かつて愛した女性のことを忘れることが出来なかった時期があった。彼女と最後に会ったのはペンシルバニアの刑務所だった。酷く陰湿な面会室のなかで板子一枚先に彼女は飛び切りの笑顔をみせてくれた。彼女はこんな場所に私に会いにきてくれた。嬉しかった。しかし、それが最後だった。彼女には当時五歳になる子供がいた。今でも彼女への感謝の気持ちを忘れない。刑務所のなかで埋もれ行こうとする私を必死で繋ぎ止めてくれていた。私達は私の刑期が終わったら、結婚するはずだった。その面会の半年後別れの便りをもらった。それ以来音信不