通りの細くて急な階段・・・相変わらず看板はいい加減客に入って貰いたいのか貰いたくないのか未だ分からないお店(マスターらしい気もする)家に帰る車中で画伯から提案があった「カンテラってどんなお店?」その店の名が出たことが驚きで暫し固まり「カンテラ?・・・」って聞き返すのがやっと「カズの友人の高級cafeに入った事はあるけどカンテラは行った事が無い一度行ってみたいって思ってて」「綾野君のお店に行ったことあるんですか?」「絵のお礼にって
暁と耀の間に流れる溝はそう簡単には埋まらない気がした友人としてこの場にいる以上突っ込んだ話も出来ないそこは画伯が上手く取りなしてくれて差し障りのない貴方の話に花が咲いた花が咲けば咲くほどご両親の表情は淋しそうになっていく「一つお伺いしても良いですか?」画伯が『何を言う?』って顔でいつでもフォローできるように身構える「何でしょうか?」お父様が湯っ黒と俺の顏を見つめる「智君が里に行くのはいつ決まったのでしょう?」貴方が帰って来なくなった日まで何一つ知
静寂に包まれた暁殿の扉を引く綾野君御簾の向こうに頭を下げたまま微動だにしない影東家の次期長老紀之さんだ俺が座るのを確認して綾野君は定位置に着いた「長のお出ましでございますそのままお待ちください」そう言い置いて俺に対しての説明を始める「本日、東家の次期長老、紀之殿が帰国のご挨拶にお見えです発言をお許しいただけますでしょうか?」黙ったまま頷く「長のお許しを頂きましたのでどうぞお話しください」「綾野、特別な計らいを頂き感謝する本来、次
マスターに呼ばれ久し振りにカウンターの中に入った二人の事がかなり気になるけれどソワソワしながらマスターの顔を見る「櫻井君って、やっぱりせっかちだよね」『知ってたけど、これほど』っと言いたげな顔で苦笑い確かにせっかちではあるが今日のような状況下の場合大概の人はそうだと思う「時と場合に寄りますって最近は長くなった方だし・・・」「ふふ・・・短いって自覚は有ったんだ(笑)じゃあ、珈琲豆挽いて貰おうかな」え~っと・・・そこからそこに繋げる?
あまり動じない人だけどかなり動揺しているのが分かる前以って聞いていた俺ですら完璧に理解したかと問われたら自信はない(どうも怪しい)つまりは画伯マジックに惑わされたような感じなのだ想定外のことが起こると総じて人は無口になる貴方は部屋に入ってからもずっと難しい顔をして窓の外を眺めながら時折小さい溜息だけを溢す俺は何と言えば良いのか考えが纏まらず貴方の溜息の後同じように小さく溜息をつき漸く出た言葉が「智君・・・座らない?」だ気の利いた言葉すら浮かばない
月を眺めながら飲むお酒は大概、彼奴の事を考える偶に付き合ってくれるのは長付き合ってくれると言っても飲むわけではない昔話(千年以上前の)を懐かしそうに話してくれる翔様とのなれそめを話す時は頬を染めて照れくさそうな顔をする(かなり純情だったのも分る)身分は隠されていたけれどとても大切に育てられた皇子だったのが分かるいつ振りかな・・・誰かと一緒に飲むのは綾野君が夕食にお酒を用意してくれる時もあるが彼奴との電話があるから、殆ど嗜む程度「先輩、久し振りですね」グ
今日のお昼は画伯特製カレー智君が作るカレーの次に美味しいと思う俺にとっての一番は何が有っても智君のだからカレーのトッピングはハンバーグ(和也さんの好物)沢山の人が集まるからと辛口と普通のカレーが用意されている「智君は辛口?」「2種類あるの?」クッキングヒーターの上の二つ鍋に視線を向ける「画伯は辛いのが好きなの他3人は辛いのが苦手智君が唐いもの好きって言ったらこれ幸いに辛口カレーを作ってくれた」「そんなに辛いの?」それはそれは辛い一口で汗