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「女だ!女はどこじゃ!」息の根を止められた慶次を囲む武士たちはなおも数十人はいるだろうか。次々にかしらの武士を殺され、彼らは皆、狂気に取り憑かれているようだ。「あそこじゃ!」一人の武士が、浜の端にまで逃げた人妻の姿を見つける。どうやら男と一緒にいるようだ。「あれは女の旦那だぜ」「奪還しようってことかい。そうはさせまい」口々に言いながら、武士たちが再び走り始めた。彼らだけでなく、それまで呆然とした様子で見守っていた他の武士たちも、声をあげて一
「吉報じゃな、我らにとっては」隆景の一行が遂に離島するという情報を慶次がもたらした夜から、一月あまり。運命の日は、いよいよ明日に迫っていた。「でも隆景はどうしてそんな選択をしたんだろうね」漁で使う網だろうか、何やら巨大な網状の太い紐を手元で編みながら、弥太郎は吉蔵、そして疾風に声をかけた。夕食を終えた佐助は、既に大人たちの会話の意味がわかる年齢だが、それに気付かぬ様子で一人、土間の片隅に木片を積み上げて遊んでいる。「俺に見せつけるためだろう」手に抱えた冷
もう何度目になるだろう。慶次にとって、この天井裏に忍び込むことは、もはや日課のようになってしまった。疾風を誘うでもなくただ一人で、彼は深夜の静寂の中、漆黒の影となってそこに身を潜める。下界で繰り広げられる男女の抱擁、それが行われぬ夜は一度もなかった。合意など存在しない、ただ欲情に狂った男が人妻の肉体を好き放題にいたぶる時間。毎晩、東の空が白々と明けてくる時間まで、隆景は気に入りの妾と激しく愛し合った。島で生まれ育った人妻が隆景の女となり、既に数年が経過している
夫が見つめていることに気づくことなく、妻は別の男の指先で頂点にまで導かれた。ハアハアハア・・・・後方にいる隆景に身を委ね、桔梗は全身を心地良さで震わせている。「桔梗、今度はわしの番じゃ」布団の上に人妻を仰向けに組み伏せ、男は己の欲情を見せつけた。「なりませぬ・・・・」僅かに覚醒した桔梗が、艶めいた声で抗おうとする。しかし、そんな人妻の態度は、男を刺激するだけだった。「もうこんなになっているではないか」彼女の秘密を見つめ、隆景はそれをそこにあて
「なんと・・・・」星がいつも以上に綺麗な夜だった。だが、そこにいる男たちには、夜空に輝く無数の星の美しさに浸っている余裕はないようだ。島の南端。疾風、そして佐助が住む粗末な家。そこにいるべき妻の姿はない。既に寝息を立てている佐助のそばで、男たちが囲炉裏を囲んでいる。疾風、吉蔵、弥太郎。そして、今夜、はるばる島の北からやってきた一人の武士。秘密の会談は彼が持ちかけたものだった。「殿は島を出るつもりだ」「・・・・」「桔梗を連れて
「待たせたな。楽にせい」二人の前に遂に姿を現した男は、一段高くなった上座から高慢な口調で言い放った。伏せたままの吉蔵に対し、疾風は物怖じすることなく、顔をあげた。妻を奪い、その体を好きなように貪りつくそうとする男、隆景がそこにいる。「ほう。お前が桔梗の夫か」自身を睨みつける若者に、彼は興味深い視線を注いだ。「妻を返してもらおうか」遠慮のないその言い方に、隆景の脇にいた一人の武士が立ち上がる。今にも刀を抜きそうな気配の配下に、殿が穏やかな口調
「ここまで来いよ、桔梗!」「ねえ、疾風、待ってったら!」戦国の黎明期、天文年間。尾張の国では、後の歴史を大きく塗り替えることになる武将、織田信長がまもなく誕生しようとしている。だが、ここははるか遠く離れた、海の孤島。南国特有の眩しい日差しの下、走り回る少年と少女は、迫り来る戦国の騒乱など無縁の世界にいる。「今日の海はいつも以上に綺麗だぜ、桔梗!」粗末な小袖を身に纏った少年、疾風。疾風(はやて)、と名付けてくれた両親はもうこの世にはいない。彼が
断髪小説の新作ですお読みいただいたら幸いです断髪小説断髪×後悔今回はばっさり断髪に密かにあこがれる女の子のお話断髪小説が好きで自分も小説に出てくるような女の子と同じ経験がしてみたいと思うようになっていった後悔してもいい。そんな覚悟で実際、古びた床屋に行くことになるだが、床屋の椅子に座った瞬間から後悔がはじまり・・?今回はそんなお話をのぞいてみてください***********************真弥は刺激を求めていた全世界での新型ウイルスのせいで
4歳年下の妻は今年31歳。細身で背が高い妻は、飛び抜けて美人というわけではない。だが、どこか男好きのする雰囲気を漂わせた女性だった。私の不安を見透かすように、部長が言葉を続けた。「君には確か奥さんがいるだろう」「まだ去年結婚したばかりなんですが」「それなんだがな。今度の赴任は君には大きなチャンスだと思うんだよ」残酷な決断を促すかのような部長の言い回し。だが、その後に続いた言葉は意外なものだった。「条件と言っては何だが、赴任の辞令を出す前に
二人の後方から、勝ち誇ったような声が届く。「もう逃げられないぞ!あきらめるのじゃ!」長躯の武士が叫んでいる。その周囲には、弓を構えた何人もの武士たちが、矢の先端を疾風、そして桔梗に向けていた。「観念しろ!命だけは助けてやってもいい!」武士の言葉に、疾風は笑みを浮かべた。「俺はおまえたちの主人の命を奪った男だ!そんな戯言は信じないぜ!」草原の入口に並ぶように立つ武士たち。数十人、いや数百人いるのかもしれない。崖の端にいる二人とは、なおも距
「お母さん・・・!」・・・まぁ今回は前ほど短くはしないよね・・・千夏も渋々入る「はい、いらっしゃい!」千夏はギクっとしたあの時のおばちゃんだ。全然変わらない。いやむしろさらに貫禄が増したような・・・店の中は2年前と全く変わらなかったそして相変わらずお客さんがいない本当にやっていけているのだろうかそんな余計な心配をする千夏「この子をカットでお願いします」「はい。はい。お嬢ちゃん、こっちいらっしゃい」千夏はデジャブか?と思うあの時と同じ席に座らされる通行人から丸見え
「夜勤ばかりじゃ奥さんも面白くないだろう」同僚である酒井が、一度そんな風に尋ねたことがあった。私と同い年の彼は、転職組の私とは異なり、この仕事一筋の男だ。警備会社勤務らしく、筋肉質の引き締まった体躯。中学生の娘がいる彼は、私よりずっと落ち着いた雰囲気を漂わせた男だった。「大丈夫さ。妻も応援してくれている」「給料がいいから許すってわけか」「ああ。それに、彼女は夜も翻訳の仕事をしてるみたいだ」「そうかい」1年ほど前、彼は私の自宅に遊びに来たこ
なんか理由をつけて帰ろうかな・・・。そうだ、おなか痛いって言ってうそつくとか・・・。千夏は頭ではいろいろ考えるが、なかなか行動に移せないおばちゃん美容師はカットの準備をすすめている千夏は立ち上がろうとするが、なかなか腰があがらない急に帰ったら変って思われるよね・・でも帰りたい・・帰ります。この一言がなかなか言えない千夏は家族や友達以外には極度の人見知りなので、人に何かを言うのが苦手だったのだ水が入ったスプレーで髪を濡らされ、くしで髪をとかされる切られちゃう・・帰れない
その日、日の出前のまだ薄暗い時間、疾風は弥太郎と連れ立って家を出た。「じい、佐助を頼む」「まかせておけ」「夕刻には戻る」南蛮船が島に流れ着いてから、三ヶ月が経過した。つい先日、修理を終えたその巨大な船は、この島を離れて再び大海の彼方に姿を消している。「疾風。どれくらい奥まで行くんだい」大きな袋を背負ってついてくる弥太郎が、前を行く疾風に声をかけた。「山奥さ。誰も足を踏み入れないような」「ふーん」「そこで少しくらい音を出しても、誰にも届か
「中川君、日本側でやるべきことは全て終わったよ」「そうですか」「あれだけ騒いでいたマスコミも、1ヶ月経った今では我々のことを全くとりあげない」「世間にはもっと刺激的なニュースが溢れてますからね」「我々の件も十分に刺激的だったがな」電話口の向こうにいる本社の部長は、そう軽口をたたいた。自宅リビングにいる私はテーブルに置いたスマホを見つめ、ウイスキーをゆっくり舐めた。「君もいろいろと大変だっただろう、中川君。大使館とのやりとりとか」「全くおもいがけない
「逃すな!」主人、隆景が絶命したことを受け入れられぬまま、一人の武士が叫んだ。先刻、吉蔵を切りつけた武士だ。砂の上を、鹿のように身軽に飛び跳ね、高速で駆けていく桔梗。庭のように知った土地だ。過去の記憶を呼び起こしながら、桔梗は全力で走った。「何をしておる!その女を逃すな!」隆景がどういうわけで命を奪われたのか、それを知る武士は誰もいない。彼らの耳には、その瞬間に空気を引き裂くほどに響いた乾いた轟音だけが残っている。「未知の武器じゃ・・・・」
「サファリツアーか。それはいい。是非企画してくれ」私の誘いに、橋口は大いに乗り気なようだ。この日、毎朝の定例ミーティングの後、私は橋口の部屋でとある提案をした。橋口、宮野、北原、そして私たち夫婦の5人。このメンバーで週末にサファリツアーに行きましょう。私はこんな提案を投げてみたのだ。「奥さんも来るのかい?」「ええ。皆さんと行けると聞いて妻もとても喜んでます」「そうか、そうか。奥さんも私たちと一緒に行きたいってか」「はい」満面の笑みを浮か
「まいったな」たまにこんなこともあると先輩から聞いたことはあるが、私には初めての経験だった。「給料は変わらないんだからラッキーと考えるか」上司に了解をとり、私は会社には寄らず車でまっすぐ家に向かうことにした。この倉庫から自宅は車で15分くらいの距離なのだ。既に午前1時を回っている。さすがに妻も寝ているだろう。あるいはまだ翻訳の仕事に没頭しているだろうか。今から帰宅すると連絡しようかとも思ったが、結局私はそれをすることはなかった。突然帰宅したと
再びこの地にやってきた。だが、今回は深夜という、周囲が深い闇に包まれた時間だ。佐助の世話を弥太郎に任せ、疾風は今夜、慶次の言葉を信じて島の北端にまでやってきた。彼方に見覚えがある屋敷がひっそりと建っている。妻を奪った男、隆景との会談を行った屋敷である。桔梗はあそこで毎日暮らしているのだろうか・・・・。あの男に体を弄ばれるだけのために。約束の場所である小高い丘の上に身を伏せ、疾風はじっとそのときを待った。やがて、男は現れた。「疾風、来たな」
「Boss,Wegottagetoutofthisplacenow!!」車から飛び出してきたハネスが、コテージのバルコニーにいた私たちに叫んだ。サバンナの地平線についに陽は沈み、周囲は闇が濃くなっている。恐怖と興奮、更には罪を犯したものだけが感じるであろう焦燥感。汗を浮かべた彼の顔には、そんな複雑な感情が入り混じっていた。「さあ、早く!」椅子から立ち上がったものの、呆然としていた私、ジム、そして佐和子の目を覚ますように、ハネスがもう一度叫ん
全ての工程がおわりおばちゃん美容師が合わせ鏡を持ってくる「はい、できましたよ。中学生らしくて可愛いね。後ろも真っ直ぐ綺麗でしょ」前髪も後ろも真っ直ぐ切りそろえられてしまったまるでこけしだ。千夏はそう思う「勉強の邪魔にならないように前髪は短くしたよ。これで勉強頑張るんだよ」「・・・・・。」「襟足の産毛も剃ってあるけど、一ヶ月もするとすぐに生えてきちゃうから定期的に剃りにくるんだよ。おばちゃんが綺麗にしてあげるから」絶対にイヤだと思う千夏しかしそんなそぶりを全く見せず
「桔梗、準備はできているだろうな」その日、午前。昨日をはるかに上回る数の武士たちが家を取り囲んでいる。「来たか、やつら」「昨日より多いね、じい」木陰に身を隠しながら、吉蔵と弥太郎は彼らの様子を息をのんでじっと観察していた・・・。早朝、疾風と桔梗の様子を確認するため、二人は彼らの家を訪れた。「どうしたの、こんなに朝早く?今日は漁に出ないって言ってたじゃない」いつもと同じ調子の桔梗に、二人は拍子抜けする思いだった。にこにこと笑っている佐
幼少の頃から住み続ける小さな家。ささやかな農地に囲まれ、同じように貧しい農民たちが肩を寄せ合って暮らす集落。小さな丘を越えればすぐに白い砂浜が広がる。反対方向に歩いていけば、鬱蒼としげる深い森、そしてそこを突き抜ければ草原が広がる崖がある。そう、桔梗と疾風が駆け回ったあの草原だ。今にも倒れそうな粗末な木造の家に着いた桔梗は、いつものように昼食の準備を始めた。「今日は大漁だといいけどなあ」早朝、畑から獲ってきたさつまいもが土間に無造作に並んでいる。「
「奥さん、さあ、こちらのテーブルへ」サバンナの真ん中、コテージ形式の小さなレストランに私たちは腰を落ち着けた。草原の彼方には、象の家族がゆっくり歩いているのが見える。だが、連中は依然として動物にはまるで興味がないようだ。「私、また皆さんと一緒なんですか?」「当たり前じゃないですか、奥さん。さあ、冷えたビールが並んでますよ」妻の細い腰にいやらしく手を回し、橋口が強引に引き寄せる。「もう、橋口さん、エッチなんだから」美尻を撫でる男の手を軽く叩き、妻は3
「桔梗!」丘の上から駆け降りてきた疾風は、こちらに向かって一心に走ってきた妻の異変を知った。「邪魔よ!」自分に飛びかかってきた武士に、桔梗は思わずそう叫んだ。その時だった。「ううっ・・・・」桔梗を隠すように抱きついたまま、男が動きを止め、鈍いうめき声をあげている。優しげに寄せてくる波の音、そして遠くから聞こえる海鳥の声だけが浜にある。南国の太陽の下、浜の中央で武士に抱きつかれたままの格好で、桔梗は身動きできない。「放せ・・・・」このまま
「えっ、海外駐在?!」その知らせを聞いた妻は、舞い上がった様子で声を弾ませた。海外旅行が好きな彼女にとって、駐在員の妻になることはある意味で夢だったのだろう。「でも行き先がとんでもない場所だぜ」「どこなの?」「アフリカのここだよ」私は妻に国名を教えた。子供の頃、社会の授業で地図帳を眺めていたときの記憶が一瞬よぎった。名前は聞いたことがあるが、正確にはそれがどこにあるのかわからない。そんな国なのだ。だが、妻は困惑する様子を見せることな
刀をさやから抜き去り、浜の中央に仁王立ちする慶次。未知の力を与えるように、掲げた刀に強烈な日差しが注ぎ、眩しく光らせる。「ここから一歩も前には行かせねえ」狂ったように走ってくる武士団を見つめ、慶次はふと過去を思い出した。ここは幼少の頃、何度も来たことがある浜だ。「おい、慶次、追いつけないだろう、お前には!」「生意気いうな、疾風!待ちやがれ!」疾風、桔梗と一緒に浜を飛び回った遠い日の記憶が、鮮明に蘇ってくる。「慶次。あんた、よく頑張ったわね」
夫である私に見つめられているとも知らず、上司たちの妻への行為は続いた。見られていると知ったところで、彼らが止めることはないだろうが。私は笑みを浮かべながら、双眼鏡の中を覗き続けた。「宮野君、長いぞ、キスが・・・」妻と濃厚な口づけを続ける宮野に対し、少し苛立った様子で橋口が言った。そういう彼の手は、妻の胸元に伸びて怪しく動き続けている。「あっ・・・・・・、あっ・・・・・・・・」宮野とのキスか、あるいは橋口に与えられる愛撫か、気持ちよさそうな息を吐いてしまう
もう三年になろうか。夫である俺と一人息子を残したまま、妻はある男に突然連れ去られた。俺とは身分の違う、高貴な階層にいる武士、その棟梁の男に。そんな風に、疾風はゆっくりと話し始めた。幼馴染だった妻、桔梗をいかに愛していたのか。息子、佐助と暮らす貧しくも平穏な日々が、何の予告もなく、どんな風に壊されてしまったのか。封印していた苦々しい過去を紐解くその作業は、疾風にとって簡単なものではなかった。「連れ去られてから一度も妻と再会していないのか、と聞いておるぞ」
「奥さんと一緒に午後を楽しむだって?」橋口が好色に目を光らせて、身を乗り出した。「皆さん、動物だけ見ても退屈でしょう」「あ、ああ、そうなんだよ、中川君。それに少しばかり疲れたな、車ばかり乗って」今度は妻に乗りたいとでもいうのか・・・・調子のいい台詞を吐きながら、橋口は傍にいる宮野と北原に声をかけた。「どうだい。中川君の提案は。遠慮なく甘えようじゃないか」椅子に座ったまま、絶頂に達してうっとりとした表情を浮かべる妻の美脚を、宮野はまだ撫で続けている。